○ 「アルツハイマー型認知症」は、原因不明で治らない病気というのは、真実なのでしょうか、それとも何か重大な誤り(誤解、或いは見落とし)があるのでしょうか?
世間では(米国を含め世界中で)認知症の専門家達(医師や研究者達)から、「アルツハイマー型認知症」は、発病の原因もわからないし、治すこともできないし、予防することもできないタイプの認知症(「原因不明で、治らない病気」)とされています。本当にそうなのでしょうか?
私のこの「ブログ」を読んでくださっている方ならもうお気づきのように、「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、そもそも「原因不明とか、治すことができないとか、予防することができないと」いう病気ではないのです。診断に際して、「米国精神医学会」が定めている「アルツハイマー型認知症」の診断基準である「DSM-4」の内容を(信じきっていて疑うこともなく)金科玉条として、その診断基準に依拠して診断していることが原因に過ぎないのです。「見つけるのが遅すぎる」、「末期の段階で見つけるので治せない」、今日は、そのことを、具体的な事例を取り上げながら説明します。
我が家の庭では、ブーゲンビリアが盛りです。「DSM-4」の規定の第二の要件として、「失語や失行や失認」のいづれかの症状が確認されないと、「アルツハイマー型認知症」と診断してはならないと規定されているのです。そこで、それらの症状がどのようなもので、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳の機能がどの程度に衰えている時に、その症状を確認することができるのかを簡単に説明しておきましょう。認知症の専門家とされる人達は、様々な程度と態様とで現れてくる「アルツハイマー型認知症」の症状をそれなりに知っていても、症状には脳の機能レベルに対応した症状があるということを知らないのです。「アルツハイマー型認知症」の全ての症状が、「重症度区分」という考えもなしに、「十把一絡げ」に扱われているのです。私たちは、「前頭葉」を含む脳の機能レベルに対応した「小ボケ、中ボケ、大ボケの三つの段階に区分される症状」として指標化しています。「アルツハイマー型認知症」は、私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階で見つけると、治すこと(脳の機能を正常なレベルに回復させること)が容易なのです。「中等度認知症」(中ボケ)の段階で見つけると、治すことが未だ可能なのです。最後の、末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階で見つけたのでは、手遅れ、治すことが困難(出来ない)のです。
私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の症状が発現してくるまでに「前頭葉」を含む脳の機能が衰えてくると(脳の機能レベルが低下してくると)、もはや手遅れ、脳の機能を正常なレベルに回復させることは出来ないのです。そればかりか、「小ボケ」のレベルに回復させることも、「中ボケ」のレベルに回復させることさえも出来なくなるのです。「重度認知症」(大ボケ)のレベルにまで脳の機能が衰えてくると、身体が持つ限り認知症の症状が更に重いものになっていくだけで、大ボケのお年寄りを抱えて「介護」する家族の精神的、肉体的及び経済的な負担がどんどん重くなっていくだけなのです。
もうひとつ大切なことは、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズムから考えてみて、「小ボケ」であれ、「中ボケ」であれ、或いは「大ボケ」であれ、治す(正常な機能レベルに脳の機能を回復させる)ことができる「治療薬」は、ips細胞とか、ワクチンとか、どんな手法を試みようとも、未来永劫開発することはできないのです。世界中の製薬会社が、「アルツハイマー型認知症」の治療薬を開発しようとしのぎを削っていますが、それは研究者達が「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムを理解していないからなのです。「アルツハイマー型認知症」を発病させる原因ではなくて、「アルツハイマー型認知症」を発病したその上に「重度認知症」(大ボケ)の段階にまで症状が進んで、更に「重度認知症」の段階を何年も患っていた結果でしかない「老人斑」や「神経原繊維変化」等が発病の原因と誤解し、「アミロイドベータ」とか「タウタンパク」とかが真犯人と考えて、出口のない迷路にはまり込んでいるだけなのです(ここを「クリック」してください)。
「失語」の症状とは、幼時からの経験によって習得した「言語」の理解と表出とが機能障害された状態に起因する症状を言います。「失語症」は、ほとんどが脳を養う血管の障害が原因で引き起こされます。ところが、脳を養う血管に何等の血管障害がなくても脳の機能が障害される場合が、「アルツハイマー型認知症」の末期段階の症状として確認されるのです。それは、「前頭葉」及び「左脳」の機能が廃用性の異常な機能低下を起こすことが直接の原因なのです。廃用性の機能低下の直接の結果として「前頭葉」を含む脳の機能低下が加速度的に進んでいった最後の段階、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の後半になって、その段階での脳の機能レベルのアウトプットとして、そうした「失語」の症状が発現してくるのです。MMSでは、「命名、復唱、三段階口頭命令、書字命令及び文を書く」の項目がそれらの検査項目となります。これらの項目は、「アルツハイマー型認知症」の場合は、「重度認知症」(「前頭葉」の機能が異常なレベルに在って、且つMMSの総得点の換算値が14点以下)のレベルにある場合で、MMSが7点を切ってくると、そのうちの大半の人達ができなくなるのです(但し、「文を書く」の項目の分岐点はもう少し高い12点のところにあります)。
「失行」の症状とは、「運動可能な状態であるにもかかわらず、合目的々な運動ができない症状」を言い、観念失行、着衣失行及び構成失行の態様が、「重度認知症」の後半になって初めて確認されるようになるのです(こうした重度の症状は、MMSの総得点が一桁の得点になってこないと、発現してくることはない極めて重い症状なのです:例として「二段階方式」30項目問診票の事例から取り上げると、「服を一人では正しく着られず、上着に足を通したりする」等があります)。それは、「前頭葉」及び「運動の脳」の機能が廃用性の異常な機能低下を起こすことが直接の原因なのです。廃用性の機能低下の直接の結果として脳の機能低下が加速度的に進んでいった最後の段階、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の後半になって、その段階での脳の機能レベルのアウトプットとして、そうした「失行の症状」が発現してくるのです。
「失認」の症状とは、ある一つの感覚を介して対象物を認知することができない症状のことを言います。要素的な一次視覚が保たれているにも関わらず、その対象をひとつのまとまりとして把握できないので、提示された物品が何であるのかが理解できない状態なのです。形態の認知が障害されていて、物品の模写ができず、類似した視覚刺激の異同を判定することもできません。それは、「前頭葉」及び「右脳」の機能が廃用性の異常な機能低下を起こすことが直接の原因なのです。廃用性の機能低下の直接の結果として脳の機能低下が加速度的に進んでいった最後の段階、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の後半になって、その段階での脳の機能レベルのアウトプットとして、そうした「失認の症状」が発現してくるのです。「アルツハイマー型認知症」の場合は、「重度認知症」の段階に在って、且つMMSが10点を切ってくると、そのうちの8割の人たちが、「五角形の相貫図」(五角形の一部が交わった平面図)を模写する程度のことさえできなくなります。
上記、「失語、失行及び失認」の概要を知った上で、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルにリンクした、脳の機能レベルの直接のアウト・プットとして私たちが指標化している「アルツハイマー型認知症」の症状を読み比べてみてください(「アルツハイマー型認知症」の症状を「前頭葉」を含む脳の機能レベルと直接リンクさせて、三段階に区分し、指標化している内容については、ここを「クリック」して参照してみてください)。私たちの区分でいう、「重度認知症」の症状(回復させることはもはや困難な、「アルツハイマー型認知症」の末期段階の症状)、その中でも更に後半になってしか発現することが確認されない症状、言い換えると「MMSの換算値が一桁にならないと発現してくることがない」症状が、「アルツハイマー型認知症」であると診断するための要件として世界的に権威があるとされるあの「DSM―4」に規定されているのです(第二の要件)。
こんなに重度の症状、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階の症状の発現を確認できるということは、裏返して言えば、そうした症状の「震源」である脳の働きの具合、「前頭葉」を含む脳の機能レベルは、脳全体の司令塔である「前頭葉」自体が殆ど機能しないレベルに衰えてきている上に、様々な場面でその「前頭葉」と協働している左脳(「失語」の症状が確認される)も運動の脳(「失行」の症状が確認される)も右脳(「失認」の症状が確認される)さえも、その機能レベルが極めて低い状態にあるということを意味しているのです。
ここまで説明したら分かっていただけたでしょうか?「アルツハイマー型認知症」は、治すことができない病気ではないのです。治せる段階がある病気なのに、「DSM-4」の第二の要件とされる重すぎるそれらの症状が原因で(「症状」を発現している震源である「脳の機能」が衰えすぎていることが原因で)、治すことができない病気にされてしまっているだけなのです。もっとわかりやすい言葉で言えば、見つけるのが「遅すぎる」だけなのです。もっと軽い段階(私たちの区分で言う、回復させることが容易な「小ボケ」や回復させることが未だ可能な「中ボケ」の段階)の症状を「第二の要件」に取り入れて規定すべきなのです。それこそが、「早期診断」を可能とし、且つ意味あるものとする必要不可欠の条件なのです。
「早期診断」というのは、本来、その段階で見つけることにより治す(「アルツハイマー型認知症」の場合は、「前頭葉」を含む脳の機能を正常なレベルに回復させる)ことを目的としているはずです。インターネットで検索してみればお分かりのように、いろいろな医療機関が「アルツハイマー型認知症」の「早期診断」を取り上げていて、患者の呼び込みをしています。ところがその中身をよく読んでみると、早期診断により「アルツハイマー型認知症」を見つけて、(回復させる効果はないが、症状の進行を1~2年程度遅らせる効果が期待できるかもしれない)とする「薬」を何種類か服用させるだけなのです。これが、医療の現場で行われている治療の実態なのです。見つけている段階は、失語や失行や失認の症状が確認される「アルツハイマー型認知症」の末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階なのです。この段階で見つけていたのでは遅すぎるのです。早期診断とは名ばかりで、治すことはできないのが診断の実態なのです。
様々な程度と態様とで発現してくる「アルツハイマー型認知症」の症状は、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルのアウトプットに過ぎないのです。「前頭葉の諸機能」の障害すなわち、色々な認知機能を発揮する上での基礎となる三本柱の「意欲、注意集中力及び注意分配力」の機能の障害並びに理解、考察、発想、企画、計画、観察、分析、洞察、推理、予見、シミュレーション、工夫、機転、抑制、忍耐、興味、創造、感動及び判断等の機能の障害、更にそれらに加えて最終的な実行内容を選択する上で不可欠な機能である「評価の物差し」としての評価機能の障害という「各種の前頭葉機能の障害」を基礎として、左脳、右脳及び運動の脳との協働関係による脳全体の機能レベル(機能障害の異常なレベル)のアウトプット自体が「アルツハイマー型認知症の症状」として発現してくることに気づいていないことが最大の問題なのです。
「アルツハイマー型認知症」は、「前頭葉」を含む脳全体としての機能レベル自体が認知症の症状として直接発現してくるのが特徴なのです。従って、「前頭葉」を含むどの脳の機能が異常なレベルに衰えると、どのレベルの認知症の症状が発現してくることになるのかという一定の診断基準を持たないと、正しい診断をすることもできないし、回復させることが可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」の段階)を見つけることもできないのです。
「DSM-4」の内容の改善を目的とするのであれば、最新版の「DSM-5」の規定では、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階にならないと発現してくることがない極めて重度の症状である「失語、失行、失認」という症状を要件として規定している「DSM-4の第二の要件」を削除し、もっと軽い段階を見つけることができるように要件内容を改訂すべきだというのが私たちからの提言です。
○ 「アルツハイマー型認知症」の段階的症状と脳の機能レベルとの関係
私たちは、「ラットの記憶」に関する行動を追ってみたり、「脳の萎縮」の度合いを調べてみたり、重度の認知症患者であった人達の脳の「解剖所見」を追ったりはしていないのです。私たちは、生きている人間の「前頭葉」を含む脳の機能レベルとその直接のアウトプットである「認知症の症状」とを、私たちが開発した「二段階方式」と呼称する「神経心理機能テスト」を活用して、20年以上も精緻なデータを取り続け、且つその成果を「アルツハイマー型認知症」に特化した早期診断と回復及び発病の予防を目的とした「マニュアル」として体系化し(マニュアルA、B及びCの三部作からなり、A4版で、総ページ数590ページの大作です。このほかに、「マニュアル使用の手引き」と脳機能データ管理及び評価ソフトがあります)、1995年以来、市町村での「地域予防活動」としての実践を指導してきているのです。そうしたデータを集積した図が、下記に掲げる(平面図と立体図)なのです。
この図からも分かるように、脳全体の司令塔である「前頭葉」の機能は、正常下限、「小ボケ」、「中ボケ」、更には「大ボケ」のレベルへと脳全体の機能レベルが低下していくにつれて、加速度的にどんどん働きが衰えていく(落ちていく)ことが読み取れるのです。脳全体の機能レベル(働き具合)が衰えていく結果として、次第に症状が重くなっていく(認知症の症状が重症化していく)ことが分かるのです。脳全体の機能レベルを加速度的に衰えさせている原因は、「アミロイド・ベータ」でもなく、「タウ・タンパク」でもなく、「脳の萎縮」でもなくて、使われる機会が極端に少ないがために起きてくる廃用性の機能低下なのです。その意味で、世間の権威ある人達から「原因不明の病気」と言われている「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」だということが私たちの研究と実践指導とにより分かってきたのです。
生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない生活、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を繰り返すだけの日々の生活では、使われる機会が極端に少ないが為に出番をなくした「前頭葉」を含む脳の機能が異常な機能低下を加速度的に起こしてくるのです。このことは私たち以外には誰も(認知症のどの専門家も)未だ気づいていないことなのですが、「アルツハイマー型認知症」の場合には、脳の機能に衰えていく順番があることが、私たちが開発した「二段階方式」の神経心理機能テストの3万例を超えるテスト結果データの解析から明確に確認されているのです。つまり、廃用性の機能低下が発病の原因である「アルツハイマー型認知症」の場合には、脳全体の司令塔である「前頭葉」が、最初に異常な機能低下を示すのです。次いで、MMSで計測される「左脳及び右脳」の機能項目について、「規則性」の存在というべきレベルでの「機能が衰えていく項目の順番」が明確に確認されるのです。
「アミロイド・ベータ」とか、「タウ・タンパク」とか、「脳の萎縮」とかが「アルツハイマー型認知症」発病の原因だと考えている認知症の専門家達は、この「規則性の存在」についてどう説明できると言うのでしょうか。私たちは、基礎となる脳機能データが極めて精緻なものであり、且つ極めて多数であることから、廃用性の機能低下が「アルツハイマー型認知症」発病の原因であるからこそ、上述したような、「脳機能低下」の順番があるのだと確信を持って主張しているのです。
度々このブログの中で言及し問題提起してきたように、私たちの主張(見解)が正しいことを疫学的に証明してくれることになるのが、「東日本大震災」の被災地の高齢者達に起きてくる、極めて高率で極めて多数の「アルツハイマー型認知症」の患者の発生と症状の重症化の進展という事実なのです。但し、世間では、上述したように、「DSM-4」に規定されている「失語や失行や失認」といった「重度認知症」(大ボケ)の段階でも後半にならないと発現してこない極めて重度の症状の確認を要件としているが為に、「小ボケ」や「中ボケ」の段階で発現して来ている症状を「アルツハイマー型認知症」の症状とは考えないで、「不活発病」とか「老化現象」などと命名し、或いは誤解して見落としているのです。くり返し指摘しているように、「小ボケ」の段階で見つけると回復させることが「容易」であり、「中ボケ」の段階で見つけると回復させることは「未だ可能」であるが家族も本人も大変な努力が必要となり、「大ボケ」の段階で見つけると回復させることはもはや「困難」になるのです。
震災が発生してから2年と4ヶ月が経過した現在、極めて多人数の「小ボケ」や「中ボケ」の人達が既に発生しているはずなのです。この先2~3年が経過すると、その人たちの症状が更に進んできて、「中ボケ」や「大ボケ」の段階の症状を示すことになるのです。その時になって初めて、認知症の専門家達が大騒ぎすることになると思うのですが、「大ボケ」の段階にまで進行させてしまっては、「回復」への道はもはや閉ざされてしまい、「介護」の道だけが残されてしまうことになるのです(「アルツハイマー型認知症」の症状の進行期間については、ここを「クリック」してください)。
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機能からみた認知症の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)
http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/95c2a476097fda6da8f4056b0d03e5ad