酪農の農民作家の玉井裕志さんが、
「第二集」を発刊した。
税込3000円
これは中標津で発行している「月間
新根室」に掲載されたもの。前回と
同じように巻頭言として山田洋次映
画監督が「畏友 玉井さんの事」を
よせている。
以下、ほっかい新報2月2日付に紹介
させていただいた。
なお前回の感想は、 こちら ⇒
玉井裕志作品集「第二集」によせて
原野に生きる人間群像
21世紀に入っても乳用牛の酪農家の戸数が直線的に減少している。年間200戸を超えるスピードでの離農だ。安倍政権の自公政治によって、TPP11、日欧EPA、そして日米FTAとあたかも農民の反対の声がなかったかのごとく、矢継ぎ早に輸入自由化が強行されてきた。このままではさらに危機的様相が予想される。
一昨年に酪農の農民作家「玉井裕志作品集」が発刊された。私は「行間からは、大地の草いきれと牛舎のにおいがしてくる」と書評したが、今回の「第二集」は、凍てつく広大な大地での「牛飼い」をめぐる人間のさまざまな日常生活がエッセーとして凝縮されたものとなっている。とりわけ「離農」という二文字が重奏的にバイアスとしてかかっており、生産と生活の場からのエッセー集となっている。一昨年亡くなった森田正治さんの「離農の歌」が頭の隅にながれてきた。
厳しい生活のなかでもほっこりさせられるのが「離農して10年―新年の思い」の一篇だ。正月は日本人のなかでは特別の日。醤油樽に腰掛け、コップ酒を飲む姿は私の幼いころの父とだぶってみえた。
「昭和の終り」は、玉井さんみずからの離農を綴っている。牛飼いに情熱的であった娘さんの「人間としての誠実とか、まじめさや、そんなことが全く認めてもらわれない職業なんて」という吐露はショックであったろう。
「第二集」は「月間新根室」の1996年7月号~2002年4月号までの「原野の誘惑」62本が掲載され、前回と同じように山田洋次映画監督から「畏友 玉井さんのこと」が巻頭言としてよせられている。なお、年代的にはまだ掲載されていない直近のものとして、「原野の誘惑、第251回」に参議院議員であった故小笠原貞子さんが登場する。障がい者の権利擁護を訴えた伝説ともいえる「涙の国会質問」が掲載された。まだまだエッセーは続いている。