来し方、行く末に思いを続けて…
日記 … Kametarou Blog
「デフレの正体ー経済は『人口の波』で動く」ー(藻谷浩介氏著)
「角川ONEテーマ21」シリーズの「日本経済」テーマ。久しぶりの経済書で、日本の経済の現状とこれからの施策に関する提言に接することができたという感じである。
外国との収支、GDPの上下、経済成長率、成長戦略、いろいろ言われていることについて大方の思い込み、誤解があるということから話が始まる。今、一番国民が心しなければならないことは「人口の波」についてであることを数字とグラフを十分に使って説明する。その概略を紹介することは難しいが、印象的なことを記しておこう。興味関心を持たれるならぜひ同書を手にしたらいいのではないだろうか。特に政治経済教育の世界にある人は是非一読し、何を受け止めるべきか真剣に考える必要がある。
生産年齢人口=現役世代の数が大きく減少していく。これが経済を動かす要因だ。首都圏こそ、この傾向がどこよりも強く展開される。
国際収支が良くなっても内需が減少すれば国内経済が上向きになるはずがない。この内需減少は現役人口が減って高齢人口が増えていくことと深い関係がある。つまりカネが使われず預貯金に回っている。こういう状況で日本経済は何を目標とするか。著者は3点をいう。
1 生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める。
2 生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やそう。
3 (生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう。
日本で、金融資産(不動産を除く)を1億円以上もっている人が150万人いて、総額が400兆円あるのだそうだ。そこまでではない中クラスの金持ちも入れると1400兆円の個人金融資産があるという。死蔵されている総額のうち1%の14兆円が消費に回れば経済は大いに活性化する。
金持ち高齢者にカネ遣いを促すためのヒントなど同書にいろいろある。個人消費総額を増やす今ひとつは女性の就労と経営参加を当たり前とする世の中にすることだ。また女性の就労が増えると(共働きを含めて)子ども出生が増える。昔、男女を問わず必死に働いていたころたくさんの子どもがいたではないか。女性の所得は男の場合よりも消費にまわる割合がはるかに高い。
予算のばらまきに当たる「一律給付」はダメ、しかし医療と高校までの教育費は平等(教育費は無料とすべき)、等々。
中国やインドも日本と同じ高齢者社会になるとか、貧困におかれている人への生活保護条件を手厚くするとか、示唆されること多々ある書だった。
« 若者自立支援... | 高齢者がカネ... » |