「ミネルヴァの嘲笑」とは、かのじょが書いた物語の中に登場する架空の詩人、ジュディス・エリルの処女詩集です。かのじょは物語のスピンオフ的なものとして、いくらかのジュディスの詩を書きました。覚えている人もいることでしょう。
かなりおもしろい詩でしたね。特にアテナの詩は面白かった。引用はしませんから、興味をもった人は探してみなさい。確か貝の琴ではなく、ウェヌスの方に入っているはずです。
あれは、女性からの男性への挑戦という形の詩でした。さあ、アテナの挑戦を受ける男はどうするか。本気を出して彼女と闘っても負け、かといって相手にしないで逃げても負け。かのじょが教えてくれた模範解答を、覚えていますか?
「申し訳ありません、わたしの負けです」と言って、頭を下げる。これが正解。見事ですね。そのとおりです。しかし、人間の男性には、今のところ、これができる人は、いないでしょう。
何で、こんなことが、かのじょに書けると思いますか? それはもちろん、かのじょが男だからです。
かのじょは、非常に女性的過ぎる天使ですが、やはり男ですから、男のやるべきことはちゃんとわかるのです。わたしも、同じような場面に出会ったら、きっとかのじょの言った通りにすると思いますね。他に手はない。残念ながら、男は女性には勝てません。
賢い女性は、それがわかっていますから、めったに男に挑戦したりはしません。男性が困りますからね。だがかのじょはジュディスのペンを借りて、アテナに挑戦させるのです。それは、人間の男性が、あまりにもふがいないからです。
きちんと手順を踏んで、礼儀正しくやればいいものを、暴力と権力を頼んで自分の思いどおりにしようとする。その結果、たまらなく醜い馬鹿になる。そんな男が、今はたくさんいる。
そういう男性の耳には、どこからかミネルヴァの嘲笑が届いている。馬鹿な男が、女に見えないところで、どんなことをしているか、見るがいい。
そんなにまでして、女が欲しいのか。
やあ、今回のわたしは少々きついですね。だが、一度は言ってみたいものだ。馬鹿な男の顔に、蛙の小便をかけるように。
さて、あなたの耳には、彼女の嘲笑の声が、聞こえますか?