変成帯の話を齧っていたら、日本には大きな変成帯が2つあるということを知った。
「領家〔りょうけ〕変成帯」と「三波川〔さんばがわ〕変成帯」。変成帯は他にもたくさんあるけれど、大きいのはこの2つ。
この2つは間に「中央構造線」をはさんでいて、上=北が領家、下=南が三波川。
都城秋穂博士はこれを「対の変成帯」として、北米大陸西側にも同じものがあると指摘、その後他の地域でも見つかって、有名な概念になった。
で、これは何か。両方とも大陸地殻の下に海洋プレートが沈み込む「プレート・テクトニクス」によって造られたもので、下の三波川は沈み込み部分の深部でできたもので「低温高圧」変成、上の領家は沈み込みで生まれたマグマが上昇して地殻浅部で造られたもので「高温低圧」変成。都城博士は同時にできたとしたが、最近の研究では少し時間的ずれがあるとのこと。まあ大勢に影響はないらしい。
間に挟まってる中央構造線って何だよ、という話になるけど、まあこれは「断層」。
上の領家と下の三波川は本来かなり離れているのにどうしてくっついたのか、中央構造線の断層とは何か、というのはまだはっきりと解明されたわけではない。
で、この2つの変成帯と真ん中の断層、これ、「日本列島がまだ大陸のへりだった時にできたもの」だという。
え? そうだったの? 恥ずかしながら、そんな話、知らなかった。沈み込み帯の火山からできた島、いわゆる「島弧」だと漠然と思っていた。
で、ちょいとそんな関係の啓蒙書を見てみた。割合最近の学説らしい。オジジの「最近」は全然最近ではなくて「生まれる前だぜ」と言われるだろうけど、何せ地球のテクトニクス研究が始まったのが1970年代で、オジジにしてみればちょっと前の話なのだわ。日本列島の「大陸からの分離説」なんかはもっと後だから最近。ついこないだ。(オジジを自慢しなくてよろしい)
この分離説、ものすごく雑に言うと、ユーラシア大陸の東のへりが突然割れて、日本列島の主要部分にあたる小陸塊が海へと進撃、間に日本海ができたということらしい。今も列島は東へ進み、日本海は拡大している。はあ、大陸から逃げたいのね。意味深。(おいw)
この分離の原因もはっきりわかっていない。都城博士は「マントルからのマグマの上昇」つまり「ホットプルーム」説を唱えた。例の「プルーム・テクトニクス」の先駆けの一つ。
マントル最深部から上昇してくる「ホットプルーム」は確かにあるらしい。ハワイ諸島とか、アフリカ東部の大地溝帯とかはそれによってできていると考えられている。ただ、「なぜ」「どこに」発生するのかは不明。神のみぞ知る。つか、これちょっと何でも説明できちゃう「デウス・エクス・マキナ」みたいな感じがしないでもない。マグマが上がってきているのに凹んでいるというのも素人にはよくわからない。
で、ともあれ、日本列島は大陸から分離してどんどん遠ざかっていく。その時に、細長い陸塊が二つに折れ、あの「フォッサマグナ」ができた。この「フォッサマグナ」もいろいろ複雑で、諏訪湖あたりで北部と南部に分かれていて、南部は「丹沢―伊豆半島―伊豆諸島……」と続く「フィリピン・プレート」上の「島弧」の衝突によって大きく影響を受けているらしい。難解。
つまり、中央構造線は列島がまだ大陸のへりだったかなり古い時代のもの、フォッサマグナはかなり最近のもの、ということなんですね。へえ。
ただ、「なんで二つに折れたのか」とか、「フォッサマグナの東の崖はなんでぐちゃぐちゃではっきりしないのか」など、はっきり解明されていない部分もある。
まあ「地べた」のことはまだまだわからないことだらけ。「プルーム・テクトニクス」ってほんとなのか、「プレート・テクトニクス」はどこまで適用できるのか」とかも、いろいろ異論があるようで。
でも面白いですねえ。
しかし、「大陸のへりが割れて海へ進撃した」とか「世界に類を見ない、海溝に直角で巨大な溝がある」とか「すぐ海側には3つのプレートがぶつかる珍しい三重合点がある」とか、日本列島はきわめて特殊な地形らしい。世界の活火山の1割が集中するとか、地震が頻繁に起こるとか、災難も多いけれど、とても面白い地質のようです。そんな上に住んでる人間もちょっと特殊かもしれない。
参考資料
都城秋穂『変成岩と変成帯』岩波書店、1965年
大鹿村中央構造線博物館サイト「対の変成帯」
藤岡換太郎『フォッサマグナ』2018年、講談社ブルーバックス
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