主人公シャネル役のオドレイ・トトゥは適役でした。「アメリ」を観て、独特の表情を見せる
俳優だと思っていましたが、貧しい環境の出身ゆえに貴族社会に振り回されながら、プライド
の片鱗をのぞかせ、個を確立していく姿は健気で、その変貌ぶりが見事。そういえば「ダ・ヴ
ィンチ・コード」にも出ていましたが、あの映画では、あまりフィットしていなかったように
感じました(映画自体イマイチでした)。
映像がとても映画的でフランスの田舎で毎週日曜来ることのない父を待ち続けた寂莫とした孤
児院の光景、酔っ払いのたむろする猥雑で賑やかなナイトクラブ、退廃的で騒々しい貴族の生
活がよく出ていた。対照的にフランスの田舎道や海の見える風景が美しく印象に残りました。
当時(1900年ごろ)のシャネルがずっとタバコを手放さないのも、ストレスと不安をずっと抱
えながら生きていたのだと思わせる。その頃のフランス社会の女性は男性のお飾りで、働くこ
とを厭わないシャネルは変わり者。自ら好んで着る服も、廻りの女性が着る華美なモノではな
く、黒を基調としたシンプルな男性の服をアレンジしてみせて、それが世間に受ける過程がよ
く描かれています。