日本の税収は2021年度67兆円と過去最高額を記録した。さらに社会保障費は毎年、過去最高を
更新し続けている。しかし国民からすれば必要な予算が必要なところに行き届いていないよう
に思えてならない。私たちの血税は何処に行っているのか?著者は約3年にわたり粘り強く取材
を続け本書に書いている。その実態は驚くべきものだ。
コロナ禍の「持続化給付金」はまさに「バラマキの豪雨(経産省幹部)」だった。そして国か
ら委託費(769億年)は一旦、サービスデザイン推進協議会という聞いたことがない一般社団
法人を通し、電通とその子会社に流れ、再委託と外注を繰り返す。一般社団法人には監督官庁
がなく、税制優遇を受けながら決算情報などの情報公開のルールがないので、中抜きがいくら
あっても誰も把握できない。給付金は4年で1兆3500億円。そして不正受給も相次いだ。
記憶に新しい東京オリンピックでは数々の疑惑が報道されたが、象徴的なのは人件費単価で、
著者が相場との差を理解するために、霞が関の役人に内部資料をみてもらい話を聞いている。
その幹部は資料を見て4割がピンハネだと解説していた。さらに会計検査院で聞くと、契約書
類がないこともあると言う。
日本では税金が防衛費から、中山間地域への補助金、地域消防団員への報酬という隅々まで、
ありとあらゆるところで使途不明だ。国会議員の懐に入る裏金も表に出てこない。本書の各章
に登場する問題をマスコミが一つずつ執拗に追いかけていけば、減税さえ可能なことを国民は
知るだろう。
追跡 税金のゆくえ ブラックボックスを暴く 高橋祐貴 光文社新書