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脳脊髄液減少症の診断と海外文献  医学の細分化,専門化の弊害?!

2008-05-29 | Medicine
 脳脊髄液減少症に関する,一般向けの書籍としては,以下の『「むち打ち症」は治ります!―脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の決定的治療法』が,よく知られている.

あなたの「むち打ち症」は治ります!―脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の決定的治療法

山口 良兼,守山 英二,篠永 正道

日本医療企画

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 この本をみると,
『腰椎穿刺や脳や脊髄大きな外傷がなくても,衝撃のかかり方によっては,「容易に硬膜に穴があいて,脳脊髄液が漏れること」』
そのものが,多くの医師から「実感されていない」ことが,多くの医師のコメントとして綴られている.

 脳神経外科以外を専門とする医師,特に内科の医師などは,「脳脊髄液減少症」について,直感的な理解がなくても「しかたない」かなとも思う.
 しかし,脳神経外科の専門の医師の場合でも,「RIシンチグラフィー」での結果をみて,すなわち「脳脊髄液の漏洩」の映像を自分の目で目視したあとでさえ,すぐには,「軽度の頸椎ねんざ」とおもわれる交通事故の患者さんが,(事故時の衝撃によって)現実に脳脊髄液の漏洩を起こしているということを,理解できなかったという告白もある.
また,中には「脳神経外科では,主に脳に気をとられているので,首から下については,なにか特別の目的がなければ,MRIの画像等を詳しくみる習慣があまりない」という主旨の記述もあった.
 また,比較的はっきりした診断のできる,「RIシンチグラフィー」や「「MRミエログラフィー」の検査は,「脳脊髄液が漏れているかもしれない」という疑いがなければ,通常の,頭痛や自律神経の不調等ではもちろんおこなわれない.
 つまり,もし,交通事故で頭部,首,腰などの打撲やねんざがあって,そのために「脳脊髄液が漏洩」が発生している場合でも,単に,頭部CTや首や腰のレントゲンをとるだけでは,「脳脊髄液が漏洩」という問題そのものが永遠に発見されない可能性が大きい.
 また,「脳脊髄液の漏洩による減少」が発生して,症状が慢性化すると,頭蓋内での脳脊髄液が減った分の体積は「静脈の拡大」等によって補填され,脳脊髄液の圧力が上がっているように見える場合があるために,単に,脳脊随液の圧力を計った場合すら「脳脊髄液の漏洩」を発見できるとは限らない.


 これらの背景には,おそらく,医学の細分化,専門化の問題がある.
「脳脊髄液減少症」について疑問視する人々からは,「脳脊髄液減少症」関連する海外の学術専門雑誌での論文等の情報がすくないという意見があるが,実際には,例えば,Google で,

 cerebrospinal fluid CSF leak road traffic accidents RTA

等のキーワードで検索すると,けっして少なくない量の論文が見つかる.
 これらの中には,日本の脳神経外科系の「脳脊髄液減少症」の研究者と連携して研究をしていることで知られている研究者による論文もあるが,多くは,脳神経外科系のジャーナル(専門学術雑誌)だけではなくて

  麻酔科
  耳鼻咽喉科
  口腔外科

の関係とおもわれるジャーナルである.
 臨床系の医師の多くは,洋の東西を問わず,自分の専門領域以外の文献にはあまり目をとおしていないようだ.


コメント (1)
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