★「由太郎ノートNO.017-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:高段者編」
▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
棋譜解説:平成21年全日本アマチュア将棋名人 山崎由太郎
編集責任:棋楽庵
▲挑戦者 神品和男
△県名人 早咲誠和
=序文=
高段者編では僕の考えを正直に書こうと思います。「疑問符」と
いうのは、本当は「疑問手」と書きたいのですが、このお二人のよ
うに将棋である一定の地位を持たれると、他人から自分の将棋に茶
々を入れられるのをすごく嫌うはずです。とは言っても、僕も解説
役を頼まれたわけですから、疑問手も敗着もなしで将棋が終わった
ら読んでるほうとしては面白くないでしょう。ただ、言いたいのは
僕が「疑問符」「敗着」と書いたところで僕が「そう思っているだ
け」というだけの話しということです。将棋の真実なんてなんて誰
もわからないということです。
例えば、こんな場合を考えて見てください。四段の人がある局面
でAという意見を出したとします。そこで、五段の人が同じ局面を
見てBという意見を出しました。こうした場合、四段の方が余程、
自意識過剰でなければ、解答はBであるという結論になります。し
かし、そこで六段の人が現れこの局面はAであると言いました。す
ると、局面の解答はAということになります。しかし、そこでプロ
が現れBと答える…。
何が言いたいかと言うと、将棋の真実なんて誰もわからないとい
うことです。僕も一生懸命に書きますが、僕の考えを鵜呑みにはし
ないで下さい。実際、この文章自体結構書き直しているのですが、
その短期間の間にも僕の考えは変わっています。
【山崎の結論】
=第1譜=
=第2譜=
=第3譜=
◆関連リンク
→「由太郎ノートNO.015-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:級位者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
→「由太郎ノートNO.016-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:低段者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
→「第63期大分合同アマ将棋名人戦三番勝負」結果-NO.1(平成21年7月12日:大分市「割烹 百合」)
→「第63期大分合同アマ将棋名人戦三番勝負」結果-NO.2(平成21年7月12日:大分市「割烹 百合」)
▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
棋譜解説:平成21年全日本アマチュア将棋名人 山崎由太郎
編集責任:棋楽庵
▲挑戦者 神品和男
△県名人 早咲誠和
=序文=
高段者編では僕の考えを正直に書こうと思います。「疑問符」と
いうのは、本当は「疑問手」と書きたいのですが、このお二人のよ
うに将棋である一定の地位を持たれると、他人から自分の将棋に茶
々を入れられるのをすごく嫌うはずです。とは言っても、僕も解説
役を頼まれたわけですから、疑問手も敗着もなしで将棋が終わった
ら読んでるほうとしては面白くないでしょう。ただ、言いたいのは
僕が「疑問符」「敗着」と書いたところで僕が「そう思っているだ
け」というだけの話しということです。将棋の真実なんてなんて誰
もわからないということです。
例えば、こんな場合を考えて見てください。四段の人がある局面
でAという意見を出したとします。そこで、五段の人が同じ局面を
見てBという意見を出しました。こうした場合、四段の方が余程、
自意識過剰でなければ、解答はBであるという結論になります。し
かし、そこで六段の人が現れこの局面はAであると言いました。す
ると、局面の解答はAということになります。しかし、そこでプロ
が現れBと答える…。
何が言いたいかと言うと、将棋の真実なんて誰もわからないとい
うことです。僕も一生懸命に書きますが、僕の考えを鵜呑みにはし
ないで下さい。実際、この文章自体結構書き直しているのですが、
その短期間の間にも僕の考えは変わっています。
【山崎の結論】
▲神品 和男 疑問符:15手目▲7七角 19手目▲2八玉 31手目▲8八飛 35手目▲5六銀 37手目▲4六歩 45手目▲2七銀 |
△早咲 誠和 疑問符: 32手目△8二飛 74手目△5六同馬 76手目△4九角 100手目△3二銀 102手目△3一同銀 敗着: 78手目△6八竜 |
=第1譜=
(指し手 1~32) ▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲6八銀 △6四歩 ▲6七銀 △6三銀 ▲6八飛 △4二玉 ▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 △5四銀 ▲7五歩(第1図) △6二飛 ▲7七角 △5二金右 ▲2八玉 △3三角 ▲3八銀 △2二玉 ▲8六歩 △3二金 ▲8五歩 △4二金右 ▲1六歩 △1四歩 ▲5八金左 △1二香 ▲8八飛 △8二飛(第2図) |
▲7五歩はやけに早いような気がし ます。神品さんの研究手順なのかもし れませんが、もし初手合いで相手の情 報が何もなくて指されたら、「中・終 盤タイプなのかな」と思い、序盤に時 間を投入して序盤で突き放すことを考 えます。 全てを調べたわけではないので確証 はないですが、▲7五歩は居飛車が△ 2二玉と角のラインに入った時に突い ているはずです。意味としては6六で 折衝が起こった際に王手飛車の筋が残 るためと考えています。 ▲7七角にもびっくり、てっきり飛 車は7八~7六のコースと思いきや、 8八~8六~7六だったのです。しか し、そのコースを取るのであれば▲2 八玉には疑問符が付きます。というの も、8八に行くのであれば、8八に8 二とあいさつしてくれる形で回らなけ れば、8六歩、8五歩が無駄になると 思うからです。 具体例を示すと、▲2八玉のところ で、▲8六歩△3三角▲8五歩△2二 玉▲8八飛という順。これなら、後手 も離れ駒があるので△6五歩とはこな いでしょう。そして、△8二飛を見て 王様を囲うという感じ。本譜は▲8六 歩~▲8五歩と△3二金~△4二金右 の交換になってしまったので明らかに 損という感じがします。 しかし、そこで△8二飛も意味がわ からない。ここら辺が変な感じで二人 がかみ合っているのです。なぜ△6五 歩と行かなかったのだろう。検証しま す。 △8二飛のところで△6五歩▲同歩 △同銀▲6六歩△同銀▲同銀△同飛▲ 同角△同角ここまでは進みそう。そこ で、▲7七銀、▲9八飛、▲6八飛ぐ らいか。しかし、▲7七銀は明らかに 筋が悪く以下△3三角▲8四歩△6六 歩▲8三歩成△8七歩▲同飛△6七歩 成の変化が目に映るだけに、やはりな さそう。▲9八飛は△5四角▲6一飛 △3三角▲6三歩…これは難しいか。 それでは△8八角打? 難しいですけ ど、いい勝負じゃないでしょうか。ま ~ 普通は▲6八飛ですか。△9九角 成でも△6五歩でも難しそう。明らか に後手が悪くなる順は見えないですね。 後手番だから、千日手でもOKとい うことで△8二飛ということも考えら れますが、チャンスと見たら動く早咲 将棋らしくない。△6五歩と行かなかっ た理由は将棋的な理由ではなく精神的 な理由と考えます。 |
=第2譜=
▲8六飛 △1一玉 ▲5六銀 △2二銀 ▲4六歩 △9四歩 ▲9六歩 △4四歩 ▲3六歩 △3一金 ▲2六歩 △3二金寄 ▲2七銀 △4五歩 ▲同 歩 △6五歩 ▲同 歩 △7七角成 ▲同 桂 △4五銀 ▲同 銀 △5五角 ▲4六銀 △7七角成 ▲5六飛 △6二飛 ▲5三飛成 △6五飛 ▲3八金 △6九飛成 ▲4七金左 △9九馬(第3図) |
▲5六銀では▲7六飛車も考えたい です。△2二銀のシカト作戦は、▲7 四~6四飛があるので無理でしょう。 途中▲7四歩に△7二飛という手筋も ありますが、▲9五角の筋もあるので ちょっとという感じ。強いシカト作戦 は△8四歩ですが、以下▲7四歩△同 歩▲同飛△7三歩▲8四飛△同飛▲同 歩△8七飛▲8二飛△8九飛成▲8一 飛成△2二銀▲1五歩…。 この展開は振り飛車優勢と見ます。 というのも、1四歩型の穴熊のポイン トは振り飛車からの端攻めをシカトし て▲1五歩~▲1四歩~▲1三ぶち込 みの3手の間に振り飛車側を寄せてし まおうというもの、つまり端攻めをシ カト出来ないようでは失敗なのです。 この変化の▲1五歩はシカトできな いでしょう。つまり、▲7六飛に対し ては受けると思うんですよね。しかし、 △6三銀にはそこで▲5六銀と出れば 得です。今回振り飛車は▲6五歩で捌 ける形になっているため8筋逆襲を考 えなくていいのが大きい。△7二飛は ▲8四歩~▲8三角の筋も残るため得 でしょう。 ここで、知りたいのが考慮時間です。 神品さんが▲5六銀の局面で数分時間 を使っていれば、▲7六飛車と比較し たのだなとわかりますが、ノータイム だと疑問符ということです。ここら辺、 棋譜しか見れないのはつらいですね。 ただ、棋譜の流れから推察するに、 神品さんは序盤にほとんど時間を使っ てないと推察します。申し訳ないので すが、棋譜の流れが手成りなのです。 相手を見て手を選んでる感じがしない のですよ。ただ、その手成りの順で早 咲さんを押さえ込んだのは、大局観が 素晴らしく百戦錬磨を感じさせます。 しかし、逆に手成りの順を咎めに行 かなかった早咲さんにも疑問も感じま す。すいません。今の文章は暴言かも しれません。もし、神品さんが序盤に 時間を使っていたら土下座級です。し かし、最近自分の言葉を発現出来る機 会が増えてきたので、どこまでがセー フティかというのを図っている面もあ ります。言葉は悪いですが実験的に上 の表現を消さずに載せてください。 ▲4六歩では仕掛けも考えてみたかっ たですね。つまり、▲7四歩△同歩▲ 6五歩△同歩▲3三角成△同銀▲4六 角△7三角▲同角成△同桂▲4六角△ 6二角▲7六飛△6三銀▲6五銀が一 例。 勘違いしないで欲しいのは、仕掛け た方がよかったと言っているわけでは ありません。▲4六歩のところで時間 を使っていれば、この変化を考慮した のはわかりますからこんなこと書いた りしません。ただ、棋譜しかないので 書いているだけです。 ▲2七銀はやはり何度見てもびっく りです。△9九馬の局面ですが形勢判 断をしてみます。どちらも自信を持っ ている局面でしょう。なんかずるい解 答ですが、理由を言います。この局面 の駒割ですが、極端に言うと居飛車の 銀損と見ます。居飛車の桂・香は取ら れるという発想です。しかし、今回は 9三桂馬が残っているので、そう簡単 でもないですが、ひとまず、この局面 は振り飛車駒得というのが僕の大局観 です。 その前提をもとに形勢判断をします。 居飛車は先手を取りまくって、竜も馬 も作り、攻め駒も豊富。駒損はしてい るが、穴熊は完全体=自信あり。振り 飛車は、こちらは金銀5枚の要塞で硬 さも手厚さも穴熊より上。何より駒が 全て捌けている。=自信あり。こうい う時に平等の評価が出来るためにわざ わざオールラウンダーになったので、 結構二人の考えを反映出来ているので はないかと思います。 で、僕はどちらを持ちたいかと言う と、居飛車です。やはり、Zというの は僕の中で評価が高いんです。えっ? そんな感情論より将棋的な形成判断を してくれって? それは無理です。こ こまで、登ってきてわかりましたが、 将棋的な形勢判断が出来るのはプロだ と思っています。アマチュアには無理 です。僕がアマチュアのトップではな いのでこれは暴言であり、推測しかな いですが、アマチュアの形成判断は感 情が大部分を占めていると思っていま す。だから、両者自信ありという謎の 解答が出てくるわけです。 とは言え、僕より強いアマチュアは 100人いないはずですから、この考 えは大部分の人が当てはまると思って います。「アマチュアは適当である」 これが、僕の前提であり、この前提の 証明が僕の将棋としての最終目標です。 |
=第3譜=
(指し手 65~103) ▲4四歩 △4二歩 ▲3四銀 △5二歩 ▲5四竜 △9八馬 ▲5二竜 △6五馬 ▲5六角 △同 馬 ▲同 歩 △4九角 ▲8七角 △6八竜 ▲6九歩 △8八竜 ▲3二角成 △同 金 ▲4三歩成 △同 歩 ▲3二竜 △3一香 ▲4一竜 △6三角 ▲6一竜 △8五角上 ▲4八金打 △7六角引成 ▲4二歩 △3四香 ▲4一歩成 △5二銀 ▲8一竜 △4一銀 ▲4二歩 △3二銀 ▲3一金 △同 銀 ▲同 竜(第4図) |
△5六同馬。不可解です。なぜ、こ の馬と生角を交換したのでしょうか。 考えたくないのですが、早咲さんは▲ 8七角をうっかりされたのではないか と思います。 それなら、僕の中では手順に意味が 通ります。でもま~早咲さんに「うっ かりですか?」なんて、聞けるのは相 当な気違い野郎ですから、これは永遠 に謎のままでしょう。 △5六同馬では、△6四馬でどうで しょう。次の△5四桂~△4六香はか なりの迫力です。ただ、6三角が竜に 当たるのはネックですが。 △6四馬に▲5五銀なら△6三馬▲ 6一竜△5二香。△6四馬に▲6五歩 なら△7五馬▲2五歩△3三歩▲4三 歩成△同歩▲同銀成△同金▲2四歩△ 4二金引▲5一竜△3二金寄、これは 戦えるでしょう。△6四馬に▲8三角 成なら△5四桂▲3七銀△4六香▲4 五銀△4七香成▲同馬△4九竜。ここ で▲4八金なら△4六金▲同金△同馬 ▲同馬△4八竜で▲5四銀なら△3九 金▲同金△4七竜で戦えるでしょう。 △6四馬に対し▲3七金寄るなら△5 四桂▲7五銀△7七香▲同銀成△同桂 でこれも戦えると思います。△4九角 では△7六角ならまだ長かったでしょ う。△6八竜では△8九竜の方が△3 八角成の詰み筋、また王手竜の筋がな くまだアヤがあったと思います。 △3二銀、△3一同銀う~ん、ここ ら辺も早咲らしくないです。例えば、 △3二銀では△4二同銀▲3二金△3 一歩▲4二金△7五馬▲4三金△5四 桂▲5五銀△4六歩▲3七金寄△4八 馬 逆転!。すいません。この手順は 高段者編では載せるべきではなかった ですね。低段者編のまやかしの手順で す。ただ、言いたいのはこの将棋は逆 転するなら、4筋を伸ばして、金銀を 分断するしかなかったということ。以 下の順は指しただけでしょう。 ここで、「うん、指しただけだと」 と感じた、見栄を張り高段者編を読ま れている3段以下の方々へ。甘い。四 段以上の人たちは以下の40手に何を 感じるでしょうか。それは、神品さん への感嘆です。 この局面を殺し合いに例えるなら、 鎧をつけ5体満足で刀を構えている神 品さんに対し、ボロボロになり足、腕 を切り落とされ、片足、片腕で早咲さ んがなりふりかまわず刀を振り回して いる図です。早咲さんの刀が自分に届 かないのはわかっている。しかし、そ んな中、神品さんは何を感じると思い ますか? それは「恐怖」です。この 気持ちは文章ではお伝えすることが出 来ません。申し訳ないですが、経験し てくださいとしかいいようがないです ね。 その恐怖を抱えながら、40手を戦 い抜いた神品さんは本当に素晴らしい と思います。 |
◆関連リンク
→「由太郎ノートNO.015-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:級位者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
→「由太郎ノートNO.016-第63期大分合同アマ将棋名人戦3番勝負第1局解説:低段者編」 ▲神品和男 対 △早咲誠和(平成21年7月12日対局)
→「第63期大分合同アマ将棋名人戦三番勝負」結果-NO.1(平成21年7月12日:大分市「割烹 百合」)
→「第63期大分合同アマ将棋名人戦三番勝負」結果-NO.2(平成21年7月12日:大分市「割烹 百合」)
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