バーナード・サフラン
原題不明。
ラオスの国王を描いたものらしい。サワーン・ワッタナーという名の王である。現在ラオスはラオス人民民主共和国となっているが、その前には王制があった。ラオス王国の最後の王であるらしい。
美しく描いているかに見えるが、写真を加工したものであることが、よく見ればわかる。この画家はそういう手法でやっているものであろう。だがそれゆえに、モデルの心がよく表れている。
立派な人格だ。目を見れば、美しい自己であることがわかる。この人間は一つの立派な霊魂がこの存在を統率している立派な人間であるのだ。国王として国を愛していることが、顔を見てもわかる。
だが国は時代の暗雲に飲み込まれ、この王は悲劇的な最期を迎えたらしい。
正しい自己というものは、こうして、多頭怪の群れに少しずつ滅ぼされてきたのである。
20世紀は馬鹿が大いに栄えた時代だった。目の虚ろな多頭怪があふれるようにこの世に生まれ、目の美しい正しい自己をつぶし続けていったのである。ありとあらゆる馬鹿が、美しい本当の人間を滅ぼしていったのだ。
この人間はその暗黒の栄えの中で滅びていった、本物の自分のひとりであろう。