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AI立法 のトレンド: 米国の州法案の発展を概観

2024-02-03 06:35:40 | AI

 筆者は本ブログでAIへの取組につき以下のテーマを取り上げた。

①2023.12.16 「NISTからこのほど公開された『NIST SP 800-226 草案』および『差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案』に対するパブリックコメントの背景と意義」、 ②2023.12.22 「米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST『情報提供依頼文書』の具体的内容」、③2023.12.24 「米国国立科学財団 (NSF) 工学局 (ENG)の人工知能(AI)に関連する研究および教育提案の提出を積極的に奨励する具体的ガイダンスの発出」である。

 ところで、アトランダムであるが、本ブログにおいて今後、筆者がAI関連で取り上げたいと考えるテーマを以下で挙げる。

(1)米国連邦ベースでのAI規制法案の立法動向、(2) FTC(連邦取引委員会)のAI企業にプライバシーと機密保持の約束を守るよう警告ならびに商品先物取引委員会(CFTC)の顧客宛て勧告:人工知能詐欺に注意するよう警告、(3)EUの取組み(A European approach to excellence in AI; A European approach to trust in AI; European proposal for a legal framework on AI; Important milestonesの概観や欧州委員会独自の取組み(3)英国の取組みとして2023 年 3 月 29 日付け英国情報コミッショナー局 (ICO)のAI と個人データ保護に関する最新のガイダンスを発表、等である。

〇グローバルな法律事務所: Covington & Burling LLPの律情報プラットフォームLexblog21日付けblogを以下、仮訳する。なお、個別州法案の具体的内容についてはリンク先で直接確認されたい。

 本ブログの著者はYaron Dori、August Gweon、Jayne Ponderである。

Yaron Dori 氏

Jayne Ponder 氏

 米国の政策立案者は、特に州レベルで人工知能(AI)を規制する法案に関心を示し続けている。 連邦議会における包括的な AI 法案と枠組みは大きな注目を集めているが、州議会も AI を規制する独自の取り組みを進めている。

 このブログ投稿では、過去 1 年間に導入された州の AI 法案の主要テーマをまとめている。 新しい州議会が始まり、今後数か月間でさらに活発な活動が見られることが予想される。

(1)通知義務要件(Notice Requirements:): 州の AI 法案の多くは、個人への通知に重点を置いている。 一部の法案では、雇用におけるAIの使用など、個人の権利や機会に影響を与える意思決定のために自動化された意思決定ツールを使用する場合、対象となる事業体に個人に通知するよう義務付けることになる。

 たとえば、コロンビア特別区の「アルゴリズムによる差別停止法」(B 114) では、情報源に関する情報の提供を含め、対象事業体がアルゴリズムによる適格性の決定において個人情報をどのように使用するかについての通知が必要となり、また、「有害な行為」をもたらすアルゴリズムによる適格性の決定の影響を受ける個人に通知する等別途通知が必要となる。

 同様に、マサチューセッツ州の「陰惨な労働環境を防止法」(HB 1873) も同様に、自動意思決定システムを使用する雇用主またはベンダーに対し、システムを導入する前に労働者に通知することを義務付けており、「重大な更新または変更がある場合システムに加えられた変更」には追加の通知を必要とさせる。さらに、他の AI 法案は、AI エコシステム内の事業体間の開示要件に焦点を当てている。たとえば、ワシントン州議会は、自動意思決定ツールの開発者に対し、ツールの「既知の制限」、ツールのプログラムやトレーニングに使用されるデータの種類、およびツールの使用方法やいかにツールの導入者に対する有効性が評価されるか等に関する文書の提供を義務付ける法案 (HB 1951) を検討している。

 (2) AI ツール開発における影響評価(Impact Assessments): 州の AI 法案のもう 1 つの重要なテーマは、AI ツール開発における影響評価の要件に焦点を当てている。 これらの評価の要求規定は、潜在的な差別、プライバシー、正確性への損害を軽減することを目的としている。

 たとえば、バーモント州法案 (HB 114) では、自動化された意思決定ツールを使用する雇用主に対し、雇用関連の意思決定にツールを使用する前にアルゴリズムによる影響評価を実施することが求められている。

 さらに、ワシントン議会で審議中の前記の法案 (HB 1951) では、AI導入者に対し、アルゴリズムによる意思決定の合理的に予見可能なリスクの評価や実施される安全措置等、自動化された意思決定ツールの影響評価を完了することが求めている。

(3)個人の権利保護(Individual Rights): 州議会は、消費者が特定の個人の権利を行使するための要件を AI 法案に盛り込むことも求めている。 たとえば、いくつかの州の AI 法案では、自動化された意思決定に基づく決定を「オプトアウト」したり、そのような決定について「人間による再評価を要求」することで個人の権利を確立する予定である。

 例えば、カリフォルニア州 (AB 331)ニューヨーク州 (AB 7859) は、自動化された意思決定ツールが結果的な問題を解決するために使用されている、またはその制御要因となっている場合に、個人が「代替選択プロセス」を要求できるように AI 導入業者に義務付ける法案を検討している。

  同様に、ニューヨークの AI 権利章典 (S 8209)は、人間による代替を支持して自動システムの使用を「オプトアウトする権利」を個人に与えることにmなっている。

(4)ライセンスと登録制度(Licensing & Registration Regimes): 少数の州議会が AI のライセンスと登録の要件を提案している。 たとえば、ニューヨーク州の高度 AI ライセンス法 (A 8195) では、特定の「高リスクの高度 AI システム」のすべての開発者および運用者に対し、使用前に州にライセンスを申請することが義務付けられている。 他の法案では、AI システムの特定の用途に登録が必要である。 たとえば、イリノイ州議会で導入された修正案 (HB 1002) では、病院が使用する診断アルゴリズムの州による認証が必要になる。

(5)  生成 AI とコンテンツのラベル付け(Generative AI & Content Labeling): 州の AI 法におけるもう 1 つの顕著なテーマは、生成 AI システムによって生成されたコンテンツのラベル付けに焦点を当てていることである。

 たとえば、ロードアイランド州は、生成 AI コンテンツを認証するために「独特の透かし(distinctive watermark)」を要求する法案 (H 6286) を検討している。

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