きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

お屠蘇は漢方か

2024-01-05 19:46:47 | グルメ

 埼玉県の生家では、正月にお屠蘇を飲む習慣はなかった。酒は出ていたが、あの「屠蘇散」という、のし袋のような紙に包まれた何かを入れたりはしていなかったと思う。純粋な日本酒の味しかしなかったし、年少者から飲むようならその直前に何か入れていたら気づくはずだ。関東では入れないような気がするが、どうなんだろう。

 大人になるまで一度も見たことはなかった。それを両親とも居なくなってから西日本の古い家屋の台所でひとり発見した時の衝撃は、かなりのものだった。

 

なにこれ。(きの)「のろいのごふ?」

 

母が買ったのか?開けてもいいの?どうなのか聞く相手もいない。まず字がコワイ。ほふって、よみがえって何だこりゃ。

 

開けてみたら変な焼香の粉みたいなのが入ってて、これ捨てていいんですか!?それとも神社のほら、あの年末年始の大きな箱の中に入れるべき?

 

 

 初めて見た時はショックだったが、京都に来たらいっぱい売ってた。ドラッグストアでも売ってる。昔は薬局でサービスでくれていたらしい。もう怖くないぞ。中身はスパイスのようなものらしい。普通は年末に飲むんだって。うちは年明けに飲んでたから、じゃあ知らなくても無理はない。

 酒に入れるしか使い道はなさそうだから、特に飲まない自分に縁がないかなと思っていたが、ふと、あれをサイダーに入れてみたらどうだろうという魔が差したようなことを思いついた。

 

 さっそく買い求めてきて入れてみる。原材料は主原料が陳皮(ミカンの皮)、桂皮(シナモン)、丁子(クローブ)、山椒、桔梗(咳止)、ボウフウ(せり科)、オケラ・・・オケラ?えぇ?昆虫の?

いやだなぁ。イナゴの黒焼きみたいなのが入ってたらと思って調べてみたらキク科の植物だそうな。よかった。養命酒も原材料をじっくり見てからはどうも。

 袋を開けたらティーパックが出てきたので、破って下鴨神社で買った土器に注いだサイダーに御香煎のように浮かせて飲んでみたが、漬け込んでないのでゴミだらけの飲料を飲んでいる気分だ。和風のチャイのようなものか。確かに健康にはいいだろう。今年は年末年始にそこらじゅうの神社に行ったし、正月を存分に味わった。

(写真はリキュールグラスに注いだ時のもの)

 

 さて、健康にはいいだろうが異物感満載である。サイダーだから煮出すことはできない。最初から煮だしたエキスで漢方っぽいものはないかな。あのマムシ酒はいやだ。結局コーディアルということになるのか。もっとこう、カッコイイのないかな。薬局で売ってるのじゃないやつで、体に良さそうなもの(無理がある)。

 カクテルなどの酒を割る色とりどりのシロップの中に、1個だけ他と毛色が違ったアンゴスチュラ・ビターズという苦みを出す目的のハーブやスパイスを煮詰めた液があるが、あれなどどうだろうか。三ツ矢サイダーで割ったらさぞおいしかろう。アンゴスチュラは、あれもミカン科だそうだ。

 

 あと、1年に1回ぐらい冬にブランデーの入ったチョコが食べたくなるが、あれをビターズで作ったらどうだろうか!ブルーキュラソーでもいい(これも洋風陳皮エキス)。なんとオシャレな。しかも体に良い。

 イタリア料理のレモンチェッロは酒に漬けたレモンの皮エキスで、条件はほぼ同じだが酸っぱいのではないか。チョコレートに酸味は合わないように思う。養命酒チョコは審美的な観点から見て嫌。漢方やスパイスの力を借りて、今年は人一倍健康になってやる。

 

2022年1月追記:

 今年も買ってみた。去年はスーパーで買ったので、今年はドラッグストアで探してみた。だってあれ漢方だしね。大阪の立石春洋堂という殺虫剤の薬局が作ったやつ。あったはいいが、裏に古語みたいな用法が墨で書いてある。(きの)「・・・読めない」

 なんとか天皇の時代に中国から来たということがわかった。今年はこれを煮出してみよう。というか、水で抽出だ。どうやら解読したところによると、酒に1昼夜浸してから飲むらしい。コップに少量の水を入れて袋を開け、冷蔵庫で2日ほど染み出るのを待とう。そもそも水溶性だろうか。まぁいいや。

 そして元旦に三ツ矢サイダーで割って飲んでみた。ちょっと黄色い炭酸。おぉこれは効きそうな。そして、よく見たら紙袋になんとパックが2コ入っていた。あと1つどうしよう。

 

(きの)「そうだ!」

 

 またよからぬことを思いついた。桂皮(シナモン)、大茴香(八角/スターアニス)、丁子(クローブ)などの成分はチャイとほぼ同じなのではないのか。牛乳に入れておいしくいただこう。舶来の飲み物担当者がシブい顔をしながら見ている。

(娘)「ギギッ」ぎこちない仕草で淹れてくれたので飲んでみたが、味は普通のチャイだった。ス〇ーバックスで売り出せばいいのに。ホイップを乗せて「冬のアンシェント・スパイスでヘルシーな午後をどうぞ」とかいって。

 屠蘇の意味は、鬼を屠絶(とぜつ)させ、自分達人類は蘇るということらしい。どこにいるかも知れない鬼を退治できたのか定かではないが、漢方である以上、何らかの身体的な蘇りがあったものと期待される。

 

 

 

後記:

 2022年。四国にも売っていた。どうやら西日本一帯に広まっているようだ。アンゴスチュラの他に、シカの絵が描いた何とかいう薬草の酒もあるそうだ。確か進撃の巨人の登場人物の名前だった。エルヴィン・マイスターだっけ??すごい生真面目っぽい。なんかそんなの。

 

イェーガー・マイスターだった。おしい。

 

 

2023年12月追記:

 シュトーレンがおいしい。Jupiterでドイツ輸入のがあったので買ってきてさっそく食べてみる。(きの)「やっぱホールだよ。この色、この形。王蟲みたいだ。キシシシシ。この緑色のなんだろ?アンジェリカ?まぁいいや。むしゃむしゃ」

 

 しばらく見ていて(きの)「これの進化版を作れないだろうか。」レーズンとオレンジの皮の砂糖漬けをブランデーに浸けて戻すらしいが、ツムラの薬養酒では?だんだんお屠蘇から離れていく。漢方薬ではあるのだが。

 

 一応予備知識として、汎用の集合知を利用してあらましを把握しよう。そこら辺のなんちゃって簡単シュトーレンはいやだ。もっとクラシックで王道のレシピがいい。それを教えてくれるグランマでもいればよかったが、生憎いないので家庭料理の大御所マーサ・スチュワートの動画を見てみる。なぜドイツ料理でアメリカ人?とは思うが、ドイツ人にドイツ語で言われてもわからないからだ。

 

 温かで落ち着いたメロディーと魅力的な低い声で、クリスマスシーズンにぴったりなレシピをご紹介・・・とかなんとか言って始まる。30年ぐらい前からこの短髪の清楚な人が大好きだ。

 その番組の中で、普通のものを普通に作るのではつまらないと思ったのか、なんとマーサはオレンジピール達の切る前の姿を持って来た。巨大なグリーンの固まりを見せ(カリスマ)「これはシトロンです」えぇ!?そうだったのか。知らなかった。さすが元トレーダー、演出の仕方が秀逸。あの緑はシトロンか。毎年知らずに食べていた。

 

 輸入のやつには原材料にレモンの皮と書いてあったが、シトロンと書いても日本の消費者には伝わらないと考えたのか。ふぅん、じゃあこちらは柑橘3原種のうちのもう一つ、文旦で行こう。今年は庭のバンペイユが豊作だ。作り方は大体パンと同じ。ちょっとバターが多い気がするが。

 

滋養強壮。

 

 それを合言葉に黙々と作ってみる。薬養酒の小瓶1本で漬けた文旦ピールとカボスのピール、レーズンはなかったのでそこらに転がっていたブルーベリーと、そうだ、ジンジャーの砂糖漬けと、業務スーパーで売っていたサンザシの固めたようなのも角切りにして入れてみよう。非常に豪華な内容物だ。きっと体にいいに違いない。いつかもらった香典返しのパン焼き器があるので、すべての材料を入れて(きの)「ぴっ」

 

 

 数時間後、紫色のおいしいフルーツパンができあがった。ちがう。おいしいけど、全然シュトーレンではないし、薬養酒の匂いもしない。くやしいので砂糖を塗りたくって食べてしまった。

 

これは失敗ではない。今回の情報を次につなげるのだ。

まだまだ、漢方のあくなき探求は続く。


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