認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

老化の物忘れとアルツハイマー型認知症の記憶障害の鑑別(B-66)

2016-09-01 | 物忘れの正体とそのメカニズム

      年取れば 気になる障り 物忘れ

   アレよアレよと 言葉を知らず By kinukototadao

 記憶は、記銘、保持、想起の機能から構成され、「加齢」によって想起の機能が最初に衰えるのです

 & 原因不明と言われる「アルツハイマー型認知症」の正体とは

生まれつき特定の遺伝子に異常が認められる人だけが対象となり発病し、若年発症(30歳代から50歳代の「若い年齢」の人だけが発病の対象となる)を特徴とする狭義の「アルツハイマー病」とは異なり、60歳を超える年齢の「高齢者」だけが発病の対象となる老年発症を特徴とする「アルツハイマー型認知症」は、我が国を含め世界中の認知症の専門家とされる人達(学者、製薬会社などの研究機関の研究者及び医師達)から、発病の原因(メカニズム)が分からないし、発病を予防することが出来ないし、治すことが出来ないタイプの認知症とされてきているのです。なお、我が国では、学者や医師やマスコミの一部の間で、「アルツハイマー病」と「アルツハイマー型認知症」をまとめて「アルツハイマー病」と呼ぶ人達がいますが、両者は発病の原因も、発病後の治療の可能性も更には発病自体の予防の可能性と言う点でも全く異なるし、そもそも認知症全体に占める割合についても前者が僅か1%程度であるのに対して、後者は90%以上を占めているのです。その人達は、一見関係がありそうで実は発病の原因ではなくて結果でしかないアミロイド・ベータとかタウ蛋白とかに拘泥していて、肝心の脳全体の司令塔の役割を担っていて、私たちの意識的な世界を支配し、コントロールしている「前頭葉」と言う脳機能に目が向かない結果、「アルツハイマー型認知症」については殆ど何も知らない人達と言っても過言ではないのです。社会生活や家庭生活、或はセルフケアの面で、意識的に何かをしようとする際に、脳が壊れてもいないのに(器質的な原因が確認されないのに)様々な程度及び態様の認知症の症状が発現してくる、それが、「アルツハイマー型認知症」と言うタイプの認知症なのです。「前頭葉」という脳機能について及び「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症について、私たちのような客観的な「脳機能データ」の集積もなく、発病の予防及び早期診断による回復を目的とした「地域予防活動」の実践の体験もなく、わずかな症例をベースにその症状の概観を基礎として想像してみた程度のこと以外には何も知らないのに、「アルツハイマー型認知症」に関する本を書いてみたり、テレビに出てきて物知り顔に発言したりもする、厚顔無恥の人達が多いのです。私の手元にそうした類の書籍が何冊か有るのですが、読んでいて哀しくなるほどの内容、驚く程ひどい内容の物ばかりなのです。老人斑の沈着とか神経原繊維変化とか、或は脳の萎縮とか、「アルツハイマー型認知症」発病の結果であって原因ではないのに、原因だと誤解している人達なのです。そうした主張が世に出てきてから、既に何十年もが過ぎているというのに、いまだに、原因だと主張しているそれぞれの説と発病との間の因果関係が立証されてもいない、単なる「仮説」に過ぎないのです。そもそも、米国精神医学会の診断規定である「DSM-4」の第一の要件とされる「記憶の障害」の症状が「アルツハイマー型認知症」の中核となる症状だとする考え方自体が重大な誤解だということに気付いてもいないのです。「DSM-4」の第二の要件とされる「失語や失認や失行」の症状が発現してくるのは、末期の段階でも更に後半の段階、「前頭葉」が殆ど機能していない上に30点が満点のMMSEの得点も一桁になってからということにさえ気づいていないのです。そうした末期の更に後半の段階で「アルツハイマー型認知症」を見つけて居て、「治すことができないとか、発病を予防する方法がないとか」言った、誤った情報を世の中に流し続けているのです。内容的には重大な誤りであって、世界を牽引している源は権威だけという「DSM-4」に見切りをつけて、宗旨替えすべき時だと思うのですが。頭も心も硬すぎて、まだ気づかないのですか。

二段階方式」と言う精緻な神経心理機能テストを開発し、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベル(働き具合の程度)の判定とその機能レベルに厳密に対応した認知症の症状並びにその背景となる脳の使い方としての「生活習慣」としての生活歴(「前頭葉」を含む脳全体の廃用性の機能低下の張本人)についての14689例と言う極めて多数で且つ精緻な「脳機能データ」の集積とその解析並びに440を超える市町村での「地域予防活動」の実践の成果に基づく帰結として、私たちは、「アルツハイマー型認知症」と言うタイプの認知症の本質は、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」(食生活ではなくて、脳の使い方としての「生活習慣」に起因する病気)であって、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」自体が活性化するような脳の使い方としての「生活習慣」の構築とその実践により発病自体を予防することが出来るし、本当の意味での早期の段階(「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルと言う客観的な指標に基づいて、私たちが三段階に区分するその早期の段階である「小ボケ」及び「中ボケ」の段階)で発病を見つけて、「脳リハビリ」(脳の使い方としての「生活習慣」の改善)を実践することにより正常なレベルに回復させることが出来る(治すことが出来る)ものなのです。 

 &「アルツハイマー型認知症」の症状が発現するメカニズム

認知症の大多数、90%以上を占める「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、日常の生活で何かの「テーマ」を実行しようとするとき、脳がちゃんと働かない(正常レベルで機能しない)ことがそのまま、認知症の「症状」として出てくるところに特徴があるのです。その発病の原因となるのは、「二つの条件」の充足にあります。「第一の条件」は、60歳を超える年齢の「高齢者」であることです。私たち人間の「前頭葉」、就中、「前頭葉」の三本柱の機能と私たちが名付けている意欲、注意の集中力及び注意の分配力の機能には、生来的な性質として、言い換えると、脳が活性化されるどのような内容の「生活習慣」を継続していようとも、加齢とともに「前頭葉」の「三本柱」の機能が衰えていき(「正常老化の性質」)、65歳頃には機能の最盛期である20歳代前半頃の半分以下のレベルにまで衰えてくるという性質が存在しているという問題なのです。そして「第二の条件」は、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という問題なのです。悠々自適とはいかないまでも、それなりに「自分らしさを追求する」自分なりの「テーマ」と達成すべき「目標」とがあり、日々の生活の中でそれを実行し、実現していくことによって、自分なりの生き甲斐や喜びを覚える出来事や人との出会い等が時折訪れてくる平穏な日々を送っていたあなたの「第二の人生」で、これまでのそうした生活が維持できなくなり、頑張って生きていこうとするその「意欲を喪失」してしまうような出来事の発生や環境の変化に、或る日突然遭遇することになるのです。その際に発生した出来事や環境の変化が「キッカケ」となり、何かをしたり、何かに立ち向かったりする意欲を喪失してしまう結果として、生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標となるものもない「単調な生活」、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まり、継続していくことになるのです。脳の使い方という視点でのそうした単調な「生活習慣」が日々継続していくことにより、出番が極端に少なくなった「前頭葉」を含む脳全体の機能が、使われる機会が少ないことに起因する廃用性の機能低下を起こしてくることになるのです。すなわち、脳全体の司令塔の役割を担っていて、私たちが意識的に何かをしようとする際になくてはならない働きをしている「前頭葉」を含む脳全体の機能が、生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標となるものもない「単調な生活」の継続、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣」の下で、使われる機会が極端に減ったことに起因した加速度的で異常な廃用性の機能低下の進行により【情報を伝達する神経細胞が、器質的な病態を発現してくること又は廃用性の萎縮を起こすことにより、「記憶機能」が低下することが発病の原因なのではなくて、1つの要因としては加齢による機能の劣化がもう1つの要因としては使われる機会が極端に少ない生活習慣の下で神経細胞の再生が弱まってしまい、意欲、注意の集中力及び注意の分配力の機能からなる「前頭葉」の三本柱の機能を中心として、各種の認知機能自体が廃用性の機能低下を起こしてくることの2つの要因が同時に充足される相乗効果により、「前頭葉」を含む脳全体の加速度的で異常な機能の衰えが進むことが発病の原因であると私たちは考えているのです】、60歳を超える年齢の「高齢者」のみを対象として発病する老年性の「アルツハイマー型認知症」は、症状が何年もかけて、徐々に段階的に緩やかに進んでいくのが特徴なのです。その最初の段階が私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階であり、ついで、「中等度認知症」(中ボケ)の段階があり、最後に末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)の段階があるのです。認知症の専門家とされる人達は、中核症状とか周辺症状とかに区分するのが通例なのですが、その区分には何の意味もないのです。「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、この「三つの段階」を順次経由して、身体がもつ限り、何年もかけて、徐々に緩やかに症状が進行していくところに特徴があるのです。末期の段階である「大ボケ」の段階が始まると(「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが、ここまで低下してくると)、治すための唯一の手段である「脳リハビリ」による回復の可能性が閉ざされてしまい、その人の身体がもつ限り、言い換えると何らかの他の病気が原因で死を迎えることになる時まで、更なる症状の重症化が進行していくことになるのです。「小ボケ」及び「中ボケ」までの段階であれば、「脳のリハビリ」により正常なレベルに回復させること(治すこと)が可能なので、家族による介護の負担もさほどのものでない上に、介護自体に喜びが得られるのですが、「大ボケ」の段階にまで「前頭葉」を含む脳全体の機能が衰えてきてしまうと、介護しても回復の見込みはない上に、セルフケアにも重大な支障が出てきて、その程度が更に進行していく状況の下で、介護する家族の社会生活自体が脅かされ、「介護離職」という社会問題へとつながっていくことにもなるのです。家族介護と言う政策はとるべき政策ではないのです。発病自体の予防と本当の意味での早期の段階(私たちの区分で言う「小ボケ」及び「中ボケ」の段階)で見つけて治すことを明確な活動目的とした住民参加型の「地域予防活動」を全ての自治体で、且つ出来るだけ小さな地域単位で密に実践することを制度化すべきなのです。私たちがこれまでに市町村で実践の指導をしてきた「地域予防活動」の展開による成果に鑑みれば、蛇口を開きっぱなしにした状態で居て、介護の為の総費用(診断、投薬及び介護の為の総費用)が年間で15兆円を超す額と言う天文学的な規模となっていて、この先増大する一方と予測されているその「介護のための総費用」を劇的に減少させることが可能となるのです。その効果による減少分を「地域予防活動」の更なる拡大展開に投入していけば(「地域予防活動」を展開する対象地域の規模が小さい程密な活動となり、発病自体を予防する効果が上がることになる)、「介護の為の総費用」が減少する成果の下で、「大ボケ」のレベルにまで症状が進行した「お年寄り」全員の介護は、現行の「介護保険制度」で十分に賄うことが出来るようになり、「介護離職」と言う現役世代にとっての重大な社会問題は消滅していく方向に向かうことにもなるのです。

 &「アルツハイマー型認知症」の症状を治す方法とは

 脳全体の司令塔の役割を担っていて、私たちが意識的に何かの「テーマ」を考えついたり、考え付いたテーマを「実行」しようとする際に、左脳、右脳及び運動の脳と協働し、且つそれらを支配し、コントロールしている「前頭葉」の働き具合を中核とした、且つ「前頭葉」を含む脳全体の働き具合(「脳の機能レベル」)のアウト・プットそれ自体が、認知症の「症状」となって発現してくるのが「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。三段階に区分される「脳の機能レベル」の衰えの進行に付随して、その機能レベルの衰えに厳密に合致した「三段階」に区分される「認知症の症状」が発現してくるのです。 ここで、最初に理解して欲しいのは、私たちが意識的に何かのテーマを実行するときの、脳の働き方の仕組みです。脳の働き方の仕組みは、「脳が壊れた人」をたくさん調べると、そのメカニズムの概要が分かります。脳は場所によって働きが異なり、「機能の分担をしている」ことが分かるのです。

運動の脳」の左の部分が壊れると、右半身麻痺になり、右の部分が壊れると、左半身麻痺になります。「運動の脳」が、身体を動かしているのです。左脳」が壊れると、言葉が出てこなくなり、計算が出来なくなり、論理を操れなくなり、場合分け(ケース・シミュレーション)することが出来なくなります。「左脳」は言葉の脳とも言われ、言葉や計算や論理や場合分け等(「デジタルな情報」の処理)を担当しているのです。右脳が壊れると、色や形や音や空間や感情等の認知が難しくなります。「右脳」は感性の脳とも言われ、色や形や音や空間の認知や感情等(「アナログな情報」の処理)を担当しているのです。額のところにある前頭葉」(「前頭前野」のことを言うものとする。以下、同じ)は、脳の最高次の機能です。運動の脳、左脳、右脳を統括し、支配し、コントロールしていて、脳全体の司令塔」の役割を担っているのです。

左脳」が「デジタルな情報の処理」を実行するときも、「右脳」が「アナログな情報の処理」を実行するときも、「運動の脳」が「身体を動かす」指令を出すときも、三頭立ての馬車(左脳、右脳、運動の脳という三頭の馬)の御者の役割をしている「前頭葉」の事前の指示なしには、勝手には働かない仕組みになっているのです。三頭の馬のどれかが働くときには、「前頭葉」からの事前の指示が必ずあるのです。言い換えると、「前頭葉」自体が三頭の馬を主導しつつ、同時に協働して働くというのが、「意識的な世界」(意識的な思考、言動、行為及び行動という面で、私達人間の脳が働くときのメカニズムの概要なのです。そのメカニズムにあるが故に、最初の段階である「小ボケ」の段階(「前頭葉」の機能だけが異常なレベルにあって、左脳も右脳も運動の脳も未だ正常な機能レベルにある段階)での、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルのアウト・プットは、正常なものではなくて異常なもの、すなわち、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してきているということなのです。「軽度認知障害」(MCI)と言う考え方は、「DSM-4」の規定が余りにも重度の段階、末期の段階でしかア「ルツハイマー型認知症」を見つけることができないことに注目して、より早期の段階で見つけようとしているその発想自体には意味があると思うのですが、如何せん、上述の脳全体の司令塔としての「前頭葉」の機能というテーマに気づいていないで、「記憶障害」の症状を核としている上に、外観としての症状だけに着目した基準、極めてあいまいな内容であって、活用者の恣意的な運用を許す上に、そもそも「基準にはなり得ないレベルの代物」だということを指摘しておきたいのです。

ところで、脳の司令塔の役割を担う「前頭葉」にはいろいろな機能があります。その「諸機能」とは、状況の判断、「テーマ」の発想、「テーマ」を実行するための実行内容の組み立てにかかわる創意、企画、工夫、構成、計画、観察、分析、理解、把握、考察、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、忍耐、修正、整理、機転、興味、関心、創造、感動、判断及び決断等の個別の認知機能(A)、個別の色々な認知機能を発揮する上での「機能発揮度」の基礎となる三本柱の機能」としての「意欲」、「注意集中力」及び「注意分配力」(異なった複数のテーマを同時に並行して、意識的に処理する働きのこと)の機能の働き具合(B)並びに最終的な実行内容を選択し決定する上で不可欠な機能である「評価の物差し」としての「評価の機能」(C)などです。

 「脳を使う」ということは、私たちが意識的に何かの「テーマ」を思いつき、それを具体的な形で実行することを意味します。その意識的に何かの「テーマ」を実行しようとする際の「脳の機能レベル(働き具合)を考えるには、「前頭葉」の(A)、(B)及び(C)の機能が「左脳」、「右脳」及び「運動の脳」を常に支配し、コントロールしながら、且つ協同し、働いていることに注意を向ける必要があるのです。

「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが「アルツハイマー型認知症」の「症状」として発現してくる程度、或いはその態様は、(Bに下支えられたA及びCの働き具合)としての「前頭葉」の個別認知機能と左脳、右脳及び運動の脳の各々との協働による相乗効果としての機能レベルに直接、且つ厳密に起因して発現しているものだからです。「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが正常であれば、そのアウト・プットは適切、或いは的確な「思考や言動や行為や行動」となり、「脳の機能レベル」が異常であれば、そのアウト・プットは不適切、或いは異常な「思考や言動や行為や行動」(即ち、「アルツハイマー型認知症」の三段階に区分される段階的な症状)となるのです。その意味で、私たちの区分で言う「小ボケ」の段階は、脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」の機能自体が廃用性の機能低下を原因として異常なレベルに衰えてきているので、左脳、右脳及び運動の脳のすべてが正常な機能レベルにあろうとも、意識的な世界におけるそのアウト・プットは、異常な症状、「アルツハイマー型認知症」の症状なのです。「前頭葉」の「三本柱の機能」と私たちが名付けている意欲、注意の集中力と注意の分配力の機能(B)と「前頭葉」の個別認知機能(A)との関わり方について、ここで分かりやすい例を挙げて説明しておきましょう。

自分が好きで興味が湧くとか、自分にとって必要で重要だと考えるような「テーマ」であれば、その実行の内容及び実行の仕方などを考える際に、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の機能【(B)の機能】の発揮度が高くなり、結果として(A)の個別認知機能の発揮度が高くなるという関係にあるのです。「二段階方式」の手技を活用して集積した、極めて多数の「脳機能データ」の解析により、私たちは、世界で初めてこの性質と関係に気付いて、「前頭葉」の個別認知機能の発揮にかかわる「二重構造」の存在と命名し、具体的なケース事例の判定により、「前頭葉」を含む脳全体の機能の廃用性の機能低下についての研究を深めてきたのです。この「二重構造」の問題に気付かないで居る限り、「前頭葉」の廃用性の機能低下と言う視点を持つことが出来ないので、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズム並びに症状の程度を軽減させ、或は「治す」方法及び発病自体を「予防」する方法の解明に迫ることは「出来ない相談」だということを指摘しておきたいのです。ましてや、どのようなタイプのマウスをつくりだそうとも(アミロイド・ベータを人為的に注入した「アルツハイマー・マウス」を含む)、そもそも「前頭葉」という脳機能が備わっていないのでは、迷路の中を闇雲にうろつき回り餌を探して動き回るマウスの行動を何時まで追い続けていようとも、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズムを解明することも、回復させることが可能な早期の段階を見つける方法を解明することも、ましてや発病自体を予防する方法を解明することも、すべてが無駄なこと、期待値はゼロなのだということを指摘しておきたいのです。

私たちが開発し、これまでの累積で440を超える市町村において「地域予防活動」という形で、且つ「住民参加型」の実践活動の基礎となっている「二段階方式」の手技の場合は、「脳のリハビリ」(脳の使い方としての生活習慣の改善)の実施による正常なレベルへの脳機能の回復の可能性という視点から、「アルツハイマー型認知症」の症状を「三段階」に区分します。その最初の段階であって、「脳のリハビリ」により正常なレベルに回復させること(治すこと)が容易な段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、左脳も右脳も運動の脳も全てが正常な機能レベルにあり、脳全体の司令塔の役割を担っていて、三頭立ての馬車の御者の役割を担っている「前頭葉」の機能だけが異常なレベルに衰えてきているのです。従って(それが故に)、「小ボケ」の段階で発現が確認される「認知症の症状」の全てが、「前頭葉」の機能障害に起因する症状だけということになるのです。「小ボケ」の段階で発現が確認される特有な症状も、「中ボケ」の段階で発現が確認される特有な症状も、「DSM-4」が「第一の要件」に掲げてその確認を至上命題として要求している「記憶障害」に起因する症状ではないのです。私たちが「二段階方式」の手技を活用して集積した14689例にも上る生きた人間の「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルにリンクした「アルツハイマー型認知症」の症状に関する「脳機能データ」が意味することからも、「アルツハイマー型認知症」の発病の有無の診断に際して、「記憶障害の症状」を「第一の要件」として規定している米国精神医学会の診断規定である「DSM-4」の規定は、重大な誤りを犯していると言わざるを得ないのです。更には、「失語や失認や失行」といった、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階である「大ボケ」の段階の更に後半にならないと発現がみられない症状の確認を「第二の要件」として要求している「DSM-4」の規定は、「百害あって一利なし」の規定の代表なのです。本当の意味での早期の段階、私たちの区分で言う「小ボケ」及び「中ボケ」の段階で見つければ、「脳のリハビリ」の実行により治すことができるタイプの認知症であるものに対して、治らないと誤解させている張本人でもあるのです(「小ボケ」の段階で見つけて、「脳のリハビリ」に励めば容易に治せるし、「中ボケ」の段階で見つけて、「脳のリハビリ」に励めば未だ治すことが可能なのです。「大ボケ」の段階で見つけているから治せないだけなのです。その上、「アルツハイマー型認知症」の本質が廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」(脳の使い方としての意味で言う「生活習慣」に起因する病気)であることにも気付かないで居て、「更なる症状の進行速度が緩やかになることが期待できるかもしれない」という謳い文句で、効きもしない「薬」を飲ませているだけの対応というのが、医療現場の実態なのです「DSM-4」の規定の「第一要件」の内容も、「第二要件」の内容も、更には、全体としても、根本的に誤った内容であるのに、絶対的な権威があるがゆえに、ただそれだけの理由で、世界中の認知症の専門家達の判断を誤らせていて、皆さん自身を惑わせてもいるのです。更に付け加えて言うと、「アルツハイマー型認知症」こそ、治すことも出来るし、発病自体を予防することができるタイプの認知症の代表となるものなのです。

   

& 三段階に区分される「アルツハイマー型認知症」の症状

二段階方式」による症状の区分

「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルの直接のアウト・プットそれ自体が「認知症」の症状として発現する「アルツハイマー型認知症」の場合は、「脳のリハビリ」により治すことができる(「前頭葉」を含む脳全体の機能を正常な機能レベルに回復させることができる)のです。「脳のリハビリ」(脳の使い方としての「生活習慣」の改善)により回復させることの可能性及び困難さの程度という視点から、私たちの「二段階方式」の考え方では、「三つの段階」に区分します。

○「二段階方式」による区分と定義

「二段階方式」の考えでは、最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階は、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが次のように定義されています。

「前頭葉」の機能レベルだけが異常なレベルにあって、左脳、右脳及び運動の脳の全ての機能が正常なレベルにあること(MMSEの換算値が24点以上であること)。猶、「前頭葉」の機能レベル及び左脳と右脳の機能レベルは、それぞれ、「かなひろいテスト」とMMSEにより判定され、各々の機能レベルは、数値化された客観的な基準値に基づいて判定されます。

また、「二段階方式」の考えでは、最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階での特有な発現が確認される認知症の症状は、次のように類型化されています(字数制限の関係で割愛します。「小ボケ」の段階の症状については、ここを「クリック」してください)。

○「二段階方式」の考えでは、次の段階である「中等度認知症」(ボケ)の段階は、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが次のように定義されています。

「前頭葉」の機能レベルが廃用性の機能低下の進行により「小ボケ」のレベルのそれよりも更に異常なレベルにあって、左脳、右脳及び運動の脳の全ての機能も異常なレベルに衰えてきていること(MMSEの換算値が23点以下15点までの範囲にあること)。猶、「前頭葉」の機能レベル及び左脳と右脳の機能レベルは、それぞれ、「かなひろいテスト」とMMSEにより判定され、各々の機能レベルは、数値化された客観的な基準値に基づいて判定されます。

また、「二段階方式」の考えでは、「中等度認知症」(中ボケ)の段階での特有な発現が確認される認知症の症状は、次のように類型化されています(字数制限の関係で割愛します。「中ボケ」の段階の症状については、ここを「クリック」してください)。

○ 「二段階方式」の考えでは、末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)の段階は、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが次のように定義されています。

「前頭葉」の機能レベルが廃用性の機能低下の進行により「中ボケ」のレベルのそれよりも更に異常なレベルにあって、左脳、右脳及び運動の脳の全ての機能も「中ボケ」のレベルよりも更に異常なレベルに衰えてきていること(MMSEの換算値が14点以下0点までの範囲であること)。猶、「前頭葉」の機能レベル及び左脳と右脳の機能レベルは、それぞれ、「かなひろいテスト」とMMSEにより判定され、各々の機能レベルは、数値化された客観的な基準値に基づいて判定されます。

また、「二段階方式」の考えでは、「重度認知症」(大ボケ)の段階での特有な発現が確認される認知症の症状は、次のように類型化されています(字数制限の関係で割愛します。「中ボケ」の段階の症状については、ここを「クリック」してください)。

 & 認知症の専門家達が掲げる「記憶障害の症状」としての「老化の物忘れ」と「認知症の物忘れ」との鑑別に関わる基準

『 食事のメニューでなくて、食事をしたこと自体を忘れている』というのが、認知症の専門家とされる人達が挙げる常套的な説明方法なのです。高齢者の生理的な老化現象による「物忘れ」の症状は、物を置いた場所を思い出せないなど、自分の体験の一部を忘れているにすぎないが、「認知症の記憶障害の症状」は自分の体験したことを丸ごと全部忘れてしまう病的な記憶障害だというのがその常套的な説明の仕方なのです。

では、働き盛りの未だ若い年齢のあなた方にお聞きしますが、何かをする用事を頼まれて、「どんな内容の用事だったか」を忘れたのではなくて、用事を頼まれたこと自体を忘れた経験は一度もありませんか。一度もないどころか、何度も有るでしょう。ゴルフの練習に出かけようとして、帰りにスーパーで豆腐と牛乳を買ってきてと頼まれていたのにすっかり忘れていたとか、最近開店した評判のイタリアン・レストランで友人達と食事するためピック・アップしようと友人宅に回って行く際に、途中で捨てるつもりでトランクに入れておいたゴミをそのまま持ち回ったこととか、心配事や急ぎの大切な用事があるとき、そのことが終始気がかりな状態下で(心がそのことに捕われている状態下で)、急ぎの用事でもない上に、些事の類に属する用事を頼まれたような場合であれば尚更のこと、忘れることはよくあることなのです。特に、心を占める気がかりなことがあって、「上の空」状態で用事を聞いているときはなおさらのことなのです。用事を頼まれたこと自体を思い出せなかったことは一度もないなんて言わせませんよ。「前頭葉」の三本柱の機能の一つと私たちが名づけ位置付けている「注意の分配力」の機能が加齢により総体として衰えてきた年齢の方であれば、日常珍しいことではなくて、しばしば起きてくることなのです。そのメカニズムを知らない人たちが、上述の説明を持ち出してくるのです。「老化の物忘れ」と「アルツハイマー型認知症」の症状としての「記憶障害の症状」とを区分ける方法、それは唯一、「前頭葉」の機能レベルが正常であるか、異常であるかが両者を鑑別する客観的な指標となるのです。認知症の専門家と称しながらも彼らは、基準の根拠となるべき物を持たないので、共通項を探し出してきて、それを根拠だと言っているにすぎないのです。上述した「DSM-4」の規定の「第二の要件」に規定されている失語、失認、失行の症状は、実は、私たちの区分で言う末期の段階である「大ボケ」の段階の、更に後半になって初めて発現が確認される極めて重度の症状、30点が満点のMMSEの得点が一桁の得点にならないと発現がみられない症状なのです。「第一の要件」と「第二の要件」は、同一人物の同一の時期(時間)に確認されることを要求しているのです。その為、「第一の要件」に規定されている「記憶障害」の症状も、極めて末期の段階で確認されるレベルの「記憶障害」の症状ということになるのです。その典型的な事例としてしばしば取り上げられる症状が、「つい先ほど食事をしたばかりなのにそのことさえも思い出せない」というレベルの記憶障害事例ということなのです。認知症の専門家とされる人達の上述の説明は、単なる後付けに過ぎないことがお判りでしょうか。

 & DSM4」の規定が確認を要求している二つの要件の問題点

○ ところで、第二の要件に規定されている「アルツハイマー型認知症」の症状である、「失語」の症状の態様とは(他人が話す言葉の内容を理解できない。自分の考えていることを上手く言えない。日常的によく使うものの名前や、言葉が思い出せない。)などであり、失認」の症状の態様とは(ものを見ても、それが何だかわからない。知っているはずの知人の顔がわからなくなる。自分が現在住んでいる家がそれだと分からない。近所で道に迷う。)などであり、失行」の症状の態様とは(包丁やハサミ等何時も使っていた物の使い方が分からなくなる。衣服を後ろ前や表裏に着る。人の動作を真似ることができない。)等の症状のことを言います。

それらの症状は、「二段階方式」の「神経心理機能テスト」で判定してみると、脳全体の司令塔の役割を担っていて、左脳、右脳、運動の脳と協働し、且つそれらを支配しコントロールしながら、私たち人間だけに特有な世界、「意識的な世界」を創出し、操っている三頭立ての馬車の「御者」の役割を担っている「前頭葉」の働き具合が殆ど機能しないレベルにまで衰えてきている状態に在る人たちのことなのです。自分が置かれている状況を的確に判断し、意識的に何かの「テーマ」を発想し、その実行すべき内容を企画し計画し、実行した場合のケース・シミュレーションを経て必要な修正を加え、最終的な実行の内容並びにその程度と態様とを決定し、左脳や右脳や運動の脳と言った脳の各部に実行の指令を出すという脳全体の司令塔の役割を担っているのが「前頭葉」なのです。その「前頭葉」の機能自体が、廃用性の加速度的で異常な機能低下によって、殆ど働くことが出来ない程度にまで衰えてきている状態に在ること、そのことに直接に起因して、「失語や失行や失認」の症状が発現してくるのであって、認知症の専門家達が考えているような器質的な障害に起因してそうした症状が発現してきている訳ではない、それが「アルツハイマー型認知症」の特徴、本質であることに早く気付くべきなのです。そのことにさえ気づかないで居て、アミロイド・ベータの蓄積による老人斑の沈着により脳内での情報を連絡する役割を担う神経細胞が破壊されて「記憶障害」の症状が発現してくると言う誤解、根本的な視点の誤りを継続している限り、アミロイド・マウスであろうと、どんな性質の状況をマウスに作り出そうとも、見えない的に向かってただやみくもに矢を射かけているだけと言う状況から何時まで経っても抜け出すことは出来ないのです。時間の無駄であり、税金の無駄遣いであり、若い有能な人材の無駄な消費にしかならないことを指摘しておきたいのです。我が国では、東大、京大、理化学研究所等がアミロイド・ベータ説の牙城であり、医学会や医療現場に与える影響の意味でも、或いは「地域予防活動」を推進する上での中核を担う役割の市町村の保健師さん等に与える悪影響の意味でも、その存在が並びにその考え方の帰趨が与える意味合いが極めて大きいのです。

私たちが、「前頭葉」の機能レベルを測定し判定する際に使用する手技である「かなひろいテスト」の結果で言うと、失語や失認や失行などの症状が確認される人達は、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルが、「不合格」のレベルの人達の中でも末端のレベルにある人達のことなのです。「二段階方式」の活用により私たちが集積した「脳機能データ」(かなひろいテストとMMSEの相関図)が示しているように、意識的に何かのテーマを考え付いたり、考え付いたテーマの実行内容や実行の程度及び態様を組み立てる上でなくてはならない働きをする「前頭葉」の機能が殆ど働いていない状態にあることが及び発現してくる「アルツハイマー型認知症」の症状の程度及び態様に厳密にリンクしていることが、認知症の専門家たちに気づかれていないことが重大問題なのです。更に、私たちの「二段階方式」の判定基準としては、脳の後半領域(左脳及び右脳)の働き具合を測定し判定する際に使用する手技である「MMSEのテスト」の結果について言うと、「30点満点のテストで、一桁の得点しか取れない人達」のことなのです。私たちが集積し類型化している「大ボケ」の段階の人達の症状を、単に外観的にとらえるのではなくて、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルと言う視点から詳しく分析してみてください。例えば、〔 着ている服を脱ぎたがらず、便で汚れた下着をそのまま平気で着ている 風呂に入るのを嫌がる 服を正しく着られず、ズボンを頭からかぶったり上着に足を通したりする〕と言った症状は、「記憶障害」に起因した症状なのではなくて、廃用性の加速度的で異常な機能低下に起因した「前頭葉」の機能障害を核とした且つ、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルの直接のアウト・プットであることが理解できるはずなのです。「木を見て森を見ず」と言う現況から出来るだけ早く抜け出ていただきたいと願うのです。「アルツハイマー型認知症」の発病の原因(メカニズム)、症状発現のメカニズム、段階的な症状の内容の理解等については、宇宙背景放射ならぬ、廃用性の機能低下により異常なレベルにまで、機能が低下した(殆ど働いていない状態に在る)「前頭葉」の働き具合の背景放射が基礎になっていると言う視点が不可欠となるのです。

「アルツハイマー型認知症」の症状と言うテーマについても認知症の専門家とされる人達は、様々な程度と態様で発現してくる「アルツハイマー型認知症」の症状を挙げるとき、外観から見た症状を単に羅列するだけなのです。その場合、「中核症状」と「周辺症状」とに区分するのが常なのですが、何の意味もない区分なのです。私たちは、私たちが開発した「二段階方式」の手技に基づいて鑑別した「前頭葉」を含む脳全体の「機能レベル」に直接リンクした「アルツハイマー型認知症」の「症状」を、「脳のリハビリ」(脳の使い方としての生活習慣の改善)により回復させることの可能性と言う視点から、「三つの段階」に区分した症状の類型としての14689例にも及ぶ精緻な「脳機能データ」を保有しているのです。その「脳機能データ」によると、「DSM-4」が第二の要件に規定する失語や失認や失行の症状は、脳全体の司令塔の役割を担っていて、私たちが意識的に何かのテーマを実行しようとする際に無くてはならない働きをしている「前頭葉」の機能が異常なレベルに在って、且つ、MMSEで判定される左脳及び右脳の働き具合も30点満点のMMSEの得点が一桁の得点になるまでに脳全体の機能が衰えてきている人にしか確認されない症状なのです。然も、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくる「失語や失認や失行」の症状は、器質的な原因を基礎とした記憶障害に起因して発現している訳でもないのです。廃用性の加速度的で異常な機能低下を基礎とした「前頭葉」を含む脳全体の機能低下に起因して発現している症状であって、且つ「前頭葉」の機能障害を核とした症状なのだということに気づいてもいないのです。

認知症の専門家とか言いながら(本を出版してみたり/テレビに出てきて、物知り顔に解説してみたりしてはいても)私たちのような「客観的な判定基準」を持たない人たちが、外観的な症状を主観的にとらえて、言葉で表現したもの、それが、昨日食事に行って何を食べたのかを覚えていない(想い出すことができない)のは、「物忘れの症状」であって、食事に行ったこと自体を覚えていない(想い出すことができない)のが、認知症の症状なのだとか、訳が分からない意味不明の説明をしているだけということなのです。

 物忘れの正体とそのメカニズム201244日に載せた私のブログからの引用です)

(夕御飯の支度をしている場面)冷蔵庫を開けたとたん、「あれっ・・・?」と思って、一瞬何をとるのかが思い出せない。(何をとるんだっけ?)。「あっ、豆腐だ!」)。

(トントンと2階に上がっていく場面) 部屋のドアを開けたとたん、「あれっ?」と思って、一瞬何をしにきたのかが思い出せない。(何をしようと思って来たんだっけ・・?)。「あっ!ハサミを取りに来たんだ!」)。   

年をとってきて、こうした「物忘れ」の起きる回数が次第に頻繁になってくると、気になってきます。(年のせいかな・・?)と思いつつも、ちょっと気になることがあるのです。何が気になるかというと、「認知症」です。「物忘れは、ボケの始まり」と、昔から言われてきたからです。その言葉が、心の隅に、引っかかるのです!

記憶は、「記銘」したものを「保持」して、それを「想起」してくると言う経路をたどります。「はっきりと記憶している」とか「すっかり忘れてしまった」とかいうことは、どの程度に記銘され、保持され、想起されるのかという個々の要素の機能レベルが影響している(個々の要素の相乗効果による)と私たちは考えています。

その中でも、「記銘」するときの記銘度が最も重要だと考えています。海馬に集められた認知内容の情報を記銘するとき、(記銘度が高いもの)であったなら、その記銘度に応じて「長期」に保存されるし、(記銘度が低いもの)であったなら、その記銘度に応じて「短期」にしか保存されないと考えるのです。「記銘」する(覚える)ときの「記銘度」が高い(よく記銘される)情報は、よく「保持」され、よく「想起」される(思い出される)のです。このことは、「記銘」した5分後に「想起」できる程度をチェックしてみれば、直ぐに分かります。「記銘度」が高い情報ほど、想起することが容易なのです。更に、よく「記銘」された(「記銘度」が高い)情報は、長期に記憶されるのです。専門家が言うような、(海馬が「選択」して、短期記憶と長期記憶とに区別している)からなどとは、考えられないのです。

「記銘度」は、記銘するときの状況(三本柱の機能の働きの度合い)に左右されます。記憶の対象となる認知情報を記銘する時、「意欲」が強く作用する内容であり、「注意の集中力」が深く作用する内容であり、「注意の分配力」が鋭敏に作用する内容であれば、「記銘度」が高くなるので、長期に保存され、想起しやすく、結果的に「長期記憶」となるのです。逆の場合は、記銘度が低くなるので、短期にしか保存されず、想起しにくく、結果的に「短期記憶」となるのです。もちろん、繰り返し海馬に送り込まれた同じような内容は、繰り返された回数が多いほど「記銘度」が高くなるので、其の分、より長期に記憶されることになるのです。

更に、私たちのデータによれば、MMSEの下位項目中、「前頭葉」の三本柱の機能の衰えを最も敏感に反映する項目である「想起」が、最も早く加齢により衰えていく項目なのです。そもそも、「記銘」自体が「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」という「前頭葉」の三本柱の機能の働き具合に大きく影響を受けます。そして、この三本柱の機能自体もまた「加齢と共に衰えていく」と言う性質を持っているのです(正常老化の性質)。そのため、年をとるにつれて、「覚える」こと(記銘)が難しくなっていき、「思い出す」こと(想起)も難しくなっていくことは、皆さん経験済みのことでしょう。加齢により衰えていくという両者の性質が、老化の物忘れと密接な関係があるということなのです。

「前頭葉」の三本柱の機能の一つに、注意の分配(いくつかの異なったテーマを同時に並行して処理すること)という機能があります。上述のように、老化の物忘れは、「記銘」するときの記銘度が低くなっていることに原因があります。その「記銘度」は、記銘するときの「注意の分配力」の働きの度合いに大きく左右されます。何かのテーマを記銘するとき、同時に心に浮かんでくる他のテーマ(心配事や関心事などの気になること)に注意がそれていたりすると、肝心のテーマの「記銘度」が低くなってしまうのです。「記銘度」が低くなった結果として、想起するのが難しくなる(思い出せない)、つまりは「忘れる」ことになるのです。これが、「老化の物忘れ」のメカニズムなのです。

「前頭葉」の三本柱の機能は、加齢とともに働きが衰えていく性質を持っているので(脳の使い方としての生活習慣の如何に関わらず、加齢とともに、機能が衰えていく)、記銘するときによほどそのことに集中できていないと(他のテーマに、より大きな注意が分配されていると)当該内容の記銘度が低くなります。そのメカニズムのもとで、年をとるほど、「物忘れ」が増えてくるのです。それが、「老化の物忘れ」なのです。ところで、「前頭葉」の機能レベルの判定と言う機会が持てないあなたに、簡便な指標を提供しましょう。そこで、一句 「物忘れ、反省と工夫が効けば、年のせい」 

「前頭葉」は、自分の置かれている状況を判断し、何をどのようにするかを組み立て対応する働きを持った脳の司令塔です。「物忘れ」が増えてきて、心配になったり、日常に支障が出てきたら、「忘れたらいけない大事なことは、メモする」という習慣を身につければいいのです。「アルツハイマー型認知症」が始まると、「前頭葉」の働きが最初に異常なレベルに衰えていきます。その「前頭葉」の機能が、正常な機能レベルであれば、自分の置かれている状況(度々物忘れすることで、支障が起きる)を判断して、そのことを反省したうえで、適切な対応を工夫をすることが出来るはずです(大事なことはメモをする)。これさえ出来るのであれば、物忘れがあっても、「認知症の物忘れ」ではなくて、「老化の物忘れ」にすぎないのです。

認知症の専門家とされる人達が言う「認知症の物忘れ」とは、末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)のレベルで起きてくる記憶障害の症状のことを言います。重度認知症のレベルになると、「前頭葉」の機能は、殆ど働くことが出来なくなってきています。従って、自分が置かれている「状況を判断」することも、ましてや、反省に基づいた適切な対応の為の「工夫」をすることも出来なくなっているのです。「注意」が他にそれていなくても、廃用性の加速度的で異常な機能低下を起こしてきたことにより「前頭葉」を含む脳全体の機能が「大ボケ」のレベルにまで衰えてきていることに起因して、「記銘」すること自体が満足にできなくなっている為に起きてくるのが、専門家達が問題にしている「認知症の物忘れ」なのです。「上の一句」を何時もあなたの財布に入れておいて、「物忘れ」が気になったら、取り出して安心してください。

  注)本著作物(Bー66に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。   

  エイジングライフ研究所のHP左の部分を「クリック」してください)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

物忘れの多発は、アルツハイマー型認知症の前駆症状なのか(A-91)

2013-08-01 | 物忘れの正体とそのメカニズム

&1正常な老化現象の代表格である「物忘れ」の症状が起きてくるメカニズム

(1) 二階の部屋に用事があって階段を上っていく途中、雑誌が階段に置き忘れられているのを見つけて、階段下の書籍戸棚に片付ける。そして、階段を上っていこうとした時、自分が何をしに二階の部屋に行こうとしていたのかが分からないのです。とっさには、思い出せない(想起できない)のです。

(2)  今日の主役、私Kinuko は、Tadが大好きな、フランスは「ブルゴーニュの郷土料理」、“ブッフ・ブルギニオン”をつくって、一緒に赤ワインを楽しもうと、夕御飯の支度をしていて、冷蔵庫を開けた時のことなのです。何を取ろうとしていたのかが分からないのです。思い出せないのです。

(3) コミュニティーセンターで、別荘地の清掃管理についての会合があったのです。会議の重要な議題となるテーマや問題点とか提案内容とかが詳細に書かれたメモが送られてきていたので、忘れないようにと、わざわざ玄関の下駄箱の上に昨晩置いておいたのです。コミ・センに着いたら、持ってくるのを忘れていたことに気づいたのです。

(4)「物忘れは、ボケの始まり」と、格言として昔から言われてきたことや、米国精神医学会が定める「アルツハイマー型認知症」の診断基準であった「DSM-Ⅳ」(現在は、改定されて「DSM-Ⅴ」となり診断基準が変更されている)の「第一の要件」として、『記憶の障害』の確認が規定上要求されていること、或いは、「MCI(軽度認知障害)」という因果関係の確認がないままの憶測を根拠とする学説等の主張とも相まって、「物忘れ」の症状が日常的に増えてきたり、症状が次第に重いものになってきたりすると、「アルツハイマー型認知症」が始まったのではないかと、皆さんは不安を覚えてしまうようなのです。

(5) そうした「物忘れの症状」の発現に対して皆さんが不安を覚えるのは、認知症の専門家とされる人達(学者や研究者や精神科医達)の誰一人として、「アルツハイマー型認知症」の発病原因と発病のメカニズムを突き止めることができていないこと及び「アルツハイマー型認知症」及び「軽度認知障害」等の診断基準自体が「外観的な症状」を基本的なベースにしていて、「脳の機能面」、就中、『前頭葉を含む脳全体の機能レベル』に厳密にリンクした症状という心に欠けていて、或る意味で、「群盲象を撫でる」のに似た状況があるからだと言っても過言ではないでしょう。

(6) ところで、「忘れる」という症状は、脳の機能レベルのアウトプット、もう少し正確に言うと、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」(前頭前野の穹窿部に局在する「複合機能体」のことを言うものとする。以下、同じ)の三本柱の機能である、「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」(二段階方式が命名)の機能の『加齢による正常な衰え』を含む、脳の機能レベルのアウトプットなのです。

(7) アルツハイマーガタ認知症の発病者でない人達に起きてくる、所謂、加齢に起因しての「老化の物忘れ」は、「軽度認知症」(小ボケ)のレベルであれ、「中等度認知症」(中ボケ)のレベルであれ、或いは「重度認知症」(大ボケ)のレベルであれ、「アルツハイマー型認知症」を発病している人達の『物忘れの症状』(権威が憶測だけで主張している「記憶の障害」ではなくて、『前頭葉の三本柱の機能』の廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行に起因したものであることに留意する)と比較したとき、「脳の機能レベル」という視点/基準からの『根本的な相違がある』のです。

(8) 認知症の専門家とされる人達は、「脳の機能レベル」という視点、特に、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の機能とその機能レベルという視点/或いは判定のための手技欠けているが為に、単なる「加齢現象」(正常な老化現象)としての「物忘れの症状」と「アルツハイマー型認知症」の発病者に確認される「異常な物忘れの症状」とを、「症状の程度と態様の差」くらいにしか考えていないのです。症状を発現させている根源である『前頭葉の機能レベル』の精緻な判定に関わる『脳の働きという物差し』を使わないのです(使うとしても、左脳と右脳の機能レベルの判定用のMMSE又は、長谷川式程度なのです)。

(9) 最初に私のケースとして取り上げた3つの例に見られるような症状は、所謂、加齢現象としての「正常な物忘れ」の症状であって、高齢者の仲間入りをされている皆さんであれば、誰でも日常茶飯事のことなのです。「アルツハイマー型認知症」を患っていなくても、言い換えると、「前頭葉」を含む脳全体の機能が「正常なレベル」にあっても誰にでもよく起きてくる現象なのです

(10)「アルツハイマー型認知症」を発病した人にみられる重度の物忘れの症状(「アルツハイマー型認知症」の症状としての『前頭葉』の機能障害に起因した「記憶の障害」の症状)と単なる「老化現象としての物忘れの症状」とを区別する(客観的に見極める)第一の要件は、「前頭葉」の機能が異常なレベルにあるか(この場合は、アルツハイマー型認知症としての症状)、それとも正常なレベルにあるか(この場合は、加齢に起因した正常な老化現象としての症状)なのです。「前頭葉」の機能が正常なレベルにあって、高度の物忘れの症状(この場合は、「新しい記憶」だけが入っていかない、極めて重度の記銘力障害が原因で、起きて来るタイプ)が認められるのは、「側頭葉性健忘症」という症例自体が極めて稀な病気場合だけなのです(但し、「側頭葉性健忘症」のことをよく知らない医師が、「アルツハイマー型認知症」と誤診するケースが、世界的にもよくあります。「二段階方式」のような神経心理機能テストで、その人の「前頭葉」の機能レベルを精緻に判定出来れば、容易に両者を鑑別することが出来るのですが。)。

(11) こうした「加齢に起因した正常な物忘れの症状」は、実は、30歳代後半に入ると、誰にでも起きてくる、脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」機能の正常な老化現象に直接起因する症状なのです。「前頭葉の機能」の基礎的な機能である、「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」という「三本柱の機能」のうちの注意の分配力」の機能の機能レベルが、30歳代に入ると機能低下が始まってきて、加齢とともに機能低下を更に進行させていき、高齢者の入り口の65歳くらいになると機能レベルが最高時の20歳代の頃に比べて半分以下のレベルになってきていることが主たる原因なのです(私たち二段階方式が世界に誇る脳機能データ。、それでも、「正常な機能レベル」と言えるのですが)。

&2  認知症の専門家達には、「前頭葉」の機能という視点が欠けている

(1) そもそも「記憶」という機能には、対象となる情報内容を「記銘」して、「保持」して、「想起」するという三段階の経路があります。思い出せない、つまり、「想起」できないということは、「保持」に原因があるか、「記銘」に原因があるということになります。

脳血管に問題があるような特殊な場合を除いて、一般的には、言い換えると加齢による老化現象としての「物忘れの症状」の場合には、最初の段階である(認知した情報を覚え込む為の「記銘」の機能レベル=記銘度の深さ/浅さ)が「想起」出来るレベルを直接左右する構造になっているとTadは考えるのです。そこのところを、私達が開発した「二段階方式」の手技の活用により蓄積してきた「脳機能データ」に基づいて、概説しておきたいと思います。

(2) その前に、「意識的な世界」を支配している脳の司令塔としての「前頭葉」の働きについて、その概要を説明しておきましょう。

頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があり、「運動の脳」の左の部分が右半身を動かし、右の部分が左半身を動かしているのです。

脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事などをする為の「左脳」があり、左脳は、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理しているのです。

脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあいなどを楽しむ為の「右脳」があり、右脳は、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理しているのです。

額のところには、脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」(但し、単体ではなくて、複合機能体であることに留意する)があります。その『前頭葉』には、分析、理解、判断、発想、企画、計画、創意工夫、推理、憶測、忖度やら洞察をしたりする為の様々な働きが詰まっています。更には、自分の置かれている状況を判断し、種々ケースワークした上で、実行テーマの内容や実行の仕方を比較し、選択して、最終的に決定し、実行の決断をする為に必要不可欠な「評価の物差し(意識の首座=自我)」という私たち人間だけに特有な大事な働きがあります。

&3  意識的な思考や行為の世界と「前頭葉」の機能レベルとの関係

(1) 今日のテーマは、無意識ではなくて「意識的(目的的)」な世界のことです。

私達が意識的に何かの「テーマ」を実行しようとするとき、どのような「テーマ」をどのように実行するか、「運動の脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(身体を動かす「テーマ」)、「左脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(言葉や計算や論理や場合分けなどデジタル情報を処理する「テーマ」)、「右脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(色や形や空間認知や感情などアナログ情報を処理する「テーマ」)、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して決定し、「左脳、右脳及び運動の脳」に対し必要な指令を出して実行しているのです。

(2) これが、意識的(目的的)な思考や施策や行為や行動、或いは、言動の実行の際に見られる『脳の働き方の全体像』なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という三頭建ての馬車をあやつる「御者の役割」をしているのが、複合機能体としての『前頭葉』の機能なのです。三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、「前頭葉」の働き次第ということなのです。

今日のテーマである、何かを思い出そうとする場合にも、脳の機能或いは機能レベルという視点から言えば、同じメカニズムが働いているのです。


&4 加齢とともに誰でも脳の機能が衰えてくる「正常老化」の性質

(1) 脳全体の司令塔で、置かれている状況を判断したり、何かを思いついたり、計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、感動したり、抑制を働かせたり、各種の高度な働きを担当している『前頭葉』の機能、中でも、その認知機能を正常な機能レベルの下で発揮する上で、とりわけ重要な「認知度」を左右しているのが、「前頭葉の三本柱」の機能である「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の働きなのです。ところが、それらの働きには加齢と共に老化し衰えていく」という重要なしかし専門家達からは見過ごされている性質があるのです。

(2)「前頭葉」の各種認知機能の発揮度を左右しているこの「三本柱の機能]には、18歳から20歳代半ばまでがピークで、20歳代半ばを過ぎるころから100歳に向かって緩やかではあるが、一直線に衰えていく性質があるのです。 

「アルツハイマー型認知症」を発病する人の割合が急に多くなってくる年齢、第二の人生の入り口である「高齢者」の仲間入りをしたばかりの60歳代半ば、ともなると、脳の使い方としての「生活習慣」の如何に関わらず、「前頭葉の三本柱」の機能の働き具合は、ピーク時の18歳から20歳代半ばの頃に比べて、半分以下のレベルにまで衰えてきているのです。70歳代、80歳代、90歳代、100歳代と、年をとればとるほど、「前頭葉の三本柱」の機能の働きが更に衰えていって、正常なレベルを保ちつつもどんどん「低空飛行」になっていくのが特徴なのです。

&5「記銘度」と「想起」の機能(思い出す働き)との関係

(1) 上述したように、  『記憶とは、「記銘」したものを「保持」して、それを「想起」してくる』と言う経路をたどります。「はっきりと記憶している」とか「すっかり忘れてしまった」とかいうことは、どの程度に記銘された情報内容が、どの程度保持されていて、どの程度想起されたのかという、個々の要素の機能レベルが相剰的に影響している(個々の要素が絡み合った複合的な相剰効果による)とTadは考えています。

(2) その中でも、記銘の対象となる対象情報を「記銘」するときの記銘の度合い(「記銘度」)最も重要だと考えています。海馬集められた認知の対象となる情報の内容を『記銘』するとき、(記銘度が高いもの)であったなら、その記銘度に応じて「長期」に保存されるし、(記銘度が低いもの)であったなら、その記銘度に応じて「短期にしか保存されないとTadは考えるのです。

「記銘」する(覚える)ときの「記銘度」が高い(よく記銘される)情報は、よく「保持」され、よく「想起」される(思い出される)ことになると考えるのです。

 このことは、「記銘」した5分後に「想起」できる程度をチェックしてみれば、直ぐに分かります。「記銘度」が高い情報ほど想起することが容易なのです。

更に、よく「記銘」された(「記銘度」が高い)情報は、長期に記憶される(長期に保存され、長期にわたり、よく想起される)のです。

専門家が言うような、(海馬が「選択」して、短期記憶と長期記憶とに区別して記憶している)からなどとは、考えられないのです。

&6  何かに気を取られている(注意が分配されている)ときの「記銘度」

(1) 保持/想起されやすいか否かを左右している「記銘度」は、「記銘」するときの状況(三本柱の働きの度合い)に直接左右されるのです

記憶の対象となる認知の対象となる情報を記銘する時、「意欲」が強く作用する内容であり、「注意の集中力」が深く/長続きしつつ作用する内容であり、「注意の分配力」(異なる複数のテーマを同時並行して処理する機能のこと/咄嗟の判断と処理にも不可欠の機能)が大きく作用する内容であれば、「記銘度」が高くなるので、長期に保存され、長期にわたって想起しやすく、結果的に、「長期記憶」となるのです。逆の場合は記銘度が低くなるので、短期にしか保存されず、想起しにくく、結果的に「短期記憶」となるのです。もちろん、繰り返し海馬に送り込まれた同じような内容は、繰り返された回数が多いほど「記銘度」が高くなるので、其の分、より長期に記憶されることになるということなのです。

(2) 更に付け加えると、私たちのデータによれば、14689例の発病患者のMMSEの下位項目中、「想起」の機能が、最も早くに衰えていく項目なのです。

そもそも、「記銘」自体が「意欲」、「注意の集中力」、「注意の分配力」という「前頭葉の三本柱」の機能の働き具合に、直接的に大きな影響を受けるからです。そして、この「三本柱の機能」の各々の機能もまた、上述したように「加齢と共に衰えていく」と言う性質を持っているのです。そのため、年をとるにつれて、「覚える」こと(記銘)自体が難しくなっていき、「思い出す」こと(想起)も難しくなっていくことは、皆さん経験済みのことでしょう。加齢により衰えていくという「三本柱の機能」の性質が、高齢者である皆さんが日常的に体験している「物忘れ」と密接な関係があるということなのです。


&7 高齢者の仲間入りをしてくれば、「物忘れ」なんて日常茶飯事

(1) 私達の日常生活では、特に「高齢者」の仲間入りをした年齢である場合には、尚更のことなのですが、何か「特定のテーマに集中」、「一点に集中」する時間は、きわめて稀というべきでしょう。8月の下旬に、「二段階方式」の実務研修会を開催するので、その準備に追われていたのです。「マニュアル使用の手引き」を印刷して製本する作業を、Kinukoが一人でやっていたのです。

(2) 見かねた友人が、Kinukoと私の二人を昨晩の夕食に招待してくれたのです。メイン・ディッシュはなんと、北海道産の「毛ガニ」ということでした。製本作業に追われているはずのKinukoの脳裏には、「肝心の仕事とは関係のない様々なテーマ」が浮かんでは消えていった筈なのです。

「どんな洋服を着ていこうかしら?」、「メインが毛ガニだから、先週、山形県のK町に講演に行った際買ってきた、こだわりの原酒樽平をおもちしようかしら?」といった具合でした。

(3) このように、「何かのテーマ」を記銘しようとする時、その時の状況の中で、心に浮かんでくる「他のテーマ」(心配事や関心事や恐怖感を覚える事など、その時気になっていること)に注意がそれていたりする(脳の機能面から説明すると、注意の分配力の機能の分配量が、他のテーマに偏って配分されている時)と(この状態は、異なる二つ以上のテーマに対して「注意の分配機能」が働いている状態なのです)、注意の分配力の機能の分配量が少なくなってしまっていた肝心のテーマの「記銘度」が低くなってしまうのです。

年齢が66歳であるあなたのその時の注意の集中力の機能レベルが例えば66だったとしましょう。心に気にかかっている「他のテーマ」に46が配分されていると、「肝心のテーマ」に配分できるのは、20しか残っていないのです。その20で「肝心のテーマ」の内容を記銘するので、その「記銘度」自体が低くなってしまっているのです。「記銘度」が低くなってしまった結果として、「想起」するのが難しくなる(思い出せない)、つまりは「忘れる」ことになるのです

 製本作業に追われていて、時間に間に合わなくなりそうな状況で家を飛び出したKinukoは、案の定こだわりの原酒「樽平」を持参するのを失念していたのでした。(4) これが、「正常な老化の物忘れ」のメカニズムなのです。「前頭葉の3本柱」の機能は、加齢とともに働きが衰えていく性質を持っているので(脳をそれなりに使って機能を活性化させている正常な日常生活を送っている過程でも緩やかで、ぞじょにではあるが、機能が衰えていくのです)。

「記銘」する時によほどそのことに集中できていないと(他のテーマに、注意がそれていたりすると)、当該内容の「記銘度」自体が低くなってしまい、「想起」することが難しくなるのです(即ち、忘れる)。そのメカニズムのもとで、年をとればとるほど、「物忘れ」が増えてくるのです。それこそが、高齢者であれば誰にでも起きてくる、「正常な老化の物忘れ」の症状なのです。

&8 反省と工夫が効けば、年のせいなのです(「老化現象」としての物忘れ)

(1)「前頭葉」は、自分の置かれている状況を判断し、何(目的となる「テーマ」とその内容)をどのようにするか(実行計画)を組み立てて対応する働きを持った脳全体の司令塔です。「アルツハイマー型認知症」になるのではと不安に悩む時間があるなら、「前頭葉」を活用して、物忘れが頻繁に起きてくることへの対応策を考え出す工夫をすれば良いのです。「物忘れ」が増えてきて、心配になったり、日常に支障が出てきたら、「忘れたらいけない大事なことは、メモする」という生活習慣を身につければ良いだけのことなのです。「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、その「前頭葉の機能」が異常な機能レベルに衰えてきている(機能が、正常に働かないレベル)ことを知って、且つそのことを覚えておいてください。

(2) その「前頭葉」が、正常レベルにあれば、自分の置かれている状況(度々物忘れすることで、支障が起きる)を判断して、そのことを反省したうえで、適切な工夫をする(大事なことはメモをする)ことが出来るはずなのです。これさえ出来るのであれば、物忘れがあっても、「認知症の物忘れ」ではなくて、単なる「老化の物忘れ」にすぎないのです。


&9 脳機能データが語る「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズム

(1) 詳細については、後述しますが、「正常老化の性質」により脳の機能がそもそも老化してきている「高齢者」と呼ばれる年齢のお年寄りが、使われる機会が極端に少ない生活、「生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない」、ナイナイ尽くしの単調な生活が継続する日々の中で、「前頭葉」を含む脳の機能が、廃用性の機能低下を加速させていく結果として、異常なレベルに機能低下した「前頭葉」を含む脳の機能レベルのアウトプットそれ自体が、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくるのに過ぎないのです。

(2) 言い換えると、「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する単なる生活習慣病にすぎないのです。因果関係の立証データを追及することもなく単なる仮説にすぎないアミロイド・ベータやタウ・タンパクや脳の委縮等を追い続けている限り、認知症の専門家或いは権威者達の間では、いつまでたっても「アルツハイマー型認知症は、原因不明で治らないタイプの認知症」の汚名を着せられ続けることになるのです。

(3)「アルツハイマー型認知症」発病の原因は、一部の学者が推測しているようなアミロイド・ベータやタウ・タンパクや脳の委縮ではないのです。

それらの説では、「アルツハイマー型認知症」の発病との間の因果関係についての、医学的なデータ面からの立証が全くなされていないのです。「殺人現場にいたというだけの理由で、その人が真犯人だと主張しているようなもの」なのです。「前頭葉」を含む脳の機能レベルとその直接のアウトプットとしての症状との関係について、私達が開発した「二段階方式」と呼称する神経心理機能テストのテスト結果に基づいた、3万例を超える脳機能データの解析に基づく私達の見解の概要を次に述べておきますので、参考にしてください。あと2~3年もすれば、東日本大震災の被災地の「高齢者」たちの間に起きてくる事象の「疫学的な証明」によって、この私達の見解が「アルツハイマー型認知症」についての世界標準となると確信しているのです。


&10「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する「生活習慣病」

(1) 世間で認知症の専門家達から原因不明と言われている「アルツハイマー型認知症」は、上述したように、「加齢とともに脳の老化が進む」という(発病の「第一の要件」)と「ナイナイ尽くしの単調な生活の継続」という(発病の「第二の要件」)の二つの条件が同時に充足されることによる『相乗効果』によって、廃用性の加速度的な機能低下を起こしてくることにより発病するのです。

(2) 正常な老化の過程とはいえ、加齢による老化により「前頭葉」の機能が低空飛行状態に入ってきている60歳を超えた高齢者と呼ばれる年代の「お年寄り」(年齢が「第一の要件」)が、脳を積極的には使わない生活、生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや人付きあいもなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々続けていると(単調な生活の継続が「第二の要件」)、出番が少ないために使われることが極端に減った「前頭葉」が廃用性の機能低下を起こしてきて、第一の要件と第二の要件とが重なり合うことの相乗効果により、「前頭葉」を含む脳の老化が加速されていくことになるのです。

(3) 廃用性の機能低下により「前頭葉」の働きが加速度的に衰えていくその先に、「アルツハイマー型認知症」(晩発型アルツハイマー病とも言います)の発病が待っているのです。その場合、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」が最初に異常なレベルに衰えていき次いで、左脳、右脳、運動の脳の順番に異常なレベルに衰えていくのが、「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。

更には、「アルツハイマー型認知症」の場合は、MMSEテストで判定される「11の下位項目」(「左脳及び右脳」の機能に関する項目)の衰え方にも、厳密な規則性があることが重要な特徴なのです(衰えていく脳機能について、明確な順番とそのパターンとが確認されることが、「アルツハイマー型認知症」の特徴)。

(4) 脳全体の司令塔で、置かれている状況を判断したり、何かを思いついたり、計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、各種の高度な働きを担当しているのが「前頭葉」なのです。中でも、意識的に何かの「テーマ」を実行をする場面で、「前頭葉」の各種の機能を発揮する上で不可欠で基礎的な働きをする「認知機能」を正常に発揮するには、一定レベル以上の「認知度」が確保されていることが必要となります。

(5) 脳の機能についての専門家と世間で言われている人達でさえ未だ気づいていないのですが、その「認知度」を左右する機能の三本柱が、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の働きなのです(「前頭葉」の各種機能の発揮度に関わる「機能発揮上の二重構造」の問題)。

認知症の大多数90%以上を占めていて、専門家達からは原因も分からないし治らないし、予防することもできないと言われている「アルツハイマー型認知症」の正体は、加齢による脳の老化という性質(正常老化の性質)が基本に存在するのです。「加齢による脳の老化」という問題が基本にあるからこそ、「アルツハイマー型認知症」は、若者には関係なくて(若年性アルツハイマー型認知症は、側頭葉性健忘症の誤診に因る架空の病気なのであり)、仕事とは無縁の日々の暮らし方となる、『第二の人生』を生きる「60歳代以降のお年寄りだけが発病の対象になる(老年発症が特徴)」のです。


&11 「前頭葉」の諸機能の発揮度と「二重構造」との関係

(1)意識的に何かの「テーマ」を実行する場面では(例えば、外国に単身赴任している夫が、1週間の帰国で、帰省してくる場合の夫婦の過ごし方を計画するというテーマを考えてみてください)、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、理解、興味、発想、企画、計画、創意、工夫、予見、シミュレーション、修正、整理、機転、抑制、忍耐、感動及び判断等、「前頭葉」を構成している各種の高度な機能を発揮する上で不可欠の働きをする「認知機能」を正常に発揮するに際して、一定レベル以上での「認知度」が確保されていることが必要となるのです。

認知度が低いと、「前頭葉」の各種機能自体が必要なレベルで発揮されなくなるからです。その「認知度」の高さ或いは低さを左右しているのが、意欲、注意の集中力と注意の分配力という「三本柱」の機能なのです(「認知度」と「発揮度」とがともに、「三本柱」の機能レベルと「リンク」している)。ところが、この「三本柱」の機能自体に、「加齢と共に老化し衰えていく」という重要な性質があることは、前述したとおりなのです。

(2) 生き甲斐となることも、これといった目標となるものもなく、その上、趣味や遊びや人付きあいを楽しむ機会もなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っていると言うことは、脳の機能面から言うと、「前頭葉」の機能の中でも最も基本的で不可欠な機能であり、「認知度」を左右する働きをしている意欲、注意の集中力と注意の分配力という「三本柱」の機能の出番が極端に少ない生活を送っているということになるのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々送っている中で、もともと加齢により機能が衰えていく性質を持っている「三本柱」の働き(その反映としての「前頭葉」の働き)が、膝の筋肉と同じように、廃用性の機能低下を起こしてきて、更には加速度的に働きが衰えていくのです。

(3)「三本柱」の働きが、廃用性の加速度的な機能低下を起こしていくということは同時に、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、理解、興味、発想、企画、計画、創意、工夫、予見、シミュレーション、修正、整理、機転、抑制、感動及び判断といった「前頭葉」全体の機能の構成要素としての各種の高度な機能の「発揮度」も同時に加速度的に低下していくということなのです(上述した『二重構造」の仕組み』の問題)。「前頭葉」の各種の機能が異常なレベルに低下した下でそのアウトプット自体が、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくるのです。


&12 「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である(「小ボケ」)の症状

(1)「アルツハイマー型認知症」を発病すると、その最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、左脳、右脳及び運動の脳は未だ正常な機能レベルながら司令塔の「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えた「脳全体の機能レベル」のアウトプットとしての症状が発現してきます。

(2) 脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」の基礎的な機能である「三本柱」の機能(意欲、注意集中力及び注意分配力)が異常なレベルに機能低下してきたことにより発現してくる症状(より詳細に説明すると、「三本柱」の機能が異常なレベルに衰えてくることに連動して、「前頭葉」の構成要素としての各種機能の機能発揮度も衰えてくる結果として発現してくる症状)、言い換えると「前頭葉」の機能障害としての認知症の症状について、最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の症状として例示してあるものの中から、いくつか取り上げて、症状を具体的に説明してみることにしましょう。

(3) 高齢者であればだれでも、以下のような症状が確認されるわけではないのです。このような症状が確認される人には必ず、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という「生活習慣」が確認されるものなのです。(但し、下記項目中4つ以上の項目に該当するときは、「二段階方式」のような神経心理機能テストで、「前頭葉」の機能レベルをきちんと調べてもらったほうがいいでしょう。CTやMRIでは、測ることができないので念のため注記しておきます)。

□ 複数のことに注意が分配できなくて、3つの用事が同時にさばけない(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)

□ 機転がきかなくて、状況に応じた創意工夫ができない(「機転及び創意工夫」の機能の機能障害としての症状)

□ 発想が乏しくて、画一的な行動が目立つ(「発想」の機能の機能障害としての症状)

□ 何事をするにも億劫で面倒がり、何かをやってみようという意欲が見られない(「意欲」の機能の機能障害としての症状)

□ 一日や一週間の計画が自分で立てられず、なにも思いつかない様子(「計画」の機能の機能障害としての症状)

□ これまでなら感動していたことに対して感動しない(「感動」の機能の機能障害としての症状)

□ ぼんやりしていることが多く、自分から何もしないが指示されるとできる(「自発性」の機能の機能障害としての症状)

□ 根気が続かず中途半端なことを繰り返し、やりかけの家事が目立つ(「注意集中力」の機能の機能障害としての症状)


 注)本著作物(このブログA-91に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

 エイジングライフ研究所のHPここを「クリック」してください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

老化の物忘れと認知症の物忘れ(廃用性の異常な機能低下に起因した記憶障害)(A-23)

2012-04-04 | 物忘れの正体とそのメカニズム

(1)(夕御飯の支度をしている場面で)冷蔵庫を開けたとたん、「あれっ・・・?」と思って(何を取ろうとしていたのかが、一瞬思い出せないんです)、何を取ろうとしていたんだっけ?)。・・・「あっ! 豆腐だった!」)。

(トントンと2階に上がっていく場面で)部屋のドアを開けたとたん(「あれっ?」と思って)、何をしに来たのかが一瞬思い出せない。(何をしようと思って来たんだっけ・・?)。「あっ! 洗濯ものを取りに来たんだった!」)。   

年をとってきて、こうした「物忘れ」の起きる回数が次第に頻繁になってくると、気になってきます。(年のせいかな・・?)と思いつつも、ちょっと気になることがあるのです。

何が気になるのかというと、「アルツハイマー型認知症」!。「物忘れは、ボケの始まり」とか、昔から言われてきたからです。

その言葉が(貴方の心の隅に)、引っかかるのです!

(2) 記憶は、「記銘」したものを「保持」して、それを「想起」してくると言う経路をたどります。

「はっきりと記憶している」とか、「すっかり忘れてしまった」とかいうことは、どの程度に記銘され、保持され、想起されるのかという個々の要素の機能レベル影響している(個々の要素の相剰効果による)と私たちは考えています。

その中でも、「記銘」するときの記銘度が最も重要だと考えています。

海馬に集められた認知対象の情報を記銘するとき、(記銘度が高いもの)であったなら、その記銘度に応じて「長期」に保存されるし、(記銘度が低いもの)であったなら、その記銘度に応じて「短期」にしか保存されないと考えるのです。

(3)「記銘」する(覚える)ときの「記銘度が高い(よく記銘される)情報は、よく保持」され、よく想起」される(思い出される)と考えるのです。

 このことは、「記銘」した5分後に「想起」できる程度をチェックしてみれば、直ぐに分かります。「記銘度」が高い情報ほど、想起することが容易なのです。

更に、よく「記銘」された(=「記銘度」が高い)情報は、長期に記憶されることになるのです。専門家が言うような、(海馬が「選択(?)」して、短期記憶と長期記憶とに区別している)からなどとは、考えられないのです。

(4)「記銘度」は、記銘するときの状況(前頭葉の三本柱働きの度合い=機能の発揮度)に左右されます。記憶の対象となる認知の対象となる情報を記銘する時、「意欲」が強く作用する内容であり、「注意の集中力」が深く作用する内容であり、「注意の分配力」が大きく作用する(分配の量が多い)内容であれば、「記銘度」が高くなるので、長期に保存され、想起しやすく、結果的に長期記憶」となると考えるのです。

逆の場合は、「記銘度」が低くなるので、短期にしか保存されず、想起し難く、結果的に「短期記憶」となると考えるのです。勿論、繰り返して海馬に送り込まれた同じような内容の情報は、繰り返された回数が多いほど「記銘度」が高くなるので、其の分、より長期に記憶されることになると考えるのです。

(5) 更に付け加えると、私たちのデータによれば、『アルツハイマー型認知症』の発病者である場合は、MMSEの下位項目中、「想起」が最も早くから、『ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続』に起因した『廃用性の加速度的で異常な』機能低下の進行という要因により、衰えていく項目なのです。

そもそも、「記銘」自体が「意欲」、「注意の集中力」、「注意の分配力」という「前頭葉の三本柱」の機能の働き具合に大きく影響を受けます。そして、この三本柱の機能自体もまた「加齢と共に衰えていく」と言う性質を持つのです。このことに関するデータについては、(N―38)で詳しく報告します。そのため、年を取る(加齢の進行)につれて、「覚える」こと(記銘)が難しくなっていき、「思い出す」こと(想起)も難しくなっていくことは、皆さん経験済みのことでしょう。

加齢により衰えていくという両者の性質が、「正常な老化の物忘れ密接な関係があるのです。

※下図は、私たち二段階方式が世界に誇る(加齢の進行に因る『前頭葉』の正常老化の曲線)です。

(6)「前頭葉」(前頭前野の穹窿部に局在する複合機能体を言うものとする。以下、同じ)の三本柱の機能一つに、「注意の分配力」(異なる複数のテーマを同時並行して処理すること)という機能があります。

上述のように、「正常老化の物忘れ」は、「記銘」するときの「記銘度」低くなっていることに原因があります。その「記銘度」は、記銘する時の「注意の分配力」の機能の発揮度(働きの度合い=分配の量)に大きく左右されるのです。

何かのテーマを記銘するとき、同時に心に浮かんでくる他のテーマ(心配事や関心事などの、気になること)に注意がそれていたりすると、肝心のテーマに対する『注意の分配力』の機能の分配量が少なくなり、その分、「記銘度」が低くなってしまうのです。「記銘度」が低くなった結果として、その分、「保持」が難しくなり、「想起」するのが難しくなる(思い出せない)のです。つまりは「忘れる」ことになるのです。

これが、「正常な老化の物忘れ」のメカニズムなのです。前頭葉の三本柱の機能は、正常な機能レベルの範囲内を保ちつつも、加齢とともに働きが衰えていく性質(正常老化の性質)を持っているので(脳の正常な老化の過程でも、機能が衰えていく)、記銘するときに、よほどそのことに集中できていないと(他のテーマに注意がそれていると)、当該記銘対象の内容の記銘度が低くなるのです。その結果として、保持がその分難しくなり、更には、想起がその分難しくなるという訳なのです。そのメカニズムのもとで、年をとるほど、「物忘れ」が増えてくるのです

それが、「正常老化の物忘れ」なのです。

  ここで、一句  「物忘れ、反省と工夫が効けば、年のせい」 By Tad

(7) 『前頭葉』の機能は、自分の置かれている状況を判断し、何をどのようにするかを組み立て対応する働きを持った脳全体の司令塔です。「物忘れ」が増えてきて、心配になったり、日常に支障が出てきたら、「忘れたらいけない、大事なことは、メモする」という習慣を身につければ、良いのです。

アルツハイマー型認知症」を発病すると、『前頭葉』の機能が最初に(真っ先に)異常なレベルに衰えて行きます。 その『前頭葉』の機能が、「正常なレベルにありさえすれば」、自分の置かれている状況(度々物忘れすることで、社会生活や家庭生活の面で、支障が起きる)を判断して、そのことを反省したうえで適切な工夫をする(大事なことはメモをする)ことが出来るはずなのです。これさえ出来るのであれば、物忘れがあっても、「アルツハイマー型認知症の発病の物忘れ」ではなくて、「正常な老化の物忘れ」に過ぎないのです。

(8) 認知症の専門家が言う「アルツハイマー型認知症の物忘れ」とは、私たち二段階方式の区分で言う末期の段階である『大ボケ(重度認知症)』のレベルで起きてくる『極めて重度の記憶障害の症状のこと』を言います。『大ボケ(重度認知症)』のレベルになると、『前頭葉』の機能は、廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行に因り殆ど働くことが出来なくなっているのです。

従って、「状況を適切、的確に判断」することも、ましてや、『反省に基づいた、適切な対応の為の「工夫」をすることもできなくなっている』のです。注意が他にそれていなくても記銘すること自体が満足にできなくなっている為に起きてくるのが、専門家が問題にしている「アルツハイマー型認知症の発病としての物忘れ」なのです。上の一句をいつもあなたの財布に入れておいて、物忘れが気になったら、取り出して安心してください。

追加) 『アルツハイマー型認知症』の発病としての「記憶障害」と『前頭葉を含む脳全体の機能レベル』との関係を説明します。

『大ボケ(重度認知症)』の高齢者の「物忘れの症状(記憶障害)」は、以前、「脳の働き具合と重度認知症との関係」というテーマで報告した脳の働き具合を示す図(N-20)を見てください。重度のアルツハイマー型認知症の人は、前頭葉の機能は殆ど働いておらず、つまり、意欲/注意の集中力/就中、『注意の分配力』の機能が殆ど働いておらず記銘度自体が極めて浅いレベルの記憶なのです。その結果、『直前に食事をしたことも記銘できていないので、思い出せない』のです。

 注)本著作物(このブログA-23に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

  エイジングライフ研究所のHP(ここをクリックしてください)

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする