棋楽庵の九州将棋ふまわり日記

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■「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.1」(第45回しんぶん赤旗全国将棋大会大分県大会観戦記)

2007年12月10日 | ◆由太郎ノート
★「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.1」
 (第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記<A級予選リーグ1回戦>:
  平成19年9月16日)


[観戦記:山 由太郎]

=筆者紹介=
広島国際大学3年生(大分県内の高校を卒業後進学)。高校時代からA級で活躍。
特に竜王戦大分県大会で早咲誠和氏を破ったのは大きな話題となった。大学進学後
着実に棋力を伸ばし、今年は以下の大会で大活躍、一気に中国地区の強豪入りを果
たした。全国クラスのアマチュア棋士として今後の活躍が期待できる。

(山氏の今年の戦績)
 1月 朝日アマ将棋名人戦中国ブロック大会 準優勝(優勝は開原孝治さん)
 3月 支部名人戦広島県大会        優勝
    同西地区大会            決勝トーナメント1回戦敗退
 4月 竜王戦広島県大会          準優勝(優勝は開原孝治さん)
    レーティング選手権中国ブロック大会 途中棄権(スイス式6回戦:2勝2敗)
 5月 中四学生将棋大会          準優勝
    学生名人戦             1回戦負け
      西日本大会           3位
 7月 アマ名人戦兼中国名人戦広島県大会  優勝
    同全国大会             予選落ち
    中国名人戦挑戦者決定大会      優勝
 8月 中国名人戦             名人奪取
10月 アマ王将位山陽地区大会       優勝
    赤旗名人戦広島県大会        準優勝(優勝は柿本さん)
    中四学生将棋大会          準優勝
11月 呉名人戦挑戦者決定大会       優勝
    呉名人戦              名人奪取



 これから平成19年9月16日に行われた第45回しんぶん赤旗
全国囲碁・将棋大会大分県大会で、僕が記録した早咲さんの棋譜全
6局の観戦記を書いていこうと思います。ただ、好手、悪手などの
手の善悪は出来るだけ書かないようし、ここでは、僕が棋譜を採り
ながら何を考え、何を学んでいるのかを書いていこうと思っていま
す。

<予選リーグ1回戦>
▲横川永
△早咲誠和


▲7六歩  △3四歩  
▲6六歩  △8四歩  
▲6八飛  △6二銀  
▲4八玉  △4二玉  
▲3八玉  △3二玉
▲1六歩  △5四歩  
▲7八銀  △3三角  
▲1五歩(第1図)



 まずは、予選1回戦。早咲さんの相手は横川さん。僕は過去に対
戦した記憶がなかったので、「どういう戦型になるのだろう?」と
思って見ていました。ただ、切れ負け戦ということもあり手はバタ
バタと進んで行き、横川さんの四間飛車対早咲さんの居飛車持久戦
模様の戦いになりました。そして第1図へ。

 実は個人的にかなり気になっている局面でした。大抵は先手が後
手の△4二角を受ける手を指すためなかなか現れにくい局面です。
というのも、定跡書の分岐変化や次の一手問題集で△4二角以下居
飛車良しとされている形だからです。では、なぜ気になるのか?そ
れは、本に書かれている形勢判断に疑問があるからです。本にはこ
う書かれています。第1図より△8五歩▲7七角△4二角▲6七銀
△8六歩▲同歩△同角▲8八飛△7七角成▲8二飛成△6七馬(参
考図1)まで、二枚換えにより居飛車良し。

 僕はこの文に未だに疑問を感じています。だって、二枚換えでは
ないからです。△6七馬のあとは振り飛車側の手番。つまり▲8一
竜とすれば駒割は銀桂交換です。ちなみに、この変化、局面こそ違
うもののプロの実戦でも現れています。結果は居飛車が勝ちました
が、今の僕のレベルでは理解できるものではありませんでした。こ
のまま書き続けると別の方向に行きそうなので、話はここでやめま
すが、とにかく気になっていました。

 ということで、参考図1より早咲さんの寄せの構想を楽しみにし
ながら自分の考えをまとめようとしていました。




      △8五歩  
▲7七角  △4二角  
▲6五歩  △2二銀  
▲2八玉  △8六歩  
▲同 歩  △同 角  
▲同 角  △同 飛(第2図)



しかし、横川さんは△4二角に対し▲6五歩。「そっちの変化か」
と言った感じです。ただ、これで僕の疑問に対する解答は闇の中へ
消えて言ってしまいました。

 しかし、まだまだ僕の疑問は続いていました。今度は△4二角に
対する、振り飛車の応急処置として本に紹介されている▲6五歩~
▲6七飛車です。本譜▲2八玉のところで▲6七飛車と浮き、以下
△8六歩▲同歩△同角▲6六角(参考図2)とする順です。この後
の展開も気になっており、早咲さんの構想を期待しましたが、横川
さんは▲2八玉。この手にはかなり驚きました。

 これでは、普通に居飛車が飛車先を交換できるので「大丈夫かな
?」と思って見ていました。しかし、指されて見ると以外に難しい
局面であることに気がつきました。既に、先手としては不満でしょ
うが形勢が大きく動くような感じではないと思ったからです。

 僕が思い浮かんだ具体例としては、先手だけの構想で行くと、▲
8七歩~▲7九金~▲6九飛~▲3八銀~▲8八金~▲7七銀~▲
7八金で徹底的に待つ方針です。先手なので、千日手を狙うような
指し方はしたくないでしょうが、この局面で後手は千日手にしたく
ない感じです。かといって後手の攻撃陣のしき方のビジョンが浮か
ばずにいたので、また、早咲さんの構想を楽しみにしていました。




▲6四歩  △同 歩  
▲8七歩  △8二飛  
▲7七桂  △5三銀  
▲7五歩  △3三銀  
▲3八銀  △8八角  
▲9八香  △9九角成 
▲6六飛  △9八馬  
▲7六飛  △9七馬  
▲7四歩  △同 歩  
▲6三角  △7二香(第3図)




 しかし、横川さんは▲6四歩。これは△8八角を打たせ、その間
に自分の飛車を捌いてしまおうというもの。ただ、僕の大局観だと
少々無理気味だと思いました。

 そして、第3図△7二香で、捌くことが難しくなり、後手優勢に
なったと感じました。ただ、第2図から第3図にかけて驚くべき一
手がありました。

 △3三銀です。僕は、ここらへんで具体例を読むことをやめて、
△8八角ぐらいで勝ちではないかと思っていました。しかし、そこ
でじっと△3三銀。対局中で、早咲さんの声が聞こえるはずがない
のですが、「なんで、ここで考えるのをやめるのですか? ここは
そんな簡単な局面ではありませんよ」と言われたような気がしまし
た。

 



▲8六飛  △8四歩  
▲5六飛  △5二金左 
▲5四角成 △同 銀  
▲同 飛  △5三歩  
▲5六飛  △7五歩  
▲6七銀  △9四角  
▲7八金  △7六歩  
▲9五歩  △8三角(最終図)  
まで、62手で早咲さんの勝ち



 さっき、反省したばかりですが、さすがに△7五歩の局面では、
早咲さんの勝ちを意識し、▲6七銀に対し、△8七馬▲7八金△9
八馬▲9六飛△5四馬で後は7、8筋の歩をついていけば勝てるか
なと思っていました。しかし、早咲さんは▲6七銀の局面で1分の
時間を使い△9四角。以下4手で横川さんを投了に追い込みまし
た。またしても、自分の甘さを痛感しました。

 棋譜を採ると、対局のときとは違った何かを必ず得ることができ
ると思います。早咲さんの対局となればなおさらでしょう。指し手
だけでなく、時間の使い方の違いなどもです。特に、早咲さんの場
合は色々なことの確認ができることが大きなメリットです。

 今回の対局の場合、僕が結論を出せずにいた、2つの変化が局面
には現れなかったものの、思考の中で出現しました。解答はわかり
ませんが、研究する際のかなりの手助けにはなります。実戦詰め将
棋を「次の一手」で出されるか、「詰め将棋」として出されるかと
いうのと同じ感覚かもしれません。解答は同じですが、「次の一
手」として出される方が難易度は圧倒的に高いはずです。

 今回の変化も僕は定跡書を信じることができませんでした。で
も、早咲さんが指すことで、定跡書が正しく、自分の力が足りない
ためにわからないだけなんだと感じることができ、これだけでも大
きな収穫でした。また、34手目△3三銀、54手目△9四角など
具体例を考えることの大切さがわかることも。

 最近は本当に将棋の難しさを感じています。「感覚ではなく具体
例を示さないと勝てない」と。強い人は「こんなもんだろ」と指し
た手を絶対に許してくれません。「これで打つ歩詰めだから逃れて
る」とか本当にギリギリの所を読んでいるからです。34手目△3
三銀、54手目△9四角は僕の読みにない手でした。上記した通
り、「自分の手順で後手優勢」と思っていたのですが、まだまだ、
そこには早咲さんにしか見えない「裏」が隠されているのでしょ
う。この先、僕が新たな階段を登ることができたら見えてくるのだ
ろうと思います。

 今の大分の若い子達にも棋譜採りはかなりオススメです!・・・
といってもまだ、自分が指したほうが楽しいという時期でしょう
か。僕も棋譜採りの重要性を知ったのが20歳になってからですか
らあまり大きなことは言えませんが。こんな調子で残り5局書いて
いこうと思います。

 

◆関連リンク
「第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果-NO.1(平成19年9月16日:大分市「稙田公民館」)
 ・入賞者
 ・A級~C級成績詳細
「第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果-NO.2(平成19年9月16日:大分市「稙田公民館」)
 ・改元大会成績詳細
 ・熱戦譜 [A級決勝]▲早咲誠和 対 △泉翔太
 ・ミニミニ写真館




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