認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症と「脳の機能レベル」との関係Q/ARoom(A-63)

2012-10-11 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 認知症の大多数90%以上を占める「アルツハイマー型認知症」は、「脳の働き自体」が廃用性の機能低下により衰えてきた結果として、その「機能レベル」「症状」として直接発現してくる(「脳の機能レベル」(原因)と「症状」(結果)との間に直接の因果関係がある)ものという考え方が提案されています。この説は、脳の「働き具合」が、或る一定のレベル以下の段階になってくると、「その働き具合そのものが、アルツハイマー型認知症の症状として出てくる」という考え方を提起しているのです。東日本大震災の被災地の高齢者が大量に「アルツハイマー型認知症」を発病したり、症状が急激に進行していること等から、この説が最近注目されるようになってきていると聞きます。「脳の衰え方の特徴とそのメカニズム」について、私達素人にもわかるように、概要を説明して欲しいのですが。

            

 衰えると知りつつも、惰眠をむさぼる今日の我が身かな

     趣味なく交遊なく、生き甲斐も目標もなし

A: (撰 「蚊仙連歌集」より) 認知症の大多数、90%以上を占める「アルツハイマー型認知症」は、日常の生活で何かの「テーマ」を実行しようとするとき、脳がちゃんと働かない(正常レベルで機能しない)ことがそのまま、認知症の「症状」として出てくるのです。脳の働き具合(脳の機能レベル)のアウトプットそれ自体が、認知症の「症状」となって発現しているので、三段階に区分される「脳の機能レベル」の衰えの進行に付随して、その機能レベルの衰えに合致した三段階に区分される「症状」が発現してくるのです。(ここを「クリック」してください

 ここで、最初に理解して欲しいのは、私たちが意識的に何かの「テーマ」を実行するときの、「脳の働き方」の仕組みです。脳の働き方の仕組みは、「脳が壊れた人」をたくさん調べると、その概要が分かります。脳は場所によって働きが異なり、「機能の分担をしている」ことが分かるのです。

「運動の脳」の左の部分が壊れると、右半身麻痺になり、右の部分が壊れると、左半身麻痺になります。「運動の脳」が、身体を動かしているのです。

「左脳」が壊れると、言葉が出てこなくなり、計算が出来なくなり、論理を操れなくなります。「左脳」は言葉の脳とも言われ、言葉や計算や論理や場合分け等、(デジタル情報の処理)を担当しているのです。

「右脳」が壊れると、色や形や音や空間や感情等の認知が難しくなります。「右脳」は感性の脳とも言われ、色や形や音や空間の認知や感情等(アナログ情報の処理)を担当しているのです。

額のところにある「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)は、脳の最高次の機能です。運動の脳、左脳、右脳を統括し、「脳全体の司令塔の役割」をしています。

           

「左脳」が「デジタルな情報の処理」を実行するときも、「右脳」が「アナログな情報の処理」を実行するときも、「運動の脳」が「身体を動かす」ときも、三頭立ての馬車(左脳、右脳、運動の脳の三頭の馬)の御者の役割をしている「前頭葉」の指示なしには、勝手には働かない仕組みになっているのです。三頭の馬のどれかが働くときには、必ず「前頭葉」からの指示があるのです。言い換えると、「前頭葉」自体(三頭の馬を主導しつつ、同時に協働して)働くというのが、「意識的な行為」下で人間の脳が働くときのメカニズムなのです。

 ところで、脳の司令塔の役割を担う「前頭葉」にはいろいろな機能があります。その「諸機能」とは、発想、創意、企画、構成、計画、観察、分析、理解、把握、考察、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、忍耐、工夫、修正、整理、機転、興味、創造、感動、判断及び決断等の認知機能(A)、色々な認知機能を発揮する上での「機能発揮度」の基礎となる「三本柱」の「意欲」、「注意集中」及び「注意分配」の機能(B)並びに最終的な実行内容を選択し決定する上で不可欠な機能である「評価の物差し」としての評価の機能(C)などです。

            

「脳を使う」ということは、私たちが意識的に何かの「テーマ」を実行することを意味します。意識的に何かの「テーマ」を実行する際の「脳の機能レベル」(働き具合)を考えるには、「前頭葉」の(A)、(B)及び(C)の機能が常に協同し、「左脳」、「右脳」及び「運動の脳」をコントロールしながら、働いていることに注意を向ける必要があります。脳の機能レベルが「症状」として発現してくる程度或いは態様は、(Bに下支えられたA及びCの働き具合)としての「前頭葉」の各認知機能と「高次機能」の各々との協働による「相乗効果」としての機能レベルに起因しているものだからです。「脳の機能レベル」が正常であれば、そのアウトプットは適切或いは的確な「言動」となり、「脳の機能レベル」が異常であれば、そのアウトプットは不適切或いは異常な「言動」(すなわち、症状)となるのです。

「前頭葉」の三本柱である意欲、注意の集中と注意の分配の機能(B)と前頭葉の各認知機能(A)との関わり方について、ここで分かりやすい例を挙げて説明しましょう。自分が好きで興味が湧くとか、自分が重要だと考えるような「テーマ」であれば、(B)の機能の発揮度が高くなり、結果として(A)の機能の発揮度が高くなるという関係にあるのです。

           

[ケース1] 18歳になる勉強嫌いの「ヒロシ」は、国語と数学が大の苦手です。ところが、オートバイにのりたくてしょうがないので、食事のことも時間の経つのも忘れて必死で勉強して、免許を取ったのです。食事のことも時間の経つのも忘れて必死で勉強していた時間を、脳の機能面から分析すると、前頭葉の「三本柱」のうちの「意欲」と「注意の集中力」と「注意の分配力」とが最大限に働いて、テキストに書いてある内容の「理解」と「整理」と「記憶」の能力を最大限に発揮させていたと言うことなのです。「前頭葉」の機能である(A)及び(C)の各々の機能を発揮する上で、その発揮度(発揮される機能レベル)自体が、そもそも「三本柱」の機能(B)の機能レベル(働き具合)に左右される関係にある(下支えられるという二重構造「層構造」のメカニズムになっている)ということなのです。

[ケース2] 例えば、大事なお友達を家にお呼びして、手料理でもてなす場合(テーマの発想)を考えてみてください。もてなす内容やもてなし方をあれこれ考えるとき(食事内容の計画)に、少しでも喜んでもらえるようなものにしよう(工夫)と「意欲」が湧いてくるでしょう。食事や食後の飲み物等どのようなものにするかを考えるとき(シミュレーション)にも、「注意の集中力」が注がれるでしょう。もてなしている最中にも、話の流れや相手の表情や態度などに気配り(観察、理解、機転)して、「注意の分配力」がよく働くと思いませんか。

「三本柱」の機能が正常レベルであれば上述したような行動がとれるし、逆に、機能が異常なレベルであれば何も対応できなくなるのです。そうした「前頭葉」を含む脳の機能が、正常レベルで働かなくなって、「社会生活」や「家庭生活」や「セルフケア」に段階的に支障が出てくるようになるのが「アルツハイマー型認知症」なのです。

           

上記の流れが理解されたところで、私たちがもう1つの問題を提起するのは、(A)及び(C)の機能レベル(「認知機能の発揮度」、言い換えると「認知度」)を左右する「意欲」、「注意集中力」及び「注意分配力」の三本柱の機能には、加齢とともに働きが衰えていくという性質があるということなのです。正常な老化の場合でも、高齢者と呼ばれる年代の65歳頃になると誰でも、その働き具合が20歳の頃に比べて半分程度にまで衰えていくのです(加齢による三本柱の「正常老化」)。そして、加齢による前頭葉の三本柱の「正常老化」のカーブは、下図に示す通り、70歳代、80歳代、90歳代と年をとるにつれて、直線的ではあるが緩やかに「低空飛行」の状態に入っていくのが特徴なのです。

 「三本柱」の機能(Bが加齢により衰えていくことは、とりもなおさず、前頭葉の(A)や(C)の機能の発揮度自体も加齢と共に低下していくということを意味することになるのです。前頭葉の(A)や(C)の機能の発揮度は、「三本柱」の機能に下支えされる「二重構造/層構造」のメカニズムになっているからです。「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムを理解するには、まず、この問題を理解しておくことが不可欠となるのです。世間では、アルツハイマー型認知症発病の原因は未だに分からないとされています。高齢者と呼ばれる年代の60代になってからアルツハイマー型認知症を発病するお年寄りが現れるようになり、70代80代90代と年をとるにつれて、このタイプの認知症を発病するお年寄りの割合が大幅に増えていく理由がここに示されているのです(「第一の要件」)。

参考までに、「三本柱の機能」が、加齢とともに老化していくデータを下図に示しておきます。  

       ○ 前頭葉の「三本柱」の「正常老化」による老化のカーブ

                

 私達が意識的に何らかの「テーマ」を実行しようとするとき、最高次機能の「前頭葉」は、「左脳」、「右脳」、「運動の脳」の各部と協働し、且つそれらを主導しながら:

○自分のおかれている状況を判断し(「状況の判断」);

○目的となるテーマとその内容を構想、企画し(「テーマと内容の構想」);

○テーマ内容を実行する手順を計画し(「実行手順の計画」);

○実行結果をシミュレーションし(「実行結果の予測」);

○結果の予測に基づく必要な修正を施し(「テーマとその内容の修正」);

○構想から実行に至る全体の構成を保持し(「構成の保持」);

○結果に向けた実行を決断し(「決断」);

○脳の各部に、実行の指令を出す(「指令」);

という一連の作業を「同時並行」して、且つ「重層的」に行います。

意識的に何かの「テーマ」を実行するときの「前頭葉の機能レベル」は、「三本柱の機能(B)、前頭葉の各認知機能(A)及び評価の物差しとしての「評価機能」(C)のそれぞれが、加齢に伴う「正常老化による機能低下」と使われる機会が極端に少ないことに伴う「廃用性の機能低下」との相乗効果による、総合体としての或る一定の「機能レベル」を構成し、「三段階」に区分されるのです。その「機能レベル」の直接のアウトプットが「アルツハイマー型認知症」の「症状」として、発現してきているのです。

       

「正常な老化」の過程とはいえ、「加齢」による老化により「前頭葉」の機能が低空飛行状態に入ってきている60歳を超えた高齢者と呼ばれる年代の「お年寄り」「第一の要件」の充足)が、何かを「キッカケ」にして、生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや人付きあいもなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々続けていると(「第二の要件」の充足)、出番が少ないために使われることが極端に減った「前頭葉」廃用性の機能低下(使われる機会が極端に少ないことにより、機能が衰えて行くこと)を起こしてきて、第一の要件と第二の要件とが重なり合うことの相乗効果により、「前頭葉」の機能の老化が加速されていくのです。老化が加速されて衰えた機能のアウトプットが、「症状」となって発現してくるということなのです。つまり、「前頭葉」の働きが加速度的に衰えていくその先に、「アルツハイマー型認知症」(晩発型アルツハイマー病)の発病が待っているということなのです。(注)第一の要件と第二の要件との相乗効果により廃用性の機能低下が進むときは、下図に示す通り、直線的ではなくて放物線を描いて加速度的」に脳の機能が衰えていくのが、「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。 

                      

その場合に、最高次機能の「前頭葉」が最初に異常なレベルに衰えていき、次いで、高次機能の左脳や右脳が異常なレベルに衰えていきます。ここで、(N-16) (N-18) (N-20)をクリックして読み返してみてください。更には、「アルツハイマー型認知症」の場合には、「左脳および右脳」の機能の衰え方にも規則性がある(「衰えていく順番がある」)ことが重要な特徴です。前頭葉と左脳および右脳の機能のそれぞれの衰え方が、他の種類の認知症あるいは認知症と紛らわしい病気(側頭葉性健忘症、感覚性失語症、一過性全健忘、老年期うつ病、緩徐進行性失行など)との鑑別の上で、極めて重要且つ客観的な指標としての役割を果たしてくれるのです。

kinukototadaoからの説明) 生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや人付きあいもなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っていると言うことは、脳の機能面から言うと、前頭葉の機能の中でも最も基本的で不可欠な機能であり、「認知度」を左右する働きをしている「三本柱」の出番が極端に減る生活を送っているということになるのです。言い換えると、もともと加齢により機能が衰えていく性質を持っている三本柱の働きが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っている中で、脚の筋肉と同じように、「廃用性の加速度的な機能低下」を起こしてくるのです。

(注)前頭葉の機能だけが異常レベルであって、左脳も右脳も機能が未だ正常レベルである「小ボケ」(指示待ち人)の段階で発現してくる「小ボケ」の症状は、この三本柱の機能低下のアウト・プットそのものなのです。「アルツハイマー型認知症」の初期症状である「小ボケ」の症状は、ここ(N-17)をクリックして読み返してみてください。

「小ボケ」の症状から例示して説明してみましょう。「意欲」が異常なレベルに衰えてきた結果としての症状が、(何事をするにも億劫で面倒がり、何かをやってみようという意欲が見られない)であり;「注意の集中力」が異常なレベルに衰えてきた結果としての症状が、(根気が続かず、中途半端なことを繰り返し、やりかけの家事が目立つ)であり;「注意の分配力」が異常なレベルに衰えてきた結果としての症状が(複数のことに注意が分配できなくて、3つの用事が同時にさばけない)なのです。

      

  世間で全ての専門家たちから原因不明と言われている「アルツハイマー型認知症」は、上述したように、「加齢とともに脳の老化が進む」という(「第一の要件」)と「ナイナイ尽くしの単調な生活の継続」という(「第二の要件」)の二つの条件ガ充足される時その「相乗効果」によって、廃用性の加速度的な機能低下(脳の老化が更に「加速」されること)により、発病してくるというのが私たちの見解です。その根拠となるデータについては、(N-34)で詳しく報告してあります。

このメカニズムのもとでは、「第一の要件」は誰しも共通であって、「第二の要件」こそが「アルツハイマー型認知症」を発病するかしないかを決定づける条件となります。言い換えると、認知症の大多数90%以上を占める「アルツハイマー型認知症」は、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という、第二の人生での「生活習慣」(日々の脳の使い方)と不可分の関係がある病気なのです。「原因も分からないし治せない病気」と言われて放置されたままになっている「アルツハイマー型認知症」という病気は、廃用症候群に属する「生活習慣病」であるというのが私たちの見解です。

       

(注)ナイナイ尽くしの単調な生活とは、目標や喜びや生き甲斐もない生活、趣味や遊びや人付き合いもなく運動もしない生活のこと。

(注)キッカケの発生により、喜びや生きがいが得られる源になっていた生活を継続していけなくなります。その結果、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるのです。単調な生活に変化すると、いろんなことを発想して計画を立てたり、やりかたを工夫してみたり、結果を見通して修正したりするのに不可欠の前頭葉の「三本柱」が次第に機能しなくなっていくのです。「前頭葉」の機能が異常なレベルに衰えて行くにつれて、喜びを感じたり、なにかに感動することもなくなっていくのです。毎日の脳の使い方(生活習慣)が大きく変化して、脳の司令塔としての「前頭葉」の出番が極端に少なくなり、機能が加速度的に衰えて行くのです。

注)本著作物(このブログA-63に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

 エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/95c2a476097fda6da8f4056b0d03e5ad

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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アルツハイマー型認知症の最初の段階と「不活発病」Q/A Room(A-62)

2012-10-04 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 世界に先駆けて「超高齢化社会」を達成した喜びとは裏腹に、我が国では、認知症のお年寄りの数が300万人もいるそうです。この先高齢化が更に進展していく中で、認知症のお年寄りの数も増え続けていくと予想されているようです。認知症の人数の大多数90%以上を占めるとされる「アルツハイマー型認知症」は、原因もわからないし、治すこともできない病気と聞いています。打開策がないまま「少子化」が進む中での「高齢化」も予想以上の速さで進展しているようですね。この先どうなるのか、(1000兆円を超えるとされる巨額の累積債務の問題とも併せて)、子や孫たちのことを考えると、我が国の将来がとても心配です。

     

  夢もなければ、希望ももてない我が国の明日

     意欲もなければ、することもない我が身の今日

       時の流れに身を任せ、脳の老化が進んでいくだけ

A: (撰者 斉藤藻吉の講評) 厚生労働省がこの8月に発表したところによると、これまで200万人と予測されていた認知症の末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)のお年寄りの数が一気に100万人も激増して、300万人にも達しているのです。このブログは、いろんな種類に分けられる認知症の人数の大多数、90%以上を占めていて、「原因もわからないし、治すことも出来ない」とされている「アルツハイマー型認知症」について、出来るだけ分かりやすく世の中に、(特に、東日本大震災を被災された高齢者と地域予防活動の担い手となる市町村の保健師さん達に)知らせたいとの思いから、根拠となるデータの開示を含め、私たちが開発した「二段階方式」の考え方の概要を公開しています。

「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズム、早期発見と認知症からの「回復」、症状の「進行の抑制」と適切な介護の在りかた、そして個人及び地域単位での「予防」の仕方がテーマです。マニュアル化され、システム化された「二段階方式」と呼ばれるそのシステムの使用は、有償となっていますが、(契約の対象は、市町村の健康・保健・福祉課など、在宅介護支援センター、地域包括支援センター、医療機関、介護施設事業者及びNPO法人に限定されています)このブログの中で、その考え方の概要を逐次みなさんに公開していく「手技」は、非公開ですものです。

     

 「アルツハイマー型認知症」発病の原因について、末期の段階でしか認知症であるか否かの判定が困難な方法である脳の萎縮を基準に考える説や、原因ではなくて結果を示しているに過ぎないアミロイドベータやタウタンパクによる老人斑の生成や神経原線維変化による神経細胞の脱落等を原因と考える「仮説」などが、専門家と呼ばれる人たちの間では主流です。脳の働きと言う物差しを使い、「脳の機能データと症状をリンク」させて解析し、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズムを突き止め、認知症の有無や段階を判定し、或いは早期診断による「回復」と生活習慣の改善による「予防」を提案する私達の考えは、世間一般のアプローチと比べて、根本的に異なるものです。

 エイジングライフ研究所では、独自に開発した「二段階方式」と呼ばれる脳の働き具合とそのアウトプットである症状をリンクさせて判定する方法により、アルツハイマー型認知症」の早期診断と「回復」及び「予防」を目的とする「地域予防活動」を17年間に亘って440を超える市町村で実践する中で、極めて多数のデータを蓄積してきました。私達がこの3月に予告し警告してきたように、東日本大震災の被災地の高齢者たちの間に、驚くほど高率で大量に「アルツハイマー型認知症」が発症してきていることにより、これまで主流とされてきた学説の「根拠」が根底から覆され、「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズム、早期診断と「回復」及び「生活習慣」の改善による発病の「予防」についての私達の考え方が、「疫学的に証明される」こととなって、世界の主流となる日は近いと考えています。(ここを「クリック」してください

     

kinukototadao からの説明) ところで最近、「不活発病」という名称を冠された「病気」がマスコミでしばしば取り上げられるようになってきているのをご存知でしょうか。東日本大震災の被災地の高齢者の間に、流行しているとの報道が増えてきているのです。「前頭葉」を含む「脳の働き具合」を神経心理機能テストその他の方法で調べることもなく、「症状」だけから判定し、「不活発病」と言う名称を冠されて取り上げられているその病気は、実は、お年寄りの皆さんが最も恐れている、あの「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)のことなのです。このことについて、このブログで世の中(研究者とマスコミ)に注意を喚起しておきたいと思います。(ここを「クリック」してください) 

 認知症の専門家たちから、原因不明の病気とされている「アルツハイマー型認知症」は、廃用性の機能低下により加速度的に衰えた脳の働き具合(機能レベル)のアウトプットが「症状」として発現してくるものなのです。その最初の段階が、「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)の機能だけが異常なレベルに衰えてきている「軽度認知症」(小ボケ)なのです。この段階で発現する「症状」は、理解、考察、発想、創意、企画、計画、観察、分析、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、忍耐、工夫、修正、機転、興味、創造、感動、判断及び決断等の高度な「前頭葉」の諸機能(B)の発揮度(C)を下支えし、支配(「二重構造/層構造」)する「三本柱」の機能(A)である、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」が異常なレベルに衰えたことに起因する「軽度」の機能障害の症状だけなのです。{C=A×B}

「不活発病」のレッテルを貼られたお年寄りたちに、「二段階方式」による神経心理機能テストを実施して、「前頭葉」を含む脳の働き具合(脳の機能レベル)を判定すれば、(「高次機能」は正常なレベルにあって、最高次の「前頭葉」の機能だけが異常なレベルに衰えている)ことが容易に分かるはずなのです。参考までに、「軽度認知症」(小ボケ)の「症状」を載せておきますので、読んで比べてみてください。両者の特徴とされる「症状」が一致していることが、分かるはずです。(ここを「クリック」してください)。

       

 このブログで何度も指摘しているように、認知症の専門家たちは、「DSM-4」という米国精神医学会の誤った診断基準に基づいた診断を行うのです。その基準は、末期段階にならないと発現してこない、「重度の記憶障害」(第一の要件)と(失語、失行又は失認)という「重度の症状」(第二の要件)が共に確認されるようにならないと、「アルツハイマー型式認知症」であるとは、診断してはならないとされているのです。そのため、回復容易な「軽度認知症」(小ボケ)も回復可能な「中等度認知症」(中ボケ)も、見落とされ放置され、末期段階の回復が困難な「重度認知症」だけが取り上げられているのです。 

 早期の段階で見つければ、脳のリハビリ(脳の使い方としての「生活習慣」の改善)で回復が容易又は可能であるのに、この段階は「不活発病」や「老化現象」の名前を張られるだけで、見過ごされ、放置されたままなのです。「不活発病」のレッテルを貼られている症状が、アルツハイマー型認知症の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階の症状(回復容易)であり、「老化現象」と混同されているのが「中等度認知症」(中ボケ)の段階の症状(回復可能)であり、原因も分からないし治らない介護の対象とされているのが末期の段階の「重度認知症」(大ボケ)の症状(回復困難)なのです。(ここを「クリック」してください

             

(コーヒー・ブレイク-その1) 日本では、若年での発症が特徴の「狭義のアルツハイマー病」(「若年性アルツハイマー病」とも言います)と老年での発症が特徴の「アルツハイマー型認知症」とをまとめて「アルツハイマー病」と総称する人が多いのですが、これは誤解を生むものです。若年性アルツハイマー病(狭義のアルツハイマー病)は、「アルツハイマー型認知症」とは性質が根本的に異なるものなのです。

 「狭義のアルツハイマー病」は、特定の遺伝子に生まれつき異常が認められる人にしか認知症の症状が発症してこないのです。しかも、発病する年齢は、早いと30代で遅くても50代どまりなのです。そして、発病後に症状が進行する速さも、「アルツハイマー型認知症」の場合の症状の進行度合いとは全く異なる、比べ物にならない速さで進行するのです。

そのうえ、現在の医療レベルでは、症状の進行を抑制する方法も、症状を回復させる方法もありません。認知症全体に占める割合も、老年での発症を特徴とする「アルツハイマー型認知症」が90%を超えるのに対し、若年での発症を特徴とする狭義の「若年性アルツハイマー病」は1%程度なのです。

       

(コーヒー・ブレイクーその2) 最後にもう一度:東日本大震災を被災した高齢者達が他のどの地域の高齢者とも比較にならないほどの高い割合で、且つ大量に「アルツハイマー型認知症」を発病してくること(「小ボケ」)及びその症状が進んでいくこと(「小ボケ」→「中ボケ」→「大ボケ」)を予告し、警告しておきたいと思います。そうすれば、「原因不明で治らない病気である」とか、「脳の萎縮が原因である」とか、「アミロイドベータやタウ蛋白による神経線維の脱落等が原因である」とか、専門家と言われている人達の見解が全て誤ったものであることが、疫学的に証明されることとなり、世の中の考えを変える契機ともなることでしょう。 

(まとめ) 「アルツハイマー型認知症」は、一言で言えば、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」に過ぎないのです。廃用性の機能低下(使われる機会が極端に少ないために、働きが衰えて行く)により、何年もかけて「脳の機能」が徐々に衰えていく結果として、徐々に、段階的に「症状」が進んでいくのが特徴なのです。正常者が発病して「小ボケ」となり、「小ボケ」の症状が進んで「中ボケ」となり、「中ボケ」の症状が進んで「大ボケ」となるのです。世の中で認知症の専門家と言われている人たちは、「DSM-4」の規定を金科玉条として信奉しているので、末期の段階である「大ボケ」の段階になって初めて「アルツハイマー型認知症」だと騒ぎ出すのです。「大ボケ」(重度認知症)の段階にまで進んでしまうと、(脳の機能低下が進んだ結果として症状が出てきているので)、この段階で見つけても、回復は困難なのです。この段階で見つけていたのでは、せっかく見つけても手遅れ、レッテルを張るだけであって見つける意味がないのです。(ここを「クリック」してください

注)本著作物(このブログA-62に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

     エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

  脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)


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アルツハイマー型認知症の予防を国民的な課題に Q/A Room(A-61)

2012-09-27 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 「働き盛りの若い年代で、認知症が増えている」のタイトルに惹かれ、報道番組を見ました。認知症と診断された3人の方が、家族と一緒に出演していました。その中の一人、50代の方がとても印象に残りました。「アルツハイマー型認知症」として紹介されたその方の話し振りと話の筋が、説得力があるのに驚きました。時には涙を流しながら、物忘れによる職場や家庭での失敗体験を語るのです。「アルツハイマー型認知症」の義父を何年も介護した経験がある私には、理解も納得もできない報道内容でした。

            

A:    長生きすれば!

          するほど増える認知症

                    人生60年の昔ぞ今は恋しき

(撰者 山上小暗の講評)

 あなたが驚いたのも、納得できないのも無理はありません。その方は、「アルツハイマー型認知症」ではなくて、「側頭葉性健忘症」なのです。高度の「物忘れの症状」を呈するので、専門家も認知症とよく間違えるのです。「アルツハイマー型認知症」であれば、必ず最初に異常なレベルに働きが衰えるのが「前頭葉」であり、それが必須の要件でもあるので、明確に鑑別が出来るのです。この人の場合は、神経心理機能テスト「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳の機能レベルを精査してみれば、高度の「記銘力障害」が認められるだけで、「前頭葉」機能も大脳後半領域の機能も共に正常範囲に保たれていることがわかるはずなのです。更に、表情が非常に豊かで、動作も機敏で、状況や目的に沿った言動がきちんと取れることが、「アルツハイマー型認知症」とは根本的に異なる大きな特徴なのです。

ところで、世間で専門家と言われる人達が「アルツハイマー型認知症」と診断するレベルは、私達の区分でいう末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)の段階なのです。(大ボケ)の症状を列記してありますので、(ここを「クリック」して)比較してみてください。

             

「アルツハイマー型認知症」(「大ボケ」の段階)の場合は、司令塔である「前頭葉」の機能がほとんど機能しないレベルに低下している為、状況の理解も判断も殆どできなくなっています。その為、頻発する高度な「記憶障害」の状況に対して、切実な問題としての認識や理解自体ができないので、本人が的確に説明することもできないのです。(ここをクリックしてください

「側頭葉性健忘症」の場合は、前頭葉が正常レベルにあるので、高度な「記銘力障害」の症状が出てきている状況に対して、切実な問題としての認識があり、「物忘れをして困る」との本人自身の訴えがとても切実で、切迫感を持っているのが特徴です。

 「側頭葉性健忘症」の発症年齢が働き盛りの40歳代から60歳代に多いのに対し、「アルツハイマー型認知症」の発症年齢は60歳代以降の高齢者が対象で、70歳代、80歳代と高齢になるほど発症率が高くなるのが特徴なのです。

タイトルがショッキングなために、高い視聴率を獲得するのだと思いますが、50歳代での「アルツハイマー型認知症」の発症例は極めてまれなのです。実態数からすれば、取り上げるほどのテーマではないのです。世間で認知症の専門家と言われる人達でさえ、50歳代で発症する対象者の数自体が極めてまれなことさえ知らないのが実情なのです。このテレビ局が何を目的に何度もこのようなタイトルで報道するのか、その意図が理解できません。その上、「アルツハイマー型認知症」でない症例を間違えて紹介する過ちまで犯しているのです。ここを「クリック」してください:注1と2を参照)。

            

世界に先駆けて、誰でもが80歳や90歳まで生きる「超高齢化社会」を実現した我が国では、それと裏腹の現象として、厚生労働省の予測にも見るとおり、「アルツハイマー型認知症」のお年寄りの数が、どんどん増えてきています。

この先全国的に高齢化が更に進んでいき、それに連れて「アルツハイマー型認知症」のお年寄りの数が更に加速度的に増加していくと予想されています。現在300万人と報告されている認知症のお年寄りの数は(従来の予測値200万人が、8月の発表で300万人に大幅に増加修正されました)、私達の区分で言う末期段階の「重度認知症」(回復困難な大ボケ)のレベルの人達だけの数なのです。認知症の軽度な段階であることが見落とされ放置されている「軽度認知症」(回復容易な小ボケ)と「中等度認知症」(回復可能な中ボケ)とを合わせた数は、「重度認知症」(回復困難な大ボケ)の数の4倍にもなるのです。「大ボケ」の予備軍が、1200万人もいるのです。

ところで、認知症にもいろんな種類があるのですが、「アルツハイマー型認知症」が認知症の大多数、90%以上を占めているのです。二番目に多い「脳血管性認知症」は、脳卒中等の既往さえあれば「脳血管性認知症」と診断されている実態があります。実は、それらの大半は、「脳血管性認知症」ではなくて、「アルツハイマー型認知症」なのです(ここを「クリック」してください)。そのほかの認知症は、種類は多いのですが、全体に占める比率は極めて小さいのです。認知症の大多数を占めている「アルツハイマー型認知症」こそ、国民的な課題として、早期診断による「回復」と生活習慣の改善による「予防」と言うテーマに取り組むべき認知症なのです。

             

「アルツハイマー型認知症」は、「身体がもつのに脳がもたない」のが特徴の病気なので、「不活発病」とか「老化現象」というレッテルだけ貼られて放置されていると、「小ボケ」は「中ボケ」に、「中ボケ」は「大ボケ」に、次第に「症状」(段階)が進んでいきます。皆さんも、ただ単に怖がるだけでなくて、「アルツハイマー型認知症」に対する正しい知識を持って、適切な対応をしていただきたいと思います。

「アルツハイマー型認知症」は、認知症全体の90%以上を占めているのです。「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する「生活習慣病」なのです。「アルツハイマー型認知症」は、早期発見により「小ボケ」や「中ボケ」の段階で見つけることが出来れば正常レベルに「回復」させる(治す)ことが出来るのです。「アルツハイマー型認知症」は、脳を活性化する「生活習慣」を日常生活に取り入れることにより「予防」することもできるのです。

 認知症の診断に携わる精神科医達は、米国精神医学会の規定であるDSM-4の規定を疑いもしないのです。「重度の記憶障害」(第一要件)及び「失語」、「失行」又は「失認」(第二要件)という末期段階にならないと発現することがない「重度の症状」を要件として診断するという誤った「診断基準」を金科玉条としているのです。その結果、「重度認知症」(大ボケ)の段階しか見つけてこなかった精神科医の誤解が原因で、「アルツハイマー型認知症」は原因不明で治らない病気だという誤った知識が、日本全国津々浦々にまで浸透してしまっているのです。

               

早期発見(「小ボケ」及び「中ボケ」の段階)による「回復」も、脳の使い方としての生活習慣の改善による「予防」も可能な普通の病気(廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」)なのに、誤解が幅を利かせている状況が放置されて、何らの対応も対策もとられていないのです。現状のまま放置して手をこまねいていると、高齢化の進展に付随して、今後増え続けることが予想されている「アルツハイマー型認知症」のお年寄り達に対する「介護保険」の適用は、費用面から制度破綻の危機に直面してしまうことになるのです。

「アルツハイマー型認知症」の場合は、脳がもたないのに身体だけはもつのです。「小ボケ」の発症に始まって、「中ボケ」を経て、「大ボケ」の段階になってもまだ身体がもつのが特徴なのです。身体がもつので、「アルツハイマー型認知症」を発病しても、何年も生きていくことになるのです。「第二の人生」が20年も30年もある「超高齢化社会」を生きるのなら、ただ長生きするだけでは意味がないと考えてください。長生きを望むのであれば、自分らしい「生き甲斐や目標のある生き方」、自分らしい「脳の使い方」を追及して、脳が活性化するような日々を過ごしつつ、「身体がもつ限り、脳をもたせる」ことを必須条件として、自身に課して欲しいのです。本人の心がけと注意次第で、発病を回避できるからです。アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する「生活習慣病」に過ぎないのです。

 これから先、このブログでは、「アルツハイマー型認知症」に的を絞って、関連する「テーマ」を選び、説明していきます。皆さんに正しい知識を持っていただくとともに、「アルツハイマー型認知症」の「早期診断による回復」と「脳を活性化する生活習慣の構築による予防」という考え方が、全国の市町村の津々浦々にまで浸透していき定着するよう、訴え続けていきたいと考えています(ここを「クリック」してください)。

             

(コーヒー・ブレイク) これまで60回にわたって記述してきた内容により、体系的に全体像の概要をお知らせすることができました。このブログは、世界中の研究者や医師達から「原因もわからないし、治らない」病気とされている「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズム、早期診断と脳のリハビリによる「回復」及び生活習慣の改善による「予防」について、世界で初めて体系的に記述されたその内容を公開するものです。東日本大震災の被災地の「高齢者」を対象とする大量の発症は、予告した通りとなってきています。ここを「クリック」してください)。&(更に、ここも「クリック」)。

 私達の考えは、根拠となる「脳機能データ」と市町村での「実践活動」によりきちんと裏付けされています。近い将来、私達の考えが、世界中での「主流」になると確信しています。今後も、できるだけ多くの方に読んでいただきたいと、願っています。このブログを読んで、内容に共感できた方は、周りのお年寄りにもこのブログの存在を知らせてあげていただきたいのです。

  これからのブログでは(N-61からは)、いろいろな角度や視点から、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズム、「脳の機能レベル」の変化とそれに付随して生じる「段階的症状」の発現、早期診断の方法と「回復」、脳の使い方としての「生活習慣」のあり方、「生活習慣の改善」による発病の「予防」、保健師さんが中核となる「地域予防活動」の展開等のテーマについて、出来るだけ分かりやすく伝えて行きたいと考えています。

 注)本著作物(このブログA-61に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

  エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

  http://blog.goo.ne.jp/quantum_pianist

 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/d4801838dd9872301e0d491cd8900f1a

 

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アルツハイマー型認知症の原因と予防法(脳の使い方)Q/A総集編(A-60)

2012-09-20 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 認知症の大多数を占める「アルツハイマー型認知症」を予防するには、脳をしっかりと使う「生活習慣」が大事だと知りました。ところが、私は幼いころから、音楽や体操は得意だったのですが、勉強(特に国語や算数)が苦手でした。古希を目前にしたそんな私が、脳をしっかり使う生活をするには、どんなことをどんな風にしたらいいのでしょうか。

      

 A:     することもないまま!

           余るばかりの私の時間

                身体も脳も、今日も居眠り

(撰者 大伴焼餅の講評) 脳の使い方の説明に入る前に、「脳の機能」について、ここで概観しておきたいと思います。脳の働きとそのメカニズムを知り、且つ理解した上で、自分なりのやり方を実践することが大切だからです。

 頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があります。脳卒中で、半身麻痺になる人がいます。「運動の脳」の左の部分が壊れると、右半身麻痺が起きます。右の部分が壊れると、左半身麻痺が起きます。「運動の脳」の左の部分が右半身を、右の部分が左半身を動かしているのです。脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事などをする為の「左脳」があります。「左脳」は、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理しているのです。

 脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあいなどを楽しむ為の「右脳」があります。「右脳」は、色や形や音や空間や感情など「アナログな情報」を処理しているのです。

      

 額のところには、脳全体の司令塔の「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)があります。私たちが意識的に何かの「テーマ」を実行しようとするとき、どのようなテーマをどのように実行するか、「運動の脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか(体を動かすテーマ)、「左脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか(言葉や計算や論理や場合分けなどのテーマ)、「右脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか(色や形や音や空間認識や感情などのテーマ)、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して決定し、指令を出しているのです(運動の脳、左脳、右脳という三頭立ての馬車の「御者」の役割をしているのが「前頭葉」なのです)。

 具体的な場面で説明しましょう。 老人会でゲートボールを楽しむ時の周囲の状況や関係等を考慮した遊び方も、お茶を飲みながら友達と趣味や遊びや家庭の問題等の世間話に花を咲かせる時の話の展開の仕方も、友達を家にお呼びして得意の手料理でもてなす時の相手との関係に配慮したもてなし方も、家の周りに樹木を植えたり草花を咲かせたりして楽しむ時の景観や観る人の視点を考えた配置や植え方も、脳全体の司令塔の「前頭葉」が、関係する色々な条件や状況を判断して、テーマを発想し、内容を計画し、「何をどのようにするか」をケースワークした上で最終的に決定し、必要な指令を出して、実行させているのです。

      

 認知症の専門家とされる人達から、未だに、発病のメカニズムが不明であるとされている「アルツハイマー型認知症」の場合は、脳全体の司令塔の「前頭葉」を中心とした「脳の機能レベル(働き具合)の直接のアウトプット」それ自体が「症状」として発現してくることになるのです。それが、「アルツハイマー型認知症」の「症状」が発現してくるメカニズムなのです。年をとるにつれて、前頭葉の働きが衰えてくる(人間であれば誰でも、前頭葉を含む脳の諸機能に加齢に伴う老化のカーブ、言い換えると「正常な老化」のカーブが、存在するのです)とはいえ、前頭葉の機能が正常なレベルにある限り、認知症の症状が発現してくることはないのです。高齢者と呼ばれる年齢のお年寄りが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続することによって、「前頭葉」を含む脳の「廃用性の加速度的な機能低下が起きてくる」ことにより、働きが異常なレベルに衰えてくる結果、様々な程度態様の認知症の「症状」(「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」の三段階の症状)が発現してくるのです(ここをクリックしてください)。解剖所見を基礎とした「仮説」である蛋白質犯人説が主張するような、アミロイド・ベータやタウ蛋白に侵された「神経細胞」の脱落に起因する症状が現れてきているわけではないのです。

 中でも、 「前頭葉の諸機能」の機能障害すなわち、色々な認知機能を発揮する上での基礎となる「三本柱」意欲、注意集中及び注意分配機能の障害並びに発想、創意、企画、構成、計画、観察、分析、理解、把握、考察、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、忍耐、工夫、修正、機転、興味、創造、感動、判断及び決断等の機能の障害、更にそれらに加えて最終的な実行内容を選択する上で不可欠な機能である「評価の物差し」としての評価機能の障害という「各種の前頭葉機能の障害」のアウトプットによる「症状」が「アルツハイマー型認知症」の最初の段階で発現してくることに注目することが、「発病のメカニズム」を理解する上で極めて重要なのです。この最初の段階では、「前頭葉」の廃用性の加速度的な機能低下により、働き具合が異常なレベルに衰えた「前頭葉の諸機能の機能障害」に起因する症状が発現してくるだけであって、いわゆる「物忘れ」(正常な老化現象)を超えるレベルの記憶の障害」(異常な老化現象)に起因する症状は全く認められないのです。(ここを「クリック」してください)。

      

(kinukototadaoからの説明)  意識的に何かの「テーマ」を実行しようとするに際して必要不可欠の、「状況の判断」、「テーマの構想」、「内容の計画」、「構成の保持」、「シミュレーション」、「実行内容の選択」、「実行の決断」等の「前頭葉」の諸機能を十分に発揮するには、思考の過程中での或る一定レベルでの「認知度の維持による認知機能の発揮」が要求されることになります。「認知度」が低いと、上述した「前頭葉の諸機能」がちゃんと働けないからです。

 その各工程での情報の交信(受け取り、処理、発信)に要求される「認知度」は、「前頭葉」の働きの中で最も重要な機能である「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」という「三本柱」の機能が正常に働くことが不可欠の前提条件となります。この「三本柱」の機能に下支えされる形で、発想や計画や工夫や洞察などの高度な認知機能がちゃんと発揮されることになる(認知機能を発揮するうえで、「二重構造」/「層構造」となっていることに注意)のです。実は、「三本柱」のこの機能は、「記憶」の工程である「記銘」、「保持」及び「想起」の機能発揮度にも深く関わっていて、影響しているのです(30代の後半から、いわゆる「物忘れ」の症状が発現してくるのは、このメカニズムの為なのです)。(ここをクリックしてください)。

       

 そもそも、この「三本柱」の機能は、高齢者と呼ばれる年代の入り口の60代にもなると大幅に衰えてきて、70代ではピーク時の20代に比べて半分程度にまで衰えてきているのです。80代、90代と年をとるにつれて、更に低空飛行になっていきます。「意欲、注意集中力及び注意分配力」いう前頭葉の「三本柱」の機能には、加齢とともに働きが衰えていくという性質があるのです(「正常老化」)。(ここを「クリック」してください)。

 加齢とともに衰えつつある「前頭葉」の諸機能を、正常レベルに保ち続ける(「正常老化」のカーブを維持する)上で極めて重要なことがあります。それは、日々どのような「テーマ」の、どのような実行の仕方によって、「脳をしっかりと使う機会をどのように確保するのか」と言うことなのです。「薬」も、「サプリメント」も、「食事」も、全く関係ないのです。もしも効果があると言う人(機関や企業)がいたら、その人(機関や企業)は、「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムを理解していない人(機関や企業)なのです。

 その意味で老婆心ながら提言すると、「仕事一筋」の生き方、「左脳偏重」の生活習慣を疑うこともなく、社会的な規範として抵抗もなく受け入れて第一の人生を送ってきた人達は、特に大きなリスクを抱えていることになるのです。こうした生き方をしてきた(価値観に支えられて第一の人生を送ってきた)人達は、「第二の人生」に入っていくと、「仕事」以外のことには価値を見出し難いのです。第一の人生での体験が少ないことも一因なのですが、「趣味とか遊びとか運動」とかに価値がおけなくて、「熱中」することが出来ないのです。年をとった自分がそうしたことに「熱中」することに評価がおけないし、恥ずかしいことと考える人達も少なくないのです。「若い者が働いているのに、年寄りが遊んでなんかいられない」等と公言するのです。その上、日本人は、相互に家に呼びあうような「密な人づきあい」は余りしないのです。(ここをクリックしてください)。

      

 うした価値観を変えることが出来ない人達は、第二の人生が始まり、生きていく上での「生きがい」や「喜び」や「目標」を与えてくれていた「仕事」がなくなったとき、「仕事以外のテーマ」をどのように設定して、どのように「脳を使う場」を持って、毎日を過ごしたらいいのかが分からないのです。「生き甲斐」や「喜び」や「感動」を与えてくれるものもなく、「目標」となるようなものもなく、あり余る時間をもてあますことになることが多いのです。

 生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや人付きあいもなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っていると言うことは、脳の機能面から言うと、「前頭葉」の機能の中でも最も基本的で不可欠な機能であり、「認知度」(認知機能を発揮する度合い)を左右し下支えする働きをしている「三本柱」の出番が極端に少ない生活を送っているということになるのです。言い換えると、もともと加齢により機能が衰えていく性質を持っている三本柱の働きが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っている中で、脚の筋肉と同じように、廃用性の機能低下」を起こしてくることになるのです。「認知機能」を発揮する上での二重構造(「層構造」)のメカニズムが働く結果として、「三本柱」の機能が廃用性の機能低下」を起こしてくるにつれて、理解、考察、発想、創意、企画、計画、観察、分析、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、工夫、修正、機転、興味、創造、感動、判断及び決断等の「前頭葉」の認知機能の働き具合も連動して衰えていくのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続するもとで、前頭葉を含む脳の機能が廃用性の機能低下を起こしていくとき、私たちがこれまでに集積してきた「脳機能データ」によると、加速度的に全体としての機能が衰えていくのです。このことについて、前頭葉の「三本柱」以外のそれらの認知機能の衰え方についての直接のデータとしての蓄積がないので、推測(仮説)の域を出ないのですが、そもそもそれらの個々の認知機能自体にも、「加齢に伴う正常な老化」の性質があり、且つ、使われる機会が極端に少ない生活が継続するもとでの、廃用性の機能低下という性質があるのではないかと考えているのです。個々の認知機能がもっている「二面の性質」と上述する「二重構造」との問題が相互に作用することにより、それらの「相乗効果」として、私たちが集積してきたデータが示す「加速度的な機能低下」が起きてきているのではないかと考えているのです。

       

  そこで、いよいよ「脳の使い方」の主題に入りたいと思います。「脳を使う」ということは、意識的に何かの「テーマ」を実行するということなのです。ところで、脳を使うってどういう「テーマ」を実行することだとあなたは思っているのですか。「勉強」することですか?「仕事」をすることですか?「遊ぶ」ことは、どうですか?「趣味や人付き合い」を楽しむことは、どうですか?「散歩」をするのは、どうですか?

 「勉強」するということは、「左脳」を主に使うことになります。「左脳」は、言葉、論理、計算、場合分け等の「デジタルな情報の処理」を担当しているからです。「仕事」をすることが脳を使うことですか?「仕事」も「勉強」と同じく、「左脳」を主に使うことになります。「遊ぶ」ことや「趣味や人付き合い」を楽しむことは、「右脳」を主に使うことになります。「右脳」は、色や形や音や時間や空間、感情等の「アナログな情報の処理」を担当しているからです。「散歩」をすることは、「運動の脳」を使うことになります。「運動の脳」は、身体を動かす働きを担当しているからです。

  ここで忘れてならないことは、脳全体の司令塔の「前頭葉」のことなのです。「左脳」が「デジタルな情報の処理」を実行するときも、「右脳」が「アナログな情報の処理」を実行するときも、「運動の脳」が「身体を動かす」ときも、三頭立ての馬車(左脳、右脳、運動の脳の三頭の馬)の御者の役割をしている「前頭葉」の指示なしには、勝手には動かない仕組みになっているからです。三頭の馬のどれかが動くときには、必ず「前頭葉」からの指示があるのです。言い換えると、「前頭葉」自体(三頭の馬を主導しつつ、同時に協働して)働くというのが、「意識的な行為」下で人間の脳が働くときのメカニズムなのです。三頭立ての馬車のいづれかの「馬」が働く場面があるということは、不可分的に「前頭葉」の働く場面があるということになるのです。

        

 「アルツハイマー型認知症」を予防する方法とは、日常生活のいろんな場面で、「前頭葉」を含む脳全体をしっかり使ってやることなのです。「趣味」や「遊び」や「人づきあい」や「運動」或いは「社会活動」等を自分なりのやり方で「楽しむ」生活「習慣」化することに尽きるのです。自分なりの目標」「喜び」生き甲斐」がある生活を送ることで、「前頭葉」の出番を増やしてやる(しっかり使ってやる)ことしか方法はないと言うのが、データと実践に裏付けられた私達の考えなのです。

 第二の人生を、ボケとは無縁で自分らしくいきいきと生きるために不可欠な「生活習慣」を打ち立てるための「大原則」。「左脳」中心、仕事偏重だった第一の人生とは生き方を変え、第二の人生では、「右脳」重視の生き方への転換を図り、周囲の目を気にせず、自分らしさが前面に出るような生き方をして、自分がイキイキしていると感じられる脳の使い方(「生活習慣」)を毎日の生活の中に打ち立てることが必要不可欠の条件となるのです。(ここを「クリック」してください)。

      

 やることが楽しくて、「意欲」が自然と湧いて来て、熱中できるようなテーマ、「注意を集中」したり「注意を分配」(複数の異なったテーマを同時並行して実行する前頭葉の機能 )したりすることができるだけ多い「テーマ」に取り組む中で、自分らしい「生き方」、自分らしい「生活の楽しみ方」を追及し、そうした暮らし方(「生活の仕方」)が「生活習慣化」するよう、意識的に努力して欲しいのです。

○ 熱中し、夢中になれる趣味や遊びをできるだけたくさん持つ

○ たくさんの友達とできるだけ親しく交わる

○ 自分なりの生き甲斐や喜び、目標となるものを見つける

○ 精神的な張りと適度に緊張感のある毎日を過ごす

○ 散歩程度でも良いから、運動する機会を出来るだけ多く持つ

       

(コーヒー・ブレイク)今日でちょうど60回目となりました。東日本大震災の被災地のお年寄り達に必ず起きてくる「アルツハイマー型認知症」の発病の問題、専門家達もマスコミ関係者も予想さえしなかった割合、且つ大規模な発病を世の中に知らせることが目的で、3月からこのブログを書き始めました。(ここをクリックしてください)。

 これだけ大量の発病者がいながら、世界中の専門家たちの間で「原因不明で治らない」病気とされている「アルツハイマー型認知症」に対する私たちの考えを体系的に示すことと研究者や医師や自治体の保健師さん達に問題提起するために、表現がやや難しくなり、専門的な内容も増えてしまいました。おまけに、文章も長く、読みづらかったことと思います。次回からは、できるだけ優しい表現で、一般の方たちに読みやすい内容と表現とを心がけたいと思っています。

 注)本著作物(このブログA-60に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

  エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

  脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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アルツハイマー型認知症の原因と治療法(治療薬) Q/A Room(A-59)

2012-09-13 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 私は60歳になったばかりだというのに、67歳になる「アルツハイマー型認知症」の夫を抱えて自宅で介護をしています。認知症とはいえ夫は身体が丈夫なので、ちょっと目を離すと家の外に出て行き、そのまま徘徊してしまうのです。おまけに、昼夜の区別もつかないらしく、夜中にも何処かへ出かけようとすることがあります。私には、趣味や交友を楽しむ自由な時間は全くなく、介護に追われるだけの毎日です。

 「アルツハイマー型認知症」の新薬が3種類も出て来るというので期待したのですが、それもつかの間のことでした。出てきたのは「治療薬」ではなくて、これまでの薬と同様に、症状の進行を遅らせる効果が期待できる可能性がある程度のものでしかないことがわかりました。私たち庶民には費用が高いので、病院にも施設にも預けることが出来ません。このままでは、私自身がまいってしまいそうです。

        

A:        雨降って、

              転ぶと!

                  ボケが忍び寄る。

(撰者 松尾芭蕉布の講評) 足元がおぼつかない高齢のお年寄りが、雨が降って、何かの弾みに滑って転んで、複雑骨折をして、何カ月間か病院のベッドに伏せったままでいると、二つの問題を抱えることになります。1つは身体の問題で、脚の筋肉が廃用性の委縮を起こして歩行が困難になるのです。他の1つは脳の問題で、「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)が廃用性の機能低下を起こしてきて、認知症の症状(「小ボケ」の症状)が出てくることがよくあるのです。「アルツハイマー型認知症」発症のケースです。

 「老人斑」ができたせいでも、「神経原線維変化」が起きてきたせいでもないのです。転んで、複雑骨折したことが「キッカケ」となって、何か月も病院のベッドに伏せったままで、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が続き「前頭葉」の出番が極端に少ない日々を過ごしているうちに、「前頭葉」が老化を加速させ、機能が異常なレベルに衰えてきたせいなのです廃用性の機能低下」。(ここを「クリック」してください)。

 ところで、認知症にも種類がたくさんあるのをご存知でしょうか。その中でも大多数90%以上を占めているのが「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症です。ところが、「アルツハイマー型認知症」は、未だに発病の原因がわからないとされているのです。発病の原因については、老人斑を形成させるアミロイドベータが犯人とする「アミロイドベータ説」と神経原線維変化を起こさせるタウ蛋白が犯人とする「タウ蛋白説」とが足元が揺らぎながらも今のところ生き残っています。アミロイドベータやタウ蛋白の作用により神経細胞が侵され脱落していくという「仮説」なのです。「アルツハイマー型認知症」の場合は、「神経細胞」が脱落していくことにより、脳内での情報のやり取りに支障が起きてきて「記憶」に関わる脳の機能が重度に障害されると同時に、失語や失行や失認などの重い認知障害の症状が出てくること、この二つの要件の充足が確認されるという考え方のようです。

       

 「アルツハイマー型認知症」の末期段階の症状(「重度認知症」のレベル)を何年間も呈していたお年寄りの解剖所見を基礎とする「仮説」に基づいて、「アルツハイマー型認知症」の診断基準が構築され、世界で最も権威があるとされる米国精神医学会の診断基準である「DSM-4」の規定にみられるように、「記憶障害」が診断の最も重要な(第一の要件)とされているのです。それを前提に、「失語」や「失行」や「失認」などの「重い症状」が認められることが(第二の要件)とされています。但し、この二つの要件を充足すると、「セルフケア」に支障が出て来るレベルになるので、日常生活に「介助」が不可欠になります(私たちの区分で言う「重度認知症」の段階であり、回復は困難)。(ここを「クリック」してください)。

 注意すべきは、(第二の要件)の一番最後に、(失語、失行、失認又は実行機能の障害と言う位置づけで)「実行機能の障害」が挙げられている点です。「実行機能」とは、脳全体の司令塔である「前頭葉の機能」のことです。「アルツハイマー型認知症」の場合は、「前頭葉」の機能が最初に異常なレベルに衰えていくことで、「前頭葉の機能障害の症状」が最初に発現してくることが見逃されている(或いは、そのことを理解していない)のです。

 「記憶の障害」の問題ではなくて、「前頭葉の諸機能」の障害すなわち、色々な認知機能を発揮する上での基礎となる三本柱の意欲、注意集中及び注意分配機能の障害並びに発想、企画、構成、計画、観察、分析、理解、把握、考察、洞察、推理、予見、シミュレーション、抑制、忍耐、創意、工夫、修正、機転、関心、興味、創造、感動、判断及び決断等の機能の障害、更にそれらに加えて最終的な実行内容を選択する上で不可欠な機能である「評価の物差し」としての評価機能の障害という「各種の前頭葉機能の障害」のアウトプットによる「症状」最初に発現してくることを見落としているのです(この最初の段階が回復容易な「軽度認知症」であり、この段階では、記憶の障害に起因する症状は全く認められないのです)。(ここを「クリック」してください

      

 「アルツハイマー型認知症」の場合は、最初に「前頭葉の機能」だけが異常なレベルに衰えてくるのです(「軽度認知症」の段階)。最初の「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、「社会生活面」に種々の支障が起きてくるようになります。次いで「高次機能」も異常なレベルに入ってくる「中等度認知症」(中ボケ)の段階では、「家庭生活面」にも支障が起きてくるようになります。最後の末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階になると、「セルフケアの面」にも支障が起きてきて、日常生活に介助が必要になるのです。ここを「クリック」してください)。

      

 (kinukototadao からの説明) このブログで何度も指摘してきたように、最初の段階、脳の司令塔の「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えてきて、左脳も右脳も運動の脳も未だ働きが正常なレベルにある段階で発現してくる症状は、「アルツハイマー型認知症」の症状なのです。認知症の専門家たちの間で「不活発病」とか「軽度認知障害」等の名前で呼ばれていて、何等の注意の換気も対策も施されないで放置されているだけなのです。ところがこの段階(「軽度認知症」)が3年も続くと、私達の区分で言う「中等度認知症」(中ボケ)の段階に進んでしまうのです。そのことに「米国精神医学会」でさえ気づいていないということなのです。(ここを「クリック」してください)。

 「重度の記憶障害」の症状が出ていて、且つ「失語」とか「失行」とか「失認」とかの末期段階に見られる症状が出てくる「重度認知症」(大ボケ)の段階になって初めて認知症と診断(DSMー4」の診断基準)していたのでは「遅すぎる」のです。せっかく見つけても「アルツハイマー型認知症は、原因も分からないし、治らない」病気にされてしまうのです。「軽度認知症」(小ボケ)は回復容易で、「中等度認知症」(中ボケ)は回復可能で、「重度認知症」(大ボケ)になると回復は困難になるのです。

        

 「アルツハイマー型認知症」の場合は、「前頭葉」を含む脳の機能の衰え方にリンクして、脳の機能レベルが「症状」として発現してくるのです。アミロイドベータ説やタウ蛋白説を唱える人達が言うように、神経線維の脱落による脳内での「情報の連絡」の不具合が、「記憶障害」を中核として「アルツハイマー型認知症」の症状を発現してくる訳ではないのです。そもそも、外観から目に付きやすい「記憶障害」の症状が「アルツハイマー型認知症」診断の第一の要件であるとの誤解が、発病のメカニズムに気づかない、或いは気づくことから遠ざけている根本の問題なのです。第一の要件は、記憶障害ではなくて、(廃用性の加速度的で異常な機能低下に起因する)「前頭葉」の機能障害なのです。

「記憶障害」をメインターゲットとすることが誤りであることについて、 分かりやすい例で説明しましょう。自転車のチューブに空気を入れる「空気ポンプ」という機器があります。「アルツハイマー型認知症」は、空気をチューブに運ぶ紐状のゴム管の部分(脳で言えば、情報を伝達する神経線維)に支障が起きてくることが症状発現の原因だというのが、アミロイドベータ説やタウ蛋白説の考え方です。この考えに立脚しているので、ゴム管を繕って空気が漏れる量を少しでも抑える効果を期待できるとされているのが現在販売されている4種類の薬ということなのです(治療薬ではなくて、「症状」の進行を遅らせる効果を狙うだけのもの)

       

 私達は(廃用性の機能低下説)、ゴム管の部分に支障があるからではなくて、ポンプを押して空気を押し出してやる部分(脳で言えば、情報を処理・発信してやる前頭葉等の機能)に支障が起きてきて(「廃用性の機能低下」)、脳が正常に働かなくなったことが「症状」発現の原因だと考えているのです(私達が集積してきたデータは、前頭葉を含む脳全体の機能レベルのアウトプットが症状だということを示している)。いくらゴム管を繕っても(神経細胞の修復)、そもそもポンプを押す作業をしない限り(脳の機能がちゃんと働かないのでは)、空気は流れない(情報の処理も発信もない)のです。

 ところで、アミロイドベータ説やタウ蛋白説の考え方の人達が開発を目指している「アルツハイマー型認知症」の「治療薬」とは、異常なレベルに機能が衰えている「前頭葉」を含む脳の機能レベルを、飲むだけで(貼るだけで)、正常なレベルに引き戻すことが出来る薬と言うことになります。

       

 意識的な行為の世界をコントロールしている、脳全体の司令塔の前頭葉の機能とそのメカニズムから考えたとき、そのような効能を持った薬が開発できるとは考えられない(あり得ない)のです。「重度認知症」(大ボケ)のお年寄りを抱えて介護に追われる家族の精神的、経済的負担は筆舌に尽くし難いほど大きいので、治療効果がある新薬への期待はとても大きいのです。とわ言え、そこに現実の市場は存在しないのです。治療薬の開発は、非現実だからです。

 飲むだけで(貼るだけで)正常レベルに回復させることがあたかも可能であるかのような「新薬開発」の言葉がマスコミの記事で踊る度に、市町村による「予防」活動への取り組みが遠のいていくことになるのです。日本全体での高齢化率が30%を超えた時、取り返しのつかない状態がくるのです。予防は、啓蒙活動だけでは足りないからです。早期診断の窓口と小規模単位集落ごとの「地域予防活動」の実践とが不可欠だからです。(ここを「クリック」してください)

       

 「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムは、「前頭葉」を含む脳の「廃用性の機能低下」により異常なレベルに働きが衰えてくる結果として、「症状」が発現してくる(脳の機能レベルのアウトプットが症状)ということなのです。従って、「アルツハイマー型認知症」を治療する方法とは、衰えた脳の働きを正常なレベルに引き戻すことなのです。その為には、日常生活のいろんな場面で、「前頭葉」の出番が増えるようなテーマ、「趣味」や「遊び」や「人づきあい」や「運動」或いは「社会活動」等を自分なりのやり方で楽しみ「生活習慣」化すること、自分なりの目標生き甲斐がある生活を送ることで、「前頭葉」の出番を増やしてやる(しっかり使ってやる)ことしか方法はないと言うのが、データと実践に裏付けられた私達の考えなのです。但し、「重度認知症」の段階にまで脳の機能が衰えてしまったら、使おうとすることさえしなくなり、その先にはできなくなるのです(回復させることは、もはや期待できなくなる)。

(コーヒー・ブレイク) 繰り返しになりますが、 「アルツハイマー型認知症」の各段階(小ボケ、中ボケ、大ボケ)で発現してくる個別の「症状」は、「廃用性の機能低下」というメカニズムにより、そこまで衰えた「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルの単なるアウト・プットに過ぎないのです。アミロイド・ベータやタウ蛋白による神経線維の脱落が原因で「症状」が発現している訳ではないのです。

注)本著作物(このブログA-59に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

   エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)


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アルツハイマー型認知症を予防する脳の活性化方法 Q/A Room(Aー54)

2012-08-09 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:私達夫婦は、今年中に古希を迎えます。ここまで長生きしてくると、一番心配なのは、アルツハイマー型認知症になることです。脳がイキイキと働くような生活を毎日していれば、アルツハイマー型認知症にならないという話を友達から聞いたのですが、どんな方法が脳を活性化させるのでしょうか。簡単な方法があるなら、教えてください。

     

A: 私達は、意識的に何かの「テーマ」を実行する際の、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)を含む脳の働き具合とそのアウトプットとしての行為(症状)を「二段階方式」による神経心理機能テストを使って詳細に調べ分析してきました。通常の正常なレベルから、正常下限のレベル、「アルツハイマー型認知症」発病後の「小ボケ」のレベル、「中ボケ」のレベル、更には末期段階の「大ボケ」のレベルに至る「脳の機能レベル」の変化とそれにリンクした各レベルでの「症状」の程度及び態様の経過(変化)について、極めて多数のデータを蓄積してきました。(「小ボケ」から「中ボケ」、「中ボケ」から「大ボケ」へと症状が進行するその間、脳機能の衰え方は、常に加速度的に進むのが特徴であり、この点に注意することが重要です。

           

特に、末期段階の「大ボケ」のレベルでは、脳の機能が或る程度機能している「大ボケ」の初期のレベルから、加速度的に衰えを増していき、最終的には殆ど機能しなくなる「大ボケ」の末期までの間のとても幅広い症状を示すのです。その脳機能レベルのアウトプットとしての「症状」の程度差は、極めて幅広く、且つ深いのが特徴なのです。そのため、区分上は「回復が困難」という意味での同じ「大ボケ」のレベルでも、その中での症状の進行につれて、介護する上での負担がどんどん大きくなっていくのです)。

製薬会社は、「アルツハイマー型認知症」の症状の進行を遅らせる効果があるという宣伝文句でいろんな薬を開発し、販売していますが、私達がこれまでに蓄積してきた脳機能データの分析の結果(15000例に上るデータの解析)から言えば、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を継続したままで居て、飲むだけで、「前頭葉」を含む脳の機能が改善してくる(或いは、脳機能の衰え方が改善される)ような「薬」など存在するはずがない(開発できるはずがない)と考えています。更には、テレビのコマーシャルに出てくるような、飲むだけで「前頭葉」の機能が活性化するようなサプリメントや食物もないと考えています。ここを「クリック」してください

     

 認知症の専門家たちは、長い年月にわたって「重度認知症」のレベルにあった患者の「解剖所見を基礎とした類推」によって、アミロイドベータやタウ蛋白によって情報を伝達する神経細胞が侵され、脱落・消失する為に「アルツハイマー型認知症」の症状(「記憶の障害」を基礎とした種々の症状)が出てくるものと主張していますが、これは重大な誤解なのです。「敵は、本能寺にありなのです!」。

        

私達の「アルツハイマー型認知症」の症例についての「脳の働き具合の変化」とそれにリンクした症状の変化に関するデータの分析結果から言うと、神経細胞が侵されて情報が伝達されなくなってくる為に認知症の症状が出てくる訳ではないのです。「前頭葉」の出番が極端に少ない「生活習慣」、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続により、の機能が廃用性の機能低下により加速度的に衰えて行く(使われる機会が極端に減少することで、脳の働き具合が加速度的に衰えて行く)ことによって、情報が次第に処理できなくなっていく(且つ、発信されなくなっていく)結果として、「アルツハイマー型認知症」の症状が出てくるだけのことなのです。(ここを「クリック」してください)

それ故、症状は、「前頭葉」を含む脳の機能レベルが衰えて行くにつれて、それに相応した程度及び態様の症状が出てくるだけのことなのです。「脳の機能レベル」とリンクさせた「症状」について、「小ボケ」、「中ボケ」、「大ボケ」の症状の段階的な差異を調べて行けば、直ぐに分かることなのです。「アルツハイマー型認知症」の専門家と称する人達は世の中に数多いのに、この程度のことが何故分からないのかと不思議でなりません。

                

認知症の専門家達から「原因不明で、治らない」と言われ続けてきた「アルツハイマー型認知症」は、脳の使い方という視点からの「生活習慣病」に過ぎないのです。「アルツハイマー型認知症」が「生活習慣病」であるということは、「アルツハイマー型認知症」を予防する(脳の働きを正常レベルに保つ)には、「普段の生活習慣」が決め手になると考えて下さい。決め手になる生活習慣とは、「前頭葉」の本柱(「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」)の出番が多い生活を自分なりに工夫構築して、「前頭葉」の働きを活発にしてやる日々の脳の使い方、「生き方」のことなのです。

脳全体の司令塔としての「前頭葉」の働きの中核的なそれは、自分の置かれている状況を判断し、状況に沿ったテーマを思いつき、テーマを実行する内容と手順を計画し、実行した場合の結果をシミュレーションし、シミュレーションに基づいて実行すべき内容や手順を選択し、選択した結果に基づいて脳の各部(左脳や右脳や運動の脳)に対し必要な指令を出すという一連の作業を行うことなのです。この一連の作業を一定レベル以上で実行するには、一定レベル以上の「認知機能」の発揮が要求されることになります。その認知機能の発揮レベルを支える基礎となるのが、「前頭葉の三本柱」と言うことなのです。

                  

ところで、「脳を使う」と言うと皆さんは直ぐに「左脳」を使う(仕事や勉強をする)イメージをお持ちだと思いますが、「アルツハイマー型認知症」を予防するための「脳を活性化」させるエース・ピッチャーは、実は「右脳」なのです。皆さんは、「時間が、あっという間に経ってしまう、楽しい体験」をお持ちでしょう。こんな時間こそ、脳全体が極めて活性化している、イキイキと働いている時間なのです。脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」の働きを活発にするのに最も効果的な方法は、「右脳」をしっかり使う生活、趣味や遊びや人づきあいをしっかり「楽しむ生活」を送ることが不可欠になるのです。「趣味や遊びや人づきあい」などを楽しむことで、自分なりに目標や喜びや生き甲斐があり、意欲が湧いてくるような毎日を過ごすのです。

趣味や遊びや人づきあいといった「右脳」重視の生活が、「前頭葉」の出番を増やし働きを活性化させることになり、脳全体の機能が正常レベルに維持されることになるのです。趣味や遊びや人付き合いが苦手な人は、「運動の脳」を使うことが脳を活性化させる上で意外と効果的です。

      

「左脳」を使うテーマも勿論あっていいのですが、皆さんが思っている程の効果はありません。「第二の人生」を送っているということは、仕事はもうテーマにならないので、「勉強」ということになります。ところが、勉強が好きで好きで、食事をするのも忘れて、勉強に熱中した経験があるような人は、恐らく少数派だと思うのです。まして60歳を超えた「高齢者」であればなおさらのことだと思うのです。

世間では、小学校の低学年レベルの「平仮名で書かれた文章の音読」や「一桁の足し算と引き算程度の簡単な計算」(これらは、共に「左脳」を使うテーマなのです)をすることが、脳の活性化に役立つとして教育事業者などから提案されています。このような程度のものでも、その作業をしているときには、関係する脳がそれなりのレベルで働くのは当たり前のことなのです。必要とされる脳機能の程度は低くても、「前頭葉が絡む意識的な世界」であることに変わりがないからです。その時の脳の作用を「f-MRI」などを使って計測しても、それが「効果を証明することにはならない」のです。そのとき、そこに「意識的な世界」があり、関係する脳の機能が働いていると言うことを証明しているだけのことなのです。

これに特化した生活を何カ月か継続させた(趣味や遊びや人づき合いを楽しむ生活を排除しないと正しい評価が出来ない)お年寄りの「前頭葉」の機能レベルの変化(改善の有無)を神経心理機能テストで計測評価してみれば、効果があるのかないのかがはっきりとわかるはずです。私達は、このようなレベルの「左脳」刺激の方法では、大事な時間をかける割に大した効果が期待できないので、極力排除するよう指導しています。

           

第二の人生を過ごしている高齢者にとっては、やるのが楽しくて、時間があっという間に経って、またやりたくなるような「趣味」や「遊び」や「人づきあい」を積極的に楽しむ、「右脳」がらみの生活とその仕方を工夫することが、脳を活性化させるのに不可欠なのです。それを実感できているときは、「意欲」が湧き出ていて、「注意が集中」していて、「注意が分配」できているからです。言い換えると、そうした時間は、「前頭葉の三本柱の働きが、極めて活性化している」生き生きと働いている時間と言うことなのです。 

                 

私達が開発した「二段階方式」のシステムを導入している市町村では、「二段階方式」を活用して、認知症の「予防教室」に参加しているお年寄りたち全員の脳全体の機能レベル(前頭葉、左脳及び右脳)を定期的に検査し、所定の基準に基づき三段階に区分して評価(「改善」、「維持」及び「悪化」)しています。その評価の基礎データと評価結果とは、「二段階方式」の「管理ソフト」により、個人別及び地域単位別に集計され、「時系列管理」されます。極めて多数のデータの分析の結果から、上述した問題が確認されているのです。      

「 仕事」一筋(「左脳」一辺倒の生活習慣)の人生を送ってきていて、「右脳」がらみの生活習慣である「趣味」も「遊び」も「人づきあい」も苦手だったと言う人には、「運動の脳」からの刺激が取り組みやすい上に意外と効果的なのです。 一日一時間の速足での散歩が目標(5000歩が目安)です。その場合も、散歩をするのが楽しくなるような「一工夫」が大切です。散歩するのに安全な場所を選び、散歩してみたくなるような場所を探し、家族や友人仲間と談笑しながら一緒に歩くと効果が一層大きくなります。(脳を活性化させる「魔法の散歩」については、ここをクリックしてください)。

注)本著作物(このブログA-54に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

       エイジングライフ研究所のHP(ここをクリックしてください)

   

 

 

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アルツハイマー型認知症の早期発見とその方法 Q/A Room(A-53)

2012-08-02 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:77歳になる私の義父が、先日近くの大学付属病院で診察を受け、アルツハイマー型認知症と診断されました。診断してくれた精神科医は、アルツハイマー型認知症は治らない病気なので、家族みんなで介護してあげてくださいと言われて帰ってきました。発病の原因としては、アミロイドベータとする説とタウ蛋白であるとする説があるが、どちらも仮説であって、実際のところは良くわからないのだと言われました。しかも、アミロイドベータが発病の原因とする説は、それを否定する有力なデータが出てきている状況だとも言われました。「アルツハイマー型認知症」発病の原因は、どれを信じたらいいのでしょうか。そもそも、治る可能性はないのでしょうか。

      

A:テレビ番組がいろんな種類の認知症の番組を組むので、御承知の方も多いかと思いますが、認知症にもいろんな種類があります。更に、治せる種類のものもあれば、治せないものもあるのです。脳を養っている大小の血管の障害である脳梗塞や脳出血などが原因で発病する「脳血管性認知症」もあれば、遺伝子の異常が原因で若い年齢を対象として発病する「若年性アルツハイマー病」もあります。そのほかにもいくつかの種類の認知症がありますが、それらが認知症全体に占める割合は、極めてわずかなのです。

マスコミが大々的に取り上げて、国民的な課題にすべきなのは、「アルツハイマー型認知症」(老年性アルツハイマー病とも言います)なのです。認知症の大多数、90%以上を占めている上に、末期の段階(重度認知症「大ボケ」)ではなくて早期の段階(軽度認知症「小ボケ」及び中等度認知症「中ボケ」)で発見すれば、脳のリハビリにより回復させることも出来るし(治せるし)、脳を活性化する「生活習慣」の構築により発病を予防することも出来るのが「アルツハイマー型認知症」だからです。

             

認知症の専門家は、「アルツハイマー型認知症」は治せないと言っていますが、それは重大な2つの過ちが原因なのです。「1つ目の過ち」は、末期段階の「重度認知症」(大ボケ)レベルにあった患者の解剖所見に基づいてアルツハイマー型認知症の発病原因を理解しようとしている過ちなのです。「重度認知症」の患者は、長期澗にわたって前頭葉を含む脳の働きが殆ど機能しないレベルで生活していたために(脳が持たないのに、身体がもつのがアルツハイマー型認知症の特徴)、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)を含む脳全体の機能が廃用性の加速度的な機能低下を起こしたその末期の状態で蓄積された副産物でしかないアミロイドベータの作用による「老人斑の生成」やタウ蛋白の作用による「神経原線維変化」が神経細胞の脱落や消失をもたらすことが発病の原因だと誤解している過ちです。

神経細胞の脱落や消失に過度に目が行っているために、「記憶の障害」を第一の要件と考える「もう1つの過ち」を犯すことになるのです。それは、米国精神医学会が定める「アルツハイマー型認知症」の診断基準「DSM-4」の過ちにもつながっているのです。「DSM-4」は、世界で最も権威があるとされてはいるものの、内容に二つの重大な誤りがある診断基準なのです(現在、内容の重要な改訂を検討中との情報があります)。その「二重の過ち」とは、原因である「認知」を左右している「前頭葉」の機能低下に目が向けられないで、機能低下の結果でしかない症状、特に目がつきやすい「記憶の障害」の症状を第一の要件と考える過ち及び「重度認知症」(大ボケ)の段階になって初めて現れてくる重度の症状を第二の要件と考える過ちなのです。

       

医療機関が「アルツハイマー型認知症」の診断を行う際は、この「二重の過ち」を犯している「DSM-4」に依拠して診断が行われるので、回復が可能な早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ)と「中等度認知症」(中ボケ)を見落としてしまい、回復が困難な末期の段階である「重度認知症」(「大ボケ」)でしか見つけられないでいて、「アルツハイマー型認知症」を原因不明で治らない病気と誤解しているのが実態なのです。

       

上記「2つの過ち」については、次の「3つの根拠」を指摘できるのです。1つ目は、「アルツハイマー型認知症」の早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ)或いは、「中等度認知症」(中ボケ)の段階で見つけると、脳のリハビリによって、脳の機能が正常レベルに回復してくる(認知症が治る)ことです。2つ目は、神経心理機能テストとして世界的に活用されている「MMS」により、脳の後半領域の衰えて行く状態を調べてみると、MMSで測定される脳の機能に衰えて行く順番がある(出来なくなっていく項目の順番に明確な「規則性」がある)ことです。最後の3つ目は、このブログでたびたび予告し指摘してきたように、東日本大震災の主な被災地である岩手県、宮城県、福島県に居住するお年寄りたちの間で極めて多数の「アルツハイマー型認知症」を発病(新規の発病及び症状の急速な重症化の進行)する人達が確認されてきており、その数の「異常な多さ」は、この先さらに注目されていくことになるということです。

       

マスコミ報道によると、見解を求められた東北大学の或る教授は、東北3県で起きている最近の状況についてそれを「異常な現象」だとコメントしています。これは、「異常な現象」ではなくて、「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムに係わる「構造的な問題」なのです。「アルツハイマー型認知症」が、脳の使い方という視点からの「生活習慣病」であるという私達の主張が疫学的に証明される結果となっているに過ぎないからです。「異常な現象」などという誤った見方をしてこのまま放置していると、この先、これらの地域に居住するもっと多くのお年寄り達が、「アルツハイマー型認知症」を発病(新規の発病及び症状の急激な重症化の進行)することになり、マスコミが大騒ぎするような極めて大きな社会問題となってくるはずなのです。(「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムについては、ここをクリック)。

 これまで、認知症の専門家たちから「原因不明で、治らない」と言われてきた「アルツハイマー型認知症」は、脳の使い方という視点からみた「生活習慣病」であり、「早期発見」、「早期治療」が大切な普通の病気だったのです。早く見つける程、回復する可能性が高いのです。その上、「前頭葉」を含む脳全体の活性化という「生活習慣の改善」により、予防することもできるのです。

「軽度認知症」(小ボケ)で見つければ、簡単に治せます(回復容易)。

「中等度認知症」(中ボケ)で見つければ、手間はかかり大変だけど、家族の協力があれば何とか治せます(回復可能)。

「重度認知症」(大ボケ)で見つけたのでは、見つけても手遅れ、どんなに頑張っても治らないのです(回復困難)。

            

 認知症の専門家達は、「アルツハイマー型認知症」の末期段階の大ボケの症状(特に、重度の記憶障害の症状)を物指しとして見つけます。それでは、見つける段階が遅すぎるので、せっかく見つけても治らないのです。貴女のお父さんも、末期の段階で見つけられていて、アルツハイマー型認知症との診断を受けているのです。もっと早い段階、回復可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」)で見つけられるように、医療機関が見つける方法を変える必要があるのです。

医療機関は、よくCTやMRIを使いますが、CTやMRIなどで脳の萎縮を調べても、「アルツハイマー型認知症」の早期の段階を見つけることはできません。回復可能な早期の段階を見つけるには、「二段階方式」に代表されるような「神経心理機能テスト」の活用による「前頭葉」の機能レベルの変化を含む脳の働き具合を調べる方法に変える必要があるのです。但し、神経心理機能テストの活用は、回復可能な早期の段階を正確に見つけることができるのですが、保険点数が低すぎるため医療機関としては、高額なCTやMRIとの併用でないと事業的にペイしないので、単独では神経心理機能テストを活用出来ないことが大きなネックになっているのです。

             

 ところで、このブログで「アルツハイマー型認知症」からの「回復の方法」と言うときは、「小ボケ」と「中ボケ」だけを対象として回復の方法を説明しています。「大ボケ」の段階にまで脳の機能が衰えてくると、正常レベルに回復させることは無理だからです。「中ボケ」の段階に回復させることさえも、相当に困難と言わざるをえません。

理由は、「大ボケ」の段階にまで脳の働きが衰えてきていると、とりわけ脳の司令塔の役割をしている前頭葉」の三本柱の機能(「意欲」、「注意の集中力」と「注意の分配力」)が殆ど働かなくなってきているので、どんな「生活改善」(脳の使い方としての「生活習慣」の改善)策を実施しようにも、本人の三本柱の機能がそれに反応することが出来ず(改善策の意味を理解できないし、継続的に実行する意欲が出てこないし、実行に必要なレベルでの注意の集中や分配の機能も働かない)、生活改善の実質的な効果が出てこないからなのです。

情報を伝達する神経線維の働きに問題があるのではなくて、情報を発信する源である脳自体が機能していないことが原因なのです。(脳の働きと神経線維との関係は、ポンプとチューブの関係とおなじであり、ここをクリックしてみてください)

             

(コーヒー・ブレイク)専門家(研究者や医師)は、早くこのことに気付いて欲しいのです。しばしば取り上げられる「老人斑」とか「神経原繊維変化」とかは、「アルツハイマー型認知症」を発症させる原因ではないのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続の下で、脳が加速度的な廃用性の機能低下を起こしていくことの副産物(結果)であって、原因ではないのです。その副産物(結果)を生み出す犯人として、アミロイドベータとかタウタンパクを追いかけている限り、何時まで経っても真犯人(原因)を見つけることが出来ないばかりか、解決策(治療の方法)を見出すこともできないのです。東日本大震災の主な被災地である岩手、宮城、福島の極めて多人数の高齢者たちが、アルツハイマー型認知症を発病(新規の発病及び症状の重症化の急激な進行)してきていると言う事実が、「アルツハイマー型認知症」は生活習慣病であるという私たちの主張を疫学的に証明しているのです。

注)本著作物(このブログA-53に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

         エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

    

 

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アルツハイマー型認知症のチェックリスト(大ボケ)Q/A Room(A-51)

2012-07-19 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:67歳になる私の父は、とても几帳面な上に細かいことにばかり目が向く性格。そのため、人付き合いが苦手です。休日もこれといった趣味や遊びを楽しむこともなく、平凡に大過なく地方公務員を勤め上げ、定年退職しました。退職後は、毎日が休日状態の日々を過ごしていました。母が心配して、ゲートボールにでも行って、遊び友達を見つけたらと言っても、「馬鹿とは遊べん」とか言い、耳を貸しませんでした。朝食の後は、新聞を読んで、お茶を飲んだらテレビを見るだけ。昼寝の後は、近所のスーパーで好きな甘いものを買ってきたら、夕ご飯。夕ご飯の後は、水戸黄門などを見て、風呂に入ったら早々と就寝。判で押したような退職後の毎日でした。

母は、持病で膝に痛みがあり、買出しに行くのも少し不便なので、1年前から毎週土曜日には私が買い出しや家事を手伝いに行っています。父は、昨年の夏ごろから言動におかしな点が目につくようになりました。身の回りのことも手を出してあげないとうまくやれません。失禁があるだけでなくトイレもよく汚しますし、服の着方も変で、ズボンを頭からかぶろうとしたりします。昼か夜かは分かっているのですが、今の季節が何なのかわかっていない様子です。先日私が尋ねたら、「いらっしゃい。どちらさん?」と言われて悲しい思いでいっぱいになりました。これってもう認知症ですよね?

              

A:60歳を過ぎた高齢者が、生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標もない毎日、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続する日々を過ごしていると、出番が極端に少なくなった脳の機能が、廃用性加速度的機能低下を起こしてきて、「アルツハイマー型認知症」を発病します。但し、廃用性の機能低下が原因で発病する老年性の「アルツハイマー型認知症」は、遺伝子の異常が原因で発病し極めて短期間に症状が進行していく若年性の「アルツハイマー病」とは異なり、症状が何年もかけて、徐々に段階的に進んでいくのが特徴なのです。

最初に回復容易な「小ボケ」の段階があって、次いで回復可能な「中ボケ」の段階があって、最後に回復困難な「大ボケ」の段階がくるのです。昨日まで正常だったお年寄りが、一晩寝たら、突然自分の家が分からなくなったり、同居している孫娘の顔も分からなくなったりはしないのです。「キッカケ」を契機にして、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が日々継続するようになって、「小ボケ」の期間が「キッカケ」の発生から0.5~3年、「中ボケ」の期間が4~5年、6年経つと「大ボケ」になるのが大原則なのです。だからこそ、東日本大震災を経験した高齢者の状況を、私たちはとても心配しているのです。「不活発病」などと言う訳の分からない病名などつけて、放置しないで欲しいのです。(「キッカケは、ここをクリック」

5月2日のブログ(N-35)の解説で、大量且つ構造的な発病を予告した通りに、東日本大震災の主たる被災地である岩手県、宮城県及び福島県の高齢者を対象として、極めて多数のアルツハイマー型認知症の発病(新規の発病と症状の重症化)が確認されていることが、新聞でも大きく取り上げられるようになってきました。但し、その新聞に登場した専門家は、それを異常な現象だと捉えていて、構造的なもの言い換えれば、アルツハイマー型認知症発病のメカニズムにかかわるものだと言う認識を持っていないのが極めて残念なことです。アミロイド・ベータやタウ・蛋白が発病の主犯であるとする「学説の主張」は間違っているのです。東日本大震災の被災地の高齢者の状況について、今後数年間にわたって大規模な調査を実施すれば、その実態から私達の説が正しいことが、「疫学的に証明」されることになるはずです。(N-35は、ここをクリックしてください

              

認知症の末期の段階であり、私達の区分で言う回復が困難な「重度認知症」(大ボケ)の段階は、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)を含む脳全体の働きが「中ボケ」(N-50で説明)のときよりも更に異常なレベルに加速度的に衰えてきています。然し、衰えてきて司令塔の「前頭葉」の認知機能が殆ど働かなくなっているとはいえ、左脳と右脳と運動の脳の働きは未だある程度残っています。

重度認知症(大ボケ)の段階になると、脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」が寝たきり状態になって殆ど機能していないのです。前頭葉の「三本柱」の意欲、注意の集中力及び注意の分配の機能が殆ど働かないので、いろいろな場面で要求される「認知機能」自体が殆ど働いていない状態なのです。そのアウトプットが、「大ボケ」の症状となって現れてくるのです。直前に食事をしたことさえ覚えていない「重度の記憶障害」の症状などは、その典型です。脳の機能レベルは3歳児以下のレベルであり、これまでの人生で何度となく体験して体に浸み込んでいるようなテーマや会話には、或る程度の対応ができるのですが、体に浸みこむほどの経験がないテーマや通常レベルでの会話には殆ど対応できなくなっているのです。

       

但し、4歳児以下のレベルといっても、症状が進行するにつれて、「脳機能年齢」は急速に0歳に向かって衰えて行くことになり、同時に「症状」が重くなっていきます。アルツハイマー型認知症は。脳がもたないのに、身体がもつのが特徴なのです。そのため、症状が進行するにつれて左脳も右脳も機能が急速に衰えて行くのに対して、身体だけは持つのです。重度認知症(大ボケ)は、MMSの換算値で14点~10点迄の人と10点を切った人とでは、全く別の視点からの介護対応が必要になると考えてください。

認知症の専門化が気づかず見落としていて、施設の職員も理解していないのが、「脳の機能レベル」のアウトプットが「症状の程度」として現われてくるものだという点です。状況に応じた会話ができないと言うことは、相手方の話の内容を理解できていないと言うことなのです。施設の職員が、「大ボケ」レベルのお年寄りに、話が一向に通じないのに、一生懸命話しかけている姿をテレビでよく見かけますが、この点を理解していないからだと思います。

             

脳の司令塔の「前頭葉」が殆ど働かなくなる結果、意欲、注意集中力及び注意分配力が殆ど機能しないので、思考にかかわる認知とその保持及び想起が極めて不完全なレベルでしか機能しない「重度認知症」(大ボケ)は、自分の身の回りのことをする「セルフケア」にも支障が出てきます。

食事をしたり、服を着たり脱いだり、お風呂に入ったり、トイレの後始末をしたりといった、身の回りのことも自分でできなくなり、日常生活に介助が要るようになるのです。「大ボケ」レベルになると、下図に見るように、「前頭葉」は殆ど働かなくなってきているのがお分かりだと思います(横軸が、「前頭葉」の働き具合を示しています)。

              

認知症の専門家と言われる精神科医達は、「DSM-4」の規定を金科玉条と考えているので、この段階にまで「脳の働き」が衰えてきて(その結果として、重度の記憶障害や失語や失行や失認などの重い「症状」が出てくるようになって)、「重度認知症」の段階になって初めて、「アルツハイマー型認知症」だと診断しているのです。それより軽い段階、私達の区分で言う「軽度認知症」や「中等度認知症」の段階は、「不活発病」や「老化現象」として見落とされ、放置されているのが現状なのです。

               

 「大ボケ」レベルでの「中核的な症状」の特徴を挙げると、次の3つです。

「時の見当識」:今日が何年何月何日なのか、今の季節は何なのか、今の時刻はいつ頃なのか(朝なのか、昼なのか、夜なのか)が分からなくなるので、夜中でも歩き回ったり、騒いだり、外に出て行こうとしたりするようになります。

「所の見当識」:自分が今居る場所がどこなのかが分からなくなるので、自分の家であることも分からなくなり、自宅に居ても落ち着かなくなります。何かの拍子に家の外へ出ると、自宅がわからないので、徘徊し迷子になります。

「人の見当識」:「大ボケ」の初期のころは、家族の名前を正確には言えない程度ですが、中期には対面している家族の顔も分からなくなります。それを過ぎると、同居している家族の名前も顔も分からなくなります。

               

以下に、「二段階方式」の判定基準である「大ボケ」に特有の症状を列記しておきます。同居のお父さんに該当する症状がいくつあるか、チェックしてみてください。3つ以上に該当していると、「大ボケ」であることが疑われます。基本的に、症状が軽いものから重いものへと並べてあるので、この先出てくる症状の参考になるはずです。

□ 着ている服を脱ぎたがらず、便で汚れた下着をそのまま平気で着ている

□ 風呂に入るのを嫌がる

□ 服を正しく着られず、ズボンを頭からかぶったり上着に足を通したりする

□ 家族の名前を間違えたり、子供を配偶者と間違えたりする

□ 食事やあいさつをしたことなど直前に起きたことをすぐに忘れてしまう

□ 家庭生活に全面的な介助が必要(食事、入浴、排泄)

□ 自宅に居ても落ちつかず、出て行きたがる

□ 大小便を失敗しても、後の処置ができない(大小便で汚れた下着を、押し入れなどに隠すようなこともあります)

□ 自宅の方向が、たびたびわからなくなる

□ 同居している家族の名前も顔もわからない(家族かどうかも分からない)

□ 今は昼なのか夜なのかがわからなくて、夜中に騒ぐ(夜中に起きてくる、家中の電気をつけて回る、会社に行くとか田んぼに行くとか言い張る)

□ 痛んだものを平気で食べ、食べ物でないものを口にする

□ 独り言や同じ言葉の繰り返しが目立つ

□ 誰も居ないのに「人が居る」と言ったりする

             

 注)本著作物(このブログA-51に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

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 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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アルツハイマー型認知症のチェックリスト(中ボケ)Q/A Room(A-50)

2012-07-12 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:私は、「軽度認知障害」と診断されている73歳になる義父と同居しています。食事の準備は私がしてあげますが、食事を摂ること自体は自分で出来るし、衣服も自分で身に着けられるし、入浴や排泄も自分で出来るので、セルフケアは一応出来るレベルなのです。但し、どれもまるで5~6歳の幼児がする程度にしかできません。

義父は、この頃「物忘れ」がひどく、日にちが分からないどころか、今が何月なのかも分からないことが多いのです。私自身は、義父が何時「アルツハイマー型認知症」を発病するか、とても不安な毎日を過ごしているのですが、肝心の義父は、「私は、なんともないよ」といたって平気で、認知症のことなど全く心配している様子がないのです。

        

A:前回のQ/Aでも説明しましたが、「軽度認知障害」の概念はとても幅広く、基準となる定義自体があいまいです。更に、アルツハイマー型認知症を発病する可能性について専門家が提起している%自体も、因果関係が極めてあいまいなのです。特別意味がある数値とは考えられません。

私達独自の区分であるアルツハイマー型認知症の最初の段階の「軽度認知症」(「小ボケ」)の段階に見られる症状は、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の三本柱である意欲、注意の集中力及び注意の分配力が異常なレベルに衰えていることのアウトプットです。そのため、「前頭葉」の機能の衰えの程度に無関心な専門家達からは、何事にも意欲を示さない症状を特徴とする「不活発病」というレッテルを冠せられるだけの程度にしか見られていないのです。それが、「アルツハイマー型認知症」の最初の段階とは考えられてもいないのです。もちろん本人も、家族も同様です。しかも、意欲をなくしてただ「ぼんやりと過ごすだけの毎日」に陥っていくだけの確かな「キッカケ」がどのケースでも必ずあるので、余計に納得してしまうのです。あんなことが(あれだけのことが)あったのだから、意欲をなくしてしまうのも当たり前だよなと皆が考え納得してしまうのです。(「キッカケ」については、ここをクリックしてください)。

       

明確な「キッカケ」があるがために、本人も周りの家族もみんな納得して、「ぼんやりと暮らすだけの毎日」に対して、何の疑いも抱かずにそのまま見過ごしてしまうのです。生き甲斐もこれといった目標もなく、何かに感動したり、喜びを覚える出来事もなく、そのうえ、趣味も交友も楽しめず、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な毎日」を過ごしていると、「脳の老化」が更に加速度的に進んでいき、私達の区分である次の段階の「中等度認知症」(「中ボケ」)の段階がやってくるのです。

軽度認知症(「小ボケ」)の次の段階を私たちは、「中等度認知症」(「中ボケ」)と呼んで、末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)の段階と区別しています。認知症の専門家たちは、末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)の段階にならないと認知症とは認めていません。ところが、「軽度認知症」の段階なら「回復が容易」で、「中等度認知症」の段階なら「回復が可能」であるのに対し、「重度認知症」の段階になると「回復は困難」になるのです。回復困難な末期段階(私たちの区分で言う「重度認知症」の段階)でアルツハイマー型認知症を見つけることに何の意味があるのか、医師としての社会的使命は放棄されてしまっているのではないかと言いたいのです。

        

この「中等度認知症」(「中ボケ」)の段階は、脳の司令塔の「前頭葉」の働きが「小ボケ」のときより更に異常なレベルに衰えてきています。その上、「小ボケ」のときは未だ正常だった「左脳」と「右脳」の働きも異常なレベルに衰えてきているのです。「中ボケ」の段階になると、脳全体の働きが異常なレベルに衰えてきて、状況や物ごとの理解や判断が幼稚で、「社会生活」面だけでなく「家庭生活」面でもトラブルが起きてくるようになります。但し、「セルフケア」自体には未だ支障が起きてきていません。従って、認知症の専門家たちは、この段階を「認知症」のレベルとは考えていないのです。単なる「老化現象」としか捉えていないのです。症状は、脳の働き具合(機能レベル)のアウトプットなのだから、症状と脳の機能レベルとをリンクさせた診断が不可欠になるのです。脳の働きのレベルが良いのに、重い症状が出てくることはないのです。

「中ボケ」の段階になると、食器の片付けや、洗濯物の取り込み、庭の草むしりといった、「家庭内の簡単な用事」程度のこともちゃんとできなくなります。「4~6歳の幼児」がやる程度にしかできないのです。せっかく洗ってくれたお茶碗はもう一度洗いなおさないといけないし、庭の草取りをしてもらうと花の苗まで抜いてしまいます。家庭内の簡単な用事程度のこともちゃんとできないのに口だけは一人前、「言い訳の上手い幼稚園児」が「中ボケ」の特徴です。

       

下図の横軸は、前頭葉の三本柱である意欲、注意の集中力及び注意の分配力の働き具合を示しています。縦軸が左脳と右脳の働き具合を示しています。前頭葉を中心とした脳の働きのレベル(働き具合)のアウトプットが、症状として現れる(症状の程度:脳の働きのレベルが低くなるほど、症状が重いものとなる)ことに専門家は早く気づいて欲しいのです。

      

「中ボケ」レベルでの「中核的な症状」の特徴を挙げると、次の4つです。

他人との関わりのある社会生活は送れていないので、「何度教えても、日付けがあやふや」になります。

服用の指定のある薬を指定通りに飲めなくなるので、家族が服用の管理を注意してあげる必要があります。

身だしなみに気をつける必要性や状況を理解できないので、身だしなみにむとんちゃくになります。

今が昼なのか夜なのかはまだ理解できても、今の季節が何時なのかを理解する時の見当識が揺らいできていて、季節や目的に沿った服が選べなくなります。

        

以下に、「二段階方式」の判定基準である「中ボケ」に特有の症状を列記しておきます。義父の日々の生活実態に常態として見られる症状が、いくつ当てはまるかチェックしてみてください。基本的に軽いものから重いものへと順番に並べてあるので、この先出てくる症状が分かるはずです。

 【中ボケのチェックリスト】

(4つ以上に該当していると、「中ボケ」のレベルであることが疑われます)。

□ 何度教えても日付けがあいまいになる(注1)

□ 簡単な計算ができない(お札ばかりで買い物をし、やたらと小銭がたまる)

□ 電気やガスの消し忘れ、水道の蛇口の閉め忘れなどが目立つ

□ 家庭内の簡単な用事程度のこともきちんとできない(部屋や洗濯物の

整理、食後の片付け、畑や庭仕事などがきちんとできなくなる)

□ お金や持ち物のしまい場所をすっかり忘れてしまい、一日中探している

□ 自分が飲む2~3種類の服薬管理ができない

□ 服の着方に無頓着で、重ね着が目立つ(セーターの上からシャツを着

る。裏表や前後ろに着る。入浴後、着ていた下着の上に新しい下着を着

る)

□ 入浴時の温度管理が出来ず、体を洗わないとか石鹸がついたままとかする

□ 周りを汚したり流してないなど、トイレの後始末がきちんとできない

□ 料理の味付けが変になる(特に、塩加減が極端に変になる。塩辛す

ぎて、周りが食べられないようなものを作り、本人だけが平気で食べる)

□ 行き慣れている所に行くのに、スムーズに行けない(行き先の違う乗

り物に乗ったり、行き道を間違えたりする)(注2)

□ 自分の子供の数、生まれ順、居住場所の説明がきちんとできない

□ 季節が分からなくなる(夏にセーターなど、季節違いの服を平気で着

る)

□ 昨日の出来事をすっかり忘れてしまう

□ 物盗られ妄想(物の置き場所を忘れて、相手が隠したとか盗んだとか

言う)とか、世話をしてくれる人に対して口汚くののしる行為とかがある

        

(コーヒー・ブレイク) 「時の見当識」は、日、年、月、季節、昼夜の順に衰えていきます。  何度教えても日付けがあやふやになるのが中ボケの始まりで、何月なのかがあやふやになると中ボケの中期、季節があやふやになると中ボケの末期です。

注1)     「見当識」が低下していく順番は、「時の見当識」→「所の見当識」→「人の見当識」となります。「小ボケ」では、「時の見当識」にも「所の見当識」にも未だ問題は起きてきません。「中ボケ」になると、「時の見当識」は、上述の通り。「所の見当識」にも、前述のチェックリストに見るような問題(注2)が起きてきます。  

 注)本著作物(このブログA-50に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。 

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アルツハイマー型認知症のチェックリスト(小ボケ) Q/A Room(A-49)

2012-07-05 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:長年連れ添ってきたしっかり者の奥さんを3年前に亡くしてからは、隣の町で一人暮らしをしている73歳の兄のことです。夫婦で国内旅行を時々楽しむ以外これといった趣味もなかった上に、人付き合いが苦手な兄は、テレビを見て暮すだけの毎日なのです。ボケるのを心配して、ときどき私が訪ねて行って話し相手をしていました。最近物忘れがひどいので、気になって近所のお医者さんに診ていただいたところ、「軽度認知障害」で、この先「アルツハイマー型認知症」を発病する可能性があると言われました。

       

A:認知症の専門家たちの間で提唱されている「軽度認知障害」は、「正常」と認知症(専門家が「認知症」というときは、私達の区分で言う末期の段階の回復が困難な「重度認知症」のことです)との間にある概念だとされています。従って、私達の区分で言う、早期の段階の回復可能な「軽度認知症」と「中等度認知症」は、「軽度認知障害」の中に含まれることになります。いづれにしろ、「軽度認知障害」の基準は定義自体があいまいで、且つ幅が広すぎるので、客観的な診断基準というにはほど遠い内容です。

「アルツハイマー型認知症」の初期(最初)の段階であり、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)は、左脳と右脳と運動の脳は正常レベルなのですが、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の働きだけが異常なレベルに衰えてきているのです。そのため、「前頭葉」の機能のうち最も重要な「三本柱」の機能である意欲、注意集中力及び注意分配力が十分且つ的確には発揮できなくなります。この「三本柱」の機能の相乗効果としての発揮度合いが、いろいろな認知機能の対象となる情報や思考の処理にかかわる「認知度」を左右しているのです。その結果、小ボケの段階では、この「三本柱」の機能障害を示す症状が「小ボケの症状」として特徴的に現れてくるのです。

「三本柱」の機能がいろいろな認知面で的確に発揮されなくなる結果、対象となる情報や思考の認知と処理並びに記銘とその保持及び想起の面でも、機能の発揮が不的確で不十分なものとなります。その結果、的確な状況の判断、発想、計画、創意、工夫、機転や見通しなどが要求される「社会生活」に支障が出てくるようになり、社会生活面での種々のトラブルが生じてくるようになります。勿論、この段階では、「家庭生活」面にも「セルフケア」にも何の支障も起きてきません。それぞれの段階で必要とされる「脳の機能のレベル」が異なるからです。(「小ボケ」の脳の機能レベルは、ここをクリック)、(「中ボケ」は、ここ)、(「大ボケ」は、ここ)。

       

その「小ボケ」レベルでの「中核的な症状」の特徴を挙げると、次の5つです。

自分の置かれている状況を的確に判断できなくなります。

発想が湧いてこなくて、見通しも立たないので、この一日或いは一週間、何をどうするのかという「テーマの発想と計画」が出来なくなります。

何かをしようとする「意欲」が出てこなくなり、毎日をボンヤリと過ごして、居眠りばかりするようになります。

何事をするにつけても人を頼るようになり、指示してもらわないと動けない「指示待ち人」になります。

その人らしい「生活態度」が消えていき、「こんな人ではなかったのに」と周りから言われるようになります。

                  

以下に、「二段階方式」の判定基準である「小ボケ」に特有の症状を列記しておきます。夫婦で国内旅行を楽しんでいたころのお兄さんには見られなかったもので現在該当する症状が、いくつあてはまるかチェックしてみてください。4つ以上に該当すると、「小ボケ」の可能性があります。

□ 複数のことに注意が分配できなくて、3つの用事が同時にさばけない

□ 機転がきかなくて、創意工夫ができない

□ 発想が乏しくて、画一的な行動が目立つ

□ 何事をするにも億劫で面倒がり、何かをやってみようという意欲が見られない

□  同じ食材を買ってくることが多く、料理の献立の単調さが目立つ

□ 一日や一週間の計画が自分で立てられず、なにも思いつかない様子

□ 朝は遅くまで起きてこないのに、気がつくと居眠りしている

□ これまでなら感動していたことに対して感動しない

□ 問いかけに対する反応が遅く、生き生きした笑顔がほとんど見られない

□ ぼんやりしていることが多く、自分から何もしないが指示されるとできる

□ 根気が続かず中途半端なことを繰り返し、やりかけの家事が目立つ

□ 目の光がどんよりしていて、顔つきが無表情

□ 反応が遅く動作がもたもたしていて、階段をトントンと降りられない

□ 歩くとき前屈みの姿勢で、小股でトボトボと歩く

□ 料理の手際が悪くなり、家族数に関係なく多すぎる量の料理を作る

□ 自分に自信がなくなり、何かにつけ人を頼ろうとする

□ 髪の手入れや、おしゃれに無関心

□ 同じ内容を繰り返して話し、そのことに本人が気づかない

□ 会話の最中唐突に、一方的に言いたいことを言い相手の話しを聞かない

□ 思い込みや思い違いが多く、指摘しても訂正や変更ができない

□ これまでなら楽しんでいた趣味や外出や旅行を嫌がる

         

(コーヒー・ブレイク) 60代以降の高齢者が何かを「キッカケ」にしてナイナイ尽くしの「単調な生活」(目標もなく喜びや生き甲斐もない生活、趣味や遊びや人付き合いもなく運動もしない生活)を続けていると、出番が少なくなり使われる場面が極端に減った前頭葉が加速度的な廃用性の機能低下を起こしてきます。脳の老化が加速されていき、働きが急速に衰えてくるのです。脳の働きが加速度的に衰えてくるその先に、「アルツハイマー型認知症」が待っているのです。(認知症発病のメカニズムについては、ここをクリックしてください)。(小ボケからの回復については、ここをクリックしてください)。

 注)本著作物(このブログA-49に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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アルツハイマー型認知症の「脳の働き」と「症状」との関係 Q/A Room (A-48)

2012-06-28 | 認知症に対する正しい知識のQ&A
Q:私達夫婦には子供がいない上に、来年には揃って古希を迎えます。年をとってきて一番恐ろしいのは、認知症のことです。認知症の大多数を占める「アルツハイマー型認知症」は、「脳の働き」が衰えることでいろいろな「症状」が出てくる病気と聞いています。正常でない「脳の働き」とはどんなことを言っていて、そのレベルの脳の機能と「症状」との関係はどのようになっているのでしょうか。
       
A:先ず、脳の構造について簡単に概観を述べておきましょう。脳は、大きく4つの機構から成り立っているのです。事故や脳卒中などにより脳が損傷や障害を受けた人をたくさん調べると、脳は場所によって働きが異なり(機構ごとに役割が異なり)、「機能の分担」をしていることが分かります。
 
頭のてっぺんの所には、運動の脳」があります。脳卒中で半身麻痺になる人がいます。運動の脳の左の部分が壊れると右半身麻痺が起き、右の部分が壊れると左半身麻痺が起きます。「運動の脳」は体を動かす働きをしているのです。
 
脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事等をする為の左脳」があります。左脳が障害を受けると、論理を操れなくなり、言葉が出てこなくなり、計算もできなくなります。「左脳」は「言葉の脳」、或いは「仕事の脳」とも言われ、言葉や論理や計算といった「デジタルな情報」の処理を担当しているのです。
       
脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあい等を楽しむ為の右脳」があります。右脳が障害を受けると、色や形や空間の認知ができなくなります。「右脳」は「感性の脳」、或いは「趣味や遊びや人付き合いの脳」とも言われ、色や形や音、感情や感覚といった「アナログな情報」の処理を担当しているのです。
 
額のところには、脳の最高次の機能を担っている「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)があります。前頭葉には、発想したり、計画したり、工夫したり、注意を集中したり、注意を分配したりといったいろいろな働きが詰まっているだけでなくて、もう一つ、脳全体の司令塔の役割という大事な働きがあります。「前頭葉」は、運動の脳、左脳、右脳を統括していて、状況の判断のもとに、それぞれが勝手に働かないようコントロールする、脳全体の司令塔の働きをしているのです。
      
認知症の「症状」は、前頭葉を含む「脳の働き具合」(脳の機能レベル)の衰えとその結果(アウト・プット)なのです。脳の機能が全般的に正常レベルであれば、認知症の症状は出てきません。脳の機能が異常なレベルであれば、認知症の症状が出てくるのです。但し、全ての意識的な行為は、コントロールタワーである「前頭葉」の機能レベルの影響を受けるので、最高次機能の前頭葉だけが正常なレベルでなくなり、左脳、右脳及び運動の脳が正常レベルであっても、アウトプットである行為のレベルは正常レベルではなくなり、認知症の症状が発現してくるのです。「DSN-4」の基準が正しいと信じ込んでいる認知症の専門家達は、この点に気づいていないのです。
 
食事をしたばかりなのにそのことさえ忘れてしまう(思い出せない)「重度の記憶障害」の症状を呈してくるようになる(これは、「前頭葉」がほとんど機能しなくなる「重度認知症」の段階の症状)はるかに前の段階で、左脳や右脳の働きは正常レベルでも「前頭葉」の働きが異常なレベルになった段階で、「アルツハイマー型認知症」はすでに始まっているのです(これが、「軽度認知症の段階」)。
      
「脳の機能が全般的に異常」という要件を「前頭葉の機能が異常」という要件に変更するとともに、その段階で発現する「特有の症状」とリンクさせて判定できる診断基準に変えてやらないと、認知症の最初の段階で「回復容易」な段階である「軽度認知症」(小ボケ)を見落としてしまうことになるのです。従って、脳の機能がどのレベルにあるのか及びそのレベルであればどのような症状が出てくるのか、言い換えれば「脳の機能レベル並びに脳の機能レベルとリンクした特有の症状」を判定基準として、診断することが必要となるのです。医療機関が良く使用する「CT」や「MRI」等の機器では脳の形しか計測できないため、費用が高価なのにこうした判定はできないのです。唯一つ可能で有効なのが、「二段階方式」のような費用が極めて安い「神経心理機能テスト」の活用なのです。(CTやMRI使用の問題点については、ここをクリックしてください
       
「アルツハイマー型認知症」であるかどうかの診断(判定)や、症状の程度の判定並びに「アルツハイマー型認知症」の原因及び回復可能な早期の段階を見つけるには、「症状と脳の働き具合」との関係を基礎とすることが不可欠になります。世間では、脳の委縮の度合いや重度の「記憶障害」を含む重い症状から「アルツハイマー型認知症」の診断を行っていて、回復困難な末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)を見つけているだけなのです。これでは、せっかく見つけても手遅れ、「アルツハイマー型認知症は、原因も分からないし、治らない病気」にされてしまうのです。
       
最近、「軽度認知障害」という概念が専門家たちから提起されてきていますが、その問題点については、前回(N-47)で指摘した通りです。私達の「二段階方式」では、極めて多数に上る「脳の働き具合と段階ごとの特有な症状との関係」のデータの分析から、「アルツハイマー型認知症」の判定、特に回復可能な早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ及び「中等度認知症」(中ボケ)を見つけることができるのです。

認知症が専門の精神科医は、認知症の患者は脳が全般的に正常に機能しなくなった結果として、「社会生活」や「家庭生活」や「セルフケア」に支障が出てくる病気を言うとしながら、「症状」については回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の症状だけを取り上げているのです。「社会生活」に支障が出てくる段階と「セルフケア」に支障が出てくる段階とでは、「脳の機能レベル」も「症状の程度」も全く異なる(次元が異なると言える程の差がある)のに、そのことにさえ気づいていないのです。テレビの番組で、30代や40代のお笑い芸人たちの「物忘れの症状」を取り上げて、「アルツハイマー型認知症」の発病の危険度をうんぬんする名医と言われる人の発言には、驚くばかりです。(「物忘れ」については、ここをクリックしてください

「意識的な行動」は、脳の司令塔の「前頭葉」が左脳や右脳や運動の脳と協働しつつ、それらをコントロールして実行されています。私達が提唱している「二段階方式」では、認知症のレベルは、前頭葉を含む脳の働き具合(脳の機能レベル)とそれにリンクした特有の症状との関係で厳密に規定されており、「三つの段階」に区分します。区分するレベルは、軽度なレベルから順番に社会生活に支障が出てくる「軽度認知症」(小ボケ)、家庭生活に支障が出てくる「中等度認知症」(中ボケ)、セルフケアに支障が出てくる「重度認知症」(大ボケ)となります。回復の可能性から区分すれば、「小ボケ」は回復容易であり、「中ボケ」は回復可能であり、「大ボケ」は回復困難なのです。 (ここをクリックしてください)                

 

上の図は、「前頭葉」によるコントロールの下で協働しながら働く「脳の働き」の衰え方を、「二段階方式」に基づく「神経心理機能テスト」を使って調べた結果を示しています。「社会生活」が支障なくできていた脳の働きが、ナイナイ尽くしの単調な生活の継続により老化が加速されることで、正常な老化の域を超えて加速度的に脳の機能の衰えが速まっていくとき、「衰え方の順序がある」のです。「社会生活」に支障が出てきて、「家庭生活」に支障が出てきて、「セルフケア」に支障が出てくる原因である「脳の機能の衰え方に順序がある」こと及び脳の機能の衰えの段階ごとに「特有の症状がある」ことがが分かるのです。

脳全体の司令塔の役割をしている前頭葉が先に衰えていきます。次いで、前頭葉と相互に情報のやり取りをしている左脳と右脳が衰えていくのです。

 さらにもうひとつ重要なことがあります。前頭葉の働きが衰えてきて「異常なレベル」になっている人達、言い換えると「アルツハイマー型認知症」の症状を示している人達は、脳の働き具合とそれに対応した特有な症状のレベルから区分すると、軽いほうから「小ボケ」(社会生活に支障)、「中ボケ」(家庭生活に支障)、「大ボケ」(セルフケアに支障)の「三つの段階」に区分されるのです。早期の段階の「小ボケ」と「中ボケ」は回復可能なのですが、末期段階の「大ボケ」は回復困難なのです。 

注)本著作物(このブログA-48に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

         エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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介護及び介護予防は、何を基準に考えるのか  Q/A Room (Aー47)

2012-06-21 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 私は、デイサービスの施設の経営者です。施設に通所されているお年寄りの中には、「正常」者もいれば「軽度認知障害」の方もいれば「アルツハイマー型認知症」の方もいらっしゃいます。その方たちへの「介護の対応」及び「介護の予防」の「テーマ」や対応の仕方或いは実施の内容を適切にするための差別化をするには、何を「基準」にしてどのように考えたら良いのでしょうか。

             

A:私たち人間は、脳が考えるところに従い行動しているのです。特に、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の働き及びそのレベルが極めて重要であり、その点が前頭葉を持たない人間以外の動物とは異次元のレベルの行動となって表れるのです。アルツハイマー型認知症の原因を解明するための研究、或いは認知症の回復に効果がある薬の開発のための研究に日夜励んでいる人達がいます。その人達は、サルよりもはるかに脳の機能が劣る「ラット」を使って、迷路の中を行き来させて餌を探させることにより、「記憶」が良くなる効果があったかどうかを基準にして評価しているという報道をよく見かけます。

「ラット」には、「前頭葉」はありません。こうした人達は、記憶を含む「認知」に「前頭葉」が極めて重要で不可欠な役割を担っていることに気づいていないか、或いはそのことを見落としているのです。末期段階の「重度認知症」の段階にあった「アルツハイマー型認知症」の患者の「解剖所見」を基礎とする従来の発想を転換して、「前頭葉」が支配している「認知の程度と態様」という視点を持たない限り、アルツハイマー型認知症の原因解明に到達することはないでしょう。治療薬の研究については、飲むだけでアルツハイマー型認知症が治るような薬の開発はありえないと考える根拠については、このブログで既に指摘している通りです。

        

状況を判断して、その状況に即したテーマを発案し、起きるべき結果についていくつかのパターンをシミュレーションし、実行した時の予測される結果を評価機能に基づき評価した上で、最終的な実行内容を選択決定し、脳の各部に指令を出す。これが司令塔である「前頭葉」の働きなのです。これらは全て脳の「認知機能」の発現の「態様」であり、且つ実際の行為や行動の場面では、そうした「認知機能」が発現している「程度」が重要になるのです。私達の意識的な行為や行動は、全てこのメカニズムの下で実行されているのです。

       

「記憶」は、前頭葉のいろいろな機能を発揮する上で必要不可欠ではあるが、その「手段」としての機能にすぎないのです。「意識的な行為」を支配している主たる機能は、あくまで「前頭葉」であり、「記憶」は従たる機能(手足)にすぎないのです。アルツハイマー型認知症の原因を解明するには、「前頭葉」が働いているメカニズムとその働き具合とに注目し、その機能レベルを「神経心理機能テスト」で計測することが不可欠になるのです。「前頭葉の機能障害」を「アルツハイマー型認知症」判定の第一要件とすべきなのに、「記憶の障害」を第一の要件とする「DSM-Ⅳ」の診断基準には、この点からみても重大な誤りがあると言わざるを得ないのです。これでは回復困難な末期段階の重度認知症(「大ボケ」)しか見つけることが出来ず、回復可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」)を見落としてしまうことになるのです。「前頭葉」については、ここをクリックしてください)。

「認知症」の専門家達も薬の開発に従事している人達も、「前頭葉」の中核的な機能でありその三本柱をなす「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」が「記憶」の対象範囲及びその「程度」と「態様」と不可分の関係にあることに気づいていないのです。食欲に基づいて餌を探す「ラット」の行動に発現する程度態様の記憶と、脳の司令塔の「前頭葉」の働きに基づく人間の行動に発現する程度態様の記憶とは「異次元」のものなのだと言うことに早く気づいて欲しいと願うのです。「記憶については」、ここをクリックしてください)。

           

「正常」者ということは、意識的に何かをしようとする時に不可欠の脳の機能である「認知機能」の働き具合(レベル)が正常だと言うことなのです。「軽度認知障害」の方も、「アルツハイマー型認知症」の方も、どちらも「認知機能の障害」が基本にあり、正常に働いていないのです。問題は、「認知機能の働き具合」がどの程度なのかにあるのです。意識的に何らかの「テーマ」を実行しようとする際に働く脳の働き具合言い換えれば脳の「各認知機能の働き具合」の相乗効果としてのアウト・プットが行為(或いは症状)として及びその程度、態様として発現してくるものなのです。逆に、「症状」は程度や態様が様々なので、「症状」から「認知機能の働き具合」を的確に測ることはできないのです。

頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があります。 脳の後ろの左側部分には、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理している「左脳」があります。 脳の後ろの右側部分には、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理している「右脳」があります。額のところには、脳全体の司令塔の働きをしている「前頭葉」があります。(ここをクリックしてください

              

私たちが意識的に何かのテーマを実行しようとするとき、どのようなテーマをどのように実行するか、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して、シミュレーションしたうえで決定し、指令を出しているのです。その「前頭葉」には、発想したり、計画したり、工夫したり、推理やら洞察をしたりするための様々な働きが詰まっています。更に、自分の置かれている状況を判断し、実行テーマの内容や実行の仕方を種々ケースワークした上で、最終的な実行内容を選択し決定するために必要な、人間だけに特有の「評価の物差し」という大事な機能があります。

 これが、意識的な行為における脳の働き方の全体像なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という三頭建ての馬車をあやつる御者の役割をしているのが、「前頭葉」なのです。 三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、前頭葉の働き次第ということなのです。「前頭葉」を含む脳の機能レベルとそれにリンクした行為や症状を的確に測ることが差別化を実行する上で不可欠になります。それらを的確に計測できるのは、CTでもMRIでもなくて、私達が開発した「神経心理機能テスト」を中心とした「二段階方式」の手技なのです。

               

 脳の働き(「認知機能」)が異常なレベルに衰えてきて、そのために社会生活や、家庭生活やセルフ・ケアに支障が起きてくるのが、「アルツハイマー型認知症」という病気なのですが、精神科医が「認知症」と診断するときは、私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)のレベルだと言うことに注意してください。大ボケのレベルにまで脳の機能(「認知機能」)が衰えてきていると、「中ボケ」や「小ボケ」或いは正常レベルへの回復は困難であり、「大ボケ」の中での更なる重症化を遅らせることだけが可能な目標となるのです。

「軽度認知障害」の基準を提唱する人達によると、それは正常と「認知症」の中間に位置付けられています。「認知機能」の働き具合が正常レベルではないとされているのですが、「認知症」のレベルというほどには衰えていないということなのです但し、精神科医の言う「認知症」のレベルとは、回復困難な「重度認知症」のレベルのことなのです。従って、「軽度認知障害」の基準は極めて幅広く且つ定義自体があいまいであり、対象とされている人達は「正常」と「重度認知症」(大ボケ)との中間に位置することになります。それらの中」には、「アルツハイマー型認知症」の回復可能な早期の段階、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)及び「中等度認知症」(中ボケ)に相当するレベルの人達も含まれることになります。

      

「介護」及び「介護の予防」の中心となる脳を活性化する「テーマ」の遂行による効果を最大限にあげるには、通所施設での「テーマ」の実行だけでなく、在宅での「テーマ」の実行も重要です。「テーマ」の実行により脳を活性化させるには、実行する意欲がわき、実行結果から喜びや感動或いは生き甲斐が得られ、継続的な実行目標が設定できるような「テーマ」であることが重要です。それには、右脳と運動の脳をしっかり使う「テーマ」であることがキーとなります。施設で良く取り上げられている、「一桁の簡単な足し算や引き算」をしたり、「平仮名で書かれた文を音読」するだけの「テーマ」では、脳を活性化する効果は余り期待できないのです。「前頭葉」の三本柱である、「意欲」と「注意の集中力」と「注意の分配力」とが向上してこない限り、「認知機能」の働き具合(レベル)は向上してこないからです。

私達の「二段階方式」では、アルツハイマー型認知症は、三つの段階に区分されます。「小ボケ」も「中ボケ」も「大ボケ」も全て「前頭葉」を含む「脳の機能レベル」とそれにリンクした症状(それぞれのレベルに特有の、限定された症状群)で規定された基準に従い判定されます。更には、脳を活性化する「テーマ」の実行結果について、「脳の機能レベル」及び「症状の変化の度合い」を的確に評価できる(改善、維持又は悪化)ので、その「脳の機能レベル」に合致した的確な「対応」と脳を活性化させるための適切な「テーマ」の設定及び実行が可能になります。また、それらのデータは、こうした目的の為に特別に開発されたソフト(「エイジング」)を活用することにより、個別及び集団別に時系列管理が出来ます。

       

「介護」或いは「介護の予防」という目的を遂行する上で、「脳を活性化」させることが不可欠となります。脳を活性化させるには、その人の「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」(内容、程度、態様)を実行させることが必要です。「正常」、「正常下限」、「小ボケ」、「中ボケ」(前期)、「中ボケ」(後期)及び「大ボケ」に区分される、それぞれの「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」であることが大前提になるのです。「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」でないと効果が薄れてしまうか、実行すること自体が難しくなるからです。

正常者は、「小ボケ」の人達に適した内容(程度、態様)の「テーマ」では、レベルが低すぎて実行する意欲が出てきません。実行しても達成感が得られません。その一方で、「小ボケ」はテーマの目的を理解して、自分なりの工夫をすることが出来ますが、「中ボケ」のレベルになると、自分なりの工夫を期待することはできません。「小ボケ」と「中ボケ」とは、脳の機能レベルが違いすぎて、一緒に同一内容の「テーマ」を実行させるのは意味がありません。

また、同じ「中ボケ」の中でも、「中ボケ」(前期)のレベル(MMSの換算値で20点以上のレベル)であれば、「集団に設定企画されたテーマ」を遂行できるのですが、「中ボケ」(後期)のレベル(MMSの換算値で19点以下のレベル)になると、「個別に設定企画されたテーマ」でないと遂行できなくなります。勿論のこと、「大ボケ」レベルの人に対しては、中ボケよりもさらに達成目標のレベルを下げた「テーマ」を個別に設定し実行させることが必要となります。「小ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「中ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「大ボケ」については、ここをクリックしてください

       

(コーヒー・ブレイク) 「アルツハイマー型認知症」の人に適切な介護をするにも、「軽度認知障害」の人が精神科医が言う認知症のレベル(この場合は、「大ボケ」)に脳の機能が衰えていくのを予防するにも、「脳の働きという物差し」が不可欠になるということなのです。その場合、脳全体の司令塔の働きをしている「前頭葉」を含む脳の機能レベル(働き具合)を測ることが不可欠になるのです。但し、脳の機能レベルを測るだけでは不十分です。「軽度認知障害」の人であれ、アルツハイマー型認知症の人であれ、脳の機能レベルにリンクした「症状」という視点と物差しを持つことによって初めて、適切な「介護」或いは「介護の予防」を実施することが出来るのです。

 注)本著作物(このブログA-47に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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物忘れは認知症の始まりなのか Q/A Room(A-46)

2012-06-14 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:70歳になる父がたびたび「物忘れ」をするので、病院に連れて行って診てもらったところ、診察を受けた精神科医から「軽度認知障害」だと言われました。認知症の前駆的なものであり、6~7年後には「アルツハイマー型認知症」を発病する可能性が高いと言われました。アルツハイマー型認知症は、発病の原因がわかっていないので、打つ手はないということでした。

        

A: 認知機能が軽度に低下した状態を「軽度認知障害」(Mild Cognitive Impairment : MCI)と呼び、認知症でも正常でもなく、「認知症」への「前駆的な状態」を言うものと定義されています。「脳の機能レベル」との関係の定義ではなくて、「症状」を基準とした診断基準であり、然も「記憶に関する訴え」を要件にしていたり、或いは、「客観的な認知障害があること」を要件にしているのです。

客観的な認知障害と言われても、例えば「物忘れ」を例に取り上げればわかるように、「脳の働き」との関係で規定され且つその「程度」が限定されていないのでは、言葉の遊びに過ぎないのです。意識的に行われる行為の世界をテーマとして取り上げる以上、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の機能及びその機能レベルとの関係が定義され且つその発現としての症状が程度と態様とを限定して定義されていない限り、感覚的な内容にすぎず、「客観的な基準」として使用できない欠陥があると言わざるを得ないのです。

       

私達は、専門家たちが認知症ではないとして見逃している「アルツハイマー型認知症」の早期の段階、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)及び中等度認知症(中ボケ)について、「前頭葉」を含む脳の働きとその機能レベルとの関係及びそれぞれのレベルで「特徴的」(限定的)に発現する「症状」との両面からこれらを定義しています。このような定義がなされて初めて、「客観的な指標」となりうるのです。(「小ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「中ボケ」については、ここをクリックしてください)。


       

 「MCI」などと言われるといかにも専門的な響きがありますが、「認知機能の軽度な低下」を示す客観的な基準もありません。脳の機能という面から言うと、前頭葉を全体の司令塔として、左脳、運動の脳及び右脳との共同により「認知」が行われるのです。状況を判断し、テーマを企画し、実行する内容を組み立て、結果をシミュレーションし、必要な修正を加えて、最終的な内容を決定し、実行の指令をする。これらはすべて脳の司令塔の「前頭葉」の重要な機能なのですが、それぞれの工程には、「認知機能」が常になくてはならない中核の機能として係わっているのです。

意識的な行為における認知機能の発現(内心の意思並びに行為及び症状)には極めて多くの種類と程度と態様があるので、問題とされる「認知機能の軽度な低下」がどの工程で起きるどの種類のもので且つどの程度のものなのか或いはどのような態様のものなのかを客観的な基準で定義することが出来ていない(限定できていない)のです。従って、「診断基準」と言いながら、脳の機能面からでなくて機能レベルのアウトプットである症状に頼ったものになってしまっているのです。「軽度認知障害」の定義のレベル自体が、「診断基準」と言えるような程度には程遠いものというしかない内容のものなのです。

        

その上「軽度認知障害」では、「アルツハイマー型認知症」への移行率が取り上げられていて、10%から15%の数値が取りざたされています。「アルツハイマー型認知症」の発病原因も不明であるとしつつ、「アルツハイマー型認知症」への移行率を数値化する主張には賛成できません。

「軽度認知障害」以外の要因の影響があるのかないのか、あるとしたらどの程度の影響があるのかも分析していないのでは、そもそも「軽度認知障害」と呼ばれる病状から「アルツハイマー型認知症」の発病に至る「因果関係」そのものが不明確と言わざるを得ないからです。

        

「アルツハイマー型認知症」の診断基準自体が種々の問題を抱えていることについては、このブログでこれまでに詳しく説明してきたとおりです。「軽度認知障害」の基準についても、診断基準というには、お粗末すぎる内容と言わざるを得ないのです。「アルツハイマー型認知症」の診断基準と同様に「軽度認知障害」の診断基準も、意識的な行為における脳全体のの司令塔の働きをしている「前頭葉」の機能及びその機能レベルとの関係が見過ごされているところに最大の欠陥があるのです。

(コーヒー・ブレイク) 「物忘れ」と「アルツハイマー型認知症」の発病との間には、そもそも「因果関係」は存在しないのです。(ここをクリックしてください)。

 注)本著作物(このブログA-46に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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