Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

未来への投資としての教育

2006-01-02 | Education
  2006/1/2のきさらぎけいすけ氏の blog に「日本の理工系学生は、アメリカの大学ではついて行けない?」という記事があった.
  京都大学経済研究所教授の西村和雄 先生 の新聞への投稿について,以下のように紹介されていた.

 『昨年12月27日付産経新聞「正論」で、京都大学の西村和雄教授が「ゆとり教育見直しの手綱を緩めるな」と題した議論を展開していた。』
 『タイトルそのものの主張だったが、その根拠として彼が挙げた一例には驚いた。彼の後輩から、「大学院生をアメリカに留学させようとしても、最近はどの大学院も入学許可をくれなくなった」とのメールが入ったというのだ。さらに西村氏は、「かつて『正論』でも書いたこともあるが、日本人学生を入学させても、ついてゆけないし、かわいそうだという評価がアメリカの大学では定着している。」と続けていた。』という.

 西村先生は,元日本経済学会会長,日本経済学教育協会会長,Economic SocietyのFellowであり,日本を代表する経済学者として著名なだけでなく,「分数ができない大学生」(岡部恒治,戸瀬信之氏と共編,東洋経済新報社,1999年.)をはじめとして,日本の学生とくに大学生の学力低下に警笛をならし続けてきた.
 また, 「 21世紀人材育成フォーラム」 の代表, 「教育フォーラム」 所長,「ゆとり教育」に反対する学者らでつくる「2002年度からの新指導要領の中止を求める国民会議」の代表幹事として,教育問題に関して積極的に活動している.
 2005年には,小学生向けの新しい数学の参考書(指導要領に準拠していないのでその意味では教科書ではない)『学ぼう!算数』(岡部恒治氏と共著,数研出版.)のシリーズを執筆している.


 文部科学省の「ゆとり教育」の基本的な失敗は,議論するまでもなく明らかだろう.
 我国は,豊富な地下資源,有り余る水力資源,十分な農業用地等のどれももっていない.我国の最も重要かつ強力な資源は「高い識字率と教育」に支えられた「人材」だけである.また,「教育」だけが「未来への投資」であり,これに手を抜いて,未来が拓けるわけがない.

 もちろん,「教育指導要領」だけでなく,教員の質,高校入試や大学入試のシステムにも問題があろう.また大学の講座制のシステムや,国公立の大学や研究機関の幹部の人事の問題もあろう.さらに,文部科学省の人材,教育や科学への予算配分の問題も明らかである.
 私見では,まず,日本の子供や学生には「自分達は(世界的に見て)恵まれた環境にある」ということを,ちゃんと教えるべきだと思う.
 日本の大都市での学生の生活をとりまく環境は,全く「特別な」もの(もちろん良い話しだけではないが)である.インターネット対応のG3携帯電話も,コンビニやファーストフードでのアルバイトの8-10ドルの時給も,この星のほとんどの学生には得られない環境である.

 そういう状況認識を然るべき行動の前提として教えなければ,大学院へ進学しても,海外へ留学しても,緊張感や向上心を維持できるとは,とうてい思えない.


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21世紀を生き抜く「ザ・プロフェッショナル」

2006-01-02 | Business
 昨年末に入手した数冊のうちの一冊.

 日本人のビジネス・コンサルタントで掛け値なしに世界で一番有名な 大前研一氏 の,昨年秋の著作.
 ハーバードビジネスレビュー(日本語版)への連載をたたき台に,単行本化にあたり大幅に加筆したもの.

 第1章 「プロフェッショナリズム」の定義
 第2章 先見する力
 第3章 構想する力
 第4章 議論する力
 第5章 矛盾に適応する力

 個々のトピックスは,これまでも大前氏があちこちで書いている内容であり,その一部は,既にビジネス・プロフェッショナルの中では「常識」になっているいる.

  学び続ける姿勢
  知的好奇心,知的怠慢
  変化を愉しむ
  試行錯誤
  緊張感
  野生の直感力
  「意志」に投資する
  強固な信念
  「逆行」の発想
  「深度」の経済
  議論する力
  問題解決力とコミュニケーション力
  自由と統率
  直感,洞察,創造
 

 自分自身の日常について,好奇心,こだわり,試行錯誤,緊張感などの不足を痛感させられる.大前氏と議論するつもりで,何度も読み返したい.
 これまで,大前氏の著作を読んだことのない,比較的若い世代にこそお勧めの一冊.
 
 

ザ・プロフェッショナル
大前研一
ダイヤモンド社

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