日本ではアメリカ経由の情報が多いので本書のような主張は受け入れがたい人も結構いると
思います。私はいくつかの疑問と違和感を持ちながら読みました。トッド氏は冒頭「簡単に
避けられたウクライナ戦争の原因と責任はプーチンではなく米国とNATOにある」と言って
いますが、本当に簡単に避けられたでしょうか?今となっては結末が全く見えない状況まで
来てしまいましたが、西側の論理だけでは紛争を解決に導くことが出来ないのは確かです。
勿論トッド氏が単純にロシアを擁護しているわけではありませんし、同氏は本書で「戦争は、
耐えがたいものです」ととして”苦難”以外何物でもないと告白しています。
ウクライナという国が三つの地域から成り立っていることを私は知りませんでした。ゼレン
スキー大統領がウクライナを掌握し、全体の意見の代表者という訳でもないという事実。そ
れでも「ウクライナ軍の予想を上回る抵抗」は「アメリカとイギリスによる軍事支援の成果」
だと著者は断言します。
本書においてロシアよりも欧米の疲弊が指摘されています。確かにヨーロッパでは経済状況
の悪化がみられますが、アメリカはそれ程ひどい経済状況にもないようです。現在アメリカ
は武器供与をしながら、ロシア国内への侵攻をしないよう指示をしていましたが、ウクライ
ナ軍はすでにロシア国内での戦闘を開始しています。本来であれば日本は全然違う立場で仲
裁に向かうべきでしたが、今となっては手遅れです。この紛争はロシア、ウクライナの疲弊
を待つしかないようです。
第三次世界大戦はもう始まっている エマニュエル・トッド 文春新書