きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

感動する本て何だろう

2017-12-31 16:03:33 | 書評
 有名な「トンネルを抜けたら雪国だった」という本の
書き出しだけはよく聞くが、その先はどうなっているのかと思い、読んでみた。
ノーベル文学賞を取った人の本だし、
さぞかし美しい文章で感動するだろうと思ったら、特に何ともなかった。
何でだろう。こちらの感性が鈍いのか。
 
そういえば、今まで文体の美しさで感動した本はあっただろうか。
 
 昔リングの映画かドラマか忘れたが、
問題のビデオを見ていて、数秒おきに暗くなるのはまばたきだからだ
(すなわち念写だ!撮影機材を使わずに!?
ってことはこの世のものではない!なんと!)、
という発見があったところで「おおぉ~!!」となったが、
そういうのはたぶん違うのだろう。
推理じみた整合性は、クイズの答え合わせが当たっていたにすぎない。
 
  「Walking People 」は感動したし、「百年の家」も良かったね、と思ったけど、
結末や思考回路が望みに合っていたというだけで、
文体そのものに感動したわけではなかった。
 
 むしろ、小さい時に読んで、自分の中で大興奮の
「バーバパパ」と「マフィンおばさんのパンや」の方が、
なぜかわからないけど、無性に好きという点では近い気がする。
 
どちらも家の断面図と、柔らかいモチのようなものが出てくる。
結末も知っているのに何回も読んでしまう。
 
ロマンを感じる、ということだろうか。
好きな歌のようなものか。
 
文学、向いてないんじゃないのか?
などと早々に切り捨てて殺人トリックの世界に戻っていく前に、
また小さい頃の気持ちを思い出してみる。
少なくとも、自分にはバーバパパと赤い本棚があった。
  
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門司の朝の無謀な冒険

2017-12-30 21:14:25 | いつかの思い出
 以前、旅行で九州の門司港にあるホテルに知り合いと4人で泊まり、
窓の外の関門海峡に、頻繁に船が行き来するのを眺めて楽しんだりした。
そのホテルは、デザイナーがデザインしたという(他に誰がデザインするんだ?)奇抜な建物で、
なんというか、その・・・建物の真ん中に穴が空いていた。
わかる人はわかるだろうが、そう表現するしか。
 
 エジプト王朝のようなエントランスを抜け、オシャレな市松模様の大理石で平衡感覚を失いつつロビーに進むと、
涼し気な透明ケースに、フルーツいっぱいの解毒用の水が用意されていた。
清めてから 来いということか。
のぞむところだ。
グイっと1杯勢いよくあおり、チェックインを済ませ部屋へ。
 
 いつも旅では、宿屋に着いたら、まず逃げ道を地図で確認するが、
その時はかなり上の方の階だったのと、
着いて早々カードキーの不具合で、
同行者たちのツインルームのドアが開かないというトラブルに見舞われ、
出てきたマネージャーの妙なてんぱり具合いから、
「こんなホテル人災的に信用ならん」となり、
後で、一人で非常口の場所を実際に探しに行った。
 
 
 大体、そのマネージャーは見栄えばかり立派だが、
ドアを開けることに集中しすぎたのか、
客をずっと立たせたまま15分ぐらいガチャガチャやった上に、
修理を呼んできます!と言って逃走。
なぜここで下のロビーでお待ちください、とか言えないのか。
しかもミステリー好きな同行者の(男)「こういう時はだいたい部屋に死体がある」 
などと余計なことを言いだし、
(きの)「ぎゃははは。」 
推理小説など読まない優しいその(妻)「えぇっ!?死体が?」 
完全に怯え切ってしまい、疲れも相まってその場の雰囲気は最悪。
 
 そこに戻ってきて「修理が来るまで時間がかかります!」と言って、
すがるような目でこっちを見ても知らんよ。
しょうがないから、2人をこっちの部屋に招いてドアを開けてクサビで止め、
隣の気配がわかるようにして、(主に青ざめたお嫁さんの方を)ソファーに座らせて熱いお茶を振る舞った。
まるで自分は、高い壷を割ってしまったレディーに
まずお茶をふるまった英国紳士のようだと思いながら待っていると、
まだ隣でいつまでもガチャガチャ聞こえるので、
見ると渾身の力でドアレバーをねじり、ヒザでギュウギュウ押していた。
そんなんで開くかい。
 
 ソファーに座り直し(きの)「ゴホン」 
聞こえよがしに「混んでる時期でもないのだから逆隣りの部屋が空いているのではないだろうかー。
まずその部屋にチェックインさせて、後は好きなだけそっちで修理でも何でもすればいい」と大声で会話していたら、
どこかへパタパタと駆けていく音がして、
5分後、「新しいルームキーです。お隣の部屋をお取りいたしました」
と慇懃無礼にご登場だ。
 
高級を気取るなら、非常時にまず客を気遣う余裕を見せろよ。
 
 
 そんなことを思いながら、ちょっと出てくると言って非常口を探した。
ホテル・ニュージャパンの火災報道をリアルタイムで見た者は、
すべからくこのように疑い深くなる。
それらしい扉に「非常時のみ」と書いてあったが、
今も開かないなら、非常時にも開かないだろうなと思いノブを回してみたら開いた。
何か警報のようなものが鳴るかと覚悟したが、鳴らなかった。
かなり丈夫な重い扉だった。
 
 これは内側から開いたが、外からも開いたら泥棒が入り放題だろうから、
構造上オートロックに違いないと踏んで、
意味ありげに転がっていたクサビのような木片を、
扉にはさんでその先の非常階段を登った。
 
 屋上は眺めの良いだだっ広い空間だった。
海側と街側の景色が両方一挙に見えて、ここで一番良い眺めだと思うが、
今、自分の他に誰もこれを見ていないのだろうかと思うと、愉快でたまらない。
しばらくそこから外を眺め、写真を撮り満足してクサビを戻して、
部屋に帰って晩飯を食いに出かけた。
晩飯は、対岸でフグをたらふくいただいて船で帰ってきて、その日はよく寝た。
 
 
 次の日、朝はワインなども出るスペシャル・バイキングだというから、
楽しみにして部屋を出た。
こっちの同室者の用意が遅いので、
ヒマになってまたあの非常口に遊びに行った。
 
 朝の門司港は空気も澄んで、すぐ目の前に関門大橋が見えた。
海面も、昨日の夕方よりもキラキラと眩しく光っていた。
あまりにすがすがしいので、そのまま踊り場に出て
後ろで何やら「フスっ」という重たいものがこすれるような不吉な音がしたが、
気にも留めなかった。
 
 ドアが閉まったかなとはチラリと思ったが、
昨日の疑心暗鬼は、自分しか見てないこの素晴らしい景色の前では
些細な杞憂にすぎない。
さんざん景色も見て、さて戻ろうとすると、
本当にドアは閉まっていた。
 
 あはは、冗談だよね?と思いながらレバーを下げてみるが、
分厚いドアはうんともすんとも言わず、
叩いてもきっと誰にも気づかれなそう。
(風)「ひょおおぉぉ」 なぜか急に風も強くなり、
そこに至って、自分は携帯電話を部屋に置いてきたことに気づく。
そういえば、昨日の冒険を誰にも言ってなかった。
ということは、こんなとこに居るとは誰も予想しないだろう。
真剣にやばいかもと思い始めた。
 
 開いているドアはないかと下の階に下りても、
その下の階に下りても、そのまた下の階も、
無情な古びたクサビが点々と転がっているだけだった。
同行者からしてみれば、
着替えて出たら忽然と姿を消していたという、摩訶不思議な現象だ。
 
 なぜ楽観視した?
クサビをはさむ手間を惜しんだのか。
あの時クサビさえ挟んでいればと、
クサビのことばかり考えながら8階分下りていくと、
だいぶ地面も近づいてきた。
しかし地面に到達するには、外に面した踊り場が半階分高すぎる。
 
飛び降りるか?
 
 身を乗り出して下の花壇との距離を目測で測っていると、
イヌを連れた散歩の人が通って行った。
近所の住民か。
朝から人が花壇に降って来たら驚くだろうからやめておこう、
と気を取り直し、一番下まで下りて、
見覚えのあるノブをひねったら開いた!
地下駐車場に通じるドアだった。
 
 急いで駐車場を抜け、ガードマンに笑顔で会釈し、
猛ダッシュで正面階段を駆け上り、
エレベーターを連打して乗り込んで息せき切って出たら、
ちょうど隣の部屋の2人が、用意を終えて部屋から出てくるところだった。
身だしなみを整え、何食わぬ顔で
(きの)「おはようございます( ◠‿◠ ) 」 
さりげなく合流。
 
 
 天井に南国風のプロペラがまわるカフェテリアで、
なごやかな朝食会も無事に済んだので、
もう言ってもいいだろうと思い、おもむろに顛末を話すと、
同行者の常識人の(お嫁さん)「勝手にうろうろしちゃダメ!」
怒られた。
 
もう大人なのに。
 
教訓:クサビをかまそう。
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キジ撃ち大会(夢日記)

2017-12-17 19:16:43 | 日記
11/?/2014
 うちの外の畑を借りてる人が、勝手に 善意で溝のふちをビニールで覆い
今日はキジ撃ち大会をやると言い出した。
やめてほしい。
しかもウチ(なぜか4階)の窓から撃つという。
テロかよ。
 
 下にはいっぱい見物の客が。
苦情を言ったら取りやめになったが、
その人が連れてきたキジ撃ち名人に
「人類は古来から狩りによって云々・・・」
という説教を聞かされた。
 
 下をのぞいたら、見物客のジーンズの男の人の
あぐらをかいたヒザに乗った、まだらの猫が意味ありげにこっちを見た。
 
やっぱり小枝ちゃんだ!
 
 どうしよう、迎えにいこうか(なぜ室内飼いが出ているのだ)。
いや、ここは彼女の自主性を重んじて、待ってれば後で自分で帰ってくるだろう。
だから、ここで
 
待っていよう。
 
 
考察:たぶん近所の神社の、秋のお祭りの開催を知らせる空砲が朝鳴った→
寝ぼけて脳内で銃声?鉄砲?!キジ撃ちだ!となったと思う。
今どきキジ撃ちって。
秋の朝に見た、楽しい夢だった。
 
 
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やっと探偵がバーにいるシリーズを読み終わった

2017-12-10 12:18:33 | 書評
 古き良き時代のアメリカのような、
「探偵」と「バー」という黄金の組み合わせが現代で再現できるのか、
と疑問に思い映画を見てみたら、
ギリギリありですねといったところだった。
これ以上カッコつけても白けるだろうし、それ以上ダサイともはやハードボイルドでもなんでもない
世も末の便利屋顛末記のようになるだけだろうから。
 
 同じ探偵が出てくるのでも、推理ものとは違う。
そんなに奇想天外な犯人像もないし、ロープを使った密室トリックもない。
では、何が物語をハードボイルドたらしめているのだろう。
やはり、無頼でこだわりを貫く探偵の生き様を見てみましょうということなのか。
この話の場合、殴ったり殴られて埋められそうになったり、
保険なんていう体制的なものには加入しないで全部現金払いだそうだから、
無頼という点では申し分ない。
捜査方法は特にこだわりもなく、行き当たりばったりで抜けが多くて、
何か才能があるようにも思えない。
 
 むしろこだわりがあるとすれば、なぜかわからないが持ち物などを
「使わない」というポリシーを貫いて生活しているところだ
(カッコ悪いからだろうか)。
傘もスリッパも使わないし、腕時計もしないし、車の運転もしないし、携帯電話もない。 吉幾三かよ。
モモヒキはわかる気がするが北海道でねぇ?凍死しないの??
それで日常業務がこなせてる内はいいけど、
段々まわりに手間をかけさせるようになってきて、
緊急の場合など困るのでは。
しかし、お人よしというか義憤にかられて命も顧みずに動いたりするので、
それで好かれているからいいのか。
 
 次々シリーズが出ているのを知って、全部読んでしまった。
(数字)は出た順番。本編:
1. 「探偵はバーにいる」 女子大生が帰ってこないという同棲相手からの依頼。     結局グダグダな理由で現実的な相談だった。
2. 「バーにかかってきた電話」 こっちが映画「探偵はバーにいる」の原作。まぎらわしい。コンドウキョウコ(小雪)からの放火を調べてほしいという怪電話から始まる。
3. 「消えた少年」 重苦しい話で実写化はできないと思う。しかも犯人がコワい!
5. 「探偵はひとりぼっち」 映画の2作目「ススキノ大交差点」の原作。マサコちゃんというオカマが殺されて孤立無援の捜査をする。
6. 「探偵は吹雪の果てに」 親友の見舞いで行った病院で会った昔の彼女にどこかの遠い町に封筒を届けてくれと頼まれる。地方のしきたりと戦い雪の中を走り回る。もし映画化して撮影するとなると大変そうだけど北海道ならでは。
7. 「駆けてきた少女」 刺されて入院。サンドラ(森野元組長)の窮地?を救おうと、その彼女である女子高生と一緒に頑張る。
8. 「ライト・グッドバイ」 キモチの悪い奴と飲み友達になり犯罪を暴こうと努力する。そいつが最高に気持ち悪いので実写化は誰にも耐えられないと思うが、アンジェラは見てみたい。
9. 「探偵、暁に走る」 アル中イラストレーターの行いに感動した探偵がひとりで死の真相を探る。荻原さん(だっけ?)がいい悪役。「♪オレの話を聞けえぇ~」って歌ってる人が演ればいいと思う。
10. 「旧友は春に帰る」 旧知のモンローが助けてくれと言ってきた。こちらも雪の中を逃げ回る。モンローに味のある素敵な役者を持ってくれば見ごたえあると思うけどなぁ。
12. 「猫は忘れない」 知人の猫の世話を頼まれたところから事件に巻き込まれて行く。これも犯人が怖い。近年は依頼ではなく付き合いで無償で調べるのが多いが、一体何で生活資金を得ているのか謎。
 
今冬12月公開の映画の3作目は、オリジナルストーリーだそうだ。
 
 番外編のようなものもあるらしい。:
4. 「向こう端に座った男」 短編集。探偵の通常業務。
11. 「半端者」 若い時。桐原組長との出会いが書いてあった。立ち退きのジャマをするとは。しかし行動の動機が金儲けでもなく職務でもない、趣味だったら、そんな人最強だと思う。
 「残光」 全く別のシリーズにゲスト?出演。同業種の他人目線。証言者をつれて一緒に逃げ回る。ハッキリ言って足手まといだった。主人公が有能なので、よけいおっちょこちょい度が目立つ。何しについてきたのか。
 「ボーイズ・ビィ・アンビシャス」 これも別シリーズ。若い人から見た探偵。もうこんな大人おしまいだ。
 
 皮下脂肪をたくわえだしたあたりから、
次に読んだらホームレスになっているのではないかと心配で。
読者に心配されるハードボイルドって。
 
もうないだろうね?
 
追記:「疾走」と「サイドストーリーズ」というのもあるらしい。
「フリージア」、「残光」、「疾走」という榊原という探偵の3部作。
サイドストーリーズは、何だろ?短編集?オムニバスかな。
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休日のハト

2017-12-02 08:12:44 | シンクロニシティー
 休日に昼飯を食っていたらハトが来た。
玄関の前で(ハト)「ジッ」 こっちを見ている。
どうしたのか。
あまり逃げる様子もないがウロウロしている。
ちらっと見ると壁際の細い日陰でそっと身を休めたりして
(きの)「も、もしかして具合が悪いのではっ!?」 
 
 よく観察してみると足に識別票のようなものが付いている。
(きの)「レース鳩だ!」 だから人を怖がらないのか。
なるほど。
近所に野生のものも群れているが、ボーボー鳴くばかりで近寄ってこようとはしないからな。
 
 レース鳩ならどこか遠くから飛んできたのでは?
鳥は飛ぶために極力省エネ化して腸が短いと聞く。
(きの)「これは燃料切れと見た。バララッ」 
冷蔵庫にあった健康もち麦を、豆まきのように撒いても動かない。
後で陰から見ていると細々とついばんではいるが、
次に見た時には地面に腹をつけぺったり座り込んでいた!
もうダメだ(絶望)!!
 
 これは全日本レース鳩協会に電話しなければ。
番号を検索し(きの)「もしもし!どうしたらいいのかっ。
この近所にはガラの悪い猫が大勢居るんだぞ」 
何の自慢にもならない。
(協会)「つかまえてください」 
(きの)「えぇ!どうやって?うちは代々猫派で、生きた鳥の扱いはよくわからない」 
本当にわからないんだ!
(協会)「そうしたら足輪の番号を読んでください。」 
番号? 
 
 見たら姿が消えていた。
玄関の前は行き止まりで、外までの道は見えていたから、
歩いて出て行ったとは思えない。
そうすると飛んだのか。
 
飛べたのか。
 
(きの)「だって、ぐったり座り込んでたから、もう最期かと思って。」 
野生の猫さんが人前であのような姿になったら、もうおしまいだ。
(娘)「あ~喰った喰った。ゲフッてとこじゃないの?」 
満腹で寝てただけか・・・。
 
 
 数日後、図書館で3月のライオン7巻を見つけたので借りてきた。
目つきの鋭いスキンヘッドの棋士がレース鳩を飼っていた。
そのうち1羽が帰ってこないので打ちひしがれている。
ケガしたんじゃないのかとか、カラスにおそわれたんじゃないかとか、
考え込んで黒い雲に飲まれたようになってる。
 
 このタイミングでハトの話ィ?と思ったけど、
あのハトも、そういう内の1匹だったのか。
帰ったら飼い主はあのように喜んだかなと思うと、貴重なもち麦を提供した甲斐があったかもしれない。
それにしても、ハト飼いの皆さんGPSでも付ければ?
 
これが問題のビジター↓
  
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