北西の風が、冷たく感じた一日だった。
薄い雲が掛かって、晴れ間が出ない。
時折、雲の切れ間から日差しが出てくるが、肌寒さは変わらない。
「漸く、冬入りらしくなってきたかな」
その分、水温も下がった気がする。
海中は、賑やかな感じがする。
ベイト反応が凄くて、多い処では、海底から30m位のベイトの幅が有る。
海面を尖った背鰭を見せながら、カジキが泳ぐ姿が確認できた。
「ベイトが多い、浅場に寄って来たのだろうか」
潮行も緩い上り潮が、北東方向に流れている。
蓑原さんが、二流し目でアタリを捕らえた。

「引きが強いですか」
「まずまずの引きを感じますね」
ゆっくりと、引きを楽しみながら、巻き上げていく。
真鯛が、見えて来た。

2キロクラスの、良型真鯛。
アタリが続くことを期待するが、次のアタリが中々出てこない。
流し初めに、ベイト柱が出てくる。
其処を、うまく流していければ、アタリが来る筈。
そう思って、流し初めの位置取りに、気を付ける。
次のアタリも、蓑原さんに来た。

ベイトが切れたところで、アタリが来た。
「突っ込みますね」
「今度は、真鯛とは違う気がします」

上がって来たのは、カンパチ(ネリゴ)だった。
「この大きさなら、群れているはず」
仕掛けを入れていくが、アタリが続かない。
アタリが単発に、なっている。
ポイントを移動する。
榎田さんに、アタリが来た。

「ホール中にアタました」
竿先が、余り曲がらない。
姿を見せたのは、サゴシ。

海面に近い、上層に群れているのだろう。
「瀬掛りかも知れません」
蓑原さんのラインが、船の下に入っている。
「アタリじゃないでか」

ラインがどんどん出て行く。
「船で追い掛けましょう」
ラインが走る方向に船を走らせ、少しでもラインを巻き上げていく。
獲物が真下に来たと思ったら、直ぐに走られる。
「ラインが細いから、巻き上げられない」
GPSで確認すると、300メートル近く追い掛けている。
「上がってきません」
「縦引きにしても、変わりませんか」
ゆっくりと縦引きにしたが、突然、パシッと音がしてラインが切れた。
「えっ、なんで切れるの…」
突然の、ラインブレイクで取り逃がしてしまった。
「切れたのは仕方無い」
口惜しいけれど、自分に言い聞かせる。
ポイントを移動すると、流し初めにアタリは来るが…。
針外れになってしまう。
強い北西の風で、水温に変化が出たのだろうか。
寒い曇り空の下、粘り強く竿を出し続けたが、アタリが続かなかった。