週末に大阪で用事があるというから興味本位でついて行った結果、難波の人混みで(娘)「私こっちだから。じゃあね。」放り出される。(きの)「・・・」ここどこ??大阪はよく知らない。難波駅なんて初めて来た。何これ地下迷宮?この人混みはどっから湧いて出た。どうせ用事もないくせに、みんな家に帰れ!
お上りさんのチワワが、とりあえずあたりに毒づきながら人の流れにまぎれて進んでいると(通行人)「すみません。お仕事ですか?」(きの)「ええどうも。スタスタ」(通行人)「ええと、モジ・・モジ」何だこの人迷ったのか。(きの)「どうしたの?」(通行)「あの、お茶が、飲みたい・・・」そんなの勝手に飲めばいいだろう!!
(きの)「ハハハ。ありがとうございます。しかし待ち合わせをしてまして。これに乗らないと」
この赤い電車どこ行くんだろ。
(きの)「じゃ失礼。」(扉)「プシュ―。ガタンゴトン(放送)この電車は〇×#$%行きゴオォォォォ~~」
たすけてー。
何なんだよ。勧誘か。大阪は恐ろしい所だ。こんなところからは一刻も早く立ち去らねば。とりあえず乗ってしまったが、この電車はどうやら新大阪に停まるらしい。ということは唯一知ってるJR京都線に乗れるはず。そうして我が心のふるさと・京の都へ帰るとしよう。
ようし。冬の味覚と言えばカリントウだ。カリントウを買いに行こう。いいことを思いついたとルンルン気分で京都駅の Pronto🌞に寄り、スパゲティーを食べて柑橘ドリンクを飲んだ上にリフィルで氷水をいただいてから慣れ親しんだ地下鉄烏丸線に乗って、北山で降りてそのままチケットを買い植物園に入っていく。今は実りの秋だからヘーゼルナッツの生育状況を調べたい。へへっ。ここに2本あんの知ってんだ。
竹の林を抜けて、斑入りの植物の向かいにお目当ての森の端の植物たちがいた。
見ていると、近隣の女性2人がせっせとその小さい木の下で拾っている。なになに、とのぞき込んだらこっちを見て、ハッとしたように投げ捨てて行ってしまった。何だろう。近づいて見たらヘーゼルナッツのひしゃげた実だった。
ほう、もう生っているのか。それにしても小さいな。園芸種ではなくて野生のハシバミだろう。なんだかよくわからないが、拾ってしまったのでこれも縁だと思い、ありがたく記念にいただいて行くことにした。側にペンキで塗ったかのような白樺のほっそりとした苗も植わっていて、このあたりは比較的園内でも涼しい場所なのかもなと思った。
そこからお気に入りの針葉樹林地帯を抜けて、別の出口から出る。いくら北の外れとはいえ、よくこんな街なかに広い用地を確保したなと感心する。そこを狙って再開発だとか言い出す派もいて、反対運動が起きていた。
小さい出口から出て、いざ!上賀茂社家町へ。そこで漬けたばかりのスグキの漬物を直接買いつけに行ってやる。自由行動の間は何したっていいんだ。意気込んで行ったが、前に見かけた個人宅にも旗は出ていなかった。時期じゃないのかな。加熱殺菌してない生のすぐきは、豚の生姜焼きとよく合うんだこれが。うひひひ。塀から出たカリンの木などを眺めながら歩いていると、邸宅の脇に小川が流れていた。
そうだ、この辺を右に曲がったら、方向的に二葉姫の社につながってるんじゃないかと思ったが、小径はいろいろあるし、そんなの見つからないはず・・・(自販機)「ジャーン」いつか帰ろうとしたところを引き留めるようにして出現した、あの苔むした自販機が遠くの方に見えた気がした。せっかくだから行ってみようか。引き寄せられるようにして歩いていくとやはりそうだった。裏から曲がりくねった階段を上がる。やっぱりあった。あの風景も。自分が住んでいた時と何も変わらずにあった。
うれしくなって舞台のような箱型ベンチに座って、そこらを眺めまわしながらすっかり溶けきった氷水を飲んで休んでいると、また屋根にぱらぱらとドングリが落ちてきている。前回来た時よりもだいぶ少ないが、まだまだ山には木の実があるようだ。
幸い頭上には屋根があるので脳天には当たらないなと思っていると、社の方から(実)「カシーン」どこをどう屋根の隙間を抜けてきたのか横から垂直に飛んできて足元の板に当たり、目の前の地面でクルクルクルッと回って、左を頭にしてピタッと真横に止まった。何だろう。まるで、よく来たな。ほれ、これでもやるわ!と言わんばかりの歓迎ぶりだ。姫さんやっぱり関西弁なのか。ありがたくいただいて行こう。
でも、できればお茶の実の方が。ウソデスウソデス
親子連れがベンチの後ろに来て、親の方がおかしな片言の英語のフレーズで子供に話しかけるようにして・・・これは練習しているのだろうか。おとさん急にどしたの?と言わんばかりの子供の顔が可笑しかったが、最近はそういうの流行っているのだろうか。先日も、近所のスーパーのレジで後ろの親子連れがノー、ノーです、などと子供がこっちのカゴにお菓子を入れてこようとしているのを止めていたが。
そろそろ夕方になってきたので帰らねば。集合時間に遅れる。下に下りて行って上賀茂神社の入り口にある漬物屋に寄り、去年は社家町で買ったが今年はなかったと言ったら店員のはすっぱな姉ちゃんが、そんなあなたにはこれ!とばかりに出してきたのがヒネモノ。1年ものだそうな。要冷蔵ということは殺菌してないのだな。1年の間低温下で脈々と繁殖し受け継がれてきたラブレ菌をいただこうではないか。何百年もやってるお店の人が売ってるんだから大丈夫だよね。
急いで買って駅へ。酸っぱかったら洗いなさいよとか言ってたけど、ええい構うもんか。通はもう中毒の域に達しているのだよ。途中の鴨川で紅葉を記念に写真に撮りスーパーで特大カリントウを、なんとここぞとばかりに2袋も買い高速で通り過ぎる。なじみのバイトのあんちゃんも健在。あのカリントウはここでしか売ってるのを見たことがない(そもそもこれを買いに来たのでは)。頼まれていた通帳の記帳も済ませる。
京都駅の進々堂にも寄ろうかな。心機一転なのかカウンターも新しいのにすげ替え、クリスマスに向けてシュトーレンも売っていたので買って帰ろう。前は自分で勝手に取りなよのシステムだったが、今回からはショーケースの向こうにいる店員に言うとつまんで出してくれる。他にいた客の皆さんはショーケースの前を行ったり来たりして決めかねているご様子。
(店)「お次のお客様~」(きの)「はーいはーいはい」お前最後に来ただろうというはんなりとした視線にさらされたが、急いでいるのでハキハキと注文し(きの)「お先にー!!」みんなありがとうイェーイ!とばかりに騒いで出て行った。流れるように京都線で新大阪へ。
ちょうど新快速に間に合い、思ったよりも早めに着いてしまった。駅構内の4人掛けのイスがいっぱい並んでいるところでしばしの休憩。右隣に座っている姉妹らしき疲れた女性達。(姉?)「リクローあるやん。ちょっと並んでくるわ」疲れているのならそんなことしない方が・・・行ってしまった。妹の方は待っている内にうなだれて寝ているのか、前かがみになったまま動かない。隣のイスに姉が置いてった荷物との間にはご自身の長い髪の毛が覆いかぶさり、思念のテリトリーを主張している。
向こうの方から幸薄そうな親子がやってきて、左の1つだけ空いていたイスに子供を座らせ、母親は買ってきた肉まんを箱から出してちぎって息子に与え(母)「ここで食べなさい。」そんなことしないでちゃんとした店に入れよ。そうして自分はしゃがんで(母)「なんとかちゃん、おいしいねぇ~。」なんなんだよこの一杯のかけそば風のやりとりは。ここどうぞと言うのも嫌なので無言で立ち去る。こういうぶしつけな無防備さが非常に苦手だ。
颯爽と立ち去ったはいいが、その先にはトイレしかない。仕方がないので奥の個室に逃げ込み(きの)「こんなところに座りたかったわけじゃない!」イライラしてもしょうがないので現在地を知らせつつ移動だ。トイレを出た左にあるJim Beanと書いたオシャレなバーは前に入ったからつまらん。他へ行こう。トイレを出て遠くの広場を見たら、ちゃんと親子そろってイスに座っている頭が2つ見えた。ふん。まぁよし。
用事の終わったらしい娘となんとか合流し、新大阪を出て、高架と幹線道路しかないような道を歩いて、別の駅の横を通り、韓国料理屋を目指す。ところが着いてみたら看板もなく閉まっているような気配。仕方がないので、そのはす向かいにある上海料理の店へ。
(店)「カニは食べますか?」いいえ。なぜ急に?前にアメリカの中華の店に何かの日に偶然行って、入るなり「今日は魚を食べますか?」とピンポイントで聞かれたことがあるが、何かの祝いのシーズンでも到来したのだろう。
セロリの炒め物が食べたかったので、上海風の海鮮塩やきそばと共に頼む。中華風の凝った造りのテーブルの横に金魚の大水槽がある。中華系は縁起物だと言って多くの店舗で魚を飼っている。肥えた金魚がブヨブヨと泳いでいくのを見ていると、その向こうの窓の外を建物の横から出てきたシェフらしき人物が何度も横切って正面の扉から入ってきて奥の厨房に消えるが、なんだろう。材料でもしまっているのだろうか。
この店はいい感じに照明が落としてある。透かして作った欄間のような衝立が上海ムーンといった感じだ。大阪は上海料理がたまにある。
高田の馬場駅の手前にもこんな店があった。小さい時に行った記憶があるので、場所も知ってる。今もあるかと思って調べたらなかった。あの店も叔母に聞いたら老舗で有名らしいが、どうしてなくなってしまったのだろう。
うす暗くて奥に細長く、円卓のある店で、一緒に行ったおばあちゃんが、戦時中に大陸に居たという伯父さんが占いが得意で自分が生まれた時に名前を占ってくれていたことや、黄疸が出て死んだことを聞かせてきて、それはもう不気味な記憶であった。しかも、最近知ったが祖父の何回忌かの集まりだそうで、そうすると小学何年生だったのかな、などと思い出す。
衝立で見えないが、隣のテーブルには先生のような立場の主賓の女性を中心に集まっておられるご様子。聞くともなしに聞いていたが、途中から喋り方が関西ではないことに気づいた。西日本だ。なまりなつかし停車場の気分だが途中から(先生)「なんとかじゃろ」ん?この人たちは岡山県ではないのか。
そのうち世にも恐ろしいアレの話を皆で始めたのでやっぱり西日本だー。あそこにも出るとか、大きいなんとかがぎゃぁぁ。なんで食事中に全員でその名前を連呼するんだ!実にディナーの会話にふさわしくない。その集団は大いに食べ、サービスの品をもらい、喋るだけ喋って帰って行った。
この店は急遽目についたから入っただけだったが、上海ガニで有名らしい。会計を済ませ(きの)「金魚ちゃんバイバイ」店の外までチャイナドレス1枚で出てきて、逆光の中で一生懸命つたない日本語で礼を言う本場の店員にも挨拶し、ほの暗い上海料理の店を後にする。
帰りは駅までぶらぶらと歩く。「西中島の南方」だとかいう訳の分からない名前の駅から、どこをどう通ったのか知らないが心斎橋に帰ってきた。ちょっとだけ時間があるのでアメリカ村へ。アメリカ村と言ったって基地のようなものではないらしい。上野のアメ横もそうだが、昔から何かハイカラなものを売っている区画をアメリカなにがしと呼んでいるようだ。
そこで行くのは(娘)「古着屋。」なぜ?(娘)「有名だからだ。1時間待ちもザラ」1時間も並んで古着を買いたくない。雑居ビルの外に看板が出ているが、店舗は2階らしい。誰も並んでないぞ。って、そりゃそうだ。閉店30分前だからな。通用口から大きな袋を抱えてうひょひょひょと言わんばかりに出てきた大学生らしき2人とすれ違った。なんだかわびしい。古着がではなくて、そのまわりにいる人たちが。小学生の頃に通っていた下北沢には、あんなイモの見本のような連中はいなかった。
レトロ感のある住居表示を見ながら階段を上がる。そして肝心の店内は(きの)「せまっ」四畳半ぐらいのスペースをぐるっとひと回りできるように壁と中央にびっしりと服がかけてあって、一旦入ったら最後、次の客が来ればその狭い通路を引き返すことはできない。今は誰もいないが、ひしめき合うのは嫌なんだ。
躊躇していると(店)「どうぞ」(きの)「いいえ、荷物が多いので結構。外で待っています」一人で踊り場に逃げていたら店内から呼ばれた。しょうがないので荷物を店の外に置いて、意を決して入る。
品ぞろえは本当に普通の古着だった。ただ、ブックオフのような現代の古着ではなく、品の良いアンティークが多数。もう入ったら戻れないので一瞬で決めて(きの)「これにすれば?」どうせならと思い、一番派手な柄のやつを勧めておいた。
レジでステッカーをくれたりとやたらとサービスが良いが、近ごろ旧知の知人が熱を上げている「常様」と最近はやりらしい藤井某をかけ合わせたようなアーティスト風の若い店長は、「見てってね。好きなの持ってっていいよ」などと口調が少しなれなれしすぎやしないか。ここお前んちかよなどとツッコんだりはしない。まぁしかし客は高校生とか若者が多いだろうから、フレンドリーということで。
帰り際、商売の相棒らしき男が追加の古着を束にしてかついで持ってきては、せっせと棚にかけていた。地方の古着を仕入れてきて場所柄飛ぶように売れるのならいい商売だなとは思うが、個人的には落ち着いた街の穴場のような店がいい。
OPAというパルコみたいな準デパートの地下に、珍しい韓国のドーナッツ屋があり、奥は韓国ファーストフードの店がどこまでも広がって、ダルい10代が散らかった机で何をするでもなくウダウダと寝ていた。会社帰りらしき女性が覚えたてのつたない韓国語で店主に会話を試みている。その対岸の幸せを探すような姿が世も末とまではいかないが、物品は新しいのに人心はなんだか戦後のようなすさみ具合いだと思いながら眺めていた。
娘がトイレに行くと言って消えたので、ヒマだからドーナッツを買おう。ブルーベリー生クリームという紫色のケバケバが巨大な生地にぎゅうぎゅうに詰まっているのがおいしそうだ。さっきのしなだれかかるようなOLはもう帰ったらしい。
ようし。(きの)「あそこのあれとーそれとー・・・」(店)「あの、すみません。そちらのトレーで・・・」(きの)「ん?」あぁ!そうか。ここは進々堂とは違う方式なのだな。そんなに申し訳なさそうにしなくても。片言の日本語で何度もお礼を言いながら、すごい手間をかけて包んでくれた。お手ふき3個て。実はこれを今から1人で食べようとしていたと申し出ようか。
それにしてもこの大きさでこの値段は良心的すぎやしないか。大満足でホクホク買って帰る。(娘)「なにそれ。」(きの)「ドーナッツ」(娘)「??」なぜ急にそんなもの買うんだろうといういぶかし気な視線で見られた。帰りの高速バスでUSJを眺めながらあたりを粉だらけにして食べたが、ちょっとブルーベリーの酸味があっておいしい。
そして仕上げに、帰ってきて近所のスーパーへ行き特大カリントウを見つける。(きの)「・・・あれ?」