『スペクター』(芳文社) 1990年代前半頃作品 全13ページ
その夏、“ぼく”は海の近くのホテルに住み込み、ルーム係のアルバイトをしていた。毎日のように雨の降る、冷夏であった。
休憩時間、浜辺で寝そべっていると、見知らぬ少女に声をかけられた。よく見れば親類の子、奈々ちゃんである。5年ぶりなので誰だかすぐにはわからなかったのだ。
奈々ちゃんとは彼女が小さい頃、よく遊んでやっていたが、“ぼく”が中学生になる頃、なんだかテレくさくなって距離をとるようになっていた。
家族旅行でここに来たという奈々ちゃん。「おもしろいところ見つけたから一緒に行こう」と走り出してしまう。追いかける“ぼく”。着いたところは倒産して廃墟となったホテルであった。なんとなく不気味なのだが、奈々ちゃんは「ここで鬼ごっこしよう!」とずんずん廃墟の中へ行ってしまう。
迷いながら奈々ちゃんを捜す“ぼく”。4階に上がったはずなのに2階に出てしまったりする、奇妙な建てものだ。奈々ちゃんはときどき、からかうように姿を見せる。幼ない頃、一緒に遊んでいたときのような、うれしそうな表情。
しかし奈々ちゃんは突然、廃墟で迷う“ぼく”を残して走り去ってしまう。“ぼく”は果たして、そこから出られるのか?
『卒業』の次に同じホラー漫画雑誌に掲載。一部の事実をもとに創作した作品である。
その夏、“ぼく”は海の近くのホテルに住み込み、ルーム係のアルバイトをしていた。毎日のように雨の降る、冷夏であった。
休憩時間、浜辺で寝そべっていると、見知らぬ少女に声をかけられた。よく見れば親類の子、奈々ちゃんである。5年ぶりなので誰だかすぐにはわからなかったのだ。
奈々ちゃんとは彼女が小さい頃、よく遊んでやっていたが、“ぼく”が中学生になる頃、なんだかテレくさくなって距離をとるようになっていた。
家族旅行でここに来たという奈々ちゃん。「おもしろいところ見つけたから一緒に行こう」と走り出してしまう。追いかける“ぼく”。着いたところは倒産して廃墟となったホテルであった。なんとなく不気味なのだが、奈々ちゃんは「ここで鬼ごっこしよう!」とずんずん廃墟の中へ行ってしまう。
迷いながら奈々ちゃんを捜す“ぼく”。4階に上がったはずなのに2階に出てしまったりする、奇妙な建てものだ。奈々ちゃんはときどき、からかうように姿を見せる。幼ない頃、一緒に遊んでいたときのような、うれしそうな表情。
しかし奈々ちゃんは突然、廃墟で迷う“ぼく”を残して走り去ってしまう。“ぼく”は果たして、そこから出られるのか?
『卒業』の次に同じホラー漫画雑誌に掲載。一部の事実をもとに創作した作品である。