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2024年12月25日公表の「社会保障審議会年金部会における議論の整理」の要旨、さて、どうなるのか

2025-01-24 | 書記長社労士 法改正 社会保険

 「社会保障審議会年金部会における議論の整理」が昨年12月25日に公表された。
⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001364986.pdf
次期年金制度改革の具体的内容等について、以下のような方向性が示された。

 これに基づき、今日(2025年1月25日)から開会される第217通常国会に、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」(仮称)が、3月上旬に内閣提出法案として出されるという情報がある。
その法律案の現在(2025年1月22日現在)の要旨調を見ると、
「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため、被用者保険の適用拡大、在職老齢年金制度及び遺族年金の見直し、マクロ経済スライドの見直し、標準報酬月額の上限の引上げ、個人型確定拠出年金の加入可能年齢の引上げ、企業型確定拠出年金及び個人型確定拠出年金の拠出限度額の拡充等の措置を講ずる。」
とされているので、少し、以下の議論の整理とは違うニュアンスがあるのだが…。
さて、どうなるのか。

1 被用者保険の適用拡大(p12~)
〇短時間労働者への適用拡大
・「当分の間」の経過措置として設けられた企業規模要件については、労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、撤廃する方向で概ね意見が一致
・月額賃金8.8 万円以上とする賃金要件については、撤廃する方向で概ね意見が一致
(ただし、撤廃の時期に配慮すべきという意見があった)
・週所定労働時間20 時間以上とする労働時間要件については、今回は見直さないこととする
・学生除外要件については、今回は見直さないこととする

〇適用事業所の拡大
・常時5人以上の従業員を使用する個人事業所における非適用業種については、解消する方向で概ね意見が一致
・常時5人未満の従業員を使用する個人事業所については、今回は見直さないこととする

〇複数事業所の勤務者やフリーランス等
・複数の事業所で勤務する者の労働時間等を合算し、被用者保険を適用することについては、引き続き検討していく
・業務委託契約でありながら、実態としては被用者と同様の働き方をしている者について、労働者性が認められる被用者については、確実に被用者保険を適用すべきである
・労働基準法上の労働者に該当しない働き方をしているフリーランス等への適用の在り方については、中長期的な課題として引き続き検討していく

2 いわゆる「年収の壁」と第3号被保険者制度(p16~)
① いわゆる「106 万円の壁」への制度的対応
・単に手取り収入が減少しない仕組みの課題については、労使折半原則を踏まえた観点から慎重な意見が多かった
・就業調整に対応した保険料負担割合を変更できる特例については、賛成意見が多かったものの、制度の細部までは意見が一致せず、一方で慎重意見や反対意見が多くあり、部会として意見はまとまらなかった

② 第3号被保険者制度
・第3号被保険者制度に係る当面の取組の方向性としては、引き続き適用拡大を進めることにより、第3号被保険者制度の縮小を進めていくことが基本的な方向性となる
・その上で、その先に残る第3号被保険者の中には様々な属性の者が混在している状況にあり、第3号被保険者制度の将来的な見直しや在り方に言及する意見は多くあった一方で、次期改正における制度の在り方の見直しや将来的な見直しの方向性については、意見がまとまらなかった
・第3号被保険者制度をめぐる論点についての国民的な議論の場が必要であるとの認識を共有した
・今後の議論を行うにあたっての論点
❶所得保障の機能をどのように維持するか、❷給付と負担をどのように設定するか、❸特定の者への配慮をどのように考えるか、❹第1号被保険者とのバランスをどのようにとるのか、❺年金財政の構造をどのように考えるか、❻第3号被保険者制度に付随する制度への影響
・第3号被保険者制度を廃止するということは、従来の公的年金の設計思想が根本的に変わることになるため、一貫した整合性が確保できるよう、具体的な制度全体の設計を示す必要があるという意見があった

3 在職老齢年金制度の見直し(p23~)
・本部会の議論では、
 保険料を拠出した者に対し、それに見合う給付を行うという公的年金の原則との整合性
 高齢者の活躍を後押しし、できるだけ就業を抑制しない、働き方に中立的な仕組みとする観点
から、現行の在職老齢年金制度を見直すことで概ね意見は一致した
・具体的な見直し案について、本部会では、賃金と老齢厚生年金の合計額による支給停止の基準額(現行は50 万円)を引き上げる案と、廃止案について議論したが、特定の案に意見はまとまらなかった

4 標準報酬月額上限の見直し(p26~)
・現行の標準報酬上限額の改定のルールを見直して新たな等級を追加することについては概ね意見は一致

5 基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了(p27~)
・全国民共通の基礎年金が将来にわたって一定の給付水準を確保することの重要性については、委員の意見が概ね一致した
・この観点から、賛成の意見の方が多かったが、一方で、慎重な意見もかなりあり、部会として意見はまとまらなかった
・政府においては、将来の水準確保に向け、マクロ経済スライドの早期終了の措置に関して、経済が好調に推移しない場合に発動されうる備えとしての位置づけの下、さらに検討を深めるべきである

6 高齢期より前の遺族厚生年金の見直し等(p31~)
① 20代から50代の子のない配偶者の遺族厚生年金
・男女とも原則5年間の有期給付として年齢要件に係る男女差を解消する
・ただし、所得状況や障害の状態によっては、原則5年間の有期給付が終了した以降も最長65歳到達まで継続して給付(継続給付)を受給できることとする
・男女差の解消に伴い、死別時に60歳未満の男性は施行時点から新たに有期給付の受給が可能となる。女性は、30歳未満という現行の有期給付の対象年齢を段階的に引き上げることとし、施行時点では40歳未満を対象年齢とする。その後は、20年程度の時間をかけて60歳未満まで引き上げる
・配偶者の死亡に伴う年金記録分割の導入(死亡分割)、生計維持要件のうち収入要件の撤廃、有期給付加算の創設を行う

② 20代から50代の子のある配偶者の遺族厚生年金
・子が18 歳に到達して遺族基礎年金が失権した後も原則5年間の有期給付を受給できることとし、所得状況や障害の状態に応じてはさらにその後の継続給付の受給も可能とする
・女性のみが対象となっている中高齢寡婦加算については、将来に向かって十分な時間をかけて加算措置を終了する

③ 遺族基礎年金(国民年金)
・生計を同じくする父又は母があることによる支給停止規定を見直すことで概ね意見は一致した
・60代前半の生活実態を踏まえて遺族に対する保障の在り方について更なる検討が必要であることから、寡婦年金の取扱いについては、将来的な廃止を含めて引き続き検討事項とする
・寡婦年金と選択関係にある国民年金の死亡一時金の取扱いについても検討事項とする

7 年金制度における子に係る加算等(p36~)
・児童扶養手当等の近接する制度の状況を考慮し、多子世帯への支援を強化する観点から、公的年金制度における子に係る加算について、第1子・第2子と同額となるまで第3子以降の支給額を増額し、子の人数に関わらず一律の給付とすることについては意見が一致した
・配偶者に係る加給年金については、将来的な廃止も含めて見直す方向性については概ね意見が一致した

8 その他の制度改正事項(p36~)
① 障害年金の支給要件のうち、直近1年間に保険料の未納がなければよいとする特例について、引き続き適用できるよう、時限措置の10年延長を行う。
② 国民年金の納付猶予制度について、時限措置の5年延長を行う。今後、利用状況や追納率等の実態を丁寧に把握した上で、引き続き、制度の在り方について検討する必要がある。
③ 任意加入の特例(高齢任意加入)について、年金受給権確保の観点から、新たに65 歳に到達する世代も利用できるよう措置することで本措置の延長を行う。
④ 離婚時分割の請求期限について、民法上の離婚時の財産分与に係る除斥期間が、離婚後2年間から5年間に伸長されることに伴い、離婚後2年間から5年間に伸長する。
⑤ 遺族厚生年金の受給権者の老齢年金について、一定の条件を満たす場合において繰下げ申出を認める。
⑥ 脱退一時金制度について、再入国の許可を受けて出国した外国人は、当該許可の有効期間内は脱退一時金を請求できないこととする。また、支給上限年数を現行の5年から8年に見直す。

9 今後検討すべき残された課題(p38~)
① 基礎年金の拠出期間の延長(45 年化)
・次期年金制度改革においては、国民に保険料負担を追加で求める基礎年金の保険料拠出期間(現行40 年)の5年延長は行わないこととし、本部会において詳細な制度設計については議論しなかった
② 障害年金
・障害年金については、事後重症の場合に障害認定日に遡って年金を支給するべきかどうかや、障害厚生年金における初診日要件について検討したが、制度の見直しの検討には、制度上あるいは実務上の観点から、以下の点を整理していく必要があると考える。
(1)拠出制年金における社会保険の原理との関係の整理
(2)様々な障害がある中で、障害の認定判断に客観性を担保しその認定判断を画一的で公平なものとする必要性
(3)障害年金の目的や障害の認定基準のあり方と他の障害者施策との関連の整理
障害年金については、こうした点を整理しつつ、社会経済状況や医療技術の進歩等を踏まえながら、様々な課題について引き続き検討するべきである

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