Financial and Social System of Information Security

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フィンランドのモバイル国民証明システムへの基本的疑問

2010-10-08 14:48:50 | 本人認証技術システム

 

 Last Updated:March 16,2021

 2005年7月28日に公表されたところによると、フィンランド政府はE-Government (注1)の一環としてSIM(Subscription Identity Module)カード(注2)を含む政府保証による「電子証明システム」、すなわち「モバイル国民証明制度」を2005年末までに全面稼動する。

 同国の人口登録センター(Population Register Centre)が最初のモバイル証明を採用する機関となり、同センターは8月に①住所変更通知、②人口情報システムにおける既存の情報のチェックという2つの業務を開始する。このサービスはフィンランドの第2の携帯電話会社である「Elisa」と共同開発している。その他全国ベースの電子手帳(Sähköinen Reissuvihko)でも利用できるとされている。

 8月以降はさらにm-Governmentサービスの範囲を、①社会保険取扱機関(KELA)、②税徴収当局、③労働省に拡大する予定である。また、ICチップのIDカード、visaの支払いカード、OKO銀行グループによるモバイルバンキングやその他の会社によるモバイル・サービスも予定されている。

 Elisaの国民証明システム計画の責任者であるミッコ・サレーラ氏は、フィンランドでは銀行などに続いてリテールサービス業者や行政機関がこれらのサービスに参入すると述べている。すなわちモバイル証明制度は安全性、使いやすさや価格面で割安であり、多目的な利用方法にかかわらず、単に4桁のデジタルPINのログインのみが必要とされ、従来使用されているユーザーIDやパスワード(ワンタイムパスワードを含む)、銀行コードに替わるものであると述べている。

 しかし、この記事を読んで抱いた疑問は、①多目的本人証明デバイスであるなら当然「ななりすまし(Identity Theft)」対策が重要であろう。今世界のサイバー犯罪、e-Governmentの担当者やIT技術者の最大の課題であり、生体認証技術を含めた各種の技術が試行、実用化されている。フィンランド自身がこの問題を無視しているとは思えない点、②政府の保証付ということは、セキュリティ技術面のことかあるいは損害補償の問題なのか、などである。政府のサイト(e-finland)に「Further info」があり、個別質問に応じている。早速質問メールを出すこととした。

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(注1)フィンランドのSIMカードによる電子認証(メーカーはelisa)に関する詳しい解説「Digital signatures via SIM cards and mobile phones take off in Finland」

がある。また、フィンランドのe-Governmentにおける電子認証すなわち、IDlカードや銀行取引IDについての解説例やeID in Finland : new card design for 2017を参照されたい。

(注2)同カードには顧客の電話番号、ユーザーID、通話料金情報等を記録する。NOKIA(GSM規格)が販売している携帯電話で使用されている。この仕様のメリットは携帯電話本体のメーカーや機種、国にかかわらずカードを交換することで移動しながら、複数の携帯電話利用が可能となる点である。

 

(今回のブログは2005年8月31日登録分の改訂版である)
                            
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