本日、第149回労政審職業安定分科会(持ち回り開催)を経て、 雇用調整助成金の特例措置を実施します~雇用調整助成金を活用して従業員の雇用の維持に努めてください。~が公布、公表された。
令和2年4月8日以降の休業等に遡及して適用される。
ところで、新型コロナウィルスに感染した場合の労災について、以下の通りの懸念があった。
◆業務中に新型コロナウィルスに感染した場合。
⇒業務上災害となり、会社は労働基準法に基づく災害補償をする必要がある。
⇒ただし、会社は労働者災害補償保険法を利用する。(療養補償給付・休業補償給付など)
◆通勤中に新型コロナウィルスに感染した場合。
⇒あくまでも私傷病だが労災保険法の通勤途上災害となり、会社は労働者災害補償保険法を利用する。(療養給付・休業給付など) 。
◆労災認定について
⇒業務上災害の場合に問題になるのが、①業務起因性(傷病などが業務に起因して生じたものであるということ。業務と傷病などとの間に相当因果関係が存在すること。)と②業務遂行性(労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態)
⇒通勤災害の場合に問題になるのが、「通勤に通常伴う危険が具現化したこと。」
⇒いずれにしても、感染経路を証明することができるかがポイント。
⇒できなければ、傷病手当金となる。
この問題について、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」【基補発0428第1号 令和2年 4月28日】という通達が発せられた。https://www.mhlw.go.jp/content/000626126.pdf
この通達によって、医療従事者、介護従事者は、業務外で感染したことが 明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象とされる。
感染経路の証明は不要となる。
また、医療従事者等以外の労働者であって、調査により感染経路が特定されない場合であっても 、職場で複数の感染者が出た場合や、感染リスクが比較的高いと思われる業務をしている人は(厚生労働省は小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定している)、業務により感染した可能性が高いとして、労災認定を判断するとした。
現状の、感染ルートが特定出来ない感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという特性を踏まえての通達で、非常に理にかなっている!
基補発0428 第1号
令和2年4月28日
都道府県労働局労働基準部長 殿令和2年4月28日
厚生労働省労働基準局補償課長
新型コロナウイルス感染症 の労災補償 における取扱い について
新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。) に係る労災補償業務における留意点 については、令和2年2月3日 け 基補発 0203第1号で通知しているところであるが、今般 、本感染症の労災補償について、下記のとおり取り扱うこととしたので、本感染症に係る労災保険給付の請求や相談があった場合には、これを踏まえて適切に対応されたい 。
記
1 労災補償の考え方 について本感染症については、 従来からの業務起因性の考え方に基づき、 労働基準法施行規則別表 (以下「別表」という。)第1の2第6号1又は5に該当するものについて、労災保険給付の対象となるものであるが、その判断に際しては、本感染症の現時点における感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという本感染症の特性にかんがみた適切な対応が必要となる。
このため、当分の間、 別表第1の2第6号5の運用については、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること 。
2 具体的な取扱いについて
(1)国内の場合
ア 医療従事者等
患者の診療若しくは看護の業務又は 介護の業務 等に従事する医師、看護師、介護従事者等が 新型コロナウイルス に感染した場合には、 業務外で感染したことが 明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。
イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。
ウ 医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの
調査により感染経路が特定されない場合であっても 、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数 (請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
(2)国外の場合
ア 海外出張労働者
海外出張労働者については、出張先国が多数の 本感染症 の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在 する危険が具現化したものか否かを 、 個々の事案に即して判断する こと 。
イ 海外派遣特別加入者
海外派遣特別加入者については、 国内労働者に準じて判断すること。
「複数の感染者が確認された労働環境下」とは、具体的に、請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定し、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられるとのこと。
「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」については、小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しているとしている。
また、他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断するとしている。