NHK高校講座日本史17「豊臣秀吉」

ずっと期待を裏切る？まともさだったんで、ちょっと油断してたんだけど、ついにここで来たかという感じ。NHK高校講座日本史17「豊臣秀吉」がなかなかのトンデモだった。

恒例の三つの要は①秀吉の全国統一、②見地と刀狩り、③朝鮮侵略だったんだけど、「朝鮮侵略」という言葉が使われてるのを見た瞬間に、もうこれは来るなと身構えてしまった。これだけで番組としてどういう立場に立ってるのかが丸わかり。歴史的用語としては、ここは「唐入り」が妥当だろうし、「朝鮮侵略」と言う用語も表現として嘘ではないけど、史実に近づこうとするなら、なんで「日明戦争」とか被せないんだという。

細かい内容的には、例によって全くの嘘ではないけど、かといって当時の資料に決して忠実でもない。実に安易な日本人的な妥協の産物としか思えなかった。可能な限り史実に従おうとするなら、そんな「折衷案」なんて非学問的な態度は決して取ってはいけないのに。

分かりやすいところでは、わざわざ李舜臣の名前を出して、ほぼ顕彰してるところなんて、あっちサイドへの「気遣い」そのものとしか。李氏朝鮮サイドを出すなら、そんな些末な個人名ではなくて、国としての一貫したグダグダぶり、ダメっぷりを教えることの方が、史実としてより重要じゃなかろか。

そして、この戦争の背景というか本質が中華思想であり、天命思想であることを教えることの方が、現在リアルタイムで起こってることを理解する上での基礎となる、それこそ歴史教育なんじゃないか。中華人民共和国がなぜああなのか。韓国がなぜああなのか、彼を知り己を知れば百戦危うからず。

さらには、秀吉という人物を理解すると言うことであれば、せっかく寧波という地名を出してたことだし、当時の世界観を説明する、一例「中世倭人伝」的な、現代の国境感覚とは全く異なるリムワールド的な理解を深めるというのが、より有意義だったんじゃないか。

なのにいろいろと微妙におかしな情報をまぶしたあげく、高橋氏に「秀吉さん、ちょっと浅はかだったのかな」と語らせる始末。向井地さん、土安さん、込山さんに頷かせてたけど、こういうのは薄いとは言え、立派な「洗脳」まがい。にしても、ある種首尾一貫してると言える、テレビ業界というかとりわけNHKの、このひたすら秀吉下げは何なんだろう。

特別講師の東京大学史料編纂所教授、山本博文先生は、まともなことも語る一方で、ほとんどシームレスで香ばしいことも語ってた。どういう方かは知らないんで、間違ってるかも知れないけど、この語り口からすると、ある種典型的な無自覚のダメ学者さんなのかな。