松本市のロックDJイベント”EDGE"でDJを依頼される
この9月に松本市西堀の「55BAR」で行われたDJイベント"EDGE"で、「次回11月はDJをやりませんか」と誘われ、CDを使う前提でOKした。
選曲のため1990年代に買い漁ったGoldmine/Soul Supplyのノーザン・ソウルCD(GSCD)を引っ張り出して聴き直してみた。
ノーザン・ソウルとは?
60年代のアメリカでは、ヒットを連発するモータウンの大成功に続けと、数多のレコード会社から似たような音のレコードが次々とリリースされては、注目されることなくお蔵入りしていった。
1973年頃から英北部ランカシャーの60年代ソウルを愛好するDJが、これらのタダ同然のレコードの中に強力なダンス・ナンバーが潜んでいることを発見し、クラブで回し始めた。曲に合わせ流行りのブルース・リーのカンフーのように、またはフィギュア・スケートや体操のように、アクロバティックなダンスを夜通し楽しむ習慣がランカシャー周辺のワーキング・クラスの若者に広まっていった。
得体の知れないソウルのレコードで夜通し踊りまくる、この地方だけの流行は、ロンドンのメディアから「ノーザン・ソウル」と名付けられ、オールナイター・イベントは74~77年にピークを迎える。79年に映画「さらば青春の光」が公開されると、The WhoのMy Generationがフロアの定番になるなど、本来のノリは徐々に失われ、1981年、ノーザン・ソウルを象徴的するクラブ、ウィガン・カシノの焼失と共にブームは幕を閉じた。以後ノーザン・ソウルは、熱心なオールナイター体験者によりイングランド各地で種火を守り続けることになる。
ノーザン・ソウルCDの大供給元、Goldmine/Soul Supply
ノーザン・ソウル・シーン体験を反映したLPは、80年代初めからKENTやCHARLYによって数多くリリースされてきた。
Goldmine/Soul Supplyはそれらと出所を異にする音源を80年代半ばよりLP化、90年代からCD化し、"Northern Soul"のタイトルをズバリ冠したリリースはKENTやCHARLYよりもダイレクトにノーザン・ソウル・ムーブメントという未知の世界の何たるかを想像させた。事務所はロンドンではなく、ノーザン・ソウルが燃え盛ったエリア、英マンチェスターとリーズの間に位置するトッドモーデンを本拠としていた。
リリースするLPやCDのマスターテープの存在は不明。ほぼシングル盤からの録音で、CDにはレコードのパチパチのノイズも記録されている。レコード自体がショボイ環境で録音され、大した気配りもされずリリースされた完全マニア限定の音源の発表も多い。
GSCD1枚にはCDメディアの限界74分ギリギリに、約30曲が詰め込まれていた。マニア限定の音源に当たらない限り、必ず3つ4つキャッチーな曲が入っていて、それを楽しみに買っていた。マスターテープ起こしと思われるKENT盤の音抜けの良さは無いが、逆に海賊盤的な秘密作業を経て世に出た感も魅力であった。
ノーザンソウル、CDとレコード(シングル)の長所短所
CD/GSCDの長所
○1枚で多くの曲が聴けて経済的。
○頭出しが楽。
○GSCDには豊富なコレクション、保存状態上位のシングル盤が使われているはず。
○GSCDには予めノイズが録音されているが、それ以上増える心配がない。
CD/GSCDの短所
●トレイを開けて乗っけて閉じて、再生までに時間がかかる。
●再生時は密閉された箱の中にあり存在感に欠ける。
●GSCDはシングル盤が持つ本来の音が忠実に再現されているのか、わからん。
●GSCDはダイナミックレンジが狭い。WIndows登場以降は、超低域やパチパチノイズの周波数カットなど、デジタル加工されていることも考えられる。
●GSCDは曲が多すぎて、飽きる。一枚最後までじっくり聴いたことがない。ダイナミックレンジが狭いせいもある。
シングル盤の良さ
◎本当の音。本当のダイナミックレンジ。本当の音抜け。豊かな音。
◎存在感がある。
シングル盤の欠点
●元々は見向きもされなかったレコード。しかし流通が少なかったため貴重盤扱いとなり、とにかく高い。
(1回30分のDJ=2分×15曲として、シングル1枚5000円以上×15枚+海外からの送料で、予算は約10万円。LPなら半額で賄えるかも?)
●60年前のものであるから状態の良い物が少なく、かつ現物を見て視聴して買う機会が滅多にない。
●保存が悪いと劣化しノイズが増える。
●相場と購入金額から名盤と勘違いする。
おや、音も曲も意外とイイ!と再発見したGSCD
GSCD38"The Northern Soul Of Chicago Vol.1"
「ゴー・ゴー・ゴリラ」「G.I.Joe I Love You」という「おかしなタイトルへんな曲」が入った、音も曲も地味で繰り返し再生したことのない盤だった。
買った当時に比べ再生環境が格段にアップした今、改めて聴いてみると他のGSCDより音抜けが良いではないか。上の2曲は名曲に決定。
売れたゆえに今は叩き値のGSCD 全盛時のクラブ選曲を再現したシリーズ
1994年頃からBrit Popが流行り、英メディアによって60年代英国ロックが見直されると、70年代にノーザン・ソウルというシーンが存在していたことが世間に知られるようになった。
それまでアメリカの地域毎、レーベル毎に焦点を当てた編集を主にしていたGSCDは、カジノ、トーチ、メッカなど、往時のクラブ名を冠に、プレイリストを再現した編集盤を続々とリリース。
これらは曲の重複をものともせず乱発され、現行売価をDiscogsで調べると片っ端から安値となっているが、それなりに出回った証と見る。
一連の先鋒GSCD51"The Wigan Casino Story"は、ズバリのタイトルに、これぞノーザン・ソウル・シーンの在りし姿を伝える真打登場!と期待したが「?ポール・アンカってなんだよ~」から始まって、ドラマチック、ロマンチックに朗々と歌い上げるバラードの存在感が大きくGSCDの中では一番ソウルっぽくない内容。悲嘆ムードで疾走するあまり黒っぽくない音は(このCDではStick By Me)ノーザン・ソウルを象徴的するサウンドで、バラードといい、かの地に暮らす情緒に合うのかも。
値崩れしていない、値上がり傾向のGSCD
アタクシが所有しているGSCDの中で、発売当時より値上がり傾向で取引されているのが上の6枚。
GSCD71”The Northern Soul Of Chicago Vol.2"は、Jimmy RobinsとWade Flemondsのダイナミックなソウル・ナンバーが入っていて印象に残る盤。
その他は断片的な記憶しかない。再生環境が全然違う今、また再発見があるかも。
CDはDJシーンでは完全オワコンメディアと判明。
シングルを集める金がないならUSBデッキを使いこなすしかない。
さて11/2、当日の55BAR。
DJシーンでは、今メディアの主流はシングル盤、USB、辛うじてLPレコード(雨振りだったし重くて持ち運びが大変)。
シングル盤は見た目がいいし、コンパクトなスリーブを回し見して周りと会話ができる。
USBは耳だけでなく、波形を見てどんどんアクションが起こせる。とは音ゲー、EDM専門DJのTEE氏。なるほど。
何やら出し入れしてるだけで見えないCDは、DJメディアとしては今や見向きもされないんだと。
CDのDJプレーヤーも不用品買取店で山積みで、完全オワコンなんだと。
結局GSCDの出番は無く、保険で持って行った"Northern Soul Story"(CDを出す前のGoldmineが出していたLP)が活躍した。
LPは嵩張るし、溝を数えないといけないので大変だね。
アタクシがノーザンソウルかけるなら、面倒だがCDをPCに取り込んで、USBを持っていくのも一興か。
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