きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

進々堂の本

2017-06-24 10:26:57 | 書評
 『御手洗潔と進々堂珈琲』という本があるという情報を得て、手に入れて読んでみた。
短編集で、最初の話は初めて読んだ気がしたが、
次の異国風バーをやっている女の人の話に来た時に、「あれ?・・・なんかこれ知ってる」というデジャブのような感覚があって、
すわ!ドグラ・マグラの呪いが発動!?と思ったら、前に出た本の改題だった。
『進々堂世界一周 追憶のカシュガル』という名前の。
 
そもそもネットで予約したのに、本屋さんに行ったら手違いでちゃんと予約できてなくて、
何て本です?と聞かれ、
題名があんまり聞きなれない言葉だったからド忘れし、
自分で予約しておいて「さぁ?」と答えるわけにもいかず、
挙動不審になって一生懸命思い出そうとした結果、
 
「何とか堂です!・・・しんしん? あっそうだ、コーヒーって書いてありましたよ。
何とか堂のコーヒー!(そんな本いっぱいある)。
そのコーヒーは漢字の珈琲でした(断言)。
島田荘司の」
 
という前半部分が何の決め手にもならない情報ばかりで、よく店員さんわかってくれた。
だいぶ迷惑な客だ。
 
「島田荘司で・・・聞いたことない題名ですね。新刊では?」って言うから、余計新しいと思っちゃったじゃないか!
 
もう名探偵と怪しい館が出てきてくれれば、それでいいんです!
 
 
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数年前にLAWSONでタイバニのファイルを受領せしめたこと

2017-06-18 00:39:13 | シリーズ:あれは何だったのか
  いつだったか、ローソンのキャンペーンで対象の商品を買った人に Tiger & Bunny のファイルを配っていた。
一度夜中に目が覚めて時間を知ろうとTVをつけたらアニメをやっていたので、半分寝ぼけて見たことあるが、
なにやら大理石のロビーのような所でロボットが戦っていて、会議ばかりでいまいち内容が理解できなかった。
正直これ面白いのか?と思った。
 
その数日前にWBSという経済の番組で見た時には、今週のトレンドとかで、働く女性に人気だと紹介していたキャスターはのけぞって苦笑していた。
スタジオにロボットのパネルが立っていて、今の働く女性は機械が好きなのかと思った。
桂正和って昔ジャンプでやってた電脳少女の人では?
つねに絵は完成していてキレイだけど、たまに内容がないよう的なところがあって、入り込めない気がしてた。
 
 
 娘の英語の塾の帰りに待ち合せて、一緒に夜の閑散とした街を歩いていた。
駅前の4車線の横断歩道の向こうにローソンが見え、キャンペーンの垂れ幕がかかっていたので、
そういえばそのファイルがほしいと言ってたなと思い出し、寄ってみることにした。
横断歩道を渡る間、背伸びした小学生の娘が話の概要について説明してくれた。
(娘)「あのね、主人公はヒーローでね、会社員の鈴木さんっていうの」 
鏑木が読めなかったらしい。
(きの)「すず・・・??それはまたずいぶん凡庸な(全国の鈴木さん失礼!)」
(娘)「虎徹さんには家庭があるんです!」 
(きの)「はぁ」 何の話だろう。
 
店に入るとファイルが並んだケースが棚の上に乗っていたので、手が届かないと思い、
親切に「こんなのもあるよ~。あっ裏の絵が一つずつ違うみたいだね」いちいち取って見せてあげた。
さんざん選んで菓子と一緒にレジに持って行く段階になって、急に
(娘)「あの・・きのたん持って行って。モジモジ」 
はぁ!?
(きの)「嫌だよ。あなたが欲しいと言うから・・・何で大人がロボットアニメのファイルを」 選んだのを見たらオシャレな男2人が仲良くコンビニの袋を下げて店から出てくる所で、どういうシチュエーションなのか。
(きの)「これから家で飲み会かな?缶ビール買ってる・・・ん?」 
働く女性に人気?
そういえばアメリカ人の日本アニメ好きの知り合いが、〇〇はビジネス・ウーマンのたしなみとか言ってた。
げげっっウソ!?これがか?
 
(きの)「い・・・いやだ。ゼッタイいや」 〇〇が嫌なんじゃなくて知らずに選んでたことがショックだ。
思い返せば、自分は主人公の名前を大声で連呼しながら入店し、棚に直行してハイテンションで選んでしまった。どうしよう。
レジのお姉さんが、優しい訳知り顔で見ている気がする。
 
違う!そういうんじゃ・・・。(どういうんだ?)
 
終電に間に合わないと困るので(きの)「くそっ」 意を決してレジに持って行き「バァーン」 
あせって叩きつけるように台に置き、余計に目立ってしまった。
(きの)「覚えてろよ~」 
(娘)「ニヤッ」 
悪魔だ。
 
後から落ちついてよく見てみたら普通の話だった。
特に第1話は面白い展開で、それを最初に見ればよかった。
それからは進撃のファイルがほしいとか言われる度に警戒している。
 
 
 余談だが、高校時代の友人は、外国人デザイナーが建てた旧式木造校舎の隙間だらけの教室で、
休み時間にストーブに群がるクラスメイト達を前に、何を思ったか突然
「きのちゃん変態仮面の1巻出たってよー」などと大声で叫び、
受験の為にコネで手に入れた学級委員の名誉を著しく貶めてくれた。
こういった記憶は早く脳から消し去りたい。
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古典『嵐が丘』を読んで

2017-06-10 19:58:24 | 書評
  ハーレクイン小説(アメリカのスーパーのレジ横で売ってるロマンチックな恋愛本/日本で言えば純文学のレディースコミックみたいなもの?)の代表作という感じで有名だけど、どちらかといえば古典ではないのかな?
 
と思って読んでみたら、もろ昼間にTVでやってるソープオペラのような内容だった。
綺麗な人たちが家の中で喧嘩三昧という。
アーンショウの屋敷が建ってる場所は磁場でも悪いのか、あの家に入ったら、もれなく誰でも汚らしい悪態をつくグールのような人間になる。
 
 主題歌が好きだった。前奏も好きだし、オルゴールのような鈴を転がす声も良い。
昔「恋のから騒ぎ」という明石家さんまが出てた恋愛?の番組の冒頭部分で流れてた。
さぞかし可愛らしい性格の女の人なんだろうなと思ってたが、歌詞をよく見たら違った。
 
サビの部分の英語が:
 
「♪ ヒースクリフ(精悍な恋人)! 私よ、キャシーよ。 ただいま。 
帰ってきたわ。 外はとても寒いの。 この窓から入れてよ」
 
え?? 普通、人はドアから入るよね。心の窓かな?
 
「♪ ほほほほ~」 なぜそこで笑う。
 
「♪ ちょうだい。 あなたの魂を・・・」 心を奪われる的な?
「・・・つかんで持ち去りたい」 逃げて!ヒースクリフ逃げて~
 
「♪ そうよ、 私、キャシーなのよ」 
ここを「お岩さん」に替えたら、状況がよく呑み込めそうだ。
 
大変恐ろしい。
 
しかも、これ公式テーマソングではなくて、ケイト・ブッシュという歌手が作ったイメージソングらしい。
PVは美しいけれども、赤いドレスと踊りで完全に世界観を網羅した上に、はるかに通り越してて、
その人はこれを「ねぇ私ヒロインみたい?綺麗でしょ?」という気持ちで作ったのか、それとも「女の執念とは、こうも根深い」ということを表したかったのか。
 
 歌を最初に聞いてキャサリンの方がエキセントリックなのかと思ってたら、そうではなくて、本を読んだら、もっと過激な人柄なのは男の方だった。
これって、ヒースクリフが一途で陰鬱で、そして野性的というか野蛮な感じというのが一番大切な要素なのかもしれない。
野性味(直情的、朴訥)がなかったら、ただのストーカーのモラハラ事件になってしまいそうで。
 
ただ、なんとなく、根は実直なヒースクリフを怒らせたかったというか、本気で人生をめちゃくちゃにしてでもいいから自分と真剣に向き合ってほしい、というような、そんな狂気が伝わってくる。
 
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『1万年の旅路』~ネイティブ・アメリカンの口承史~

2017-06-03 10:06:45 | 書評
 この方法でなら、人類が一人でも生きてる限り、紙がなかろうが石が風化しようが、どこに移動しようが情報は残る。
なんて賢いんだ。
物もないのによくやった!と、すごく感激した。
 
1万年分の記憶を持った部族ってことでしょ。すごすぎる。
誰かが指示したわけでもないのに、その1万年前の最初の人達が覚えておこうと思ってくれなかったら、その記憶は蓄積され始めることがなかったわけだから。
 
南へ物見に行った人は戻らなかったとか、二手に分かれたもう片方のその後の消息は知らないとか、あっさり書いてある。
知りようがないけど、それが大昔の暮らしの現実で、
同時多発的に、いろんな別の部族が居て、すでに海を渡ったことなどを伝え合ったりしているとすると、
もっと前の記憶も、どこか別の部族に伝わってたかもしれないけど、厳しい冬を乗り越えられなくて途絶えたのかな、とか想像すると恐ろしい。
 
それにしても、この人達は、どうしてこんなにどんどん移動していってしまうんだろう。
行ってダメだったらとか、恐れはないのだろうか。
動機も、向こうの大陸が見たいという、ただそれだけのもので、直前に失敗して壊滅した他の部族を見てもあきらめないし。
むしろ対策を練ったりしてメンタルが強すぎる。
 
海辺の渡りの部分は、読んでて
「もうやめなよ!全滅したらどうするんだ!?雪の冠も死んじゃったし(泣)手前の海辺でいいじゃん。とどまれよ」って、ハラハラした。
しかも、後で知ったらたったの52人て!ほぼひとクラスじゃん!
もし、クラスの中で一番体格のいい奴らに自分らの命運(先頭)をまかせて、全員で岩場を綱渡りをしてくださいなんて言われたらゼッタイ嫌だ!!
 
どうしたのか珍しく物語に入り込み過ぎたけど、彼らは衝動的とか無謀な訳でもなく、むしろ目標達成のための計画と歩みは慎重で堅実って感じで、新しい事に対する興味と意欲が半端ない。
定住したら農耕でもしない限り食料は尽きてしまうのだろうけど、土地に全然固執したりしてない。
意見が合わなくても、争ったりしないでただ立ち去るだけ。
あまりに身軽で、これが狩猟採取生活の気風なのか?地球全部が住所ってことなのか??
それでは荷物(書物)なんて、とても持っては行けないだろうな。
 
 この本を手にした時点で、聞く用意のある耳を持っているとみなされ、「あなたもこの学ぶ部族の一員」と言ってくれそうな気がして、ちょっと嬉しい。
原題の「Walking People(歩く人達)」というより、「学ぶ人達」という名前の方がしっくり来ると思う。
こんな真摯に学ぼうとする人達なら、文化が煮詰まって腐敗したりすることもなく、柔軟に決めて生き延びて行けそう。
もし人類が火星に行って、科学技術が途絶えたら先進国の人間なんてあっという間に死に絶えそうだけど、この人達なら100年後にも余裕で生き残ってそう。
今年の豆は豊作だ!なんて笑いながら。
 
よくこの手の本の批判にある、話の信憑性がどうのなんていう疑念は、自分にとってはどうでもいいし、そんなことは本当に微細なことだ。
物語だっていいじゃないかと思う。
人類みんなを大切に思ってくれるやさしいおばあちゃんの言ってることを信じたって、誰も損はしないだろうに。
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