1863年という時代を忠実に再現したつもりだという作者の長崎弁が本作では多用されている。「・・
・たい」「・・・ばい」「・・・と」「・・・でっしゅ」これは「竜馬が行く(司馬遼太郎)」の坂
本龍馬の長崎行で使われていて、独特のリズム感を持った、面白い言葉使いに興味を持った記憶があ
る。冒頭から長い会話のシーンが延々続くので、この物語のストーリーや背景は分かりづらい。そう
いう説明も一切ない。時期的には明治維新(1869年)を数年後に控えた、日本国中が沸騰していた頃
の話で多少の予備知識がいると思う、当然幕末物が好きな人には格好の本だ。
読み進めていくと主人公が卯八なのか、井吹重平なのか、尾崎太夫なのか、はたまた格子女郎くら橋
なのか迷ってしまう。それぞれに面白いシチュエーションで、同時進行形で語られ、その後の展開が
どうなるのか、ページをめくる手が止まらない。
個人的に言えばラストが尻切れトンボ状態に感じて、いくつかの物語はキチンと終わってほしい気が
した。大夫や格子女郎の心の動きも、作者の願望でもあるのかイマイチ納得できない。本作には当時
の風俗、幕末に生きた人々の生き方がよく表れていて面白く読めた。
丸山蘭水楼の遊女たち 井上光晴 新潮文庫
・たい」「・・・ばい」「・・・と」「・・・でっしゅ」これは「竜馬が行く(司馬遼太郎)」の坂
本龍馬の長崎行で使われていて、独特のリズム感を持った、面白い言葉使いに興味を持った記憶があ
る。冒頭から長い会話のシーンが延々続くので、この物語のストーリーや背景は分かりづらい。そう
いう説明も一切ない。時期的には明治維新(1869年)を数年後に控えた、日本国中が沸騰していた頃
の話で多少の予備知識がいると思う、当然幕末物が好きな人には格好の本だ。
読み進めていくと主人公が卯八なのか、井吹重平なのか、尾崎太夫なのか、はたまた格子女郎くら橋
なのか迷ってしまう。それぞれに面白いシチュエーションで、同時進行形で語られ、その後の展開が
どうなるのか、ページをめくる手が止まらない。
個人的に言えばラストが尻切れトンボ状態に感じて、いくつかの物語はキチンと終わってほしい気が
した。大夫や格子女郎の心の動きも、作者の願望でもあるのかイマイチ納得できない。本作には当時
の風俗、幕末に生きた人々の生き方がよく表れていて面白く読めた。
丸山蘭水楼の遊女たち 井上光晴 新潮文庫