アビブ(Abib)[緑の穂]
ユダヤ人の教暦の第1太陰月,ならびに政暦の第7月の元の名称。
(出エジプト 13:4。23:15。34:18。 申命記16:1)
「あなたたちはアビブの月のこの日に出発する」
出エジプト13:4
「あなたは無酵母パンの祭り(除酵祭)を守る。わたしが命じたとおり,アビブの月の定めの時に七日のあいだ無酵母パン(酵母を入れないパン)を食べる。
その月にあなたはエジプトを出たからである。そして,民はむなし手でわたしの前に出てはならない」
出エジプト23:15
「アビブの月を守り,あなたの神,主に過越しのいけにえをささげなさい。アビブの月に,あなたの神,主が,夜のうちに,エジプトからあなたを連れ出されたからである」
申命記16:1
この月は普通,3月後半と4月前半の期間に相当します。
このアビブという名称は,「緑の穂」,つまり熟してはいるものの,なお柔らかな穀物の穂という意味であると解されています。
この月に大麦の収穫が行なわれ,その後,何週間かして,小麦の収穫が行なわれました。
後の雨,つまり春の雨もこの時期に降り始め,そのためにヨルダン川は高水位に達しました。
(ヨシュア3:15)
「ヨルダン川に達した。春の刈り入れの時期で,ヨルダン川の水は堤を越えんばかりに満ちていたが,箱を担ぐ祭司たちの足が水際に浸ると」
ヨシュア3:15
エジプトからの脱出が行なわれた時,神(YHWH,ヤハウェ,エホバ)はこの月を教暦の最初の月として定められました。
(出エジプト12:1,2。13:4)
「主は,エジプトの国でモーセとアロンに仰せられた。
“この月をあなたがたの月の始まりとし,これをあなたがたの年の最初の月とせよ”」
出エジプト12:1,2
バビロンでの流刑の後,この名称は「ニサン」という名称に取って代わられました。
ニサン(Nisan)[最初の月]
ユダヤ人の教暦の第1太陰月を指す流刑後の名称で,3月後半と4月前半の期間に相当します。
(ネヘミヤ2:1。エステル3:7)
「アルタクセルクセス王の第二十年,ニサンの月のことであった。王はぶどう酒を前にし,わたしがぶどう酒を取って,王に差し上げていた。わたしは王の前で暗い表情をすることはなかったが」
ネヘミヤ2:1
「アハシュエロス王の第十二年の第一の月,すなわちニサンの月に,ある人がハマンの前で,第十二,すなわちアダルの月まで,一日一日,一月一月のためにプル,すなわちくじを投げた」
エステル3:7
最初アビブと呼ばれたこの月は,元々は第7の月とみなされていました。
創世記 8章4節に出ているのは恐らくこの月のことです。
「そして第七の月,その月の十七日に箱船はアララトの山にとどまった」
創世記8:4
エジプトからの脱出の時,神(YHWH,ヤハウェ,エホバ)はこの月を「一年の最初の月」とされました。
(出エジプト12:2; 13:4; 民数記33:3)
「イスラエルの人々は,第一の月の十五日にラメセスを出発した。すなわち,過越しの翌日,すべてのエジプト人の目の前を意気揚々と出て行った」
民数記33:3
この春の月にはかなり冷え込むことが多く,エルサレムでは夜間,暖を取るために火がたかれました。
(ヨハネ18:18)
「寒かったので,しもべたちや役人たちは,炭火をおこし,そこに立って暖まっていた。ペテロも彼らといっしょに,立って暖まっていた」
ヨハネ18:18
1949年のように,エルサレムでは4月6日になっても雪が降ることさえありました。
ニサンは雨期の終わりごろに巡って来ました。収穫の前に穀物が十分熟すため,後の雨,つまり春の雨が当てにされていました。
(申命記11:14。ホセア6:3。 エレミヤ5:24)
「わたしも必ずあなた方の土地のためその定めの時に雨を,秋の雨と春の雨とを与え,あなたはまさに自分の穀物と甘いぶどう酒と油とを集め入れることになるであろう」
申命記11:14
「私たちは,知ろう。主を知ることを切に追い求めよう。主は暁の光のように,確かに現われ,大雨のように,私たちのところに来,後の雨のように,地を潤される」
ホセア6:3
「彼らは,心に思うこともしない。『我々の主なる神を畏れ敬おう。雨を与える方,時に応じて,秋の雨,春の雨を与え,刈り入れのために,定められた週の祭りを守られる方を』と。
エレミヤ5:24
一年のこの時期には,ヨルダン川は水であふれるのが普通でした。
(ヨシュア3:15; 歴代第一12:15)
「これらはヨルダンがそのどこの岸でもあふれていた第一の月にこれを渡った者たちであり,彼らはそのとき,低地平原の者たちを皆,東に西に追い払った」
歴代第一12:15
沿岸の平原では大麦の収穫が始まり,亜熱帯のヨルダン渓谷では小麦が熟していました。
(ルツ 1:22。 2:23)
「こうしてナオミは帰って来た。モアブの野から戻って来た時,嫁であるモアブ人の女ルツも一緒であった。ふたりは大麦の収穫の始まるころにベツレヘムに着いた」
ルツ 1:22
「それで,彼女はボアズのところの若い女たちのそばを離れないで,大麦の刈り入れと小麦の刈り入れの終わるまで,落ち穂を拾い集めた。こうして,彼女はしゅうとめと暮らした」
ルツ2:23
エリコのラハブの家の屋上にあった収穫された亜麻が,イスラエルの斥候たちの隠れ場所となったのはこの時期でした。
(ヨシュア2:6。 4:19)
「彼女は二人を屋上に連れて行き,そこに積んであった亜麻の束の中に隠していたが」
ヨシュア2:6
「こうして民は第一の月の十日にヨルダンから上がり,エリコの東の境にあるギルガルに宿営を張った」
ヨシュア4:19