貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

マントルのげっぷ:キンバーライト

2024-10-20 09:44:26 | 単品

ダイヤ付き標本の疑惑はそれとして、キンバーライトはやはり特別な石なので、改めて。

キンバーライトは、きわめて特殊な「キンバーライト噴火」によって地上に出てくる。長い地球の歴史の一時期、2億年くらい前からばんばんと起こり、2500万年前には終息したらしい。もっともそれより前の痕跡は消えてしまったのかもしれないし、まだ発見されていない古いもの、新しいものもあるかもしれないから、はっきりとは言えない。
まだいろいろとわからないことだらけだけれど、このキンバーライト噴火、マグマに含まれている大量の水や炭酸ガスの膨張力によって、マントルの深いところから、時速100キロあるいは音速以上の猛烈な勢いで噴き上がってくるらしい。で、マントルの中にあった鉱物を一緒に運んでくる。ダイヤモンドはその一つ。ゆっくり上昇してくるとダイヤは変質してダイヤではなくなってしまうので、とにかくすっ飛んで上がって来ないといけない。だからダイヤモンドの大きな結晶はキンバーライトの中でしか出ない。
かくして、キンバーライトは、ダイヤモンドを運んでくるだけでなく、「マントルそのもの」を主成分とするとても貴重な岩石と見なされる。
このあたりことはいろいろ難しいし、情報があちこちに分散しているので別項にまとめました。(ごくろう)

しかしこのキンバーライト噴火、何なんですかねえ。現在、地球上に6000以上見つかっているらしい。一部の学者さんは、「核とマントルの境界から噴き上がってくる“スーパープルーム”」ではないかと考えている。数億年前に存在し現在の諸大陸の大元になっている「超大陸パンゲア」が分裂したのはこのキンバーライト噴火のせいではないかと言う人もいる。
しかしうまく想像できませんねえ。地殻の岩石を砕いたり融かしたりしながら、時速100キロ以上のスピードでマグマが噴き上がってくる? 無茶無茶猛烈なマグマ噴火ではないですか。そんなんがばかばか起こったら、そりゃ超大陸も壊れますわ。水や炭酸ガスの膨張力ってそんなに強力なものなんでしょうか。
仮に核から噴き出してきたとするなら、核には水素、炭素、酸素がかなり含まれていたということになるのでしょうかね。鉄とニッケル主体の核に混ざっていたのが吐き出された?
つまり「核がげっぷをしたら大陸が割れてダイヤが飛び出した」?(ちと品がなくはないか?)
まあ「マントルがげっぷしたらダイヤが出た」くらいが穏当か。

で、前に持っていたキンバーライト標本というのはこちら。さる筋からいただいたもの。

マグネタイトのキリッとした結晶が付いている。ピカッと光る。美しい。
これはきっちり埋まっているから接着ではないですな。わざわざマグネタイトを接着する理由もないし。
黒くてピラミッド型の典型的結晶。磁石がくっつく。素人でもわかる。

しかし、これは何だ?
キンバーライトはマントル中の岩石・鉱物・物質を「捕獲」してくる。ダイヤモンドはそれ。しかし、キンバーライト中で成分が結晶する「斑晶」というのもある。さらに通り道の岩石を砕いて呑み込んだりすることもある。
このマグネタイトはどれだ?
大きくて明確な自形結晶だから、キンバーライト中で結晶したとは考えにくい。だとすると、マントル内でできたものか、あるいは通り道の空隙でできていたものか。
わかりません。でも、とても面白く、かつ美しい。
それに、あちこちで小さなものがキラリと光る。もしかしたらごくごく小さなダイヤかもしれない。(違うだろうよw)
ダイヤはなくても、キンバーライトは橄欖石や雲母のほかにいろいろな鉱物を含んでいるというから、案外珍しい鉱物が隠れているかもしれない。まあ老眼無知には見つけるのは無理ですけどね。

キンバーライト自体は、素人目には玄武岩とさして変わらない地味ーな石だけれど、深い謎を秘めた魅力的な石です。
そんな石を眺めながら、人類は決して見ることができないマントルがげっぷをする姿を想像してみるのも、また乙なことではないでしょうか。(げっぷかねえw)


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