さる8月26日、フィンランド行政最高裁判所は世界的に有名な反検閲運動ウェブサイトが国家警察(National Bureau of Investigation:NBI)の検閲リストに追加されたときにNBIの法律違反はなかったと判示した。この裁判は2011年5月2日に下されたヘルシンキ行政裁判所判決に対する上告裁判であるが、(1)この裁判の事実関係を含め最新情報を踏まえたわが国の解説はWikipediaも含め皆無である点、(2)フィンランドの行政裁判制度や「2006年児童ポルノ防止対策普及法」に関する正確な解説や訳文もないこと等から、あらためて本ブログで、その解説を試みることにした。
いうまでもないが、この種の問題はフィンランドだけでない。例えば、2011年11月、英国の人権擁護NPOである”Internet Watch Foundation”の性的な自動虐待の内容を持つサイトへのアクセスを無効化(ISPへの通知)を目的とする自主規制機関ブラックリスト(URL list)の対象に載せられたため、英国でもっとも多く利用されているフアィル・ホステイング・サービス”Fileserve”(注1)が何日間も使用不可となるという問題が生じた。このような問題に対応するため英国のISP等はIWFから通知を受けたときは行動をとるべく準備を行っている。またIWFと同様のデジタル時代の人権擁護NPOである”Open Rights Group”はブラックリストへの掲示によりごく一部の問題が原因で広く利用不可となることから、慎重な対応を取るべき点を指摘している。
また、ニュージーランド内務省(DIA)が運営する「Internet and website filter システム」も児童ポルノに対するインターネットとウェブサイトのフィルタリングシステムとして、ISPを取り込んだ自発的なかたちでの子供の性的虐待イメージをホスティングするウェブサイトを阻止するDigital Child Exploitation Filtering System(DCEFS)も注目されている。DCEFSは、明確に、児童の性的虐待に関する好ましくない画像(ニュージーランド人はだれでもアクセスする重大な犯罪である)を提供するウェブサイトのみに焦点を合わせるものである。
これらの国々やEU加盟国の個別フィルタリング強化の問題と2011年12月13日にEU議会および欧州連合理事会で採択された「2004年枠組み決定(2004/68/JHA))の撤回と性的虐待(sexual abuse)、性的搾取(sexual exploitation)および児童ポルノと戦うためのEU指令(DIRECTIVE 2011/92/EU OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 13 December 2011 on combating the sexual abuse and sexual exploitation of children and child pornography, and replacing Council Framework Decision 2004/68/JHA)」とは緊密に関係する。同指令第25条は「児童ポルノを有し、又は発信する国内ウェブサイトに対してこれを直ちに削除させ、国外におけるものに対しては削除させるよう努力する。当該国内ウェブページへのインターネットアクセスは制限することができるが、透明な手続と適切な保護の規定が設けられなければならない。」と定めているからである。(わが国の課題に関しては(注2)参照)
このように見てくると、わが国において立法者や研究者等も、より本格的に児童や未成年者の人権保護問題とデバイス利用の急速な範囲拡大問題につき論ずべき時期にあると考える。本ブログがその参考になれば幸いである。
1.事実関係の要約
(1)フィンランドの2006年の立法措置
フィンランドは、児童ポルノ(child pornography)を配信するウェブサイトをターゲットとする検閲法(「2006年児童ポルノ配布防止対策普及法(Laki lapsipornografian levittämisen estotoimista: Act on Measures for Preventing the Distribution of Child Pornography (1068/2006))」)を2006年12月1日に成立、2012年1月1日に施行した。
同法は全7条からなる短い法律である。ここで、仮訳しておく。
第1条 目的:本法は児童ポルノの内容を含む特定の海外サイトのアクセスをブロックすることにより子供の基本的権利の保護強化手段を強化することを目的とする。
第2条 定義:本法において、
1)児童ポルノ(barnpornografi)とは、インターネット経由で子供のわいせつな画像を取扱う行為、かつ
2)電気通信会社(Teleföretagens)とは、電気通信市場法第2条第17項ネットワーク・オペレーター事業または第19条にいう同法第4条の免許を受けた会社または同法第13条の電気通信通知を行う事業者をいう。
第3条 電気通信会社のサービス内容を決定する権利
電気通信オペレーター会社は、児童ポルノサイトへのアクセスを持たずに自身のサービスを提供する権利を持つ。
第4条 児童ポルノ・サイトのマッピング:警察(NBI)は、児童ポルノ・サイトのリストを作成、維持、アップデートすることができる。
警察は、この立法目的に即して非政府機関、私人、通信オペレーターおよび公的機関に対し必要な情報を提供を要請しかつ受領することが出来る。
第5条 警察の情報提供義務
警察は、本法に関する理由にもとづきブロックするサイトに対し、通知する義務を負う。データシートの記載に関しては警察は電気通信会社と共同して行いうる。ブロックするサイト名はいつでも閲覧可能でなければならない。
閲覧可能情報は次の情報を含まなければならない。
1)このサイトへのアクセスはブロックされる。
2)激増(proliferation)したと判断するときのアクセス規制基準
3)必要な場合の接続する情報資源に関する情報
4)第3項の契約において引用する事業体名
第6条 守秘義務と情報開示
第4条の活動において、警察は規制機関としての守秘義務にもとづきリストを記載する。
電気通信会社およびそのオペレーションにおいて「1999年 政府活動開示法(Act on the Openness of Government Activities 21.5.1999/621 (as amended up to Act No. 1060/2002))」第23条(筆者追記Section 23 — Non-disclosure and prohibition of use )および第35条(筆者追記Section 35ーPenal provisions )に定める慎重さを実践する。
政府活動公開法に加え、警察は電気通信会社に第4条リストに関する情報の提供する権利を持つ。
第7条 施行時期
本法は、2007年1月1日に施行する。本法の施行前においても法執行手段を行いうるものとする。
(2)フィンランドの検閲制度の批判活動家マッティ・ニッキ(Matti Nikki)が主催する批判サイト”Lapsiporno.info”(フィンランド語で「児童ポルノ」の意)が警察の秘密リストに掲載された問題の経緯
2012年末、フィンランドで児童ポルノサイトへのブロッキングが実施されたが、翌1月に Nikki氏の運営する”Lapsiporno.info”というサイトがブロッキングの内容を解読する「リバースエンジニアリング」を行い、ブロックされたサイトのDNS名とIPアドレスのリストの一部を公開した。ところがその後、このサーバー自体が児童ポルノサイトとしてブロッキングされるようになったため、「児童ポルノを含まない検閲批判サイトまで恣意的にブロックしている」として起訴し裁判問題になった。 フィンランド国内の団体がこのリストに含まれる1047のサイトを精査したところ、9つのサイトが児童ポルノを掲載していたほか、9つのサイトが年齢不詳のポルノを掲載していた。28のサイトは違法か合法か判断が難しく、46のサイトは創作性の認められる児童をモデルとした作品で、残り879サイトに関しては合法なコンテンツしか存在しなかった。国内外の論議を呼ぶこととなった。
子供の諸権利保護にかかるフィンランド憲法や関係法 CRIN(子供の人権国際ネットワーク:Child Rights International Network:CRIN))のヨーロッパ部門であるENOC(European Network of Ombudspersons for Children) が詳しく解説している。個別法の内容についてはわが国で詳しく論じたものはない。筆者なりに各法律の原本にあたり調べた結果で記しておく。
A.「フィンランド憲法(Suomen perustuslaki)」(憲法の原文(英訳)を参照されたい)。特に、次の4条が子供の人権保護にかかわる規定にあたる。要旨のみ仮訳する。(なお、CRINの憲法英訳文は誤字等もあり必ずしも正確でない。筆者の判断で訳す際に前記finlex資料にもとづき修正した)
*第5条 出生および親子関係を通じたフィンランド市民権の取得(s. 5 addresses the acquisition of Finnish citizenship through birth and parentage)
*第6条 子供は平等かつ個人として扱われ、またわれかつ個人として彼らはそれらの発達のレベルに非常に対応しながら自分たちに関係する問題に影響を及ぼすことができるものとする(s. 6 provides that “children shall be treated equally and as individuals and they shall be allowed to influence matters pertaining to themselves to a degree corresponding to their level of development)
*第12条 児童の保護の必要な画像プログラムに関する制限規定は本法に定める。
(s.12provisions on restrictions relating to pictorial programmes that are necessary for the protection of children may be laid down by an Act)
*第19条 公権力は社会保障を通じ、子供に備えるのに責任がある家族と他の者を養う義務があり、彼らは子供の福祉と個人的な発達を確実にする能力がある。(s. 19 creates a right to social security, making specific reference to children and the families of those with children)
B.子供の保護に関係する法律
*The Child Welfare Act (2007/417) amended 2010 :この法律の目的は、安全な生育環境とバランスのとれてた幅広い能力開発とおよび特別な保護への子供の権利を保護することである。
*The Youth Act (2006/72) amended 2011:この法律の目的は、1) 若年層の成長と独立を支持して、若年層の積極的社会参加と権限委譲を促進して、若年層の成長と生活水準を改良することであり、2) 目的の実現は共通性、連帯感、公平さ、平等、多文化主義、インターナショナリズム、健康な生活スタイル、生命の敬意、および環境保護に基づいている。
*The Act on Measures for Preventing the Distribution of Child Pornography (1068/2006)
*Act on the Ombudsman for Children (1221/2004):この法律は、子供の利益の実現と権利を促進するためには活動の分野の機関と同様に他の当局と他の行為者と提携したChildrenのためのOmbudsmanの義務を定める。
*Young Workers' Act (998/1993) amended 2004 :この法律、個人部門または公共の部門における雇用関係で18歳(若い労働者)未満の者によって行われる仕事の従事に適用される。
*The Basic Education Act (628/1998) amended 2010
*The Child Daycare Act (1973/36) amended 2006(注3)
*The Health Care Act (1326/2010)
*The Decree on maternity and child health services, schools and student health care and preventative oral health care for children and young people (380/2009) amended 2011
2.「Lapsiporno.info裁判」の経緯
2011年6月1日の”Digital Civil Rights in Europe”が、それまでの経緯を含め詳しく報じている。ここでは、その概要を紹介する。
フィンランド国家警察は前述した外国の児童ポルノウェブサイトへのアクセスをブロックするため完全に秘密裏にブラックリストを作成し、国内で適用できるようISPに配布していた。ISPがこのブラックリストを使用するのは任意であるが、2008年通信大臣であったスヴィ・リンデン(Suvi Linden)は、ISPがリストの使用を開始しないときは、義務化させると述べた。最初のころの規制の波が去った後、ブラックリストは使用されない時期に入った。
ニッキは口頭でブラックリストにつき批判していたが、リンクしようと見つけたウェブサイトをロードしようとして偶然NBIのブラックリストを発見した。ニッキはこのブラックリストをウェブサイト上で発表したことから(彼のサイトのコンテンツとしては児童ポルノに関するものは皆無であった)、警察はニッキを児童ポルノを配信したとしてニッキを起訴し、その結果”Lapsiporno.info”サイトはブラックリストに載った。
ニッキはヘルシンキ行政裁判所にNBIに対する訴えを起こしたが、2009年5月20日、同裁判所はブラックリストはフィンランド国外でホステイングされたサイトのみ阻止するものであり、ニッキの運営サイトを包含したことは違法であると判示した。
被告(BNI)は行政最高裁判所に上告した。
これに対し、最高裁判所は、2013年8月26日に次のとおり判示し、被告の勝訴とした。
「ウェブサイト”Lapsiporno.info”が違法なサイトにリンクしたりホステイングしていなくとも、本件において児童の危害からの保護は言論の自由に優先する」
また、もしlapsiporno.infoを合法的な材料をホステイングしているがゆえに合法であると判示したならば、他のサイトが非児童ポルノの材料を追加することで、ブロックを回避できてしまう。
また、同法は外国サイトだけに適用され、外国サイトのドメインを記載するので、lapsiporno.infoサイトのブロッキング行為については、同法でカバーされていないという原告の主張を支持できない。」
この最高裁判決は、”lapsiporno.info”がフィンランドのほとんどのISPによって阻止されたままであることを意味する。しかしながら、皮肉にもlapsiporno.infoは、フィンランドのサーバでホステイングされるその他の国々からはアクセス可能である。
3.フィンランドのレコード業界団体の取り組み
国際レコード業界連合会(IFPI)のフィンランドレコード協会(Finnish National Group of IFPI)(以下、「IFPIフィンランド」という) )(注4)はスウェーデンの著作権反対運動ウェブサイトである「Pirate Bay」に対し、2013年4月に裁判闘争を開始した。
IFPIフィンランドによると、「Pirate Bay」ウェブサイトは著作権で保護された音楽レコーディングにつき著作権者が何等の補償なしに違法なダウンロードを可能にした。
このため、IFPIフィンランドはヘルシンキ地方裁判所に対し、フィンランドの大手通信会社Elisaの電話オペレータに対し、「Pirate Bay」の顧客からのアクセスを阻止するよう命じる裁判所命令を下すよう求めた。この要求は「著作権情報および反著作権センター(Copyright Information and Anti-Piracy Centre:CIAPC)」(注5)が行った。
この告訴は電話オペレータ個人をターゲットとしているが、IFPIフィンランドは引き続きの裁判において他のISPに対し同じ要求を行うかもしれない。すなわち、IFPIフィンランドの代表者であるラウリ・レチャルド(Lau ri Rechardt)は「Pirate Bay」のようなウェブサイトが機能し続ける限り、フィンランドで合法的ダウンロード市場の発展は望めないと述べた。
この裁判でフィンランドの大手通信会社Elisa のプロデュース部長であるパヌ・レヒティ(Panu Lehti)ははこの裁判は当社の1人の電話オペレータを被告とするきわめて例外的なものでElisaは「Prate bay」の活動に関し、いずれか一方の側につかない。われわれはヘルシンキ地方裁判所の判決を待つ。
レヒティは、Elisaは著作権で保護されたコンテンツに関し、反検閲活動や違法な配布には反対の立場を取ると述べている。
なお、2012年2月1日、スェーデン最高裁判所(Högsta domstolen)は「Piracy Bay」の創設者のうち3人(フレデリック・ネイエ:Fredrik Neij、ピエート・シュンダ:Peter Sunde、カール・ルンドストローム:Carl Lundstrom)に対する1年の実刑判決と損害賠償金約360万ドル(約5億5,600万円)の支払いにつき被告の控訴審に対する上告を却下し、確定した。(注6)
4.英国における民間自主規制によるブラックリスト問題
英国の人権擁護団体である”Internet Watch Foundation”(IWF)は違法な犯罪となる子供の性的虐待にかかるインターネット・コンテンツの循環を除去すべくブラックリストのISPへの提供とインタ-ネット・ホットラインを準備し、全英ベースでの「通知と違法サイトを分解」させる団体として活動している。
英国内でほとんど根絶された任務でもってその他の犯罪内容の源を根絶することを最大の目的としている。
また、同時に英国の法律の範囲内でかつ国内の法執行機関と協力した捜査や調査が行えるよう、各英国以外のウェブサイトの詳細につきパートナー国のホットラインを通じて児童の性的虐待の画像等が流布されることの阻止のため国際的な活動を行っている。
その違法なコンテンツの除去ステップの間、英国ISP業界は自発的にIWFが提供するリスト(URL List)を活用して違法サイトへのアクセスのブロックに合意した。
ここでは、IWFの”URL List”に関する主要解説項目について概観しておく。詳しくは付記したURLで原文を参照されたい。
(1)IWF URL LiIst Polocy and Procedures
児童の性的虐待にかかるURLの評価や本リストに関し遵守されるべきポリシーと手順につき解説している。
(2)IWF URL List Recipients
具体的な協力ISP名やグループ名が列記される。
(3) Frequency asked questions
本制度にかかる詳細な解説をQ&Aでまとめている。
Blocking Good Practice
効果的ブロッキングのための良き実践例
5.オーストラリア連邦警察やACM による児童ポルノブロックのリストの実施状況
(1)2011年6月28日のCyberLaw Blogは次のような解説記事を載せた。
「オーストラリアの連邦警察当局(Australian Federal Police :AFP)はオンライン児童虐待をする材料となることを狙う任意のインターネット・フィルタイング計画の下で、初めてのISP検閲通知システムの準備を開始した。
この初めての任意のフィルタリング・プログラムは”Telstra”が2010年7月に連邦政府が慎重であったため対応に揺れ動いており困難を極める模様であった。
しかしながら、6月27日、Telstraはこの計画が国際刑事警察機構(Interpol)により維持されかつAFPが入念に検査したブロック・リストの材料が狭い範囲限定されるという計画に関するとする公約を確認した。
また、大手キャリアーである”Optus”(オーストラリア 第2の通信会社で、シンガポール最大の通信会社シンガポール・テレコムに所有されている)も”Interpol List”にもとづく計画に従うが、7月下旬まではサイト・ブロックは開始しないことを確認した。
さらに、オーストラリアのインターネット産業連合会(Internet Industry Association:IIA)はInterpol Listにもとづく産業界全体の計画の枠組みを明らかにした。
当時IIAの代表であったペーター・コロネオス(Peter Coroneos)はこの計画は今日、テロや重大犯罪の捜査を目的とする規定であった「1997年電気通信法(Telecommunications Act)」の関連規定(313条)を適用する初めてのケースになると述べた。
AFPのハイテク犯罪活動班の部長であったグランド・エドワーズ(Grand Edwards)は、AFPは任意の遵守の下でブロックを求める児童の虐待内容を含むサイトのリストをISPする準備を進めていたと述べた。さらにエドワーズは
1997年電気通信法313条の下でISPに発行する番号を手続き中であると述べた。
さらに、”Optus”はブロックリストの取り組みは尊敬に値すると述べた。そのスポークスウーマンは「このシステムは安全で、信頼に足りかつ他の国々で十分な試験を行ってきたアプローチである」と述べた。
一方、ISPである”iiNet”、 ”Internode”や”Primus”を含む中小ISPはこの計画に関してはコメントを差し控えたままであった。
なお、人権擁護団体”Civil Liberties Australia”は児童ポルノをブロックしようとする政府の姿勢は支持するものの、オーストラリアの主要ISP 2社が採用を予定するインターネットフィルタリングプログラムが7月にオンライン児童虐待問題を包み隠す点ならびに、直接法執行にあたる政府機関が無視されることの懸念を述べた。
また、児童の保護支援団体である”Child Wise”の代表であるバナーデット・マックメナミン(Bernadette McMenamin)は、フィルタリングシステムの欠点の問題が計画を批判する理由とはなり得ないし、普通のオーストラリア人は、フィルター環境を回避できるほどのエリートハッカーではない、と述べた。
(2)2013年2月AFPは児童の保護オペレーションにつき次のようなリリースを行った。また、ACMA(注7)との間でオンライン性犯罪取締まり強化にかかる合意文書 (Agreement signed to target online child sex crime)を締結した。
AFPには、どんな環境に彼らがいても子供と若年層が確実に安全になるようにする際に行動する重要な役割がある。 この役割を実現させる際に、AFPはすべてのオーストラリアの警察機関、多くの国際的な政府機関、政府の各省、産業および非営利団体との強いパートナーシップを作り上げた。
”REPORT ONLINE CHILD SEX EXPLOITATION” につき、 AFPは特にオンラインで若年層を安全に保つことと関連して多くの防犯と認識の引き上げイニシアチブにかかわる。
以下のリンクか私たちのオンライン調査フォームでこれらのイニシアチブと関連した調査をすることができる。
AFPはHigh Tech Crime Operationsユニットを通してオンライン子供との性交開発と子どもとの性交観光に関連している犯罪の調査に責任がある。 重要な刑罰規定はこれらの犯罪行為に適用される。
6.ニュージーランドのDigital Child Exploitation Filtering Systemの実態
2012年2月7日、ニュージーランドの人権擁護団体(注8)の代表であるジョシュア・グレインジャー(Joshua Grainger)は、連邦内務省に対し、公的情報公開法に基づき標記システムにつき開示請求を行った。
これに対し、内務省の回答が公開されている。本ブログでは詳しくは解説しないが、このような支援団体があること自体が研究材料といえよう。
関係するサイトのURLを記す。
① http://www.dia.govt.nz/Censorship-DCEFS
ニュージーランド内務省のフィルタリングサイト
②7 http://www.dia.govt.nz/Censorship
ニュージーランド内務省の検閲に関する専門サイト
7.EUの「2004年枠組み決定(2004/68/JHA))の撤回と性的虐待(sexual abuse)、性的搾取(sexual exploitation)および児童ポルノと戦うためのEU指令」の検討経緯
概要のみまとめておく。
(1)2009年3月29日、欧州委員会は標記指令草案を採択した旨リリースした。同時に「指令草案に関するQ&A 」を公表した。
(2)2011年12月13日にEUは「The European Union (EU) adopts legislation aimed at combating sexual offences committed against children. The Directive covers different aspects such as sanctions, prevention, and assistance for victims. Specific provisions are provided concerning child pornography on the Internet and sexual tourism」を公表し、欧州議会および欧州連合理事会において指令案を可決した旨明らかにした。
同指令の要旨は、わが国では国会図書館 植月 献二「外国の立法:【EU】 児童の性的搾取・児童ポルノ等の対策強化指令」が整理しまとめている。
8.わが国で検討すべき課題につき若干の考察
時間の関係でここでは詳しく論じないが、前述したとおり、ブラックリストによる安易なアクセス規制は、一般論としては情報規制を伴うし、各種ITサービス全体の機能低下をもたらすといえる。
ここではフィンランドや英国等の論議をふまえ、わが国として検討すべき課題のみ整理しておく。
①ブラックリストの作成につきフィンランド等方式を取るかあるいは英国等のように自主規制機関方式を採用するか。
②システムの透明性をどのように担保するか。
③日本国外のURLのみリスト化の対象とすべきか。
***********************************************************************************************
(注1)オンラインストレージとは、各種データを保存するためのディスクの空き領域をインターネットを通じて貸し出すサービス。有料のものと無料のものがあり、後者では利用時に広告を表示したり、利用できる容量に制限があったりする。自宅・職場・外出先で同じファイルを利用できるほか、複数の利用者によるデータの共有も可能。「ネットストレージ」、「オンラインストレージサービス」、「ストレージサービス」、「ファイルホスティングサービス」ともいう。(kotobank.jp から引用)
(注2)わが国では1999年に「 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年5月26日法律第52号)」が成立、施行されている。その第7条がフィンランド立法(2006年児童ポルノ配布防止対策普及法)に該当する規制法といえる。
(児童ポルノ提供等)
第七条 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
なお、第169回国会衆議院議員提案:において、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案要綱の改正案が示されている点に留意すべきである。
(インターネットの利用に係る事業者の努力)
第十四条の二 インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これによりいったん国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることにかんがみ、捜査機関への協力、当該事業者が有する管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。
(注3) 「 The Child Daycare Act (1973/36) amended 2006」に関し、わが国では研究報告 伊藤喬治「現代のフィンランドにおける〈保育〉制度と保育者養成」が詳しく解説しているので、そのURL(http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/7658/1/25-33.pdf)のみ記しておく。
(注4) IFPIフィンランド(フィンランドのMusiikkituottajatのIFPI www.ifpi.orgのフィンランドのNational Group)は、フィンランドのレコード会社23社を代表する国家レベルの業界団体。 メンバーは主要な国際的なレコード会社(EMI、ソニー、Universalおよびワーナー)から小さい独立系レコード・プロデューサーまで及ぶ。IFPIフィンランドはメンバーによって融資された民間非営利組織である。フィンランドの総音楽市場販売の約95%のシェアを占める。
(注5) ”CIAPC”は、フィンランド教育・文化省( Opetus- ja kulttuuriministeriö:http://www.minedu.fi/ )とともにメンバー協会によって資金支援される非営利団体である。その目的と任務は、著作権の侵害に不利に働くことについて、メンバー協会の一般的な利益をモニターして、その改良措置を実行することにある。
(注6) 同裁判につきわが国でも翻訳解説記事がある。なお、フィンランドと同様、スェーデンの児童ポルノに対する裁判所の姿勢は厳しく、2012年5月16日の 記事で最高裁が児童ポルノのマンガ本の翻訳者(manga translator)(シモン・ルンドストロ-ム:Simon Lundstrom)が39のマンガ画像を保持していたことに対する有罪判決が確定した旨報じられている。
この裁判で、被告弁護側証人であるガルブ大学の研究者ヨハン・ホリエル(Johan Hojer)は「この画像に表示されている人は現実にいる人でない。検察の起訴はこれらの画像はカムフラージュされた写真であるとみなす傾向があるが、これらはあくまでアニメの幻想である」と証言した。
一方、検察官ヘビッヒ・トロスト(Hedvig Trost)は審理の間、「画像は子供に性行為の実行を強要しうるし、描かれたものは本当の子供であるかもしれず、また描く際に本当の子供の写真が使用されたかも知れない。外部からオリジナルの写真があったかどうかは知りえない」と述べた。 本裁判第一審であるウプサラ(Uppsala)地方裁判所は2010年6月に被告のPC内にあった画像51枚につき有罪とし、罰金25,000クローナ(約37万1,250円)を命じた。スヴィア(Svea)控訴裁判所は有罪判決を支持したが、違法な画像数を39として罰金額を5,600 クローナ(約83,000円)に引き下げた。
被告は、最近10年間でドイツのハンブルクに本社を持つ漫画や児童書の出版社で 現在ドイツにおける3大漫画出版社のひとつであるボニエ・カールセン(Bonnier Carlsen)の2つのシリーズにおける80本以上の翻訳を引き受けていたが、第一審判決後、カールセンは被告との契約を破棄した。
(注7)オーストラリアでは、ACMAの禁止コンテンツに関する非公開のブラックリストの内容を公開しているサイトがある。2010年3月29日 Libertus .net記事「About the ACMA's Blacklist of "Prohibited Content"」が報じたもので2007~2009年の間のデータをベースに解説している。
(注8) FYIは、ニュージーランド人が公的にオンラインで「1982年公的情報公開法(Official Information Act :OIA)」および「1987年地方政府の公的情報および会合情報公開法(Local Government Official Information and Meetings Act:LGOIMA)」の公開要求行為の支援団体のウェブサイトである。
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