きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

『日の名残り』をまた読んだ

2024-08-11 17:48:04 | 書評

 ずいぶん前に読んだ。最近映画になっていることを知り、これってあれでしょ?とばかりにあらすじを読んでみたら「えぇ!?そうだったっけ?」ということが書いてあった。

 

 第1回目の読書メーターの感想は、「よかったね、やりがいがあって」とかなんとか、そんなことを書いた気がする。正直に言うと淡々と執事の仕事内容が続くので、読み飛ばした部分もあるというか、ななめ読みに近い状態で寝てしまったこともあるので、肝心な箇所を読んでなかったのかもしれない。

 

 ナチスを応援していたかどうかは、かなり重要だが、そこをつかめていないのか、それとも内容に関わらず執事としてのやりがいにだけ注目したのか。なぜそんな風に書いたのか釈然としないが、とにかくこのままでは自分の感想はKKK団の総括のようになってしまっているので、もう一度読み直そう。

 

 その前に、とりあえず映画を見てみた。執事がレクター博士って怖すぎないか?品格があるのかもしれないが、客がいかにもこういった難しい話は知らないだろうという不躾な態度で質問してきたり、一体その隠し扉の向こうで何をしているのだろうなど、別の恐怖を味わった。女中頭が不用意にレクター博士の読んでる本をのぞき込もうとするなんて!命が惜しくないのか。

 

途中で、やっぱりユダヤ人を1回不当に解雇したりしていた。う~~む。まぁそうなんだけど。そうなんだけどもね。

 

 

 

そして本をもう一度読んでみた。

 

第2回目:

 

 主題は新撰組の苦悩のようなことなのか。最初は確かにドイツが負けたからといって、敗者にならどんなひどい対応をしてもいいのかなどの憤りがあって、正義感という意味では正しかったと思われるが、その後、ドイツの方の思想もまわりの常識もズレていって何もかもがおかしくなった。

 

 仮に、小さいころから目をかけてきたアナキンちゃんがいつのまにかダースベーダーになっていたら、一体いつ「あんた違うよ!」と言いだすのか。あんな黒い星を運営していては、もうこっちの言うことなんか耳を傾けてくれないだろう。最初からそうなら協力しないが、だんだんなっていってしまった場合、特に旧知だと困る。

 

 それでも分が悪そうだからやめますなどと言わない所が、品格というか矜持なのかもしれないが、主人が活動を始めた根本理由が「世界を良くしたい」というものだけに、なんとも腑に落ちないような、勧善懲悪でないはっきりしない結末だった。

 

 今回読んでいて、ナチス云々以上に気になった点は、政治は政治家に任せればいいという価値観だった。地元のバーで急にまくしたてたり、率先して議論に身を乗り出してくる執事というのも嫌なものだが、やはり独裁を防ぐためにも選挙による民主主義ぐらいは静かに固持するスタンスでいる方がいいと思う。

 

 逆に、執事や秘書として勤めているところの主義主張とはまったく別の政党に投票したってかまわないのだろうし。いくら主人に忠誠を誓っていようと、私生活まで囚われているわけではないのだろうから。

 

 結局、何の色だったかは置いといて、ただ渦の中心を見たとかそういうようなことが誇りならば、じゃあ「よかったね」としか言いようがなく、そうするとやはり最初の感想に戻ってしまう。最初に読んだ時にはいつ殺人事件が起こるのだろうと思って読んで行ったから、一切何も起こらないことが疑問に感じられたが、今回は「これは忠臣のあるべき姿についての本だ」と思って読んだら案外すらすらと読めた。

 

 

 そもそも、これはコメディーではないのか。話の全部がではなく、あの執事の元々の性格が。旅行に行くのにお殿様からもらった紋付き袴しかないと、昭和頃になって言ったとしたらねぇ(笑)

 

それと、ジョークの練習!これはなんだろう。宴会の裸踊りの練習を毎日家でやっていますという感じか。いやすぎる。

 

嬉しくて飛び回るとその場に何人も居るように見えるという表現は微笑ましく、前回と違って多少愉快な気持ちで読んだ。

 

 

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