多治見駅。これまで通過してきた駅とは様子が違います。何しろ中央本線の特急停車駅です。見通しのよい長いホーム。隣には貨物駅。駅舎全体は比較的新しく明るく開放的です。改札口を出たところの巨大陶壁が陶器の町を主張しているようです。
多治見の方や関係者には大変申し訳ありませんが、私は多治見のことをほとんど知りません。中央西線に乗ったなら、特急「しなの」が停車した駅名を見て、「あぁ多治見か」(読み方くらいはわかる!)と思う程度、中央自動車道を信州に向かって走っていたなら、「まだ、多治見かよ、いつもながら木曽も信濃も遠いよな」と思う程度です。そんな私が青春18きっぷの縁によって、多治見の駅に立っている。不思議というば不思議。そんな機会でもなきゃ、やってくることはなかったでしょう。
観光案内所があったので飛び込んで聞いてみました。「初めてやってきました。2時間くらいしかないのですが、どこへ行けばいいでしょう。」女性スタッフはどちらから?と聞いて、まずありがとうございますと言いました。そして、虎渓山永保寺、神言会多治見修道院、本町オリベストリートの3か所を勧めてくれました。どれも徒歩圏です。今日はあまり時間がないから、また改めてじっくりやってきますというと、「それでしたら是非、紅葉の頃においでください。虎渓山永保寺は紅葉の名所ですから」と教えてくれました。見事な案内。だって、その間1分ほどなんですよ。
駅近くのお店で昼ご飯を食べながら、もらったパンフレットに目を通す。食事もそこここに、オリベストリートを目指して歩きはじめます。米原では雨だったのに、いつしか晴れて日差しも強い。雲は入道雲ではなく、刷毛でさっとなぞったような薄い雲。多治見橋を渡りながら行き先変更を決意。多治見修道院へ行ってみよう。修道院の建物と空が絵になるかもと考えたのです。土岐川沿いに歩いて今度は記念橋で北側に戻る。SEIYUの横を通ってゆるやかな坂を上ったら修道院に到着。しかし暑いのなんの。
昭和5年にできたという修道院。由緒ありそうな出で立ちです。説明書き通りに横に葡萄畑(ワインを作るため)もありました。しかし、修道院の隣は高等学校、周辺は住宅地。俗世間の中に修道院はあったのでした。
信心もないもない私なので、恐る恐る大聖堂に入ってみました。涼しい。ステンドグラスの窓は開けられています。大聖堂にはエアコンが設置されていないようです。扇風機が何台か見えました。壁面も天井も、それをうまく表現する言葉も知識がありませんが、厳かな気分になるひとときでした。
また日差しの強い中を駅まで戻ります。修道院から下る道路から見えるのは盆地の景色。「盆地は暑くて寒い。」ぼんちが何かも知らない幼いころから教わってきたことのひとつです。途中、店先の音色に誘われて風鈴をお土産に買いました。買い物にあまり興味のない私が買う気になったのはよほど暑かったからでしょう。早いペースで歩くものですから、歩いているうちはさして気にならないのですが、立ち止まると汗が噴き出しているのに気づきます。もし、濃い色のシャツを着ていたなら、きっと塩が吹いているのが見えるはず。多治見が「日本一暑い町」であることは、後で知りました。
この翌日、東海地方も近畿地方も梅雨明けしました。
風鈴は、軒先でチリンチリンではなく、カランカランと鳴っています。
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