札幌の大通公園前のホテルにて。部屋に置いてあったシャンプーをよく読んだらダージリンの匂がするらしい。紅茶?珍しい。最近流行のホワイトティーという名のミルクティーの甘ったるい匂いがフロア全体に充満するあのポーラかどこかの備品とは違うのかなと、興味に駆られて使ってみる。
Aromad’or??アロマドールと読むのか。ぱっと見 Aroma(芳香)+ Odor(臭気)と読めたが。
そんなに特別いい匂いはしないがまぁいい。北海道らしい無駄に長い浴槽にシャンプーを入れてみた。普通の泡立ち具合い。
朝起きて飯を食い終わって、チェックアウトまで時間があったのでヒマだから入ってみた。シャンプーは昨日使ったから、次は緑色のボディーソープだ。ついでにこれで頭も洗おう。
しめしめと思いながら先ほど食べたブルーチーズに思いを馳せ、しばらく瞑想に浸っていて目を開けたら、目前にスイス山脈のような巨大な尖った泡が形作られていた。
なにこれ。はっきり言って浴槽が泡だらけだ。
なぜこんなことに。6回ぐらいしか押してないぞ。
家に帰ってきても、あの泡風呂は楽しかったな~という思い出でいっぱい。家であれを再現できないか。と思い置いてあったボディーシャンプーをぶしゅぶしゅ撒いてみたが、汚らしい膜のようなものができるだけ。ちがう!もっとこうマッターホルンのような立ち上がりと、いつまでも消えない安定性だ。
いつか、アメリカのスーパーのオモチャ売り場でバブルバスの液体を売っていた。いかにもといった人工的な紫色をしたボトルのパッケージには子供たちが泡にまみれて遊ぶ姿が印刷されていて、とても楽しそうだった。自然にそれを手に取り、買ってきて用法通りにキャップに半分ほど家のバスタブの流水の下に入れてみる。
一瞬シャボン玉のような匂いがして、みるみる紫色の泡が膨れ上がり、手でどけても叩いても消えない幻想的な空間ができあがった。方々に散々まきちらし、追い回したりして存分に遊び大満足でふと注意書きを見ると「あなたのキドニーに悪いから15分以上入らないように」と書いてあった。
キドニー・・・腎臓か。やはりバイオロジーの教科書に載っていた薬品の皮膚からの吸収は、バカにできないものがあるようだ。何分経ったっけ・・・。全身がこの毒々しい紫色になったらやだな。ハハハ。
うわあぁぁ。急いで立ち上がって流して出たが、子供用の商品でこんなに危ない内容なのはどうなのか。裏に「保護者の監督が必要」とも書いてあった。くっ。あいにく今ここに保護者はいないが、監督されたくない。
その時の紫人間の恐怖が冷めやらないので、それからはちゃんと決まりを守って泡風呂は15分までと決めている。あの液体は何だったのだろう。そのうち、そこらのシャンプーを入れても同様の効果が得られると聞いた。ではあれはただの界面活性剤だったのだろうか。
古い映画で、マリリンモンローだかが泡風呂にゆったりと浸かっていた。あれはバチャバチャ遊ぶものではないのか。なるほど。少しは見習って大人しく入ろう。体にいい成分でできていればいいのになぁ。よく考えたらこれでは体の洗濯だ。
それから、新しく買ったシャンプーやホテルのいろんな新商品を垂らして静かに泡ぶろを味わっているが、程よく泡立つものもあり、ボトルの半分ぐらい入れても泡立たないものもある。なにが違うのか。
どうも自然派の洗剤はうまく泡立たないように思う。こするにはいいが、泡風呂向きでない。南千歳のエアポートホテルという老舗のホテルに置いてあったジュニパーベリーが入ってるというシャンプーはいい匂いがした。ジュニパーってあれでしょ?ジンとかの香りづけの針葉樹。
それは通販では売ってなかったので、ジュニパーなら何でもいいやと思い、似たのがロゴナという外国のブランドから出ていたので買ってみる。匂いは(きの)「う~む。」なんかこう、木の枝や渋い果実といった雰囲気の荘厳な匂いがして、全身を洗ったら全身から変な抹香臭い香水のような匂いがする。これはおそらく天然洗剤だろうからと思って流水の下に入れてみたが、案の定泡は立たなかった。
ドイツが戦時中の大量生産の為に開発した人工の界面活性剤でないとあの楽しい泡の量はまかなえないのかと思うと、なんとも複雑な気持ちがする。
札幌大通りのホテルの洗剤が良かったのか、それともシュワーッとした水流か。昔うちの台所用の蛇口の先に付ける簡易的な浄水器を買おうと思って、違うのを買ってきてしまったことがある。中に活性炭も何も入っていない、ただの白いフワフワしたカバーのようなもので、何をするかわからないが、ただ水がシュワーッとなるだけのもの。あれがいい。
さっそく買ってきて付けてみる。確かに水に空気が混ざっているようだが、特に泡は立たない。なぜだ。こういったクリーミーなタイプのボディーウォッシュは泡立たないのか。(きの)「ブシュブシュ」究極の泡風呂を完成させるべく、日々研究をかさねる。
界面活性剤が多ければどうだろう。掃除のついでに台所の洗剤を入れてみる。泡は立ったが、すぐに消えて行った。(きの)「油かな」食用油を入れてみる。汚らしいアクのようなものがフチに溜まり、全然楽しくない。油が有力候補だと思っていたが、違った。風呂が汚いと泡立たないらしいが、それは人間の皮脂などがついているからなのか。ホテルは毎回洗っているのだろうから、それが決め手なのかな。
透明だから?帰ってすぐに入れたのは白いボディーソープだった。ホテルの洗剤は詰め替えの都合上だいたいが透明の容器に入った透明の液体だ。濁っていると尚いいかと思ったが、肌を潤すクリームなどが混ざっているのかもしれない。当たり前だがコンディショナーを入れても泡立たない。作られた泡がそのままガシッと固定されるには何が必要なのか。
塩を入れると析出してある程度固まるらしい。入れてみたら確かに固まったような気がするが量が少ない。シャボン玉は砂糖を入れるとなかなか割れないなどという。スプーンに2杯ほど入れてみた。細かい泡の中に2つ程大きな泡がある(きの)「ははは。シャボン玉だ!ぷちっ」つついたら、ぬらっと割れてめんどくさそうに消えていった。なんだかヌメヌメしている。これが砂糖の効果か。
塩も砂糖もいいが、どうも食品を入れるのがいまいち。味付けをされているようで。出先で簡単に作れるからこそ面白いのだ。そして、この探求の元になった札幌のホテルに敬意を表して押すのは6回までとしておこう。そうしないと基準が定まらなくて比較できない。そもそもあのボディーソープの成分は何だったのか。グリセリン?また候補がひらめいた。それにしても、なぜか日本では泡風呂が流行らないな。銭湯なんか日替わりで泡だらけにしてしまえばいいのだ。
そういえば、そこらのシャンプーでもできると教えてくれたのは誰だったのだろう。あの悪魔の紫ポーションを買ったのは、新しく引っ越したアパートだった。そこにバスタブが付いてたから浸かってみようと思ったのか。それまで住んでた部屋や大学の寮は電話ボックスのようなシャワーブースがあるばかりで面白くないなと思ったからか。
風呂でキッズ用のおもちゃで遊んでると思われたら笑われそうだから、アメリカ人に話したとは思えない。そうすると風呂好きを公言していたミチコさんという年上の先輩か。その人がバスローブを使ってたんだっけ。しかも泡を洗い流さないと聞いてとんでもない不健康な行いだと思った。
ミチコさんの部屋は古い木造一軒家を改造した下宿で、絨毯の上に直接バーバパパのようなバスタブが置いてあった。玄関を入ったらすぐ台所という訳の分からない間取りと、冬に暖房つけすぎの暖かい室内。
ミチコさんは卒業して日本に帰るので漠然とその部屋に住もうと考えていたが、もうすでに他の人に貸す約束をしてしまっていると聞き、拍子抜けしたような残念な気分だったが、その後別の部屋を探して引っ越して、そこで人員の都合で急に夏の旅行がキャンセルになり、家に居たら暑い日の朝に小枝ちゃんに会った。なんとも不思議な縁だが、そう考えると人生はどう転ぶかわからない。
そういったなつかしい記憶と共に、最近良いシャンプーを探している。
追記:2023年10月
こないだ泊まった野幌のホテルでは、やはりまとまった量の泡が形成された。水量?ホテルはすごい勢いで出るが、自宅は普通の蛇口だ。
勢いなら、と思い、シャワーの頭部分を取り外し、はるか上から注いでみた。普通のシャンプーで普通に泡が立った。よかった、うちが汚いからじゃなかった。
では、白いボディーシャンプーではどうだろう。やってみたら、結局アクの浮いた白湯のようなものしかできない。これは洗剤が向いてないんだ。
2024年1月
前から気になっていたツムラの薬湯のお試しサイズを売っていたので買ってみた。どのようなものかな。ほぅ、陳皮にハマボウフウって七味やお屠蘇と変わらないような。どれ。
う~~~ん。
匂いが。なんというか、この・・・いつかどこかで嗅いだ、嫌な臭い。
この匂いが・・・。祭?なんの祭だろう。
もう、匂いのことばかりが気になり本も読めない。
古い竹製品?
鞍馬で嗅いだ佃煮屋の古い展示品。民俗博物館の匂い。
もしくは、日なたのホコリが水にぬれた時。
いずれにせよ、ちっともリラックスできない。