夢色

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火月 神の気まぐれ よろずメモ。

<万作萬斎新春狂言2020 @ サンケイホールブリーゼ>

2020-01-21 | 舞台

晴明から観てたけど、のぼうの城で萬斎さんの舞の虜になって、シン・ゴジラで驚愕し(笑)、ようやく初めて、生の萬斎さんを観に行くことが出来ました!
お能の合間に狂言は観たことがあるけど、ちゃんと狂言だけって観たことが無かったから、今回は萬斎さんのレクチャータイムもあるという、この新春狂言に来ました。

最初は、謡初「雪山」で、5人並んで謡い始めとなります。
萬斎さん、良い声。

そして、演目が始まる前に、レクチャーがあります。
「いつも謡初で、なんで一礼するんだろうって思ってたけど、先日ようやく分かりました・・・チコちゃんに叱られる・・・」って(笑)
歳神さまに一礼しているそうです。
「皆さまに例をしてるわけじゃないですよ?」(笑)
一門ではいつも、元旦に集まって、まず唄と踊りをされるそうです。
ちょいちょい笑いを挟みながら、今日行う演目の解説や、掛け声の練習をしました。
なかなか盛り上げ上手で、会場があったまります。
「洛中のほうが洛外より偉い、とかあるんですかね?」とか地雷ブッこんでたけど(笑)

掛け声の練習は、面白かったです。
狂言では、いつも謡う時は下から上がる謡い方をするから、芸大時代は先生に良く怒られたんだって
「えーぃ さらさ~ えいさらさ~」って謡うんだけど、「え~ぃ」っていうより「え~い」って上がるんだと。
確かに和楽と洋楽だと違う!

今日の演目は、「月見座頭」と、「首引」です。
月見座頭は、万作さんが出ていらっしゃいます。
盲目の座頭が、月見をしに野辺にやってきます。
といっても、目が見えないためどうやってお月見をするかというと、虫の音を聴いて、虫が一層大きく鳴くと、月が冴え冴えしているのが分かるという寸法。
本当だ、そうか、目が見えない方は 当たり前に私たちが出来ることが出来ないんだという事に改めて気付かされます。
杖をつきながら登場するだけで、一気に情景がイメージできるのは、流石人間国宝。
「こっちは鈴虫」「こっちはマツムシ。騒がしい。ガチャガチャガチャガチャ。」と楽しそうに虫の音を聞いていたり、隣で騒いでる健常者グループが五月蠅いから虫の声が聞こえないとクレームを付けに行ったり(笑)
萬斎さん曰く、狂言には「多様性」がある、と。
色んな人が共存し、障碍者であっても卑屈にならないし逞しく生きているのが良く分かるのが、狂言だと言ってました。

途中、健常者の上京の男(洛中に住む男)がちょっかい掛けに来て、意気投合して歌を詠み合い、酒を飲みかわします。
良い気分で別れる二人ですが、帰る途中に健常者の男が何故か思いついて引き返し、今度は座頭に喧嘩を吹っ掛けます。
完全な輩・・・
自分からぶつかって、キレて、杖を取り上げて放り投げ、あまつさえ座頭をぐるぐると振り回し、押し倒して、笑いながら帰って行きます。

・・・(´・ω・`)

なんで?なんでそんなことしようと思ったんだろう・・・(´・ω・`)

ちょっとからかってやろう的なかんじなんだろうか。
酷すぎる。
倒された座頭は、杖を探さないといけない。
杖を見つけたはいいけど、ぐるぐる回されたせいで 自分がどっちを向いているか分からなくなって、帰る方向が分からない。
なんて酷いことを。
でも座頭は、川のせせらぎの音に気付き、杖を浸して流れる方向で、方角を見つけることが出来ました。
たしかに。盲目の方はそうするんだ、って、やっぱり自分がその状況にならないと気付かない事 分からない事がたくさんある。
座頭はさっきまで一緒に酒盛りをしていた男と、自分に乱暴した男が同一人物であることに気付かず、「先ほどの男と違って、情けない奴だ」と憤り、目の見えない自分を嘆きます。
このお話は、笑いは殆ど起きず、だけども、フランスで上演した時は大好評だったそうです。
フランス人はシニカルだからか、不条理、人間の二面性が受けるみたい。
最後の最後、座頭が帰りながら体が冷えてしまった、とくしゃみをして、退場していきます。
その時、直前まで悲哀というか、無常というか、すごく哀しい気持ちになっていたのに、なんだかそのくしゃみを聞くと、座頭自身がそんなことを屁とも思っていない、自分自身の身の上や、上京の男の黒い部分、器の小ささなど、それらを笑い飛ばしているような、なんだか清々しくスッキリする気持ちになりました。
不思議!
モヤってするんだけど、だけども古典の「しみじみ」とした作品でした。
万作さんの凄さかな。
大分とお歳を召されて、歩くたび、セリフを言うたびに 息遣いが聞こえて、本当におじいちゃんで(失礼!笑)ちょっと倒れちゃわないかドキドキしたけど、いつまでもお元気で素晴らしい世界を観せていただければいいなぁと思いました。


次の「首引」は、1作目のちょっとモヤモヤした空気を吹き飛ばす、打って変わって最初から最後まで笑い尽くしの作品です。
鎮西八郎為朝が西国から京へ戻る間、鬼のいる世界に紛れ込んでしまいます。
そこにいる親鬼は、娘姫に人間のお食い初めをさせたいと考えていたため、この男を食わせようとします。
でもこの親鬼、初っ端から面白い(笑)
さすが萬斎さん
為朝に、「自分に喰われるか、娘に喰われるか、どっちがいい?」・・・って聞く?(笑)
為朝「娘が良い」・・・って、そりゃ若い娘のほうが良いわな!でも真顔で言っちゃう!?(笑)

親鬼が娘を呼ぶと、ぴょんぴょん跳ねながら入場したり、「喰うのは・・・いやじゃ!」とか駄々をこねたり
恥ずかしがる娘っ子に業を煮やす親鬼が「ととが言う事が聞かぬことがあるか。つめつめするぞ!」って!
「つめつめ!」www言葉が面白すぎるwww
親鬼になだめすかされ、娘っ子は為朝を食べに行くのだけど、扇で打たれては、「ぶった!えーんえん!」と泣いたり、どっちが鬼か分からん(笑)
そして、親鬼は為朝のことを「ととが叱ってやる!」ってwww
直接肌が触れると、柔い娘っ子の肌だから自分の荒々しい肌で傷ついてしまうのでしょう、と嘯く為朝。
こいつが一番ヤバい(笑)
なので、肌が触れないように布を首に引っ掻けて引っ張り合いをすることに。
負けそうな娘っ子を見て、親鬼は子分たちを呼び出し、娘っ子に加勢させますが、その時に例の練習した掛け声を会場も合わせます。
どう考えても卑怯www
そして、掛け声とともに、為朝のほうへと引っ張られる鬼たちwww
結局、どさくさに紛れて為朝は逃げ出してしまい、会場が笑いで満ちたまま終わりました

面白かった~。
古典でもこんな感じだから、狂言は入りやすくて好き。
やっぱり萬斎さんは場を持ってくな~。
すっと魅せられるのが、流石。
また観てみたいなと思いました!



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