よしーの世界

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誰か「戦前」を知らないか   山本夏彦

2024-08-04 07:57:17 | 

独断と偏見甚だしい本書は「夏彦迷惑問答」がサブタイトルで、山本夏彦氏の明るい戦前観を

縦横無尽にこれでもかと披露しています。何しろ「鑑賞にたえる映画は昭和三十五年まで。以

後ない」とまで断定するのです。私が観て感動してきた映画は全て鑑賞にたえるものではない

のです。様々な事象を二十代女性の対談相手を前に切りまくりますが、相手の女史は分からな

い事が多いながらもボケ、ツッコミ、鋭い指摘で切り返したり、実に愉しい!

 

例えば、寿司屋にあるのは「つけ台」でカウンターではない、カウンターは勘定台です。と始

まる。日系二世を寿司屋に案内した古い友人との話で、寿司をつまんでいる人と言うから食べ

ている人かと思ったらどうも話が変で、つけ台の向こうにいる職人のことらしい。つまむのは

客だと教えると、そうでしたねお寿司をつかんでいる人。つかむんじゃない寿司ならにぎるん

で、にぎるのが職人でつまむのは客。日本語は難解だ。

 

戦前を話して理解が得られないのは言葉が滅びたからで、山本氏は学校教育と核家族化が原因

だと断じる。今や昭和があちこちでもてはやされているが、本書は大正の話をしている。戦争

から、活動写真、郵便局、牛鍋屋、食べ物、きもの、洋行と幅広い。

 

最後の菊竹六鼓と桐生悠々の章は二人とも知らない人物でしたが、軍部に言論で正面から立ち

向かった人物。彼らに対してまじめ一方ではいけない、親孝行も過ぎてはいけない。直情径行

は誤りで、言葉は二重三重でなければいけない。とは名言。

 

  誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答     山本夏彦      文春新書

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