PCに記録された記録についての米国連邦司法省(DOJ)からの資料提出要請(要請対象はAOL、Yahoo、マイクロソフト、Google)に対して拒否を貫いたGoogleであるが、「Desktop 3」についてはプライバシー権保護団体からは強い批判が出されていると専門メディアTheregister.UKやUSAtodayが報じている。(WikipediaもDesktop 3のセキュリティやプライバシーからの懸念を指摘している )。なお、Googleは2011年9月にDesktopを継続しない旨を公表した。
「Desktop 3」は、同社の従来の検索エンジンと同様PC内のファイルを検索するだけでなく複数のPC内のデータを追跡する機能を有している。そのために、旧バージョンと異なり、Googleのサーバー内に個人のテキスト・ファイルをいったんコピーし、検索後にもとのPCに戻すという仕組みである。
このような新機能について、市場分析業者の「ガートナー」等は歓迎しているものの、一方でオンラインプライバシー保護団体である「Electronic Frontier Foundation」の弁護士フレッド・フォン・ローマン(Fred von Lohmann)はユーザーにとって極めて膨大なプライバシー・リスクであると述べている。
ここで具体的に、データの流れを見ておく。
自宅のPC(Aと呼ぶ)と職場のPC(Bと呼ぶ)の双方に「Google Desktop」をダウンロードする。このことで、Aのインデックスをつけたすべてのファイルを職場で作成するWord、Excel、Acrobat、スプレッドシートのファイルにコピーが出来る。
BはGoogleにサインインしてAで作成したファイルを検索して取り出すのであるが、Googleのサーバー内には30日間のみ保存されるため、利用されない場合はファイルは破棄されるという仕組みである。
ローマン弁護士によると、自宅の個人PC内の個人情報はGoogleのサーバー内にもあり、相互に利便性を共有するのである。その結果、利用顧客はGoogleのパスワードを違法に入手した民事訴訟の原告(private litigants)や司法当局等の召喚状(subpoenas)(注)の危機にさらされることになる。より具体的なリスクはEFFのケビン・バンクストン(Kevin Bankston)弁護士によると、税還付申告、ラブレター、ビジネスの記録、金融取引情報、医療情報等のファイルがコピーされてしまうと述べている。従来、これらの情報入手は司法当局の家宅捜査令状というより召喚状が用いられてきたが、今後はその手続きさえも通知なしに行われると警告している。
一方、Googleのスポークス・ウーマンはこの点について、プライバシー保護の問題は同サービスの開発時点での考慮事項で、銀行の口座情報等通信途上ならびにGoogleのサーバー内で暗号化されていたり、また、パスワードで保護されている「secure Webページ」については、Googleのサーバーから簡単に削除が可能であると述べている。すなわち、召喚状問題について、Googleはサーバーに保管されたファイルの内容について、法律手続きに従うことは当然であるが、司法当局等から提出を求められた場合は特に禁止されている場合を除きユーザーにその旨通知すると述べている。
(注)「罰則つきの召喚状・証拠提出命令状」とは、証人の出頭,証拠の提出に関して,従わないときには処罰する旨記された令状で, 裁判所や議会から出されるもの。
〔参照URL〕
http://www.theregister.co.uk/2006/02/10/google_desktop_privacy_kerfuffle/
http://www.usatoday.com/tech/news/computersecurity/2006-02-09-google-privacy_x.htm
Google Desktop 3に新たな懸念が浮上--使用禁止の企業も - CNET Japan
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(今回のブログは2006年2月11日登録分の改訂版である)
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