ロバート・ヴィクリー
原題「イカルス、堕ちた天使」
道化の格好をした男の羽に、大きな羽が生えている。
堕天使とは神の栄光から落ちた人間の象徴である。実際、進化した本当の天使は堕ちることはない。堕ちるのは、まだ自己存在の確立の段階に上がっていない人間なのである。
道化というものがもてはやされるのは、人間の心の中に、イエスに対する罪の意識があるからだ。これは真実である。
人間は彼を裸にし、道化のようなおかしな格好をさせ、公衆の面前に出してみなで指さして笑ったのである。
それに対する罪の意識が、自分を道化に同化させるのだ。自分もいずれ、堕ちてあのように人に笑われねばならないと、そういう意識がかすかに痛むのだ。
イエスに対する罪を犯してはいない人間の社会では、これほどに道化の芸が深まってはいない。コメディアンとかコメディエンヌのよき才能が輩出するのは、イエスに対する罪を持っている第一期人類の特徴である。
彼らはいずれ、イエスのように、裸にされ、おかしな衣装を着せられ、人々に大笑いされねばならないのだ。
王のような高い地位から落とされて。