無味乾燥な

つまらぬ話でございます

「峠」のこと

2018-08-05 21:53:54 | 日記
司馬遼太郎「峠」を読んでいる。
幕末ものは、素性から戦国時代のそれより興味がないのだが、主人公の最期の地が、生まれた土地と近いという理由で、以前から読んでみたかった小説である。

「 諸事、ものをおもうことの多い男なのである。その幕府困窮のもとはといえば米にあるとこのおとこはおもった。
(米ではどうにもならない)
 平素、そうおもっている。米とは、農業立国と言いかえてもいい。幕府の直轄領は四百万石といい、算定のしかたによっては八百万石といい、実際の収入としては二百万石しかないともいわれている。その程度の石高でもって国政の入費をわりだし、旗本八万旗(実際には五万人程度だが)の俸禄を出してゆかねばならない。それが、関ヶ原いらいの幕府の経済である。」

果たして本人が、この文言どおりに認識していたかはわからないが、そういうことである。

「幕府成立の当初は、ひとはまだ戦国の気風をのこし、くらしむきは質素で、日常の入用が食費だけあればまかなえ、世間もそれですんだといえるが、その後二世紀たち、世の中もすすんだ。」

この話は、登場するひとりの「吉原の遊女」の説明のために書かれている。さすがである。

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