Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

英国高等法院が公正取引庁の要請を受けてねずみ講業者への「仮差止命令」を下す

2010-10-24 19:05:16 | 消費者保護法制


 Last Updated: March 30,2021

 英国高等法院(High Court of Justice)(注1)は、2005年12月13日に公正取引庁(OFT)(注1-2)の要請を受けてVIP Club(注2)の経営者(ガーディープ・シン氏:Mr Gurdeep Singh)に対し、ねずみ講ビジネスを行ったとして、関係法令に基づき、その仮差止命令(interim injunction)を下した。その手口はわが国でもよく見られるものであるが、多くの被害者がアジア人であることから警告の意味で今回取り上げた。

 英国高等法院は「2002年企業法(Enterprise Act 2002)」 (注3)にもとづくOFTの要請により仮差止め命令を下したのであるが、適用する法律としては「2003年不実広告規制規則(Control of Misleading Advertisements (Amendment) Regulations 2003) 、「1976年宝くじ及び娯楽に関する法律(Lotteries and Amusements Act 1976)」(注4)および「1987年消費者保護規則(営業所以外で締結した契約の取消に関する規則:Cancellation of Contracts Concluded away from Business Premises 1987)(Doorstep Regulation)1998年改正法が施行(注5)が根拠となる。

 シン氏は以前にOMI Clubを個人経営していたものであるが、OFTは内々法律違反を犯していると睨んでいた。OMI及びVIP Clubに関するクレームは次のような強引な商法に対して行われた。

 まず、1,695ポンド(約33万6千円)の会費を納めると、旅行やレジャーサービスの大幅割引が受けられ、また新たな会員を集めると10か月以上にわたり99,900ポンド(約1,980万円)の手数料収入が得られるというものである。

 勧誘行為は英国内の一流ホテルで6時間にわたり高圧的なセールス説明が行われた。その内容は英国内に約1万人の会員を確保しつつあり、新規に1,700万人の新規会員から会費が払い込まれるというものである。

 OFTは本件を裁判に付すに当たり、シン氏の営業活動は「ねずみ講」であり、多くの会員にリスクを負わせ、また前記の法律に抵触すると強く求めるとともに、各自治体が設置する取引基準局(Trading Standards Services)や貿易産業省(DTI:2010年現在はビジネス・イノベーション・技能改革省(Department for Business, Innovation and Skills :BIS) )と内密理に証拠固めを行っていた。

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(注1)英国の高等法院は女王座部(Queen’s Bench division)、家事部(Family division)、大法官部(Chancery division)の3部からなる。民事事件の第一審であるとともに下級裁判所(Subordinate court:下級判事裁判所(Magistrates’ courts)、郡裁判所(County court)からなり、前者は陪審制をとっていない)の刑事事件の控訴審を扱う。

(https://www.judiciary.uk/you-and-the-judiciary/going-to-court/high-court/)

(注1-2) 2014.4.1 1973年~2014年4月1日までのOFTの機能は分解され次の機関に移管された。

① 消費者の権利保護関係(Consumer rights)

企業の非競争的行為及びそれらに関する市場部門の問題(Anti-competitive behaviour and issues with market sectors)

  • Competition and Markets Authority (CMA) 競争・市場庁(競争・市場庁は,2013年企業規制改革法により2013年10月1日に設立され,2014年4月1日,同法により公正取引庁及び競争委員会が廃止されたことに伴い,それら機関の機能及び権限の大部分を受け継いだ独立の非大臣庁)関連:
    • anti-competitive practices (eg price fixing and bid rigging)
    • a market not working well
    • unfair terms in a contract
    • any issues related to poor competition
  •  avoid and report anti-competitive behaviour
  •  avoid unfair terms in sales contracts

(注2)VIP clubの商号は「Leisure Marketing International Limited」である。

(注3)「2002年企業法」は2003年6月20日に施行されたもので、①不実広告、②富くじ、③商品・サービスの提供、④取引についての記述、⑤不正なオークション(mock auction)、⑥不公正な消費者契約、⑦「time-share:リゾートのホテルやコンドミニアムの部屋を設定された期間使用できる権利を購入する制度またはその物件」、⑧訪問販売、⑨隔地者販売、⑩消費者信用、等につき、OFT等法執行機関に法的な権限や裁判所命令を得る権限を定めたものである。

(注4) 同法は、国による宝くじを除いて、すべての宝くじや富くじを違法とするものである。

(注5) 1988年不実広告規制規則(Control of Misleading Advertisements Regulations 1988)は、2003年に改正された(2003年12月29日施行)。

(注6)同規則は、訪問販売を規制する規則であり、7日間の取消権を保証するクーリングオフ期間ならびにその方法(取消の様式)について事業者は書面通知しなければならない(消費者は必ずしもその書面を使う必要はない)。これに違反した場合、契約の履行は強制されず、また犯罪行為となる。

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(今回のブログは2005年12月26日登録分の改訂版である)

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EU委員会が加盟国の越境の消費者契約の適用法に関する近代化ルールの規則草案を公表

2010-10-24 17:16:38 | 消費者保護法制


 Last Updated:March 30,021


 EUにおける越境する(cross-border)契約における適用法について、EU委員会は2005年12月15日に1980年6月15日施行の「契約債務の準拠法に関するローマ条約(The Rome Convention on the Law Applicable to Contractual Obligation)」 (注1)の内容の更新・変更を規則草案(注2)公表した。(注3)

 同草案は、家族関係、仲裁契約(arbitration agreement)、会社法によるべき紛争は対象外である。委員会はEUにおける国際私法としてローマ条約がEU加盟国にとって好ましくないと考えており、その近代化を強く望んでいた。さらに、現状、EU司法裁判所の裁判権は署名国が裁判権を与えなければ及ばないという問題もある。委員会は、①加盟国が要件協定(requisite protocol)を批准するのに25年かかったこと、②司法裁判所の判決はすべての加盟国に対し拘束力がないこと、③一方、各国の裁判所はその点について義務を負っていないということを問題視していた。

 今回の新規則は、ROMEⅠの中核部分の補強―ビジネスの世界における相互関係に適応して適用法を選ぶ原則―の補強を狙ったものである。すなわち、その国の法律、国際協定、国際的な商品販売に係るウイーン条約のような国際的に認められ私的に法典化されたものなどの適用、選択を可能とするものである。当事者の法的な期待や効果は、売り手、サービス提供者、運送業者、仲介業者等が扱うサービスの特性に応じて行なわれるべきであるとする考えに基づいている。

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(注1)契約債務の準拠法に関するローマ条約(ROMEⅠ)本文:http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:41998A0126(02):EN:HTML

(注2)「Proposal for a Regulation of the European Parliament and the Council on the law applicable to contractual obligations (ROME Ⅰ)」(https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52005PC0650)

(注3)2003年1月14日にEU委員会は1980年ローマ条約(ROME Ⅰ)はEU指令や規則というものに変更すべきか否かを問うとともにその内容の近代化の求める「グリーンペーパー」(https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2002:0654:FIN:EN:PDF)をまとめ公表している。今回の計画内容は、それに即したものである。
 また、この問題と区別しなければならないのは、2003年7月22日、EU委員会が提案した
「ROME Ⅱ規則最終(案)」(注4)である。2007年7月11日に欧州議会と理事会規則「ROME Ⅱ規則」を採択した。これは、非契約的な状況下での規則案であり、名誉毀損(defamation)、広告、知的財産、製造物責任を含む請求時の適用法問題を定めたものである。同意規則は2009 年1 月11 日に発効した。
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2003:0427:FIN:EN:PDF

(注4) 片岡雅世「ローマⅡ規則における不当利得準拠法について――EU 国際私法統一の一局面として―」
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(今回のブログは2005年12月25日登録分の改訂版である)

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オーストラリアにおける政府スマートカード仕様の枠組み案が公表される

2010-10-24 14:17:07 | EU等のeGovernment



 Last Updated:March 29,2021

 英国では議会を中心に国民IDカード法案をめぐる国内の論議が急速に高まっているが、オーストラリアでも電子政府の更なる強化に向けた課題やその効果をめぐる議論が高まりつつある。同国政府の財政・規制緩和省( Department of Finance and Deregulation (Finance:Finance) (注1)「情報管理局(Information Management Office)」のサイトでは以下のような主要課題をあげて取り組んでいるが、このほど政府の効率性の高い情報技術のインフラ構築の中心となる「Australian Government Smartcard Framework ドラフト0.19版 」(96頁)(注3)が公表された。

 当然のことながら、そこに反映している考えは、「将来に向けた公的機関における相互運用性と投資コスト削減」である。さらに米国の米国商務省標準化技術研究所(NIST)のマルチ利用基準であるFIPS201(注4)、PC/SC コンソーシアム( Personal Computer/Smart Card事業体)(注5)に準拠している。
 わが国の電子政府構築上の課題の1つが国民IDカードであることは間違いなかろう。

 なお、「オーストラリア政府Smartcard Framework」はその後改訂され、現在「財務・規制緩和省・情報管理局(AGIMO)」:電子政府・情報管理(e-Government & Information Management):ICT Security & Authentication:「National Smartcard Framework」サイトで見る内容は2008年12月に「オンラインおよび通信評議会(Online and Communications Council :OCC)」10/24(21)(注6)が推奨したものである。

〔オーストラリア電子政府の主要課題〕
①より良い政府(電子政府における戦略的助言、開発要求とその価値についての調査、電子政府による利益の研究、情報管理戦力委員会等)
②より良いオーストラリア連邦議会・連邦政府情報提供のあり方(政府情報へのアクセス、オンライン情報サービスについての責務等)
③シームレスかつ利用者に的を絞ったサービスの開発(相互運用性の枠組み、電子化された地域サービス:TIGERS Program、効率的なポータルの構築等)
④ビジネスの改善(政府の電子調達の促進、調査研究報告、デモの実装、指導等)
⑤政府機関のため効率的な費用対効果の実現(スマートカード、オープン・ソース・ソフトウェア、政府ドメイン名の承認、認証技術、政府のオンラインセキュリティの強化、PKIとプライバシー勧告等)
⑥より良い実践(オンラインサービスの配信とそのためにユーザーが利用するチェックリストの作成、政府・内閣等の各部門ウェブサイトの品質向上に向けたガイダンスの策定、提供情報に関する規定・電子出版・記録の保存・アクセスの良さ・セキュリティ・プライバシー、認証などについての最小限の標準化、公的サービス理解向上のためのケーススタディ、相互運用性の枠組み等)

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(注1)”Department of Finance and Deregulation”は2007年12月3日に設置され2013年9月18日、”Department of Finance”に引き継がれた。現在の財務省長官は、ローズマリー・ハクスタブル(Rosemary Huxtable) PSM(注2) 氏である。

Rosemary Huxtable PSM


(注2) 公務員勲章(PSM)は、優れた奉仕のためにオーストラリアの公務員(すべてのレベル)に授与される市民装飾である。PSMは1989年に導入され、1975年に廃止された帝国賞に取って代わり、同じ年に導入されたオーストラリア勲章を補完している。公務員勲章の受領者は、名義字「PSM」を使用する権利がある。このメダルは、オーストラリア総督、各州または地域の責任大臣の指名、および連邦レベルで毎年2回授与される。(Wikipediaから抜粋、仮訳した)

(注3) オーストラリアのsmart cardの開発経緯の解説例としては、以下のサイトが詳しく解説している。

①オーストラリア法改革委員会(Australian Law Reform Commission)の”Smart Cards”(2010.8.16)(https://www.alrc.gov.au/publication/for-your-information-australian-privacy-law-and-practice-alrc-report-108/9-overview-impact-of-developing-technology-on-privacy/smart-cards/)

②”Australian Acess Card-Needa a Governance Framework”(https://www.ramin.com.au/itgovernance/smartcard.html)

歴史的経緯の解説が中心。

③Australian Privacy Foundation(APF)の”Human Servoces Card”(https://www.privacy.org.au/Campaigns/ID_cards/HSCard.html)は、政府プロジェクトとAPFキャンペーンは、2005年4月から2006年4月26日まで実施された。その後、政府の「ヒューマンサービスアクセスカード」/「スマートカード」/「コンシューマーカード」プロジェクトとAPFの新しい全国IDカードキャンペーンに組み込まれた、等につき解説している。 

(注4) FIPS 201(Federal Information Processing Standards Publication 201)は、連邦政府の職員及び請負業者のための個人識別情報の検証(仮訳:Personal Identity Verification/PIV)の要件を規定する米国連邦標準規格である。

(注51996年5月にフランスのブル(Bull)社を含む主要マイクロ・コンピュータ・メーカーとIC Card(Smart Card)メーカーとのパートナーシップにより発足した団体名。

(注6) Online Communications Council(OCC)は、オーストラリアのICTポリシーが、政府の3つの層にわたってまとまりがあり補完的であることを保証する責任を負うオーストラリアの組織である。 OCCは年に1回開催され、メンバーはオーストラリア政府の通信情報技術・芸術大臣と 、オーストラリア政府特別大臣、各州および準州政府の上級大臣、オーストラリア地方政府協会からなる。 第三セクターの組織や研究機関はメンバーとして含まれていない。(Australian Government Department of Families,Housing, Community Services and Indigenous Affairsの2008年資料(https://core.ac.uk/download/pdf/30687035.pdf)から抜粋、仮訳 )

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(以下の部分は2010年10月21日現在、白紙であるが、適正な委託先が見つかればあらためて検討したい)

標記草案の検討対象者、主な構成と目次内容等は現在仮訳(要約)作業中であり、訳文を希望される方は次のメールアドレスまでご連絡いただければ後日当方から通知する予定である。
なお、従来本ブログで取り上げてきたテーマについて、今後は詳細版は別途メーリングリスト登録者(当分の間、無料)のみ通知する方式に変更するので、詳細資料版を希望される方は個人、法人を問わず下記内容を記入のうえ申し込んでいただきたい。また、登録いただいた内容については、2003年個人情報保護法ならびに関係省庁のガイドラインに基づき「×××」が善良なる管理者の注意義務を厳格に履行し、ブログ情報の発信のみに利用すること、ならびに第三者へ情報提供を行わないこととする。
(1)本件 欄:メーリングリスト申込
(2)本文:①登録希望メールアドレス
②法人の場合:企業名(フリガナ)
個人の場合:姓名(フリガナ)

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英国公正取引庁(OFT)が電子商取引のサービス提供事業者の消費者保護規則の法令遵守ガイドを公表

2010-10-24 04:23:34 | eCommerce問題

 

Last Updated:March 28.2021

 今般、OFT(注1)は、2005年4月6日に施行された「隔地者販売・サービス に係る消費者保護に関する改正規則(The Consumer Protection (Distance Selling )(Amendment)Regulations 2005)」を受けて、インターネットや電話を利用した隔地者間取引により情報機器・サービスを販売する時の契約内容の公平さを確保するための事業者向けガイダンスを策定、公表した。

 わが国でもインターネット、電話等を介したオンラインショッピングや最近ではネットオークション等の利用が急増する一方でトラブルも増えている。これらに関連する法律としては「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための

関係法律の整備に関する法律(IT書面一括法)」(平成12年法律第126号)、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子契約法)」(平成13年法律第95号)(平成29年法律第45号による改正)、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」(平成11年法律第128号)、「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」(昭和51年法律第57号)、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール防止法)」(平成14年法律第26号)等が挙げられる。
 さらに、これらの法律でもかならずしも明確でない電子商取引固有の法律問題の解釈例として経済産業省が取りまとめた「電子商取引等に関する準則」(平成16年3月:2019年12月改訂)等がある。

 一方、取扱事業者としては、これらの未知分野も含めベンダーとしての遵守内容を明確化して欲しいというのが本音であろう。

 英国では2002年12月に消費者のIT市場における100頁にわたるOFT勧告報告(隔地者間取引に関する法律の改正はガイダンスの遅延を意味した)を発し、その中で勧告の見直しを引き受けていた。今回のガイド(77頁)は、2005年4月の隔地者間販売の法律改正を受けて行われたものである(なお、本ガイダンスは2006年9月12日に改訂されており、2010年10月現在これが最新も内容である。制定・改正の経緯等はOFTのサイト(Distance Selling Regulations) に詳しい)。(注)

 本ガイドでは、事業者と消費者の契約上の公平性の観点からOFTが取り上げるべき可能性のある具体的な契約条件について個別課題を取り上げており、次のような項目が含まれている。

①劣悪商品の使用に基づき怪我を負った場合について、事業者の損害賠償責任について有限責任または責任の排除規定を認めてよいか。
②消費者が不完全な商品や誤った説明書内容を理由として 商品を返却する際の手数料負担(返送手数料など)を要求するような契約は認められるか。
③不完全なソフトウェアについて返品を認めないとする契約内容は許されるか。
④隔地間の商品の販売契約において消費者の取消権を阻害するような契約内容は認められるか。
⑤劣悪品につき代金の返金に替えて商品券のみで済ますような契約は認められるか。
⑥契約自体、消費者に商品に損傷がないかなど合理的な範囲で調べる機会を提供する内容になっているか。
⑦契約締結後、一方的に販売者が価格を引き上げることを認める条項に有効性があるか。

(注)1.英国の「2000年隔地者販売・サービスに係る消費者保護に関する規則(The Consumer Protection (Distance Selling )Regulations 2000)(No.2334)」 (一般的には「隔地者間販売に関する規則:DSRs」と呼ばれている。)のもとにおいて、消費者は公平な契約情報、取消期間、ならびに決済カードの使用についてさらに強固に保護されるという特別な権利が認められている。
2.DSRsにおいて、次のような適用例外規定がある。
BtoB間の契約、特定の金融サービス、オークションに基づく契約はその例外となっている。
また、食料品・飲料やその他の商品で毎日の御用聞きにより提供されるもの、また運送契約・宿泊契約など特定の期日や期間の間に提供する契約などについては、同規則の一部は適用されない。

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〔筆者補追〕2021.3.28

本文で述べた”Distance Selling Regulations”は、2014年6月13日からは英国のオンライン契約に関し

”Consumer Contracts Regulations”(The Consumer Contracts (Information, Cancellation and Additional Charges) Regulations 2013 (legislation.gov.uk)によることとなった。この、

The Consumer Protection (Distance Selling )(Amendment)Regulations 2005)との内容の比較については、

英国消費者保護団体”Which”(Expert testing, reviews and advice from Which?)(wikipedia 解説(Which? - Wikipedia))が詳しく解説(https://www.which.co.uk/consumer-rights/regulation/distance-selling-regulations-aAijb9Q8UT3V#the-consumer-contracts-regulations)している。

Consumer Contracts Regulationsのこれまでの改正経緯などについては、ローファーム”Fasken”が詳しく解説している。この点に関し、わが国では詳しい解説が皆無のようである。

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(注1)公正取引局 (OFT) は、1973 年公正取引法によって設立された英国の非省庁政府部門で、消費者保護と競争法の両方を施行し、英国の経済規制当局として機能していた。 OFT の目的は、公平な取引を行う企業間の活発な競争を確保し、不正取引、詐欺、カルテルなどの不公正な行為を禁止することで、市場が消費者にとって適切に機能するようにすることであったが、その役割は 「2002 年企業法」によって修正され、その権限も変更された。

ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)は、消費者保護と競争制度の改革を発表した。 2013 年企業規制改革法の規定に基づき、2014 年 4 月 1 日に「競争・市場庁 (Competition & Markets Authority(CMA) 」が設立され、OFT と競争委員会の機能の多くを統合し、両方に取って代わった。

 また消費者信用部門の規制は、2014 年 4 月から OFT から新しい金融行動監視機構 (Financial Conduct Authority:

FCA)に移管された。(Wikipedia から引用、仮訳)

(注2)2018年「Department for Business, Energy & Industrial Strategy報告」が”Coonsumer Contracts Regulations 2013”の制定後、5年間の運用経緯を踏まえ詳細に報告”Research and Analysis:Statutory report on the implementation of the Consumer Contracts Reglations 2013"を行っている。

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フランス国民議会が強力な反テロ法を採決

2010-10-24 03:17:03 | 国家安全保障・テロ対策



 フランス国民議会(Assemblée Nationale)は、2005年12月22日に空港、職場を含む公的なエリアでの監視カメラの増設のほかテロ容疑者についての査問時間の延長やインターネット・電話記録の取調権を警察に認める等テロ関連行為について刑事訴訟法、刑法、個人情報保護法等の改正等を内容とする「テロ対策特別措置法修正案(relatif à la lutte contre le terrorisme et portant dispositions diverses relatives à la sécurité et aux contrôles frontaliers)」を賛成202票、反対122票で採択した。

 同議会の議員は、同法案は2005年7月の2回目のロンドンでの地下鉄爆破テロが引き金となっていると述べているが、人権保護団体などからは、人権侵害に対する強い懸念が出されていたもので一部修正が行われている。

 同法案の概要について簡単に紹介しておく。


第Ⅰ章 ビデオ監視カメラに関する規定(第1条~2条)
第Ⅱ章 テロ行為への参加についての電話その他電子的手段を用いた情報の伝達ならびに置換の管理に関する規定(第3条~第5条)
第Ⅲ章 個人情報の取扱いにおいて保護法の例外に関する規定(第6条~8条)

(注)EU以外の国からの国境チェックや密入国に対する内務相の権限強化(フランスの1978年個人情報保護法の例外規定)とその場合の担当官吏の権限、旅行者の違反行為への罰則(1人あたり5万ユーロ(約690万円)以下の罰金)等。

第Ⅳ章 テロの鎮圧などについて刑事訴訟法の捜査令状主義の例外規定、テロ行為についての刑法の罰則規定の改正(第9条~第12条の2):情報等支援者や恐喝行為者に対する5年以下の拘禁刑および75,000ユーロ(約1,035万円)の罰金等が科される。

*第Ⅳ章の2 テロ被害者に関する規定、第Ⅴ章フランス国籍の失権に関する規定(第11条)、第Ⅴ章の2 テレビ放送に関する規定、第Ⅵ章 テロ活動への資金支援についての規定・・削除された。

第Ⅵ章の2 個人の行動ならびに空港における捜査時の個人情報保護法の例外規定(第12条)
第Ⅶ章 国外のフランス領における扱い(第13条~第14条)
第Ⅷ章 最終規定(第16条)

〔参照URL〕
1.2005年10月26日に上程された法案(No.2615)
http://www.assemblee-nationale.fr/12/projets/pl2615.asp
2.今般国民議会で採択された修正法案(No.526)
http://www.assemblee-nationale.fr/12/ta/ta0526.asp

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