Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

講義 流体力学 2008-6

2008-05-26 | Mech Eng
 流体力学の講義6回目,概要は以下のとおり.

 演習 流体力学の用語
 偉人 ベルヌーイ
 流体の基礎式 2
 オイラーの式
 ベルヌーイの定理
 静圧と動圧、水頭(ヘッド)
 ベルヌーイの定理の応用


 [演習 流体力学の概念や用語]
 以下の概念や用語を文章や数式を用いて説明せよ.回答は,出席票に書く事.(持ち時間は28分)

1. 速度
2. 加速度
3. 密度
4. 比重
5. 圧力
6. 全圧力
7. 全圧
8. 応力
9. 定常流
10. 非定常流
11. 一様流
12. 流速
13. 流量
14. 質量流量
15. 流線
16. 流管
17. 流跡線
18. 流脈線
19. 検査領域
20. 検査体積


 [偉人 ベルヌーイ]
 ベルヌーイの定理で有名な,ダニエル・ベルヌーイ(Daniel Bernoulli)について紹介した.詳細は以下を参照.
 http://en.wikipedia.org/wiki/Daniel_Bernoulli
 1700年代に出版された,流体力学の古典的教科書(ラテン語)の英語版が現在でも出版されていて,インターネットを介して容易に入手できるというのはすごいことだと思う.


 [流体の基礎式 2]
 教科書の pp.91-110部分について,教科書にそって,説明した.
 水頭とベルヌーイの定理の応用については,やや駆け足になった.
 ベルヌーイの定理については,単に公式を覚えるのではなく,原理と式や変数の意味を説明できるように,十分に復習してほしい.
 特に,pp.96-101が最も重要である.
 

Daniel Bernoulli, Hydrodynamica 『流体力学』と
父のJohann Bernoulli, Hydraulics 『水力学』 の合本,改訂版(英語版).
Hydrodynamics And Hydraulics (Dover Phoenix Edition)

Dover Pubns

このアイテムの詳細を見る





追伸:
 再履修の4年生へ
 担当講師が変わり,教科書も変わっていますし,評価の方針なども昨年度とは異なります.教科書,参考書は持ち込み可ですが,他人のノートのコピーは不可での試験となる予定です.
 新しい教科書を購入して,できるだけ講義へ出席されることをオススメします.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講義 流体力学 2008-5

2008-05-26 | Mech Eng
 流体力学の講義5回目,概要は以下のとおり.

 流体の基礎式 1
 物体と流体に作用する力
 流体力学の用語
  定常流,非定常流,一様流,流速,流量,質量流量,
  流線,流跡線,流脈線,応力,検査領域,検査体積
 連続の式
 物体と流体の加速度

 [流体の基礎式 1]
 教科書のpp.72-90部分について説明した.
 概ね教科書にそって説明したので詳細はここでは割愛する.
 欠席したものは,例題,練習問題も含めて自習すること.

 古典力学の「物体に作用する力」については,各自,物理や工業力学のテキスト等で十分に復習した上で,あらためて,流体力学の教科書の該当部分を見直してほしい.

 流体力学の用語については,十分に復習して,単に言葉を覚えるのではなく,概念を説明できるようにしてほしい.

 流体力学においては,「連続の式」は非常に重要な概念である.流れのなかの「つりあい」について,しっかりとイメージをもつようにしてほしい.

 加速度については,偏微分,実質微分の式も重要だが,ラクランジェ的方法と,オイラー的方法の概念としての違いをしっかりと把握することが,より重要である.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳脊髄液減少症: 裁判官殿もっと科学を勉強してもらわないと困ります.

2008-05-26 | Medicine
 交通事故と「脳脊髄液減少症」との関連について,以下の報道にある,「髄液漏れ関係を否定 事故被告に罰金 静岡地裁判決」の記事は,元々の裁判官の判決が非科学的なのか,あるいは,報道している記者の方が非論理的なのか判然としないが,ちょっとレベルが低すぎるのではないか?

髄液漏れ関係を否定 事故被告に罰金 静岡地裁判決 (静岡新聞 05/19 14:58)

 まず,慢性化した脳脊髄液減少症全般について,全般的かつ簡単な確定診断の方法はないが,それは複合的な症状の症候群ではごく普通のことであろう.しかし,実際に「脳脊髄液の漏洩」が継続していれば,正しい手順でいくつかの検査をすれば,その診断はそれほど難しいものではない.
 
 医学あるいは医療近接領域の専門家でなくても,少しの科学的な知識と理解力があれば,『脳脊髄液減少症ガイドライン』を読んで,どうすれば「脳髄液の漏洩」が確認できるか理解できるはずである.
 すくなくとも,『診断基準も確立していない』というのは,裁判官の単なる不勉強による事実誤認だとしかいえない.

 『髄液漏れは医学的に広く認められていない』というのも,なにかの誤解としかいえないと思う.医学の専門家でなくても,少し医学に知識のある人であれば,「腰椎穿刺等のあとに髄液がもれること」,あるいは,「何らかの理由で髄液が漏れるとどんな症状になるか」ということは結構知られている.
 『症状自体が学会で認められていない』というのは,どこの学会の話だろうか?

 実際に,漏れが続いている場合には「RIシンチグラフィー」での結果をみれば「髄液の漏洩」そのものは明白だ.また,状態によっては,水分を強調して画像化する「MRミエログラフィー」等でも診断できる.脳脊髄液漏出の検査と診断等の方法は,脳神経外科の分野ではごく常識的なものだ.

 一般の整形外科や内科の医師などに,広く知られていないのは,腰椎穿刺や大きな外傷がなくても,衝撃のかかり方によっては,「容易に硬膜に穴があいて,髄液が漏れること」と「通常知られているよりも幅広い症状があること」等というのが順棟な現状分析だと思う.
 しかし,この記事では『尻もちやせきなどの日常生活で発症したとの報告例もある』として,髄液が『日常生活のちょっとした衝撃で,容易に漏れる』という事例があることを,述べている.完全な矛盾である.

 論理的に考えれば,「尻もちやせきなどでも容易に発症する障害」であれば,交通事故による「頸椎への外傷」(いわゆる『むちうち症』)の衝撃でも,発症する可能性が高いと考えるのが,合理的であろう.
 もちろん「他の何らかの影響で発症した可能性」があることは当然であるが,前提に対する科学的な理解不足や事実誤認があっては,論理的な法的判断が行われるとは考えにくい.

 『医学会では否定的な見解が根強い。一部の医師からは血液の凝固作用で漏出を止める「ブラッドパッチ」が有効との意見もあるが、確立された治療法もないとされる。』これも,状況認識が明らかに間違っている.
 「髄液の漏れ」は,漏れが継続していれば,ほとんどの場合に,いくつかの診断で明白にわかるし,漏れていれば,「ブラッドパッチ」で漏れそのものは止まる.その意味では,「髄液の漏れ」に対する,基本的な治療はあるのだ.
 # もちろん,やみくもに「ブラッドパッチ」だけすれば良いというものでもない.

 問題は,「脳脊髄液の漏洩」をもたらすような事故から正しい治療開始まで時間がかかると,「漏れをとめても」症状が「完全には消失しない」==「後遺症が残る」事例が多いということである.しかし,これは,どのような疾病や外傷でも同じことである.
 つまり,普通のことばでいうと『「脳脊髄液の漏洩」を止める基本的な治療は確率しているが,発症から最初の治療が遅れた場合には,様々な後遺症が残り,それについては,未解決の問題が多い.』というのが,正しい状況認識だと思う.

 一番よくわかっていないのは,「脳脊髄液減少症」ではなくて「脳と脊髄のシステム」「自律神経のシステム」全体だと思うのは,私だけだろうか?



 交通事故やその他の事故で,頸椎,腰椎への外傷が絡む裁判やその周辺の医療行政にかかわる,裁判官,弁護士,官僚等の方は,少なくとも,以下の『脳脊髄液減少症ガイドライン』を必ず通読していただく必要があるだろう.
 これを,読んで理解できない人は,少なくとも,この件の裁判官は辞退していただきたいものだ.

脳脊髄液減少症ガイドライン (2007)

メディカルレビュー社

このアイテムの詳細を見る



# 2010/12/11 誤字修正
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする