私もマニアではありませんが、オーディオは好きです。電線(ケーブル)によって音が変わること
は体験していますが、何と!よく使われている銅線ではなく銀線を作り量産化を図り、その銀線を
自動車の電装回路に使ってみようという著者の発想の飛躍!知らなかったのですが、自動車は電線
がはられているのは半分で、あとは車体(ボディアース)を使っているのだそう。これを銀線に変
えると驚くほどに燃費が向上し、排気ガスがクリーンになる、という。
街角技術者の著者は特許を取ろうと考えますが、審査をはじかれ続け、業を煮やして弁理士に依頼
しますが手数料だけ取って失踪、四苦八苦のすえ特許を取得します。さらにメーカーに持ち込みま
すが「検査機器がおかしい」「おたくの資料は捏造だ」とまで言われ取り合ってもらえません。専
門家にも持ち込みますが、「このデータは嘘だ」と言われる始末。
苦労の末、アースチューンキットの商品化に成功し、口コミで広がり、ネットの掲示板に書き込ま
れ、カー雑誌にも取り上げられます。そこで著者はヨーロッパでの普及を目指し、ドイツ・ハノー
バーメッセに出展します。ブースを訪ねてきたのはイタリア・ピレリはじめ沢山の海外メーカー、
さらにはインド・タタまでもが特許を買えるかと聞いてきました。
残念ながら日本は資本家たちが政治主導でさまざまな枠組みを作って来たために、官の権威主義が
はびこり、個人の力よりも産業界の利益を優先する体質が残ってしまった。大企業の利益が最優先
されるので、イノベーションは起こりにくい。これを変えなければ日本の一番の問題とされる産業
構造改革は難しい。
電線一本で世界を救う 山下博 集英社新書
日本には個人でスゴイ発明をし実用に転用
している人、中小企業にも素晴らしい活動
をしている企業があります。国民全体にみ
ても勤勉です。なぜか上に立つ人間がダメ
な例が多いですね。
産業界・官僚・政治家が無能だからどんどん衰退している日本です。残念な事です。