絵や詩をかいています。
制作日誌
テーブルマナー
一九世紀後半
パリの歓楽街を描いた画家の
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックは
美食家としても知られている
作られたレシピは二百種類
たびたびアトリエに友人知人を招いては
自慢の手料理でもてなす
賑やかなパーティーを開いた
ワイン酒はふんだんに注がれた
大皿にはカモやウサギの肉料理
もの真似や変装のご披露
デザートは油絵の鑑賞付き
招待客を飽きさせないことが
彼一流のテーブルマナーだった
しだいに”小さな王様”と
もてはやされた
ロートレックは南仏の伯爵家の一人息子
幼いころの転倒事故で両脚の成長が止まった
乗馬もできない息子を父親はたしなめた
ひとり郷里をはなれた
「もし ぼくの脚があと少し長かったら
けっして絵など描かなかったであろう」
パーティーには
馴染みの踊り子たちも招かれた
夜の酒場は彼の背の低さなど
気にとめる者はだれもいなかった
山高帽子に丸めがね
一本の杖をかかえ
ワイングラスを片手に女性たちを
いったいどんな会話で口説いたのだろう
踊り子との同棲生活は二年間
後年は娼館で人間の底辺を描きつづけた
パーティーはアル中と梅毒により
三十六年でお開きとなった
※NHK・BS「ロートレックからの招待状」、「芸術新潮」二〇〇一年一月号などを参考にしました。
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