貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

インクルージョン・クォーツ

2022-04-22 18:55:54 | 単品

インクルージョン・クォーツというジャンルがあります。けっこう人気っぽい。
水晶が別鉱物を内包していて、色や模様が出る。時にはきんきらきんの針や「マリモ」のような姿が散らばっていたり。
ルチル、ブルッカイト、カコクセナイト、ヘマタイト、パイライト、リモナイト、ゲーサイト、クローライト、デュモルチエライト、エピドート、トルマリン、スティーブナイト、バイオタイト、シナバー、ホランダイト、リチウム、サルファー、アンフィボール、フックサイト、アホーアイト、油、水……あげれば切りがない。つか、何でもありみたい。クォーツインクォーツとかね。何じゃいそれは。

オーラライト23なんていうのは、アメジストの中に23種の鉱物が含まれていて、何かパワーがあるとか言われている。その23が何なのかはあまり書いていない。香港では人気らしい。ニューエイジ系の人たちはいろんなこと言いますねえ。
このところは、「ルチルクォーツ」――正しくはルチレイティッド・クォーツね――がものすごく売られている。ルチル(金紅石、TiO2)の針状結晶が入っているもの。ぶっといやつは「太針=タイチン」ルチルなんて命名もある。金に輝いて豪奢。人気があるのか値段も高い。けれど鉱物のルチルでないものも、針状結晶ならルチル入りと銘打たれていたりする。ちょっとそれはないだろうと思うのですけど。

     *     *     *

水晶というのは、透明で、きれいな結晶をしていて、というのが元々の美点。
変な混じり物が入っているのは、本来からすれば「欠陥品」なのだろうけど、逆にそこに味わいを求める。透明ばかりじゃ飽きるし、受容も拡がらないしね。
で、さらには「ガーデンクォーツ」なんてものも出だした。一種類の鉱物が入っているというのではなく、なんかごちゃごちゃとわけのわからない、へたをすればゴミじゃないかとさえ思える(こらw)ものが入っている。
それもまた趣があるというので、「ガーデン」なんて呼称を付けた。物は言い様ですな。(毒舌はやめなさい)

水晶は守備範囲外なのだけど、ある時、「天然石業界のダイ○ー」さんのサイトを見ていたら、なんかへんな水晶六角柱がある。色がごちゃごちゃとしていて、安い。で、安くて妙なものを見ると手を出すという悪癖が作動して、ぽちってしまった。ダイ○ーってそういうものでしょ。
はい、ガーデンクォーツ六角柱。

しかし、ガーデンというより、ブッシュ、藪ですな。わちゃくちゃ。でもそれが面白い。
すごいと思ったのは裏で、純度だか濃度だかが異なる石英が流れうねっている姿のまま固まっている。



鉱物生成のダイナミックさがひしひしと伝わるようで、少しぞくぞくする。
うーむ、ワイルド。悪くない。

     *     *     *

これを皮切りに、「混じり物水晶」を解禁した。(禁止だったのかよw)
で、先日天然ダイ○ーさん(おいw)を見ていたら、「ルチルクォーツ」という名前で色取り取りのビーズをつなげたブレスレットがあった。とても安い。部分写真もなかなか美しい。で悪癖のぽちっ。

これが実に面白い。
前に書いたけど、お安いブレスレットは、しばしば「ばらばら」。色も品質も異なる石を集めている。それが逆に魅力になっている。アクアマリンやアメジストの「ばらばらブレスレット」は愛用しています。
で、これもまた、いろいろな「インクルージョン・クォーツ」が集められている。
ルチルとおぼしき針状結晶が入っているものでも、無色透明に近いものから、赤や紫で染まったものまでいろいろ。そのほかに、新米のあちきには確かなことは言えませんが、エピドートやブルッカイトとおぼしきものが入ったものもある。カコクセナイトらしきものの赤い模様が浮かぶものもある。水晶の色合いも様々。





むしろ透明に金針ばっかしのものより、楽しい。玉を一つ一つ眺めて、これは何が入っているのだろうと思案するのも面白い。
いいですよ、お安いルチルクォーツブレス。

と、また天邪鬼水晶コレクションでした。


シャーレンブレンド

2022-04-17 10:51:35 | ややレア

長年憧れ続けてきた(嘘つきなさい君は新米だろ) あの石を、先日ついに手に入れました。
シャーレンブレンド。Schalenblende。
コーヒーではありません。(わかってるよ、つかつまらん) 原語はドイツ語だから「シャーレンブレンデ」が正しいかな。(うざいw)
実に不思議な模様を見せる石。

まあ有名な石だけあって、高かった。ほんとはもっと高いのだけど、エヌズミネラルさんがまたまた30%オフセールをおやりになっていたので、それでも高いけど、えいっと飛び降りた。(それじゃ意味通じん) いけませんねえ、エヌさん、石好きの財布を苦しめる。(ずいぶん恩恵を受けたんでしょ)

開けてびっくり。

すごい模様。金属質の輝き。
重い。そして臭い。
臭いんですよ。ものすごく。自然硫黄の時、「臭う石なんてあるか?」と書いたけど、これも臭う。もっと臭う。鉄錆と硫黄の混じり合った臭い。それが持っている手にまで移る。
しかし「くさい」と「におい」を同じ漢字にするのはやめてほしい。(誰に言ってる?) 「匂い」はまた違う意味になるし。ほんとにいやだ。

ポーランドを主産地とする「硫化鉱物混合岩石」。鉱物名ではないのね。
主成分は、

 スファレライト(Sphalerite、閃亜鉛鉱)ZnS
 ガレナ(Galena、方鉛鉱)PbS
 パイライト(Pyrite、黄鉄鉱)/マーカサイト(Marcasite、白鉄鉱)FeS2(二つは同質異像)
 ウルツァイト(Wurtzite、ウルツ鉱)(Zn,Fe)S   ヴュルツという人名由来だろうからヴュルツ鉱が正しいはず。ウルツ/ウルツァイトなんて音の言葉はどこにもない。ウルツァイト言われそうだけど(つまらん)

要するに、亜鉛・鉄・鉛と硫黄がくっついたもの。何ちゅう組成や。濃いいぜ。おなじみのケイ素も酸素も、マグネシウム・ナトリウム・カルシウムもない。こんな組成あるかい? どんなふうにしたらこんなもんができるのか。
鉄錆と硫黄の臭いがするのは当然ですな。金属主体だから重いのも当然。
黄色と茶色のところはスファレライトらしい。スファレライトというと鮮やかな赤を思い描くけど、いろいろな色があるらしい。金属のくせにここではすっとぼけた黄色を見せている。
黒っぽい部分は青光りしていてガレナのように見えるけれど、鉄臭いからパイライトないしマーカサイトかもしれない。この部分、シラーと言えるほどにきらっきらに輝く。



不思議な模様は、mindat によれば、「低温硫化物ゲルの比較的急速な結晶化によって形成されたと考えられている」。ってこの説明じゃわからん。きわめて特殊なマグマから生まれたのだろうか。

この模様は、東欧的と言う人もいるけど、あちきには何となく古代シルクロード文化を思い起こさせる。なんかこういう絵があったような気がするけど思い出せない。

不思議な模様を描くのは、アゲート/ジャスパーを始めいろいろとある。
けど、これ、全然違う。
写真で見てるだけでは、メノウに毛が生えた程度みたいにも思えるけど、何せ亜鉛と鉄と鉛。質感も輝きも全然違う。
石というより、むしろ金属塊ですな。
いやびっくり。「何じゃこれ」の世界。
うーん、こりゃあちきのお宝の一つになるかな。


純白

2022-04-16 10:35:06 | 単品

セルフクリエイションさんで「山サンゴ」を買った。前から気になっていたもの。
包みを開けたら、「うおっ」と声が出た。
結晶の形、そして何よりその純白。けっこう大きい。8センチくらいある。

しばらく陶然と見入った。
アラゴナイト。カルサイトと同質異形。前に書いた。和名は霰石だけどアラレちゃんとは呼べない。
「山サンゴ」というのはその姿からのあだ名。って、サンゴはこんなに輝かんだろうよ。

     *     *     *

白い石というのはまあある。「透明」を「白」と表現するのことがよくあるけど、透明は別。
あちきのケースの中では、氷晶石、アイスクリスタル、スコレス沸石、アポフィライト、ムーンストーン、くらいかな。
どれも「半透明」、白濁して白い。ムーンストーン以外は色がないけど、半透明の白は独特の味わいがある。
けどこのアラゴン君はそういうものとは違う。真っ白白。
粉砂糖を振り掛けたような感じ。雪とも言える。細粉の塩もまあ似ているか。
柱状結晶の表面にさらに微細な結晶がついているからこうなるみたい。


白い石ではほかにハウライトとかマグネサイトとかあるけど、こうはならない。
ちなみにこの両君、青く染めてトルコ石の代わりにされたりするそうだけど、ちょっとかわいそう。両方ともけっこう稀産らしいのに。もひとつちなみに(うざいねw) 白い碁石というのは貝から作るとか。真っ白な石というのは案外ないものですな。

     *     *     *

白というのは、まあよく目にする。紙だってプラスチックだって、白い。
白というのは、全波長の光を反射する、ということではない。単純に反射したらそれは鏡だ。
白というのは、(しつこいねw) 全波長の光を「乱反射」しているということ。
けど乱反射というのも微妙で、あまりに表面が乱雑だと吸収されて暗くなってしまう。
ごくごく微小な結晶面があちゃこちゃに向いている。そうすると強い乱反射が生まれる。このアラゴン君はそういう芸当をやっている。雪も粉砂糖も粉塩も同じじゃないかと言われるかもしれないけど、そいつらは溶ける。アラゴン君は頑として溶けない。偉い。(まあ……な)
この手の白は、なかなか味わえるものではない。と思う。

さらにですね、このアラゴン君、蛍光する。
淡いグリーンでとても軽やか。才人ですなあ。


この写真だとピンク色が写っているけど、そんな色は見えない。蛍光の色というのは、カメラは変な風に捉えたり変えたり無視したりするのですな。前に然別湖のピンクオパールの蛍光を写したら、まったく写らなかったことがあった。わけわからん。

細かい結晶がわちゃわちゃと伸びているから、壊しそうで少し恐い。埃がたまるんじゃないかという危惧もある。(君のような無精者は要警戒だね)
けれどこの結晶の姿と純白の光はとてもいい。


パープライト(パーピュライト)

2022-04-13 20:58:52 | 単品

紫の石というのは案外少ないという話は前に書きました
何せアメジストという巨大軍団がいるせいで、他の石はあまり脚光を浴びない。
まあスギライトとかチャロアイトとかありますけど。

パープライトは、名前そのものが紫。
けれど、どうも一般的な「美しい」とは少しずれる。

まるで古い岩壁みたい。あちこちにひびが入って、壊れそうにも見える。
そしてその色が濃い紫。
「おお、美しい」とはならないのだけれど、不思議な魅力がある。長い時間の造化の姿といった趣。

産出も少ないし、見目麗しいというわけでもないので、ネットにはあまり情報がないみたい。ちょっとまとめておくと、

パープライトは、Purpurite で、正しくは「パーピュライト」。purplite ではないのね。語義は紫ということだそうだけれど。そのまま読むとプルプリッテだ。(そのまま読むなw)
組成は Mn3+(PO4)。3+ は3価ということ。(よく知らないくせにw) マンガンのリン酸塩鉱物。トリフィライト・グループに属する。
ってこれが厄介で、
 ・トリフィライト  Triphylite   LiFe2+PO4
 ・リチオフィライト Lithiophilite  LiMn2+PO4 (リシオフィライトとも)
というリチウム・リン酸塩鉱物グループがあって、そのリチオフィライト、ないしリチオフィライトとトリフィライトの固溶体から、リチウムが脱落した「二次鉱物」が、
 ・ヘテロサイト   Heterosite   (Fe3+,Mn3+)PO4
 ・パーピュライト  Purpurite    Mn3+(PO4)
ということ。パーピュライトは原則的に鉄を含まないということね。ただしヘテロ君とパピュ君は見た目では区別がつかないという。結晶はほぼないとか。
しかしリチウムってそんなに簡単に脱落するものなのですかね。
なお、この変化の途中形態としてシックラライト(Sicklerite)と鉄シックラライト(Ferrisicklerite)というのがあるらしい。何ですか途中形態って。Li がまだ残っているということかな。

ちなみにこの「リチウム」化合物の表記は「リシア/リチア」「リシオ/リチオ」とぶれがあって気持ち悪い。「リシア輝石」じゃあリチウムだとわからないでしょうに。
もう一丁ちなみに、鉄のリン酸塩鉱物にはヴィヴィアナイト(ビビアナイト、藍鉄鉱、Fe3(PO4)2・8H2O)がある。透き通ってきれいな石。こっちはマンガンなしで含水鉱物。ちょっと似てるけど系統が違うのかな。

パーピュライトは、酸による処理で明るい紫になるので、処理したものがアクセサリーとして出回っているとのこと。まあ、このまんまじゃ装飾品としてはどうにもならんですわな。
でも眺めるのはいいですよ。


レア? ②ローディザイト

2022-04-10 19:37:13 | ややレア

その後、五反田のクリワさんに行ったら、小袋に入った米粒のような石がある。
ローディザイト。ごくかすかに色がついているけど、何色と言い難い。
何じゃいこれは。初めて聞く名前だし、もちろん見たこともない。
これも面白くて安いから買った。

説明にはこうある。

《ローディザイト(Rhodizite)/ ローデイズ石
(K,Cs)Al4Be4[B11BeO24]、硼酸塩
ベリリウムとセシウムを含む。
等角六四面体結晶の大変珍しい鉱物。
産地:Antsogombato,Antsirabe,Madagascar
ガラス光沢の強い光輝を持つ。
硬度:8
近年、パワーストーンとして人気急上昇中
微細な結晶はロシアのウラルでも見つかっているが、このように確認可能な結晶はマダガスカルのみ。》

mindat によると、名前はギリシャ語の「rhodizein」、バラ色から来ているとのこと。熱するとバラ色になるらしい。「Rhodesite」と混同するなとある。こちらの化学式は (K,Cs)Al4Be4(B,Be)12O28 とある。
カリウムとセシウムの比によって、カリウム優勢だとローディザイト、セシウム優勢だとロンドナイト Londonite になるけれど、区別は困難とのこと。ロンドナイトは「ロンドン石」だけど、名前の由来は人名で、あのロンドンとは関係ない。透明な結晶が売られている。「ホシノカケラ」参照。

さあて、この色がわからない。照明によってラベンダー色っぽく見えたり、桜色っぽく見えたり。白色系ペンライトだと青っぽく見える。白熱電球ペンライトだと藤色かなあ。カラーチェンジ、「光源変色」をすると言えるかも。ほんと捉えどころがなくて面白い。UV長波に少しだけ反応する。



「等角六四面体」というのはよくわからない。ネットで調べても出て来ない。いろいろ見ていたら頭が痛くなってきたので諦め。
いくつかのものはなかなか整った幾何学立体だけれど、文系頭のジジイ目では認知できない。

まあ、カクカクしていて、ほんのりとした不思議な色だし、小さくてかわいい。全体としては少し粉っぽい印象があるけれど、結晶面は確かにピカピカしている。

けどこれも名前おぼえなさそう。

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クリスタルワールドさんにしろ他の石屋さんにしろ、よくこういうものを見つけてくるもんだと感心する。まあ商人魂の精髄かな。
素人にはわからないけど、石屋さんというのは、しばしば独自の仕入れルートをお持ちのようで。蛇の道は蛇。石の道は……何だ?
パーフェクトストーンさんなんかには、「現地のコレクターの間で収まってしまうもの」なんて石も出てくる。どうやってそれを入手するのか。現地にスパイを送り込んでいるのか。(スパイとは言わんだろw)

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あちきのところにあるほかのレアストーンは……まあ、この前書いたデューウィライトと、オージェライト、デヴィリン、トゥグトゥップアイトくらいですかね。
博物館・研究所にしかない石なんてもちろんないし、市井の貧老のところにそんなものがあっていいものではない。
でもまあ、「少しばかり珍しい石みたいね」くらいのものがあるのは、ちょっとアクセントとしてはいいものだなと思っておりますです。