(97)美穂子
四百字詰原稿用紙換算11枚
ページ数や内容に縛りのないweb漫画掲載を想定しておりネームがなくても順番にコマが起ち上がるように書いてあります。季節は常に真夏である。
登場人物
里香(17) 165㎝。修一と同クラス。清楚な美人でアニメ声。
津川幸雄(40)穏やかな顔で紳士。
津川の妻(40)いかついオッサンだが優しそう。
上田美穂子(28)165㎝。グラマーな美人。
花、美穂子の娘(2)
美穂子の夫(40)工務店経営。ガラの悪い顔でレスラーみたいな身体。
美穂子の母(50)品はないが小悪魔的な魅力がある。
N=ナレーション
バイクにまたがった修一に、
津川「その前に一つだけ質問」
津川「ドローンの持ち主がなぜ君の名前を知ってたか気にならないの?」
修一「わからない事は考えるだけ無駄」
修一「俺に用があったら向こうからアタックしてくるよ」
クラウンを運転しながら、前を走る二人の後ろ姿をぼう然と見て、
津川(なんなんだ、この子たちは・・・)
修一、里香、クラウンの順で川の横の土手を走っている。
修一が土手の下の川を見て「キッ」と停車する。
里香「どうしたの?」と修一の横に停まって川の方を見る。
土手の下。上田美穂子(28)が泣く花の手をひいて川に入ってゆく(膝まで浸かってる)のを見て、
里香「あっ」と驚く。
バイクで急な坂を下りてゆく修一に、
里香「危ない修ちゃん!」と叫んだ彼女の側に津川が驚いて駈けてくる。
後輪をスリップさせながら猛スピードで川に突っ込んでゆく修一の後ろ姿。
「ザザザー」と水を切り裂いて母娘に向かってゆく。
修一、左腕でバッと花を奪って抱き抱える。
花を抱き抱えたまま岸辺に上がってザザーッとUターンする。その後ろに里香と津川が走り寄ってくる。
美穂子、太腿まで水に浸かってぼう然とこっちを見ている。
スカートがまくれ上がって濡れた太腿が露わになり、スカートの縁から滴が滴り落ちてる絵のアップ。
美穂子「花―っ」と叫び、必死に岸に走る。
美穂子、足を滑らせて倒れる。
岸辺に立って「わーん」と泣いてる花に向かって、全身ずぶぬれで水を蹴立てて走ってゆく美穂子の後ろ姿。
両膝をついて花に抱きすがり、
美穂子「ごめんね、ごめんね」と泣く絵にN『上田美穂子。28歳』
修一「公園で見た時に邪気を感じたが・・・」
驚いて修一を見上げた美穂子に、
修一「間に合ってよかった・・・」
美穂子「(怒ったように)どうせ助けるんならなにか安心できる事を言ってよ!」
津川と共に驚き、
里香(およよ、予期せぬカゥンターパンチ・・・)
修一「(感心し)斬新な切り口でござるな」
修一「死のうとした訳を聞かせてくれるか?」
挑むような目で、
美穂子「それを話したら助けてくれるとでもいうの?」
修一「あんたが善人なら助けるよ」
挑むような目で、
美穂子「会ったばかりで私が善人かどうかどうやって見分けるっての?」
修一がこめかみに青筋を立てて「ピキッ」とキレたので里香が(ひっ、怒髪天になる・・・)と青ざめる。
鬼の形相で、
修一「じやかんしゃーーっ!」
修一「そがあに死にたいんならもう一回川に放りこんじゃろか、おー?」
美穂子「御免なさい。助けて下さい」と怯えて言ったその変わり身の早さに津川と共にあ然とし、
里香(カメレオンみたいな人・・・)
空の絵。
全員が傾斜のある土手に座り、
美穂子「(修一に)会った事もない見知らぬ人間になぜ親切にしてくれるの?」
修一「面白き事も無き世をおもしろく・・・」
驚き、
里香(また新しいフレーズ追加・・・)
修一「勝手に感情移入してしまう俺の無邪気なお節介と思ってくだされ」
美穂子、修一を見つめる。
遠い目をして、
美穂子「夫は工務店をやってて・・・」
美穂子「私は近所の会社にパートで勤めてたんだけど、一年前・・・」
《美穂子の回想》
小さな事務所の裏口の絵に美穂子の声、
「じゃ、お先に失礼します」「お疲れさまー」
裏口をガチャと閉めて出てきた美穂子(ノースリーブ、スカート。手にトートーバック)の呟き、
美穂子(こんな早い時間にお迎えに行ったら花は驚くだろうな)
○保育園
保育園の外観。
手を繋いで保育園から出てきて、
花 「きょうはお迎えが早かったね」
美穂子「お仕事がはかどったから早く上がらせてもらえたの。ママもびっくりよ」
他家の少し高くなった石垣の上を歩く花と手を繋いで歩き、
美穂子「ねえ花ちゃん、帰ったらママとホットケーキをつくろうか」
花 「うん。花ちゃんがヤキヤキするー」
注、美穂子宅=二階建ての古い一軒家。玄関の戸はガラスの入った横開き。玄関前に庭につづく小さなスペースがある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/19/95612f4e8ec355e1f67d6e7a2f9cef23.jpg)
↑戸のイメージ
玄関戸をガラッと開けたら女物の靴があったので美穂子が不審な顔をする。
短い廊下の向うの部屋から「あぁ・・・」と声が漏れ聞こえ、ハッとする。
美穂子「花ちゃん、ママが呼ぶまでお庭で遊んでなさい」
花 「はあい」と庭にゆく。
美穂子、ドキドキしながら扉のノブに手をかける。
戸を少し開けると服を着たままスカートをめくった美穂子の母の上に作業ズボンを尻まで下した夫が重なりセックスしてたので驚愕する。
母、美穂子に気づきハッとする。
母が突然腰を引き勃起を抜いたので驚き、
夫 「お義母さん、ま、まだ・・・」
気まずげに横座りしてスカートのすそを下す母の横で夫が美穂子に気づき、
夫 「美穂子・・・なっ、なんでこんな時間に・・・」
正坐して母を睨み、
美穂子「お母さん一体いつからの関係なの?」
開き直って髪を直し、
母 「今日、家に寄ったらたまたまはずみでそうなっただけよ・・・」
母 「ま、あんたは信じないだろうけど」
美穂子「当たり前じゃないの!私の留守を狙って前からヤッてたんでしょ?!」
母、呆れて娘を見る。
母 「産後鬱かなんか知らないけど男盛りの夫に二年間もやらせないあんたが悪いんでしょうが?・・・」
母 「女の務めも果たさず離婚されずに済んでるのは誰のお蔭だと思ってんのよ?」
美穂子、悔しげに母を睨む。
夜。消灯した部屋。
襖の向うから「あん、あん・・・」と喘ぎが聞こえ、耳を塞いで花を抱きしめてる絵に美穂子の声、
「開き直った母はその日から家に転がり込み、私がいてもおかまいなしに・・・」
後日、夫に張り倒された美穂子の後ろで花が泣きじゃくってる絵に声、
「文句を言ったら毎日のように暴力を振るわれ・・・」
「我慢出来なくなって一週間前に家を飛び出して今ビジネスホテルに泊まってるの・・・」
《回想が終わり、土手のシーンに戻る》
花を胸に抱き、
美穂子「かっとなって家を出たけど私は働けないし、もう死ぬしかなかった・・・」
不思議そうに、
津川「貴女は若くて綺麗だから仕事なんかいくらでもあるでしょうに?・・・」
美穂子を見つめ、
修一(確かに妙にエキゾチックな雰囲気を醸し出してて男好きのする美人ではあるな・・・)
美穂子「夫の浮気を知ってからストレスのせいかとつぜん皮膚の病気が発症して・・・」
里香に両手の指を見せ(醜いから症状は描かない)、
美穂子「手足の爪が全部腐り、指先の皮も破れて赤身が出て、痛くて物に触れないんです」
里香「ほんとだ、すっごく痛そう・・・」
修一、はっとして美穂子の指を見る。
美穂子「皮膚科に行っても治らないし、もう何もかもどうでもよくなって・・・」
美穂子の手を取って見つめ、
修一「右の爪に発症したら左の同じ爪も発症するだろ?」
美穂子、驚いて頷く。
修一「必ず左右対称に症状が出るのがこの病気の不思議なとこなんだ」
修一「ステロイドを塗っても紫外線を照射しても改善せず悪化するばかりだろ?」
美穂子、驚愕し、目を見開いて頷く。
里香、津川、修一を見て驚く。
修一「醜い爪を人に見られないかとノイローゼになり、それで鬱になったと?」
驚いて頷き、
美穂子「なぜそんなに詳しいの?・・・」
修一「症例が少ない病気を奇病と言うならこれはまさしく奇病で、皮膚科でも診断をつけられない医者がけっこういる」
修一「医者の勉強不足もあるが、市場が小さいから製薬会社も本気で治療薬を開発しないんだ」
美穂子「(乞う様に)おねがい。病名を知ってるのなら教えて」
修一「それは掌蹠膿疱症でござるよ」
つづく
四百字詰原稿用紙換算11枚
ページ数や内容に縛りのないweb漫画掲載を想定しておりネームがなくても順番にコマが起ち上がるように書いてあります。季節は常に真夏である。
登場人物
里香(17) 165㎝。修一と同クラス。清楚な美人でアニメ声。
津川幸雄(40)穏やかな顔で紳士。
津川の妻(40)いかついオッサンだが優しそう。
上田美穂子(28)165㎝。グラマーな美人。
花、美穂子の娘(2)
美穂子の夫(40)工務店経営。ガラの悪い顔でレスラーみたいな身体。
美穂子の母(50)品はないが小悪魔的な魅力がある。
N=ナレーション
バイクにまたがった修一に、
津川「その前に一つだけ質問」
津川「ドローンの持ち主がなぜ君の名前を知ってたか気にならないの?」
修一「わからない事は考えるだけ無駄」
修一「俺に用があったら向こうからアタックしてくるよ」
クラウンを運転しながら、前を走る二人の後ろ姿をぼう然と見て、
津川(なんなんだ、この子たちは・・・)
修一、里香、クラウンの順で川の横の土手を走っている。
修一が土手の下の川を見て「キッ」と停車する。
里香「どうしたの?」と修一の横に停まって川の方を見る。
土手の下。上田美穂子(28)が泣く花の手をひいて川に入ってゆく(膝まで浸かってる)のを見て、
里香「あっ」と驚く。
バイクで急な坂を下りてゆく修一に、
里香「危ない修ちゃん!」と叫んだ彼女の側に津川が驚いて駈けてくる。
後輪をスリップさせながら猛スピードで川に突っ込んでゆく修一の後ろ姿。
「ザザザー」と水を切り裂いて母娘に向かってゆく。
修一、左腕でバッと花を奪って抱き抱える。
花を抱き抱えたまま岸辺に上がってザザーッとUターンする。その後ろに里香と津川が走り寄ってくる。
美穂子、太腿まで水に浸かってぼう然とこっちを見ている。
スカートがまくれ上がって濡れた太腿が露わになり、スカートの縁から滴が滴り落ちてる絵のアップ。
美穂子「花―っ」と叫び、必死に岸に走る。
美穂子、足を滑らせて倒れる。
岸辺に立って「わーん」と泣いてる花に向かって、全身ずぶぬれで水を蹴立てて走ってゆく美穂子の後ろ姿。
両膝をついて花に抱きすがり、
美穂子「ごめんね、ごめんね」と泣く絵にN『上田美穂子。28歳』
修一「公園で見た時に邪気を感じたが・・・」
驚いて修一を見上げた美穂子に、
修一「間に合ってよかった・・・」
美穂子「(怒ったように)どうせ助けるんならなにか安心できる事を言ってよ!」
津川と共に驚き、
里香(およよ、予期せぬカゥンターパンチ・・・)
修一「(感心し)斬新な切り口でござるな」
修一「死のうとした訳を聞かせてくれるか?」
挑むような目で、
美穂子「それを話したら助けてくれるとでもいうの?」
修一「あんたが善人なら助けるよ」
挑むような目で、
美穂子「会ったばかりで私が善人かどうかどうやって見分けるっての?」
修一がこめかみに青筋を立てて「ピキッ」とキレたので里香が(ひっ、怒髪天になる・・・)と青ざめる。
鬼の形相で、
修一「じやかんしゃーーっ!」
修一「そがあに死にたいんならもう一回川に放りこんじゃろか、おー?」
美穂子「御免なさい。助けて下さい」と怯えて言ったその変わり身の早さに津川と共にあ然とし、
里香(カメレオンみたいな人・・・)
空の絵。
全員が傾斜のある土手に座り、
美穂子「(修一に)会った事もない見知らぬ人間になぜ親切にしてくれるの?」
修一「面白き事も無き世をおもしろく・・・」
驚き、
里香(また新しいフレーズ追加・・・)
修一「勝手に感情移入してしまう俺の無邪気なお節介と思ってくだされ」
美穂子、修一を見つめる。
遠い目をして、
美穂子「夫は工務店をやってて・・・」
美穂子「私は近所の会社にパートで勤めてたんだけど、一年前・・・」
《美穂子の回想》
小さな事務所の裏口の絵に美穂子の声、
「じゃ、お先に失礼します」「お疲れさまー」
裏口をガチャと閉めて出てきた美穂子(ノースリーブ、スカート。手にトートーバック)の呟き、
美穂子(こんな早い時間にお迎えに行ったら花は驚くだろうな)
○保育園
保育園の外観。
手を繋いで保育園から出てきて、
花 「きょうはお迎えが早かったね」
美穂子「お仕事がはかどったから早く上がらせてもらえたの。ママもびっくりよ」
他家の少し高くなった石垣の上を歩く花と手を繋いで歩き、
美穂子「ねえ花ちゃん、帰ったらママとホットケーキをつくろうか」
花 「うん。花ちゃんがヤキヤキするー」
注、美穂子宅=二階建ての古い一軒家。玄関の戸はガラスの入った横開き。玄関前に庭につづく小さなスペースがある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/19/95612f4e8ec355e1f67d6e7a2f9cef23.jpg)
↑戸のイメージ
玄関戸をガラッと開けたら女物の靴があったので美穂子が不審な顔をする。
短い廊下の向うの部屋から「あぁ・・・」と声が漏れ聞こえ、ハッとする。
美穂子「花ちゃん、ママが呼ぶまでお庭で遊んでなさい」
花 「はあい」と庭にゆく。
美穂子、ドキドキしながら扉のノブに手をかける。
戸を少し開けると服を着たままスカートをめくった美穂子の母の上に作業ズボンを尻まで下した夫が重なりセックスしてたので驚愕する。
母、美穂子に気づきハッとする。
母が突然腰を引き勃起を抜いたので驚き、
夫 「お義母さん、ま、まだ・・・」
気まずげに横座りしてスカートのすそを下す母の横で夫が美穂子に気づき、
夫 「美穂子・・・なっ、なんでこんな時間に・・・」
正坐して母を睨み、
美穂子「お母さん一体いつからの関係なの?」
開き直って髪を直し、
母 「今日、家に寄ったらたまたまはずみでそうなっただけよ・・・」
母 「ま、あんたは信じないだろうけど」
美穂子「当たり前じゃないの!私の留守を狙って前からヤッてたんでしょ?!」
母、呆れて娘を見る。
母 「産後鬱かなんか知らないけど男盛りの夫に二年間もやらせないあんたが悪いんでしょうが?・・・」
母 「女の務めも果たさず離婚されずに済んでるのは誰のお蔭だと思ってんのよ?」
美穂子、悔しげに母を睨む。
夜。消灯した部屋。
襖の向うから「あん、あん・・・」と喘ぎが聞こえ、耳を塞いで花を抱きしめてる絵に美穂子の声、
「開き直った母はその日から家に転がり込み、私がいてもおかまいなしに・・・」
後日、夫に張り倒された美穂子の後ろで花が泣きじゃくってる絵に声、
「文句を言ったら毎日のように暴力を振るわれ・・・」
「我慢出来なくなって一週間前に家を飛び出して今ビジネスホテルに泊まってるの・・・」
《回想が終わり、土手のシーンに戻る》
花を胸に抱き、
美穂子「かっとなって家を出たけど私は働けないし、もう死ぬしかなかった・・・」
不思議そうに、
津川「貴女は若くて綺麗だから仕事なんかいくらでもあるでしょうに?・・・」
美穂子を見つめ、
修一(確かに妙にエキゾチックな雰囲気を醸し出してて男好きのする美人ではあるな・・・)
美穂子「夫の浮気を知ってからストレスのせいかとつぜん皮膚の病気が発症して・・・」
里香に両手の指を見せ(醜いから症状は描かない)、
美穂子「手足の爪が全部腐り、指先の皮も破れて赤身が出て、痛くて物に触れないんです」
里香「ほんとだ、すっごく痛そう・・・」
修一、はっとして美穂子の指を見る。
美穂子「皮膚科に行っても治らないし、もう何もかもどうでもよくなって・・・」
美穂子の手を取って見つめ、
修一「右の爪に発症したら左の同じ爪も発症するだろ?」
美穂子、驚いて頷く。
修一「必ず左右対称に症状が出るのがこの病気の不思議なとこなんだ」
修一「ステロイドを塗っても紫外線を照射しても改善せず悪化するばかりだろ?」
美穂子、驚愕し、目を見開いて頷く。
里香、津川、修一を見て驚く。
修一「醜い爪を人に見られないかとノイローゼになり、それで鬱になったと?」
驚いて頷き、
美穂子「なぜそんなに詳しいの?・・・」
修一「症例が少ない病気を奇病と言うならこれはまさしく奇病で、皮膚科でも診断をつけられない医者がけっこういる」
修一「医者の勉強不足もあるが、市場が小さいから製薬会社も本気で治療薬を開発しないんだ」
美穂子「(乞う様に)おねがい。病名を知ってるのなら教えて」
修一「それは掌蹠膿疱症でござるよ」
つづく