棋楽庵の九州将棋ふまわり日記

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■「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.2」(第45回しんぶん赤旗全国将棋大会大分県大会観戦記)

2007年12月13日 | ◆由太郎ノート
★「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.2」
 (第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記<A級予選リーグ2回戦>:
  平成19年9月16日)


[観戦記:山 由太郎]

※筆者については予選リーグ1回戦の観戦記で詳しく紹介しています。



予選2回戦は早咲さんと首藤さんの対戦です。1回戦の観戦記とは違った書き方を
してみたいと思います。まずは、僕が棋譜採り中に考えていることをよりリアルに
感じてもらうために、観戦中に僕が思ったことを羅列していこうと思います。そし
て、次にまとめの文を書いていくという形式です。

<予選リーグ2回戦>
▲首藤正人
△早咲誠和


▲2六歩  △3四歩  
▲7六歩  △4四歩  
▲4八銀  △4二銀  
▲5六歩  △5四歩  
▲6八銀  △6二銀  
▲4六歩(第1図)

 


[観戦中]

 「首藤さんが相手か、早咲さんの立石流対策が見れるな。どう指
すかな。」

 ▲2六歩
 「あれれ?僕が知らない間に棋風を変えたのかな?首藤さんが居
飛車なんて見たことないな」

 △3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△4二銀▲5六歩△5四歩▲
6八銀△6二銀
 「う~ん 本格矢倉に進みそうだな。早咲さんは△8四歩を突い
てない一手をどう活かすんだろう?」

 ▲4六歩
 「!なるほどね、右玉か陽動か。首藤さんなら陽動かな。」

[解説]

 本譜のオープニングにはかなり衝撃を受けました。僕が大分に居
たころで、首藤さんの初手▲2六歩は見たことがなかったからで
す。また、僕は過去に数局首藤さんとは指しているはずですが、全
て首藤さんの立石流だったはずです。はじめは完全に居飛車党に転
身されたのかと思いましたが、どうやら違ったようです。

 僕は右玉、陽動振り飛車ともに、序盤をなんとなくで指している
戦形なので、首藤さんがどちらの戦形を選ぼうとも早咲さんの対策
が楽しみでした。ただ、首藤さんが振り飛車党ということを考える
と、陽動振り飛車の可能性が高そうです。

 



      △3二金  
▲4七銀  △5二金  
▲3六歩  △8四歩  
▲5七銀  △4一玉  
▲1六歩  △1四歩  
▲3七桂  △4三金右 
▲7七角  △3三銀  
▲8八飛  △3一角  
▲4八玉(第2図)

 


[観戦中]

 「陽動には何しようかな。ひとまず矢倉に組んで、△3五歩突け
たらいいんだけど。」

 △3二金▲4七銀△5二金▲3六歩
 「う~ん やっぱり突くよね。矢倉に組んで右銀どう使おう、攻
めの陣形は・・・、できたら穴熊に組みたいな。」

 △8四歩▲5七銀△4一玉▲1六歩△1四歩▲3七桂△4三金右
▲7七角△3三銀▲8八飛△3一角▲4八玉
 「考えがまとまらん」

[解説]

 首藤さんが▲8八飛車とするまでは、当然右玉の可能性も考えら
れますが、こういうときは、首藤さんの棋風から陽動と決め付け構
想を練っていきます。自分が指すわけではないので、局面に納得し
ていなくても局面はバタバタと進んでいきます。その進む局面の中
で、自分の考えをまとめながら早咲さんの構想と比べていきます。
自分のペースで手を読んでいると解答をみるだけになってしまいま
すから。とはいっても、上記のように考えがまとまらないこともか
なりありますが。(苦笑)

 僕が「△3五歩をつけたらいいな」といったのは、陽動振り飛車
に玉頭位取りができたらいいなということです。ただ、理論的な考
えではなく、経験則からですが。僕は、玉頭位取りができれば居飛
車が指しやすくなると思っています。

 「穴熊」と書いたのは、矢倉に入城した後に、△1二香~1一玉
~2二銀とできたらいいなということです。ただ、これは先手の角
の筋に入ってくるのでかなり実現は厳しそうです。

 「矢倉」「穴熊」というキーワードがでてきましたが、早咲さん
の構想はまったく異なるものでした。

 



      △2二銀  
▲5八金左 △3三桂  
▲3九玉  △4二角  
▲3八銀  △3一玉  
▲4七金  △2一玉  
▲2八玉  △5三銀(第3図)

 


[観戦中]

 △2二銀
 「ん? は~ なるほど、そう組むものですか。しかし、組み上
がったらどうしよう、この囲い、横がスカスカで感覚がよくわかん
ないんだよな。できれば右銀を△3一までもっていきたいが間に合
うか。」

 ▲5八金左△3三桂▲3九玉△4二角▲3八銀△3一玉▲4七金
△2一玉▲2八玉△5三銀
 「う~ん まーこんな感じになるよね。さて、どうするか、しか
し、横が気になる。」

[解説]

 △2二銀はなるほどと思いました。今度から、陽動には使ってみ
ようかなと思っています。ただ、この囲い、「王様の囲いは金銀三
枚」という格言からいくと横がスカスカで気持ち悪いんですよね。
「気持ち悪い」とか感情論で局面を眺めてはいけないと思っていま
すが、これは気持ち悪い(笑)。こう思う人は結構いるのではない
のでしょうか。

 「右銀を3一までもっていきたいが間に合うか」というのは、第
3図の△5三の銀を△3一までもっていきたいということです。今
は△4二角が邪魔しているので、角を動かしてひきつけることにな
ります。

 また、△2二銀の局面からだと△5三角とあがって銀を5一~4
二~3一ともっていくコースもありました。ただ、これらの手順は
玉が固くなるのですが手数がかかります。王様固めても相手に完璧
な攻撃陣を敷かれて攻め潰されたら意味がありません。だから、僕
は、△2二銀の局面から手数計算をしていましたが・・・考えがま
とまる前に手が進んでいきます(涙)。ま~仕方のないことです
が。しかし、後で説明しますが、早咲さんには既に何かが「見えて
いる」のでしょう。

 



▲5五歩  △同 歩  
▲同 角  △5四銀  
▲7七角  △6五銀  
▲4五歩  △同 桂  
▲同 桂  △7六銀  
▲5五角  △5四歩  
▲3七角  △4五歩  
▲7四歩  △5五桂  
▲7三歩成 △4七桂成 
▲同 銀  △7三桂  
▲同角成  △6四角  
▲同 馬  △同 歩(第4図)

 


[観戦中]

 ▲5五歩
 「ふ~ん ここで突きますか。ん? △6五銀にはどうするんだ
?・・・なるほど、そこで▲4五歩か、しかし、△同桂で銀でて桂
馬とって・・・あ、そうかそこで▲7四歩か。う~ん△5五桂、い
や~どうかな、わからん。」

 ▲同角△5四銀▲7七角△6五銀▲4五歩△同桂▲同桂△7六銀
▲5五角△5四歩▲3七角△4五歩▲7四歩
 「そうそう、ここなんだよね、どう指すんだろ?」

 △5五桂
 「そこで、7三歩成」

 ▲7三歩成
 「そうそう」

 △4七桂成
 「?・・・あ、そうか、角ぶつけか」

 ▲同銀△7三桂▲同角成△6四角▲同馬△同歩
 「なるほどね。これは後手が良さそうだな。」

[解説]

 さて、右銀の使用方法を僕が考えていたところ、首藤さんが仕掛
けてきました。こうなると少し読みやすくなるので、読むスピード
が大幅に上がります。上記のことはできるだけ、当時を思い出して
再現してみました。

 僕が2・3段の頃「4段の人はどういう思考をしているのだろ
う」と思っていました。その解答がこんな感じですね。ただ、数十
秒の間にという条件つきですが。「途中の手順とばしてないか?」
と言われる方がいるかもしれませんが、実際そんな感じです。「読
む」というよりかは「見える」「流れる」といった感じでしょう
か。自分の実戦だと、流れ終わった局面を自分の大局観から判断
し、良いと思ったら手順を確認し、悪いと思ったら途中で変化はな
いか考えるといった感じですね。こんなこと語りあったことないの
で確証はないですが、強い人ほどこの「見える」過程が早く、長
く、正確なのでしょう。

 第3図で僕が、「早咲さんには何か見えている」と表現していま
すが、そういう意味です。ただ、いつからこういう思考方法になっ
たかは自分では思い出せないですね。いつの間にかとい感じです。

 さて、将棋に戻りますが、僕は△7四歩で「見える」のが止まり
ました。しかも、そこで自分が悪いのではないかと思ってしまった
ので、自分の将棋だったらもしかしたら△5五同歩とも応じなかっ
たかもしれないです。しかし、ここで棋譜採りの効果です。早咲さ
んが手順を示してくれます。

 △5五桂▲7三歩成に△4七桂成!この手が全然見えていません
でした。この手順により、自分の直感は間違っていなかったのだと
確認できました。ただ+αが足りなかったのだと。でも、「ただ+
α」っていうのが一番難しいのでしょうが。

 さて、▲7三角成のところで再度▲7四歩は△6五桂~△6四角
で、これは金、桂交換になってしまいそうなので、本譜の進行はこ
う進むところでしょう。

 



▲5六銀直 △7二飛  
▲7八飛  △4六歩  
▲同 銀  △6九角  
▲3八飛  △6五銀  
▲4四歩  △4二金引 
▲6五銀  △4七角成 
▲5四銀  △4六馬  
▲3七銀  △5五馬  
▲4三銀成(第5図)

 


[観戦中]

 「△5五角をどう防ぐか」
 ▲5六銀直
 「なるほど。△5五歩は呼び込みすぎか?」

 △7二飛
 「なるほど、次に△6五銀ってことかな。」

 ▲7八飛
 「まー 防ぐよね。」

 △4六歩▲同銀△6九角▲3八飛△6五銀「すごい、全ての駒が
働きだした。しかし、▲4四歩の反撃はちょっと気持ち悪いな。」

 ▲4四歩
 「うん。取るのは後に45とられて桂馬がやだな。三枚持ってる
からな、引くかな。」

 △4二金引▲6五銀△4七角成▲5四銀△4六馬▲3七銀△5五
馬▲4三銀成
 「さてどうしよう」

[解説]

 ▲5六銀直に対して、直感は△5五歩でしたが、やはり少し呼び
込みすぎなのでしょうか。無視はさすがにできないでしょうし、▲
4五銀は△4四歩、▲同銀は△5六歩、そこで▲4四歩は△4二金
引、▲4四桂は△4二金寄・・・僕の読みの本線はこうでしたが、
やはり何かこの先に落とし穴があるんでしょうね。

 しかし、△7二飛以下はおもしろいように全ての駒が働いてきま
すね。やはり、こちらが本筋なのでしょう。しかし、首藤さんも鋭
く攻めてきて第5図。どうしましょう。

 



      △4七金  
▲5六歩  △7九飛成 
▲3二成銀 △同 金  
▲3九金打 △5六馬  
▲5九桂  △3七金  
▲同 飛  △4六銀  
▲1七飛  △3七銀打 
▲同 飛  △同銀成  
▲同 玉  △5九竜  
▲4八銀  △5七竜  
▲4七桂  △4六馬  
▲2七玉  △4七竜  
▲同 銀  △3七飛  
▲1八玉  △1七銀  
▲2九玉  △2七飛成 
まで108手で早咲さんの勝ち

 


[解説]

 ここからは、当時の自分が何を考えていたか、よく覚えていない
ので、解説のみにさせていただきます。▲5六歩、▲5九桂と首藤
さんもなかなか土俵を割りません。しかし、△3七金がそれを打ち
砕く一手だったと思います。ここだけ覚えていますが、▲5九桂と
打たれたときは僕の頭は少々パニクってました(苦笑)。

 そして、▲4八銀に対し、△4九竜かなと思いきや、△5七竜。
詰みなんですね、なるほど。本文で「見える」という言葉を使いま
したが、早咲さんはいったいどこまで「見えている」のでしょう
ね。非常に興味があります。しかし、僕も「見える」ようになった
と書きましたが、自分より強い人間と勝負すると見えさせてきれま
せん、というより読まさせてもくれません。「そんなことが可能な
のか?」と思う人がいるでしょうが、可能なんです。本当に将棋は
奥が深いです。

 

◆関連リンク
「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.1」(第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記<A級予選リーグ1回戦>:平成19年9月16日)
「第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果-NO.1(平成19年9月16日:大分市「稙田公民館」)
 ・入賞者
 ・A級~C級成績詳細
「第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果-NO.2(平成19年9月16日:大分市「稙田公民館」)
 ・改元大会成績詳細
 ・熱戦譜 [A級決勝]▲早咲誠和 対 △泉翔太
 ・ミニミニ写真館




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