労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

労組の仕事している勤務社労士がもしや誰かの役に立ってるんかな~と思いつつ飲んだくれて書いてるっす~(* ̄∀ ̄)ノ■☆

新型コロナウイルス感染症の労災認定、感染経路が特定されなくとも、認められやすくなる!

2020-05-01 | 書記長社労士 労働災害

 本日、第149回労政審職業安定分科会(持ち回り開催)を経て、 雇用調整助成金の特例措置を実施します~雇用調整助成金を活用して従業員の雇用の維持に努めてください。~が公布、公表された。
令和2年4月8日以降の休業等に遡及して適用される。

 ところで、新型コロナウィルスに感染した場合の労災について、以下の通りの懸念があった。

◆業務中に新型コロナウィルスに感染した場合。
⇒業務上災害となり、会社は労働基準法に基づく災害補償をする必要がある。
⇒ただし、会社は労働者災害補償保険法を利用する。(療養補償給付・休業補償給付など)

◆通勤中に新型コロナウィルスに感染した場合。
⇒あくまでも私傷病だが労災保険法の通勤途上災害となり、会社は労働者災害補償保険法を利用する。(療養給付・休業給付など) 。

◆労災認定について
⇒業務上災害の場合に問題になるのが、①業務起因性(傷病などが業務に起因して生じたものであるということ。業務と傷病などとの間に相当因果関係が存在すること。)と②業務遂行性(労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態)
⇒通勤災害の場合に問題になるのが、「通勤に通常伴う危険が具現化したこと。」
⇒いずれにしても、感染経路を証明することができるかがポイント。
⇒できなければ、傷病手当金となる。

 この問題について、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」【基補発0428第1号 令和2年 4月28日】という通達が発せられた。https://www.mhlw.go.jp/content/000626126.pdf
この通達によって、医療従事者、介護従事者は、業務外で感染したことが 明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象とされる。
感染経路の証明は不要となる。
また、医療従事者等以外の労働者であって、調査により感染経路が特定されない場合であっても 、職場で複数の感染者が出た場合や、感染リスクが比較的高いと思われる業務をしている人は(厚生労働省は小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定している)、業務により感染した可能性が高いとして、労災認定を判断するとした。
現状の、感染ルートが特定出来ない感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという特性を踏まえての通達で、非常に理にかなっている!

基補発0428 第1号
令和2年4月28日
都道府県労働局労働基準部長 殿
厚生労働省労働基準局補償課長
新型コロナウイルス感染症 の労災補償 における取扱い について

 新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。) に係る労災補償業務における留意点 については、令和2年2月3日 け 基補発 0203第1号で通知しているところであるが、今般 、本感染症の労災補償について、下記のとおり取り扱うこととしたので、本感染症に係る労災保険給付の請求や相談があった場合には、これを踏まえて適切に対応されたい 。
1 労災補償の考え方 について
 本感染症については、 従来からの業務起因性の考え方に基づき、 労働基準法施行規則別表 (以下「別表」という。)第1の2第6号1又は5に該当するものについて、労災保険給付の対象となるものであるが、その判断に際しては、本感染症の現時点における感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという本感染症の特性にかんがみた適切な対応が必要となる。
 このため、当分の間、 別表第1の2第6号5の運用については、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること 。

2 具体的な取扱いについて
(1)国内の場合
ア 医療従事者等
 患者の診療若しくは看護の業務又は 介護の業務 等に従事する医師、看護師、介護従事者等が 新型コロナウイルス に感染した場合には、 業務外で感染したことが 明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。
イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
 感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。
ウ 医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの
 調査により感染経路が特定されない場合であっても 、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
 この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数 (請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

(2)国外の場合
ア 海外出張労働者
 海外出張労働者については、出張先国が多数の 本感染症 の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在 する危険が具現化したものか否かを 、 個々の事案に即して判断する こと 。
イ 海外派遣特別加入者
 海外派遣特別加入者については、 国内労働者に準じて判断すること。


 「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、具体的に、請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定し、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられるとのこと。
「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」については、小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しているとしている。
また、他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断するとしている。

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「労災認定について」のほんとに基本的な内容の講演を1時間でさせてもらったが、やっぱ1時間では時間が足らん…(__*)

2018-10-25 | 書記長社労士 労働災害
 今週月曜日に開催したうちの組織の「社会保障研究集会」では、全労済から、労働者共済運動の歴史と意味について、災害が多発している昨今で無補償者を無くす運動の重要性、災害に備えて、について講演をいただき、2番目には自分が「労災認定について」について講演、そして、介護離職のない社会をめざす会の共同代表で、NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジンの牧野史子様にお越し頂き「「職場から介護離職をなくすためにできること」~あなた自身心構えはありますか~」について講演をいただいた。

 今回の研究集会の講演テーマを決める際に、「うちの東ブロックと西ブロックの労働学校で社会保障について講座を組んだ際に、労災認定に関する質問が非常に多い」という問題意識と、「うちの産業の中で特にバスやタクシー職場で労働者不足が深刻な中、離職理由に『介護』のためということが増えている」という問題意識があって、どちらにしましょうかってと検討頂いたところ、両方組んで欲しいとなってしまったので、無理矢理二本立てになってしまった。

 いろいろタイムスケジュールで頭を悩ました結果、自分の持ち時間は精一杯絞り出しても1時間。
ほんとなら、悩むであろう「労災の認定事例や判例」を例示して、労災認定されたかどうか議論してもらうとか、またはフリーで参加者から「職場で実際にあった労災かどうか判断や対応が難しかった事案」を発言してもらってみんなで検討する、ってなワークを組み込みたかったけど、時間的には無理。
しかたないし、ほんとに、定型的な基本的な労災の考え方を、実例を散りばめながら、一方的に喋りまくったってな内容になってしまった。
聴く側としてはあまり面白くは無かったやろうなって反省だ。

 あとの懇親会とかでの参加者からの感想では、「盛りだくさんすぎてメモが間に合わない、せめて事例のキーワードだけでもレジュメに落としておいて欲しかった」という声が多くあった。
ごめんなさい、キーワードだけを落とすと、きっとあとで見返したときに、そのキーワードだけが一人歩きし、もっとも悩ましい「個別具体的な状況」ってのがどっかに行っちゃって、危ういのでそれは無理なのです!ごめんなさい!


「労災認定について」

◆業務災害 「労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害又は死亡」


 業務災害であると認められるためには、「業務起因性」がなければならず、業務起因性が成立するためには、その第一次的な条件として「業務遂行性」がなければならない。

○業務起因性
 傷病などが業務に起因して生じたものであるということであり、業務と傷病などとの間に、相当因果関係が存在することをいう。

○業務遂行性
 労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態をいう。 
① 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
② 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
③ 事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

 業務上の負傷の認定 業務に伴う危険が現実化して生ずる災害が、業務遂行性及び業務起因性が認められる災害である場合に、業務上の負傷として取り扱われる。

① 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
◇作業中
 作業中に発生した災害は、大部分が業務災害として認定される。
 ただし、その災害が業務外の原因により起こった場合や、担当業務外の行為に従事中などに起こった場合には、業務外とされることもある。

◇作業に伴う必要行為、合理的行為中
 労働者の担当業務とはいえないが、単なる私的行為ともいえないような行為は、それが特別の業務命令により積極的に是認されている場合には、その行為自体が担当業務となる。
 しかしそうでない場合には、次に該当するときに、業務行為または業務付随行為と判断され、その行為による災害については、一般に業務起因性が認められる。
Ⅰ 労働者の担当業務の遂行上、必要な行為。
Ⅱ 当該業務を担当する労働者として合理的な行為。
Ⅲ 業務行為の過程で通常ありがちな些細な行為。

◇緊急業務中
 緊急業務(事業場として突発事故・火災などの緊急の事態が生じ、これに臨んで行われる業務)は、事業主の命による場合はもちろん、事業主の命を待たなくても、その事業の労働者として当然に期待される行為(期待行為)である限り、当該行為中の災害については、一般に業務起因性が認められる。

② 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
◇作業に伴う準備行為または後始末行為中
 次のような準備行為または後始末行為は、業務行為に通常または当然に付随するものであれば、業務行為の延長とみられるため、当該行為中の災害については、一般に業務起因性が認められる。
Ⅰ 準備行為→機械器具や作業環境の整備など
Ⅱ 後始末行為→終業後の機械器具の整備・返還、作業環境の整理など

◇作業の中断中
 生理的行為(用便や飲水など)または反射的行為(風で飛ばされた帽子を拾おうとするなど)は、業務行為そのものといえないが、それが私的行為や恣意的行為などでなければ、業務に付随する行為として、作業からの離脱はなかったとみるのが相当であり、当該行為中の災害については、一般的に業務起因性が認められる。

◇休憩時間中
 事業主の管理下(事業施設内)にある限り、休憩時間中でも事業主の支配下にあることから業務遂行性は認められるが、休憩時間中は、労働者の自由行動が許されていることから、その時間中の個々の行為は私的行為とされる。したがって、休憩時間中の災害は、それが事業場施設またはその管理に起因することが証明されなければ、一般に業務起因性は認められないことになる。

③ 事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
◇出張中
 通常「出張」とは、一般に事業主の命令により、通常の勤務地を離れて用務地に赴いてから、用務を果たして戻るまでの一連の過程を含むものである。つまり、特別の事情がない限り、出張過程全般ついて事業主の支配下にあるといってよく、その過程全般が業務行為と判断される。したがって、出張中の個々の行為は、積極的な私用・私的行為・恣意的行為などを除き、一般に出張に当然または通常行う行為であり、当該行為中の災害については業務起因性が認められる。

◇通勤途上
 通勤途上は、事業主の支配下にあるとはいえないことから、業務遂行性はないことになる。したがって、その間に発生した災害については、一般に業務起因性が認められない。
 しかし、次のような災害は業務災害となる。
Ⅰ 事業主が提供する労働者のための専用の交通機関(通勤専用バスなど)の利用に起因する災害
Ⅱ 突発事故などにより事業主の命令を受けて出勤する際の災害など

④ その他特殊な状況による場合
◇療養中
 療養中の災害については、当初の業務上の傷病と、その療養中に、業務外の災害によって加重し憎悪した場合、ないしは療養中における業務外の災害による死亡との間に因果関係があるかどうかによって、現在の死傷病の業務上外が決まる。

◇天災地変による災害
 天災地変(暴風雨、水害、地震、土砂崩れ、落雷、噴火など)に起因する災害であっても、天災地変による災害を被りやすい業務上の事情があって、その事情と相まって発生したと認められる場合には、業務に伴う危険が現実化して発生したものとして、一般に業務起因性が認められる。

◇他人の故意による災害
 他人の故意による災害であっても、災害の原因が業務にあって、業務と災害との間に因果関係が認められる場合には、業務災害となる場合がある。したがって、加害行為が明らかに業務と関連しており、私怨や私的関係に起因したものでない場合には、それぞれの具体的事情を考慮することにより業務起因性が認められることがある。

◇自己の故意による災害
 故意とは、一般に、自分の行為が一定の結果を生ずべきことを認識し、かつ、その結果を生ずることを認容することをいう。故意による災害については、通常、業務との因果関係が成立しないため、業務起因性は認められない。ただし、労働者が結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる災害については、一般に業務起因性が認められる。

◆業務上の疾病
 業務上の疾病の認定については、業務が競合する原因のうち、相対的に有力な原因として認められる場合に、業務上の疾病として取り扱われる。
業務上疾病の範囲と分類は、労基法施行規則別表第1の2に明示されている。
Ⅰ 業務上の負傷に起因する疾病
Ⅱ 物理的因子による疾病(潜水病、騒音による難聴など)
Ⅲ 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、腱鞘炎など)
Ⅳ 化学物質等による疾病(化学物質に起因する呼吸器疾患・皮膚疾患、酸素欠乏症など)
Ⅴ 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺と合併した疾病
Ⅵ 細菌、ウィルス等の病原体による疾病
Ⅶ がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病(石綿業務による肺がん又は中皮腫など)
Ⅷ その他厚生労働大臣の指定する疾病
Ⅸ その他業務に起因することの明らかな疾病


◆通勤災害
 通勤災害とは「労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡」とされているが、この「通勤による」とは、通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具現化したことをいうのであり、これは業務災害の場合のいわゆる業務起因性に相当する考え方である。

労働者災害補償保険法 第7条
2 前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

① 就業に関し
 「就業に関し」とは、移動行為が、業務に就くためまたは業務を終了したことにより行われるものであることを意味する。
 つまり、通勤と認められるためには、移動行為が業務と密接な関係をもって行われることが必要となる。

② 合理的な経路及び方法
 「合理的な経路及び方法」とは、住居と就業の場所を移動する場合に、一般に労働者が用いると認められる経路及び手段などをいう。
○合理的な経路
 乗車定期券に表示され、または、会社に届け出ているような、鉄道、バスなどの通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路など。
○合理的な方法
 通常用いられる交通方法は、その労働者が平常用いているか否かにかかわらず、一般的に合理的な方法とされる。

③ 業務の性質を有するもの
 「業務の性質を有するもの」とは、以上に述べた通勤の要件を満たす移動ではあるが、当該移動による災害が業務災害と解されるものをいう。このような移動は、業務災害として労災保険の保護を受けることができるため、通勤災害の範囲から除かれている。

④ 住居
 「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している場所で、本人の就業のための拠点となるところをいう。

⑤ 就業の場所
 「就業の場所」とは、業務を開始し、または終了する場所をいう。

⑥ 就業の場所から他の就業の場所への移動
 複数就業者の事業場間の移動

⑦ 住居間の移動
 住居と就業場所との往復に先行し、または後続する住居間の移動は、厚生労働省令に定める要件に該当するものに限り、通勤災害として認められる。(単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動)

労働者災害補償保険法 第7条
3 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

 厚生労働省令で定める逸脱、中断の例外となる行為
① 日用品の購入その他これに準ずる行為
② 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
③ 選挙権の行使その他これに準ずる行為
④ 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
⑤ 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)


 ご静聴ありがとうございました。
個別具体的な状況により、業務災害・通勤災害と認められるかどうかの判断がなされます。
また、不認定となった場合、納得がいかなければ、不服申し立ての制度もあります。
ご不明なケースがありましたら、ご相談ください。
一緒に、対応を、検討しましょう!
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脳・心臓疾患と精神障害事案の労災認定と裁判例の傾向

2016-03-16 | 書記長社労士 労働災害

 昨日、東京社労士会大田支部主催(臨海統括支部共催)研修会@大田区民ホールアプリコ。
研修は、第一部は、「脳・心臓疾患・精神障害事案の労災認定について」、講師は高橋健先生。


 講演の内容は、1.業務上疾病の位置づけと認定基準、2.脳・心臓疾患、精神障害事案の監督署の調査の流れ、3.脳・心臓疾患、精神障害の労災認定基準、4.労働基準監督署による労働時間のとりまとめ、5.増加する脳・心臓疾患、精神障害の労災申請・認定件数、6.その他諸問題。


 第二部は、「企業の安全配慮義務に関する裁判例の傾向について」、講師は岡崎教行先生。
講演の内容は、第1 はじめに(本日の主眼)、第2 労災民訴の構造、第3 脳・心臓疾患による死亡の場合、第4 精神疾患による自殺の場合 第5 まとめ(パネルディスカッションへの導入を兼ねて)。

 厚生労働省勤務時代、労働基準監督署で主に労災補償分野で勤務され退職後、社労士として活躍されている高橋先生と、使用者側弁護士として最前線で活躍されている若手実力派のおかざえもん、いや岡崎弁護士のタッグは、実務的であって最強の講演だった(岡崎弁護士曰く最強とは「渋い2人」だというが、それに対してはオカザエモンに関して全面的に否認します)。


 高橋先生のパートでは、「労働基準監督署による労働時間のとりまとめ」で衝撃の事実があった。
労働時間のとりまとめの方法は、
・労働時間集計表によって集計
・1週間ごとに実労働時間を集計して1週間単位の総労働時間数とする
・1週間単位の総労働時間数から40時間を引いて、時間外労働時間数とする
・以上による4週間と2日間の総労働時間数と時間外労働時間数を(それぞれ)合計 ← 賃金計算期間だとか、歴月だとかで集計しないということがポイント。
そして「発症日」について、脳・心臓疾患の場合は特定できるが、精神障害の場合は、たとえば3月上旬に発症していた場合は、3月1日から10日まですべてを発症日と仮定するとのこと。
で、精神事案における恒常的長時間労働は、その10の発症日前を30日ずつさかのぼって集計されたすべての月(膨大な数になる)の中の時間外労働時間をみるとのこと。
だから、労災の調査によって確認された時間外労働時間と、時間外手当を支給すべき時間外労働は同一ではなく、賃金計算期間や歴月の範囲で「今月、時間外多いからそろそろ抑えろ」という管理では、労災認定の際には役に立たない可能性があるということになる。


 また、岡崎弁護士のパートでは、脳・心臓疾患による死亡の場合と精神疾患による自殺の場合、因果関係の判断基準は労災認定基準に基づいて判断するのが一般的であり、損害賠償請求訴訟でも、労災認定がされた場合、同様の結論になるのがほとんどとのこと、ということに注目した。

 私鉄総連の組合員で考えれば、特にバス職場が要員不足で、乗合バス事業ではダイヤに穴を開けることは出来ず、貸切バスでは昨今の需要増と安全対策で、足らない人員の中でやりくりが厳しくて、長時間労働が恒常化している。この問題が重くのしかかってくる。
したがって、この講演の内容を受け、安全配慮義務と回避義務をいかに尽くすのか、そこにつきるということ、そしていかに、組合員を守り、雇用を守り、公共交通を守るのか、をどう伝えていくか、ということを危機感持って考えさせられた。
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いつどこで蚊に刺されたかをちゃんと証明すればいいのだな

2014-09-03 | 書記長社労士 労働災害
 デング熱、とうとう大阪にまで飛び火してしまった(;゜ロ゜)
大阪の感染者も、やはり東京の代々木公園に行ったってこと、代々木公園、恐るべし!


 デング熱というと、3年連続世界一になったトッププロサーファー、アンディ・アイアン(Andy Irons)がプエルトリコでの試合の時に感染し、試合出場はやめ、急遽、自宅のあるハワイへ帰る途中に急逝したってことを思い出す。
そのときに初めてデング熱っていう病気のことを知ったが、強靱な肉体を持った32歳のアンディの命を奪うようなデング熱の恐ろしさに当時(2010年11月2日)驚いたのだが…
しかし現在の日本での扱いでは(厚生労働大臣も言っていたが)、それほど心配することはないとのこと、ほんとうなんだろうか…。

 ところで、代々木公園で、蚊の駆除などをしている労働者(行政の人かな?委託された業者かな?)の方とか、それを取材しているマスコミのスタッフの人とかが、蚊に刺されてデング熱を発症したときに、労働災害が認められるかどうか、気になって気になって仕方が無いのだけど。
 
 業務上疾病、業務に起因することの明らかな疾病、労基法施行規則別表第1の2に例示されているのは
(1)業務上の負傷に起因する疾病
(2)物理的因子による疾病(潜水病、騒音による難聴など)
(3)身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、腱鞘炎など)
(4)化学物質等による疾病(化学物質に起因する呼吸器疾患・皮膚疾患、酸素欠乏症など)
(5)粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺と合併した疾病
(6)細菌、ウィルス等の病原体による疾病
(7)がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病(石綿業務による肺がん又は中皮腫など)
(8)長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病
(9)人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
(10)その他厚生労働大臣の指定する疾病
(11)その他業務に起因することの明らかな疾病
となっており、(6)を見るとデング熱の感染も業務上疾病として認められそうだが、業務起因性と業務遂行性がちゃんと証明できるかどうかがポイント。
ってことは「いつ、どこで蚊に刺されたか」をいかに証明するかだな。

【以下は労働局のサイトより】
 労働者に生じる疾病については、一般に多数の原因又は条件が競合しており、このような広義の条件の一つとして労働あるいは業務が関与することを完全に否定し得るものは極めて稀です。しかしながら、単にこのような条件関係があることをもって直ちに業務と疾病との間に因果関係を認めるのではなく、業務と疾病との間にいわゆる相当因果関係があると認められる場合にはじめて業務上疾病として取り扱われることになります。
 労災保険法による業務災害に関する保険給付は、労働基準法の規定に定める災害補償事由が生じた場合に行うものとされていますが、労働基準法における災害補償責任は事業主の過失の有無を問うことなく、事業主に課せられるものとされていること(無過失賠償責任)、また、罰則をもってその履行が担保されていること(労基法第119条第1号)、労災保険法における保険給付の原資は事業主の負担する保険料とされていること等から考えますと、労働者がり患した疾病の業務起因性は、明確で、かつ、妥当なものでなければならないことになります。また、業務により有害因子のばく露を受けることによって生体に何らかの反応が生じたとしても、これが直ちに労災保険給付の対象となるものではなく、医学上療養を要することが認められる疾病が生じた場合にはじめて労災保険給付の対象となります。
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労災隠しは犯罪です

2013-11-19 | 書記長社労士 労働災害

 「ダンダリン 労働基準監督官」の第7話は、「南三条(松坂)が指導係として凛と行動を共にするうちに“ダンダ化”しているのではないかと土手山(北村)ら監督課の面々の面々は心配する。そんな中、労働基準監督署に会社からの帰宅途中に歩道橋から転落死した英夫(大高洋夫・54)の息子・修司(中村倫也・26)と妻・恵子(朝加真由美・58)が労災保険について相談に訪れた。労災は必ず下りると言い切る南三条に、凛は一抹の不安を覚えていた。凛の不安は的中する。英夫は会社帰りに私用で寄り道をしていたことが判明し、労災は下りなかった。英夫の自宅を訪れると、英夫が頭痛を訴えていたことを知り、凛は「労働災害」の可能性を疑い…」という展開だった。


Q 仕事中にケガをしたのに、「元請けに迷惑がかかるから、健康保険で治療するように」と上司から言われたのですが、どうしたらよいでしょうか?
A 仕事中のケガでは健康保険は使えません。会社が認めてくれなくても労災保険の請求はできますので、労働基準監督署にご相談ください。

 厚生労働省の「お仕事での怪我は労災保険!」のリーフレットにこのようなQ&Aがあったが、しばらく前に、うちの弟がまさにこんな目に遭ってね~(^0^;)

「誰の弟に喧嘩売っとるねん!」

 防水工事の現場で弟が重量物を運搬中に乾ききっていない塗装面を踏んでしまい転倒、手首を骨折、折れた骨が皮膚を突き破ってしまったという事故。
弟の雇い主は孫請けだったのだけど、この弟の業務上災害(手首の骨折)に対して、健康保険を使用させた上で(実は健康保険も協会けんぽには入れてくれなかったようで、弟の国民健康保険だった)、会社は独自で入っている損害保険からの給付を弟に渡しただけ。
労災の手続きはしないうえに、「うちは会社のお金で保険に入ってあげてここまでちゃんと面倒をみてあげている、感謝しなさい」という趣旨のことを、手術前の弟と付き添っていた母に言っていたとのこと。

 なんでやねん。
俺が大阪府茨木市にある弟の会社へしずしずと訪問、名刺は出さずに低姿勢で「労災申請してください」とご相談に行ったのだが、「うちは出来るだけのことはしている、元請けの会社には相談したが、『うちは知らん、自分とこでちゃんとしないと、これからあなたとこには仕事は渡せない』と言われた、うちも困っているのだ」と言うので、「では元請けにご相談に上がります」(元請けは、手術前の弟のところにお見舞いに来たときに名刺を置いて帰っていた)、といったら「うちは出来るだけのことはした、好きなようにしてくれ」と開き直られてしまった。

 次に大阪市生野区の、その元請(実はそこは下請け)会社に訪問。
「労災申請してください」とご相談させていただいたら、「下請けの会社にはちゃんとしろと言ってある、ちゃんとしないならうちから再度ちゃんとするように言う、そんないい加減な会社にはこれから仕事を渡せない」と言う。
「いやいや、なんも下請けの会社の責任だとか、御社の責任だとか言っていない、下請けの会社が損害保険で支払ってくれた足らずの分を労災申請してくれたらそれでいいのだ」というと、「実は元請けは東京の会社で、うちは下請け、元請には一応相談したが、『知らない、責任保って処理しろ』と言われたのでうちも困っているのだ、だからうちとしてはこれ以上どうしようもないので孫請けに相談してくれ」とのたまう。

 実は弟の事故を知った直後に、自分は保険関係の成立状況はすでに労働基準監督署で調べてあったので、「元請けはどこか知ってますよ、おたくの立場を気にして交渉してるのが面倒くさくなってきたから、それなら『労災隠し』として労働基準監督署に告発します、お宅にはお手間は取らせません」と言い切ったら、「ちょっと考えさせてください」とのこと。

 「いやいや、考えてもらわなくていいです、労働基準監督署に行ってきます」
「いやいや、時間を下さい(__;)」

 しばらくすると電話があった、「うちの顧問の社労士に相談した」(←おいおい、胡桃沢みたいな社労士か?)。
「立て替えていただいた医療費と、休業補償給付相当分は、うちと孫請けで折半してお支払いする、ただし孫請けの損害保険から支給された分は差し引かせていただく。なお休業補償給付相当分は100分の100で計算させていただくので矛を収めて欲しい…監督署には『ちゃんとしてもらった』と言っておいて欲しいがいかがでしょうか」

 孫請け、下請けの悲哀とはまさにこのことだ。
孫請け、下請け、元請けの会社の名前を、いや、せめて元請けの会社名を、この際だからこのブログで公表しようかとも思ったが、ま、そこまでしなくてもいいか。

 というわけでダンダリンの第7話を見ながらこんなこと思い出した。
第7話の視聴率は7.2%、第6話の7.6%より下がっちゃった、でもほんま裏番組のリーガルハイより、ダンダリンの方がお勉強になるよ~、視聴率アップしますように!
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過労死認定基準と時間外労働は違うのだって知ってた?

2013-07-23 | 書記長社労士 労働災害

 モンベルの地下に出来たモンベルプロデュースのCAFE「Harvesterrace」。
ガッパオライスというタイ風バジルごはん。お上品やけど美味しかった。サラダとピクルスもたくさん付いていてヘルシーやし。


 今日は鎌倉の花火大会を肴にして飲もうと企んでいたのに、午後から関東は激しい雷雨で、あっちで洪水警報、こっちで落雷による電車運休・・・。
こりゃ花火大会はないだろうと鎌倉に遊びに行くのを諦めたら、なんと予定通り花火大会開催・・・
「来たら良かったのに~」って連絡が来たけど・・・ΣΣ┗(|||`□´|||;;)┛ガーン!!
銚子電鉄のぬれ煎餅、写真と記事は関係ありません。

 で、このあいだの相馬塾後の懇親会にて、「過労死認定基準と時間外労働は違うのだ」ということを知った・・・(゜Д゜;)

 労働基準法で、法定労働時間を超える残業として、2割5分以上の割増賃金を支払わなくてはならないのは、1日につき8時間を超えた時間と、週において40時間を超えた労働に対してとなっている。

 一方、過労死の認定する際の目安(平成13年12月12日基発第1063号)としては「発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、あるいは、発症前2か月ないし6か月間にわたって1ヶ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には業務と発症との間の関連性が強い」とされている。
この場合の時間外労働の計算については、1日8時間超についての時間はカウントせず、あくまでも週の労働時間で40時間を超えた時間について合算するということなのだ。

 このことについては労働安全衛生規則に根拠条文がある。

労働安全衛生規則 第一節の三 面接指導等
(面接指導の対象となる労働者の要件等)第52条の2 法第66条の8第1項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前1月以内に面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて面接指導を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。
2 前項の超えた時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行わなければならない


 「1週間当たり40時間を超えて」なのだ。

 この「一定時間を超える長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導」が導入された労働安全衛生法の改正の際の通達(平成18年2月24日基発第0224003号)では、

第1項の「休憩時間を除き一週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間」(以下「時間外・休日労働時間」という。)について、1月当たりの時間外・休日労働時間の算定は、次の式により行うこと。
1か月の総労働時間数(労働時間数+延長時間数+休日労働時間数)-(計算期間(1か月間)の総暦日数/7)×40
この算定方法は、特例措置対象事業場(週44時間労働制)、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している事業場についても同様であること。


 と、されており、「休日労働」も含んだ1カ月の総労働時間をもとにされるということにも注意が必要。

 1カ月単位の変形労働時間制を採用していて繁忙期などに長時間、時間外労働をさせた場合、1日→1週間→変形期間により時間外労働を算出していくと、トータルとしてかなりの時間外労働時間数になるのだけど、この安全衛生法の方法で計算すると少なくなるってことになるのだ。
う~ん、今まで、思いっきり間違っていた~( ̄。 ̄;)
研修会後の懇親会では、馬鹿話ばっかやっているようで、こうやって有益な情報収集も出来るのだ~( ^_^)/□☆□\(^_^ )
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仕事っぽいゴルフの時に怪我したら労災になるのか

2012-12-06 | 書記長社労士 労働災害

 機関会議で正式に就任の承認がされました。舞台の上で挨拶しているところ、松井さんが撮ってくれた。

 仕事の付き合いで、休日にゴルフに行ったときに怪我をした場合労働災害保険では業務上災害として認められるか、との質問があった。
お酒などによる接待の場合は「単なる懇親を主とする宴会は、その席において何らかの業務の話題があり、また業務の円滑な運用に寄与するものがあったとしてもその席に出席することは、特命によって宴会の準備等を命じられたもの、又は、出席者の送迎に当たる自動車運転者等のほかは原則としてこれを業務とみることはできない」とされる行政解釈はあるが、ゴルフについてもあるのかなあ、と思い調べてみたら、こんな判例を見つけた。

 高崎労基署事件(榛麓会ゴルフコンペ事件)【前橋地裁判昭50.6.24】で、「取引会社およびその協力会社の経営幹部により構成される団体のゴルフコンペに事業主の命により出席する途中の交通事故死が業務上か否か」が争われた事例。

 「親睦目的の会合ではあつても、右会(榛麓会ゴルフコンペ)への出席が業務の追行と認められる場合もあることを否定できないが、しかし、そのためには、右出席が、単に事業主の通常の命令によつてなされ、あるいは出席費用が、事業主より、出張旅費として支払われる等の事情があるのみではたりず、右出席が、事業運営上緊要なものと認められ、かつ事業主の積極的特命によつてなされたと認められるものでなければならない」

 このケースの場合では、「出席が、同人の命令によつてなされ、あるいは出席費用が出張旅費あるいは交際費として支払われたことは認められる」が、「B商事の代表取締役C自身が、この会の例会の年間開催回数をはつきり覚えていないこと、またA会の設立目的も明確に意識していない」というような会であり、「この会の例会への出席がB商事の事業の運営に緊要である」とは認められないし、かつ、「この会への出席が代表取締役であるC久夫の積極的特命によつて行われた」とまでは、とうてい認めることができないとして、業務上ではないと判断された。

 判決ではさらに、このようなことも言われている。

 「A会の例会を開催することにより、人事異動の報告や、営業方針、生産方針の変化等について出席した会員の間で互に情報を交換する機会をもつこととなり、ひいては、それによつて取引の円滑をはかることができる利点のあることは否定できないけれども、右利点は、例会開催の付随的利益にすぎず、それがA会の本来の目的ではない以上、右会の性格は、親睦団体の域を出ないものとの先の判断をくつがえすことができず、仮にそうでないとすると、単なる接待のためにする宴会の類のものも、広く、業務の追行と解されることになり、そうなると、その出席途上での死傷も業務上のものであるとして、労働者災害補償保険法の規定によつて補償を求めることができることとなろうが、このようなことは、社会通念上許されるところではない。

 というわけで、「営業員の接待ゴルフによって、今後の受注が有利となるというような抽象的な意義付けで行なわれるものは業務外」、「きずなを強める、懇親を深める、顔つなぎ」などの目的は当然ながら業務外となるのだ。
仕事っぽいゴルフの時に怪我をしても労災にはならないので、みなさん気をつけましょう。
で、怪我して病院に行って、「仕事のゴルフで怪我をした」などと受診理由を病院に言ってしまったりしたら、協会けんぽの健康保険も使えなくなってしまうこともあるかもしれないので、あくまでも「遊びのゴルフで怪我をした」と言うことにしておいた方がいいと思う。
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KYT 「今日もよ~く食べて飲んだ~」ではないよ

2012-10-18 | 書記長社労士 労働災害
 新聞をまだ取っていない、販促の人が来たらいろいろと交渉しようと思っているけど未だに来ない。
そろそろ他の手段で契約しようかなあ、新聞好きの自分としては朝も夜も、かなり寂しい。
そんなことを思っていたら、今朝、駅で朝刊を無料配布していた、やっぱ新聞は要るなと再認識(ただし新聞の情報はこれっぽっちも信用していない、気にしなければならないことのインデックスとしての媒体だ、あくまで)


 こないだ新立川での仕事の帰り、南武線に乗っていたら、こんな車内広告があった。
KYT(危険予知訓練 工事や製造などの作業に従事する作業者が、事故や災害を未然に防ぐことを目的に、その作業に潜む危険を予想し、指摘しあう訓練のこと、危険予知トレーニングの頭文字を取ってKYT)に関しての問題。
一度考えてみて。
電車内って暇だったら広告をじっくり読んでしまうから、こういう役立ち広告はいいなあ、こういうので労働安全衛生ってのを働く人みんなが意識してくれるようになったら、もっともっと労働災害が減るはずだ。(この問題の回答はこちら→メイテックネクストのサイト、この広告の残念なことはどれくらいの人が回答を読むところまで行くのかということ、せめて5つの回答のうちいくつかはこの広告の中で明かして欲しかった)

 KYT(危険予知訓練)の手法にはいろいろあるが、最も一般的なのは4ラウンド法。
この図のように、まず、職場や作業現場等の日常の風景の写真やイラスト図を提示し、
現状把握(どんな危険が、ひそんでいるか)、本質追究(危険のポイントを整理する)、対策樹立(問題点について、改善策、解決策などを検討する)、目標設定(その解決を具体的に実施する)

 ここのサイトを見たら後2つの設問があった、この3つの設問を体験して,自分と同僚の仕事の様々な場面で、潜在する危険を考え、作業の前に対処しておいて、安全にお仕事をするという癖を付けとこう。
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ブラック企業

2012-04-06 | 書記長社労士 労働災害
 「“正社員”餌に残業100時間 『マジで無理…』首つり」というショッキングな見出しが3月18日の産経新聞にあった。
本日の朝日新聞の生活面には「『非正規』労働を考える」という特集記事に「正社員でも使い捨て」「若者搾取する 企業見抜け」「悲惨な環境で将来を奪うな」という見出しと、本文中に「若者を搾取する、いわゆる『ブラック企業』を見分けるポイントは?」「まず、離職率が高い企業は怪しい企業規模と比べて採用数が大幅に多いところも、社員がある程度辞めていくことを前提にしていると思われる。・・・」という記述が。

 先日、このブログでも紹介した「社長は労働法をこう使え!」(向井蘭弁護士著)の中にもブラック企業に触れてあって、第3章「『もめる会社』は決まっている」でブラック企業というのは「労働法違反であることを知りながら、確信犯的に違法行為を繰り返し、従業員に劣悪な労働環境で働かせる使用者」を指すとし、しかし「ブラック企業はもめにくい」と書かれている(なぜ?と思った方は本を読んでくださいww)。

 まともな企業では「メンタルヘルス対策」や「パワハラ対策」が今もっとも重要な課題であるにも関わらず、一方では平気で若者を使い潰す企業が増加しているというお話し。
いや、まともな企業で「メンタルヘルス対策」や「パワハラ対策」を考えなくてはならないということも、実は根っこは同じなのか。
若者を育てていくという、将来の生産性や国際競争力の向上という中長期的な視点を持つ余裕が企業にも社会にもなくなってしまったのか、今の日本。
労使紛争解決の為の機関や裁判所や、そして労働組合が、ようは「人としての尊厳」を踏みにじられた結果を争うことに忙しいってのは、ほんとうに問題だ。
なんとかしなくちゃ、と焦ってはいるけど、頼みにしていた「コンクリートから人へ」の民主党は、完全にコンクリートに回帰してしまっているし・・・≧(´▽`)≦アハハハ・・・(|||_ _)ハハ...

 次女が、短大を卒業して就職した保育園を3月末で退職した。
保育士という仕事には誇りとやりがいは持って3年勤めてきたが、こんな生活にはもう我慢が出来ないというのが理由。
家族の中で一番早くに出勤する日が多く、しかし帰宅するのは家族の中でほぼ毎日一番最後、家族の中では職場が一番近いにも拘わらず。
休日も休暇も家族の中で一番少なく、たまに早く帰ってきたら深夜までイベント・行事の準備や持ち帰った残務を妻に手伝って貰いながらこなす、そしてほとんどの休みは眠ることに費やす。
3年前、同期で入園した10人は、自分たちが3月末に辞めたので結局は3人しか残っていないそうで、毎年毎年たくさんの新規採用はあるが、結局はすぐに順番に辞めていくので人材補充とはなっていなかったそうだ、自分たちの採用の時に「他の保育園と比較してもずいぶんたくさん採用する保育園だなあ」の疑問を感じたということの答えは働きだしてすぐに理解できたという、労働環境が劣悪すぎるのだ。
先輩たちが園を去るときに経営者に対して改善を訴えてきたようだが、その約束は3日ともたない。

 この3年間、親である自分としては、新卒採用だから今後の転職市場のことを考えると「3年間」は石に齧り付いてでも我慢して欲しいという常識的な思いと、しかし心や体に異変が起こって欲しくないから我慢する必要はないという「甘い」親心と、そして、そんなブラックな経営者に「わからせなあかん、いてもうたろか!」という正義感が交錯してきた、が実際は手をこまねいてきただけだ。
せめて「決められたシフトの時間で仕事を放って帰ってくればいい」と何度も言ってきたが、そのたびに娘は「子供の安全を確保する手が足らなくなる」「子供にとって行事やイベントはその時だけの貴重な体験だ」などととにかく「子供に罪はない」の一点張り、責任感を誉めてやりたいと思いつつも「いやいや、お前も俺たちにとっては貴重で大切な子だ」と複雑な心境。

 退職のはなむけに、同僚が作ってくれた園での生活をまとめたDVDや父兄からの寄せ書きを見せて貰ったが、子供に向けた娘の笑顔が親としては救いだ。
以前にこのブログで取り上げた「保母退職後の自殺、労災に認定」というようなことにならなくてよかった、とだけ親の身勝手で思いたい。
しばらくゆっくりと、消耗しきった心に充電すればいい。
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「S」だらけ

2011-12-12 | 書記長社労士 労働災害

 昨日~今日とうちの労組の高齢者退職者の会(いわゆる労組のOB会だ)の一泊での定期総会に来賓として付いてきた。
昨日の総会、宴会、そしてそれぞれの部屋での懇親は、おそらくよく覚えていないけど無事に終了、朝起きたらボロ雑巾一丁上がりだった。
で、今日は社会見学を二箇所、ひとつは新日本製鐵名古屋製鉄所さんともうひとつは中部電力新名古屋火力発電所さんの施設見学だ。

 事業外労働がほとんどの運輸の職場だから、労働災害に関してあまり意識が高くない労働組合の人間だから、今日のように製造業の職場に行かせて貰うと、労働安全衛生に対する意識の高さに驚いてしまうし、そして取り組みの高度さに敬意を表して止まない。
今日の新日本製鐵名古屋製鉄所さんでは、ほんとうにアイデアの限りを尽くしてありとあらゆる手が打たれていて、たいへん勉強になった。
世界をも凌駕するほどの製品の質の追求と、労働災害を起こさない安全な職場の追求が、きっと同じ価値観になっているのだろうとまでに感じる。

 一つ気になったスローガンが掲げてあった、「6S」だ、職場環境の維持改善で用いられるスローガンの5Sまでは知っている、6Sでは何のSが一つ増えたのだ?
案内してくださった広報の方に質問すると、6Sとは「整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ、習慣化ともいう)、作法」だそうで、そうか、5Sに作法が加わったのだ。
「作法」が確立されれば、当たり前が当たり前にできるということなのだろう。
「整理」とは文字通りいつもきっちりと片づけられた職場であり、「整頓」とはいつも全てのモノが使いやすい職場であり、「清掃」すると職場やものへの愛着が生まれ、「清潔」とは整理・整頓・清掃を楽にすることまたは維持することで、「躾」とは、決められたとおり正しく実行できるよう習慣づけられること、そして「作法」なのだ。
この6Sというのは同時に目指すということではなくて、2S→3S→4S→5Sと職場や社員が進化していき、そして6Sの境地に達するというの正しいのだと思う。
そもそも4Sとは、職場の無駄をなくしすっきりとし、そして付加価値を生み出していくもので、そのような作業習慣がつけば労働安全衛生的にも良い効果が現れるのだということなんだけど、しかし躾や作法まで会社・職場で取り組まなくてはならないのか・・・とは素朴な疑問。

 しかし製鉄会社の中にいると、山崎豊子の「華麗なる一族」のイメージに頭の中が占領されてしまう、あ~もう一回あの本読もうっと!
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労災保険に中小事業主として特別加入している執行委員長の・・・

2011-10-20 | 書記長社労士 労働災害
 母が断捨離したそうだ、「いつ死んでもいいように」がその理由だけど、とんでもないほどむちゃくちゃ元気だ(微笑)。
その断捨離の一環として、東京オリンピックの1000円銀貨、大阪万博の記念硬貨、天皇在位?周年記念硬貨、つくば万博の記念硬貨、大阪花博の記念硬貨・・・などなどを郵便局に持って行って、使える通貨に交換したんだそうだ(もちろん等価交換)・・・なんでやねんっΣΣ┏(_□_:)┓iii
若い頃、何度くすねてコインショップに持って行こうかと思い悩んだかわからなかったが、なんとか踏みとどまってきたのに・・・どうせならあんとき売っておけば良かった(T∇T)アハハ・・・(|||_ _)ハハ・・・

 先日、とある社会保険労務士受験校の労災保険のテキストを見せて貰っているときに「株主総会で社長が怪我をしたら・・・」というコラム記事を見つけた。

 労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度だが、労働者以外の方のうち、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方について特別に任意加入を認めているのが特別加入制度で、中小企業においては事業主自らが労働者と一緒に現場で業務に従事することも多いと考えられ、希望する事業主には労災保険の保護を与えられるべきという考え方に基づいている。
したがって、事業主としての立場で行われる行為を労災の保護の対象外とされている。

 「株主総会で議長を務める社長が株主から殴られて怪我をする」というケースでは、株主総会を運営する行為は、事業主としての立場で行われる行為であるから、その過程で負傷しても、業務災害としては認定されず、労災保険の適用はないと記載されていた。

ΣΣ┏(_□_:)┓iii

 じゃあさ、労災保険に特別加入している労働組合専従の執行委員長が、執行委員長名で招集する大会や委員会なんかで、その執行委員長が怪我をした場合ってどうなるのさ・・・。
友人の社労士(講師)の見解は、「そりゃ業務災害として認定されんでしょ、この株主総会の解釈と一緒でしょ」とのこと。
やばい、ものすごく気を付けなきゃ・・・。

 ちなみに特別加入の中小事業主の業務災害の認定は、就業中の災害であって次の①~⑦のいずれかに該当した場合とされている。(通勤災害については、一般労働者と同様に扱われる)

☆ 申請書別紙の「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間内に行われる業務及びこれに直接附帯する行為を行う場合(ただし、その行為が事業主の立場において行われる業務を除きます。)
☆ 労働者の時間外労働又は休日労働に応じて就業する場合
☆ 労働者の就業時間に接続して業務の準備又は後始末を中小事業主等のみで行う場合
☆ 労働者の就業時間内における事業場施設の利用中及び事業場施設内で行動中の場合
☆ 事業の運営のために直接必要な業務(事業主の立場において行われる業務を除きます。)のために出張する場合
☆ 通勤途上で次に掲げる場合
① 事業主が労働者のために用意した通勤用のマイクロバス等を利用している場合
② 台風や火災のような突発事故等による予定外の緊急出勤の途上にある場合
☆ 事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者を伴って出席する場合
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地震とか津波とかに、仕事中に被災して怪我とかしたら、労災になるの?

2011-08-02 | 書記長社労士 労働災害
 「地震とか津波とかに、仕事中に被災して怪我とかしたら、労災になるの?」と尋ねられた。
専門的な言葉でこの質問を言い換えると、「天災地変による災害に際しての業務上外の判断についてどうなっているのか?」ということか。ハハハ・・・キュウニムズカシイσ(--#)アタマイターッ

 基本的には、労働災害の判断では、仕事中に天災地変(自然界に起こるさまざまな災い。暴風・地震・落雷・洪水などの災害のこと。火事親父は含まない)によって負傷・死亡したからといっても「はい、労災です」とはならない。
難しい言葉で説明すれば「労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められる場合をいい、いわゆる天災地変による災害の場合にはたとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的に業務起因性は認められない」とされているからだ。
だって、労働者災害保険法による補償というのは、そもそもそこで働く人が仕事中に負傷などしたときに、その負傷などの原因が事業主(会社)の責任であった場合、賠償しなくてはならないんだけど、でもその賠償は高額であったり長期にわたることもあるから、それはちょっと事業主(会社)にとっては「たいへんでしょう」ということで、労災への加入と保険料の納付を義務付けて、その賠償を国が肩代わりしてあげましょうというものだ。
だから地震とか津波とかの「天災地変」を、労働基準法や労災で言う事業主(会社)の責任だとしてしまって賠償責任を負わせてしまったら、ちょっとそれは違うでしょ、事業主さんが可愛そうでしょ、というような考え方なのだ。
【伊豆半島沖地震に際して発生した災害の業務上外について(昭和49.10.25基収2950号)】

 でも、天災地変による災害(地震とか津波とかに、仕事中に被災して怪我とかしたら)の場合、その怪我との原因が、もともと危険である業務や作業や施設で働いていて、たまたまその危険が、地震や津波などによって、事故につながったのだと判断されれば、業務上だと判断される(労災になる)のだ。
またまた難しい言葉で説明すれば、「業務遂行中に、地震や津波により建物が倒壊したこと等が原因で被災した場合にあっては、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものとして業務災害として差し支えない」ということだ。
【兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」(事務連絡第4号平成7年1月30日)】

 今回の「東北地方太平洋沖地震」についても、「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について(平成23.3.11基労発0311第9号)」という通達が出されていて、「今回の地震による業務上外の考え方については、平成7年1月30日付け『兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について』に基づき、業務上外及び通勤上外の判断を行って差し支えない。」としてあって、さらに「個々の労災保険給付請求事案についての業務上外等の判断に当たっては、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること。」ともわざわざ念押しをしている。
「地震や津波とかの怪我とかだからといって、ちゃんと中身を聞かないで、門前払いしたらあかんよ」ということだ。

 なおこの判断は、通勤途上災害にも同様に適用される。

詳しくはここを参照(文章難しいけど、具体的な例も掲載されているよ)→「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について(基労補発0311第9号平成23年3月11日)

 ちなみに労働基準法にある「天災事変」と、ここでいう「天災地変」は違った意味だから、混同しないように。(昔、このブログでも解説したことがある→「天災地変と天災事変」2009-08-12の記事
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熱中症は労災やからね!

2010-09-05 | 書記長社労士 労働災害

 思っても見なかったが、台風9号のうねりが東海地方にも届いたようだ、昨日の午後からサイズアップしたのはそのうねりのせいだったのだ。う~ん、帰ってこないでビーチに残るべきだった・・・ΣΣ┗(|||`□´|||;;)┛ガーン!!今日も暑い、お昼前に母を見舞いに行ったけど、ほんとに死にそうなくらい暑かった、この炎天下でサッカーの試合をしているのを見掛けたが、熱中症にならないようにね。昨日はビーチでBBQしながら俺たちも熱中症になるかもという感じがしたもん。昨日一緒だった友人は建設関係の仕事をしているけど、やはり下請け・孫請けの会社では、熱中症は労災として届けるのは「御法度」となっているようだ。労災隠しは下請け・孫請けの悲哀だ。実は暫く前にうちの弟も労働災害に遭ったのだが、同じく下請け・孫請けの悲哀から、労働災害は使わずに、労働者災害保険とは会社が別に加入している私的損害保険を使って保証をして貰っている(へりくだる必要はないが)。今のところはきちっと労働災害と同等の対応をして貰っているが、おかしな事になるのだったら、自分がちゃんとしてやらないけなくなる。

 熱中症が労働災害の対象となる疾病だという根拠は、労働基準法施行規則第35条別表1の2で、「業務上の疾病の範囲」の第2項第8号「暑熱な場所における業務による熱中症」、ここにある。熱中症の認定要件はおおむね次のとおり。
 【一般的認定要件】
① 業務上の突発的又はその発生状態を時間的、場所的に明確にし得る原因が存在すること
② 当該原因の性質、強度、これが身体に作用した部位、災害発生後発病までの時間的間隔等から災害と疾病との間に因果関係が認められること
③ 業務に起因しない他の原因により発病(又は増悪)したものでないこと
 【医学的診断要件】
① 作業条件及び温湿度条件等の把握
② 一般症状の視診(けいれん、意識障害等)及び体温の測定
③ 作業中に発生した頭蓋内出血、脳貧血、てんかん等による意識障害等との鑑別診断

 また、昭26.11.17基災収第3196号にある通達には、夏季における屋外労働者の日射病が業務上疾病に該当するか否かについては、「作業環境、労働時間、作業内容、本人の身体の状況及び被服の状況その他作業場の温湿度等の総合的判断により決定されるべきものである。」とある。とにかく熱中症は労災の対象となる疾病なのだ!ε-(=`ω´=)凸テメェ!!


 というわけで今から旅に出ます。この旅の模様は後日詳しく記事にしますヾ(^_^) byebye!!
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熱中症は個人的な問題ではなくて、労働安全衛生上の問題

2010-07-26 | 書記長社労士 労働災害
 うちの娘の同僚の友だちの彼氏が、屋外作業に従事する仕事をしていたんだそうだが熱中症に罹患、意識不明の状態で救急搬送されたが、現状、内蔵が煮立っているような状態で回復の見込みがないそうだ。熱中症というのは軽度なものから「熱失神」「熱痙攣」「熱疲労」「熱射病」と分類されるそうだが、もっとも重篤な熱射病は視床下部の温熱中枢まで障害されたときに、体温調節中枢が破綻しているために体温が41℃以上にもなり、高度の意識障害が生じ、発汗は見られず、皮膚は乾燥しているというような症状となり、意識障害、とくに昏睡が4時間以上続いて回復しない場合や播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を合併した場合、予後は不良なんだそうだ・・・。

 随分以前に、このブログで熱中症について取り上げた(死を招く熱中症を防げ!!-2007/08/20-)が、再び書く。労働安全衛生の観点からも職場では熱中症の予防に関して、積極的に対策を取る必要がある。具体的な予防対策としては、労働者各人の健康管理の観点から
★ 糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等は熱中症の発症に影響を与えるおそれのあることから、健康診断の実施、異常所見に対する医師等の意見の聴取、当該意見を勘案した就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置の徹底を図る。
★ 睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、日常の健康管理の指導、必要に応じ健康相談の実施。
★ 作業開始前、作業中の巡視による労働者の健康状態の確認等の実施(発生状況では一般的には午後1~2時に多い傾向があるが、労働災害としては午後、特に16時頃の発生が多い)。
★ 救急処置を含めた作業管理者、労働者へ安全衛生教育。
 作業環境・作業状況の観点から
★ 熱中症が生じやすい環境では身体作業強度が高い作業を避けることなどの対策と、計画的に、熱への順化期間の実施。
★ 自覚症状の有無にかかわらず水分・塩分の作業前後及び作業中の定期的な摂取の徹底、摂取を確認するためのチェックシートの作成、巡視などの実施。
★ 透湿性及び通気性の良い服装等を着用。
★ 作業場所の日射を防ぐ、通風を確保する、扇風機の風を作業場所へ向ける、スポット冷房する冷房等による作業環境の改善、休憩場所の整備等の実施。
★ 発症時の早期発見のため、複数作業の徹底。
 屋外作業で熱中症が頻発しているようで、実はそうでもないから注意が必要。平成18年から21年までの大阪府内の職場における熱中症の休業4日以上の死傷発生状況を見てみると、やはり建設業22名(うち死亡者3)と多いのだけど、次に多いのが運輸交通業(鉄道・軌道・水運・航空業、路旅客運送業、道路貨物運送業)で10名(1)、製造業で9名、接客娯楽業と清掃業(ビルメン業)、派遣業が6名、商業4名、警備業3名、貨物取扱業2名、その他9名となっている。この程度の統計では、傾向など分析できない、ある意味、全ての業種で熱中症による労働災害は発生する可能性があると思っていた方がいいのだろう。とにかく熱中症は個人的な問題ではなくて、労働安全衛生上の問題だとは認識しなければいけない。

 昔も日本は暑かったのだろうけど、今のようなアスファルト・コンクリートジャングルでなくって水分を含んだ土や緑の地面が多く、エアコンや車などの熱放射するものも少なかったのだろうなあ。しみじみ、便利や快適の見返りに得ているものの、リスクについて考えてしまうなあ。
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なんでもっと早く請求しなかったのかな?

2010-04-15 | 書記長社労士 労働災害
 最近なぜか職場でカビパラと呼ばれている書記長社労士です、こんにちは。

運転士の遺族が労災申請進める 尼崎JR脱線事故(共同通信) - goo ニュース
 05年4月の尼崎JR脱線事故で死亡した高見隆二郎運転士=当時(23)=の遺族が、天満労働基準監督署(大阪市)に労災認定を申請する手続きを進めていたことが14日、関係者への取材で分かった。労災の請求時効は5年で、今年4月が期限。同労基署は「申請があったかどうかは個人情報なので言えない」としているが、労災が認められれば遺族給付が支給される。

 労働者災害補償保険法には、労働者の故意や故意の犯罪行為・重過失の事故に関して「給付制限」を規定している。
第12条の2の2 労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
2 労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

 このJR脱線事故の運転士には、鉄道運転士としては「重過失」があったと思われるけど労働者としては過失があったのかなかったのか、もし労働者として重過失があったとされたなら(そうは思わないが)、労災保険法第12条の2の2の第2項に該当すると思うのだけど、この項により支給制限されるのは、「休業補償給付・休業給付、傷病補償年金・傷病年金、障害補償給付・障害給付なので、遺族が請求している「遺族補償年金」には支給制限が掛からない。
だからこの尼崎JR脱線事故の遺族には、当然に遺族補償年金の支給は認定されるだろう。
で、この遺族補償年金に関して、次に問題になるのは、労災保険法第31条で規定されている「特別の費用徴収」がどうなるのかなということ。
これは、当該労働災害の事故が、労働者に無関係であり事業主に責任があるような場合には、労働者自身の保険給付を制限するわけにいかないので、事故の責任の根本原因である事業主から特別の費用徴収(この「特別」というのは通常の保険料徴収に対しての特別)をおこなうための規定。

第31条 政府は、次の各号のいずれかに該当する事故について保険給付を行つたときは、厚生労働省令で定めるところにより、【中略】その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。
【1.2は略】3.事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故

 もしこの「特別の費用徴収」の3に該当するとされると、保険給付の額に相当する額の30%に相当する額が、事業主であるJR西日本から徴収されることになる。(上限額はある、「労基法79条で定める価額の限度で」)
しかしどうして時効ギリギリに迫っての申請になったのだろう。
遺族の方々が申請を固辞されていたのか?
それとも逡巡されていたのだろうか?
もしかしたら、JR西日本がこの「特別の費用徴収」を支払うのが嫌で、申請を妨害していたのだろうか?(←ってのは考えすぎ?)

【ここから追記】 今日は社労士受験仲間たち「Team Daiei」の飲み会がちょうどあって、この記事についていろいろと教えていただいたので、一部記事を改訂した。
そしてコンメンタールを示していただいて意見をいただいた。

31条の3について
「事業主(事業主に代わって危害防止に関する事項を管理する責任を有する者を含む)が、次のⅠ、Ⅱ、Ⅲの一に該当する場合に生じた事故である。」
Ⅰ 法令に危害防止のための直接的かつ具体的な措置が規定されている場合に、事業主が当該規定に明白に違反したため、事故を発生させたと認められるとき。
Ⅱ 法令に危害防止のための直接的措置が規定されているが、その規定する措置が具体性に欠けている場合に、事業主が監督行政より具体的措置について指示を受け、その措置を講ずることを怠ったために事故を発生させたと認められたとき。
Ⅲ 法令に危害防止のための措置が規定されていないが、事故発生の危険が明白かつ急迫であるため、事業主が監督行政より直接的かつ具体的な措置について指示を受け、その措置にを講ずることを怠ったために事故が発生させたと認められるとき。

 「法令に」、この法令はどの範囲までを含まれるのだろうか?
コメント (4)
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