本は沢山の事を教えてくれる。人口830万で、面積は北海道の半分もないスイスはGDP
も高く、国民の幸福度も高い。スイスの主産業で思いつくのは化学・薬品、精密機械、観光
業だが、例えば、多額の補助金に守られる農業のGDPに占める割合は、たったの0.7%だ。
その農業に直接補助を出し「農家の環境保全努力」=「農家が潤う」=「農村の景観保持」
で観光産業に寄与させている。しかも農業規制の目的は①自分たちが動物を大切にし、②環
境を守り、③質の良い農作物を食べる、ことだ。
驚いたのは「傭兵」で、スイスは中世以来、ヨーロッパのあらゆる戦線で戦士の供給国だっ
たいう事実(ひとつには狭い国土で人口が増えて食料不足になったこともある)。早くも1
3世紀末にはイタリアで傭兵として活躍しだしたそうで、傭兵は常に最前線に送られている。
公式には、スイスの傭兵間で同士討ちをさせない決まりがあったが、しばしば破られ、スイ
ス人同士がヨーロッパの戦場で殺し合うことも稀ではなかった。
本書ではスイスとニッポンの比較がたびたび登場するが、以前松下幸之助氏が日本の「観光
立国」をすでに1978年に提言していることを紹介している。日本は、あまりにも行き当たり
ばったりで、政府も地方自治体も計画性が全く無いという問題があるが、円安だけではない
魅力が日本にはあると私も思う。誰かに任せるだけではなく、私たち自身が世界の国々を知
り、日本の行く末を考察していきたい。
世界一豊かな国スイスとそっくりな国ニッポン 川口マーン惠美 講談社α新書