きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

釜と蓋

2023-09-30 16:23:14 | 記憶の神経衰弱ゲーム検証

 6年くらい前、趣味で庭のソテツの下を掘って岩をゴロゴロどかしていたら、銅製の錆びた円盤が出てきた。緑青の合間に文字が見えたので、何だろうと思って土をどけて洗って仏間の引き出しに入れておいた。

 

 

 

 数年前、娘が京都の茶道のミュージアムに行ってきたというので、パンフレットを見せてもらった。

(娘)「その人は御釜師。釜を作ってるんだって。その界隈では名の知れたスーパー御釜師なんだってさ。そして、その通りには同じ職業の人がいっぱいいるんだっ!」

(きの)「はぁ。」

 

世の中にはいろんな職業があるものだ。冊子をパラパラとめくっていて、

 

 

ん?

 

うちのあの煤けた円盤はフタでは?

 

 

それじゃあ、仏間に置いてあるヘンな壷は茶道具だったのか。

 あれは、自分が日本に来た時に離れで発見して、面白いからって持ってきて仏間に飾っておいたものだった。ということは、6年前から1mの範囲内にいたのか。

 

 

フタが落ちていた場所を考えると、なんとなく経緯がわかった気がした。

 

 昭和の初めに、離れに親戚が住んでいた。そこのお嫁さんは嫁入り道具に色々と持ってきていた。

 その人がお茶をやろうとして湯を沸かし、茶会後にお湯が余ったのでもったいないからソテツの下に持って行って撒いた。その時にフタをひょっとそこらの枝の上に置き、すっかり忘れて釜をしまい、引っ越して行った。フタはソテツの株元に落ちて土が降り積もり、そのまま60年が経過した。

 

 

 満を持して、(きの)「コトッ」乗せてみる。あんまりしっくりこない感じがしたが、数か月後に見た時には最初からそうであったようにちゃんと乗っていた。不思議なものだ。

 

あれで湯を沸かしたら、しゃらしゃらという風が松の梢を渡るような音が聞こえるのだろうか。

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70年越しの思い出

2021-11-22 13:40:02 | 記憶の神経衰弱ゲーム検証

 父の幼少時のおぼろげな記憶を、実家の隣の婆さまに語ってみた。

(きの)「今から15年前ぐらいに父から聞いた。終戦後、小学生達が先生の家に集まって持ち回りで朝ラジオ体操をしていた。

坂の途中に家があり、若い独身の女の先生が住んでいた。

朝が弱いらしく皆が集まってきた頃、眠そうに蚊帳を持ち上げて顔を出す。」

 

 家で夫に聞いてみたらしい。

(爺)「自分の姉は坂の途中に家があったが、建てたのは昭和49年だから時期が違う。もう一人田村という教師がいたがこれも違う。

終戦直後に若い女性が1人暮らし???なにかの勘違いじゃないのか?」

 


その夜、

(爺)「(ムクッ)まてよ、坂の途中に校長の官舎があった。住む校長がいない時、単身の先生が住んでいた。

そしてそこの庭は広い。」

 

ビンゴ!

 

 おそらくそれだろう。こちらは何も知らないから聞いたことをそのまま伝えただけで、合っているのなら正しい記憶ということだ。

自分は見ていないが、誰かの記憶の依り代となり

夏の朝の光景を今にお届けするとは楽しいね。

 

備考:これだから人間の脳は面白い。
そして隣のじいさんもまだまだボケてはいないな。

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