Quelque chose?

医療と向き合いながら、毎日少しずつ何かを。

「だましの手口」

2019-07-23 | 本・映画・テレビ
ちょっと古い本だけど、だいぶ前にKindleに入れていたのを思い出し、読み返してみた。

いわゆる「振り込め詐欺」とかオウム・統一教会などのカルト宗教、霊感商法など、もう今では古典的(?)となったものから先物取引・有名人のCMに至るまで、さまざまな「騙し」の手口と対応方法までを、具体的な例とともに説明している一冊。
著者は1960年徳島県生まれの社会心理学者で、当時、静岡県立大学准教授。
2009年発売の本なのでもうかれこれ10年経っており、その間に、ここに挙げてあるような詐欺や騙しについてはかなり知れ渡っているはず・・なのだが、相変わらず、今日でも振り込め詐欺の被害が毎日のように報告されているわけだから、まだまだこういう本を読み返すのには意味があるだろう。

騙す側がもちろん悪いわけであるが、わかっていても引っかかってしまうのは、被害者側にさまざまな心理的機構が働くからでもあって、
例えば「後悔回避」(自分の行動を正当化する)とか、返報性(何かしてもらったらお返しをしなければという心理)など、そうだよなあ、あるある・・と思わされる。

個人的にツボだったのは、「有名人の影響力」という章。
専門職であったり、有名大学の教授という肩書があっても話が怪しいことがある・・・という箇所で、

"専門職に就いているからといって、それだけでうっかり信じてはいけない"とか、

”XX大学の教授という肩書は、ある特定の専門家であることを明かしているように思えますが、ちょっと学者世界に身を沈めていると、それがじつに危ない判断であることに気づかされます。"
"教授は無資格でなれます。立派に大学院を出て、しかるべき論文を書いて、学位をとってでないとなれないとお思いの方、それは、誤りとはいいませんが、そうでない方もたくさんおられます。"

というところ。そう、そうなんですよね。「医師」とか「教授」だからと言って、変な「医学」本を書いたり、テレビなどに出て専門外の領域についてわけわからんことを言う方もおられるようですし。しかもこれからは「実務家教員」(以下自粛

もちろん、最近流行っている(?)騙しのテクニックを知っておくことは大事だと思えるが、著者は"人は手口をちょっと知っているぐらいの事前の知識では、手慣れた詐欺師に太刀打ちできないのです。"という。それも事実だろう。
とは言え、我々にできる対策として、著者は"悪徳商法、詐欺やマインド・コントロールに見られる心理操作の仕掛け"について、インターネットなどを利用してできる限りマスターしていくことが第一だと述べている。そして、自分の弱点をつかんでおくこと、自分だったらどんなパターンで騙されるかシミュレーションしておくことなども勧めている。
ボケツッコミも練習として良いらしい・・・あ、これは自分はわりとやっているかもしれない(汗)

今は新書版は古書店などにしかないかもしれないが、図書館を探せばありそう。Kindle版で手に入れることはできるようである。