と、ここまで新規オープンのスキー場について好印象を記してきましたが、泣き所がないわけではありません。むしろ泣き所だらけと書かなければなりません。
センターハウス前から、初めてフォレストラインに乗った人は、乗車直後から眼前の山を登って行くリフトに期待します(私はそうでした)。「どんな楽しいゲレンデが待っているのだろう」と。ところがその山は小山で、すぐに頂上がやってくると今度は小山を下りはじめます。標高を稼ぐためにリフトに乗っているのに、「下るんかい?」。もう一度緩やかに登って下車となります。サウスコース(公称長862m)はというと、リフト降り場から20mほどは斜度があるものの、その後はやたら緩斜面。
今日初めて板をつけた、ある程度自由がきくようになった初心者だとしたら、最初の20mほどは怖い思いをするかもしれませんが、後は退屈だと思うのではないか。コースの後半は右側に夏場のキャンプサイトがあるのですが、それこそが斜度がほとんどない証拠でもあります。高校時代のキャンプはこの辺りでテントを張ったのかなと思いながらゆっくり通過。スキー板は雪面との摩擦が少ないのでまだいいのですが、スノーボート(snow boat)で楽しんでいる人たちは、このコースの後半あたりではボートを引きずって歩いています。滑ってくれないのです。
初心者だろうと思われるスノーボーダーたちも、みんなコース後半部分で板を外し、抱えて歩いています。なんとか対策を考えていただかなければ、利用率の悪いコースになってしまいそうです。
今度はマウンテンラインに乗って登ってみましょう。2本のリフトは会社が違うようで、設備にも多少の違いがあります。こちらマウンテンラインには、支柱の滑車下に覆いがつけられていて、リフト上のスキーヤーが水滴をかぶらないでいいようにしてあるのに気づきました。フォレストラインにはそれがありません。マウンテンラインはその名の通り、山を登っているぞという斜度です。杉林を切り開いたコースをリフトが登っていく。峰山高原には暁晴山(ぎょうせいざん)という標高1077mの山がありますが、その山の中腹(標高1070mか?)まで連れて行ってくれるリストです。ここから2本のコースがありますが、右側のセンターコース(公称長1170m)を滑ってみます。10mくらいの幅で少し左側に湾曲したコース。初心者用コースに分類されるのでしょうが、サウスコースよりはずっと楽しい。ただ、3コースが合流する辺りからは超安全な斜度になってしまいます。
同じリフトで上がって今度は左側のウエストコース(公称長937m)を滑ってみます。ゲレンデマップにも、ウエストコースの中ほどに上級者ゾーンと記され、ピンク色がつけられています。このゾーンだけが斜度があって楽しいひとときですが、その分その後が退屈。始点と終点はセンターコースと同じですから、途中のどこでどんな緩急がついているかという違いだけなのです。
それにセンターコース、ウエストコースは斜面が概ね東向きですから、日差しによって雪が緩んでくるのも辛いところ。
気分を変えて暁晴山に登ってみましょう。マウンテンラインを降り、ゲレンデの隅に板を置いて登ってみました。幸い新雪がないうえに風が強く積雪が少ないので、ツボ足にならずに登頂。スキー場全体はほぼ見渡せます。ホテルリラクシアも見下ろせます。昔、この山から瀬戸内海が見えると聞いたことがありますが、南方面に目を凝らしても薄い春霞がかかったようで遠くの景色はよく見えません。海までは40kmほどはあるはずですからね。しかし、360度見渡せるので条件がよければ見晴らしのよいところです。
山頂の「宍粟50名山 暁晴山」という碑を見ると妙な気がしますが、暁晴山の山頂がスキー場のある神河町と隣の宍粟市の境界です。神河町と宍粟市にまたがっているのですね。山頂付近には通信関係の建造物がいくつか建っています。面白いことに、銘板には建設省の文字。歴史を感じさせます。先に記したデータでは、ゲレンデの最後部と山頂の標高差は7mということになりますが、もう少し差があるように見えます。だから、山頂が1077mだとすると、ゲレンデ最高地点は1070mより低いのではないかと思います。
暁晴山には、中学校のキャンプのとき登ったことがあります。優雅な話で、キャンプファイヤーのあと、松明を持って暗闇の山を登るのです。登ったことは覚えているのですが、夜間に山頂に立って何かが見えたのか、例えば姫路市辺りの街の灯がみえたのかどうかもまったく「記憶にございません」。覚えているのは山を一列になって登って行く松明の火がきれいだと思ったことと、松明の火で手の甲に軽いやけどをしたことくらいです。あらぁ!
ところで、峰山高原は積雪量のあるスキー場ではありません。山頂に立って考えてみます。日本海で大量の水分を含んだ雪雲は北西からやってくるはず。峰山高原の北西はというと、兵庫・鳥取県境に扇ノ山(1310m)、鉢伏山(1220m)、氷ノ山(1510m)、三室山(1358m)などの山々が控えています。鳥取砂丘付近から上陸してきた雪雲はこれらの山々にぶつかって雪を降らせ、峰山高原にやってくるころにはお肌カサカサ状態。だから標高の割には積雪がないのだと素人は考えるのですが、どうでしょう。
当然スキー場は考えています。人工降雪機をゲレンデのあちらこちらの隅に控えさせています。しかし水を霧状に吹き上げ雪を降らせるという人工降雪機は、気温が下がらなければ仕事ができません。その日9時の気温が4℃くらいでしたので、この温度では明け方でも人工降雪機は失業中であるはず。
リフトの架け方にも?を持っています。2本ともセンターハウス前が乗り場になっていますが、地形を考えると3つのコースが合流するあたりを乗り場にすべきではなかったかと考えます。合流後はほとんど斜度のない狭いコースを歩くようにしてリフト乗り場に向かうのは混雑を生むだけですし、スキーヤーにとっても無駄が多い。とはいえ、バブル期のプリンス系でもあるまいし、1シーズンや2シーズンでリフトを架け替えるような予算も捻出は難しいでしょう。
というわけで、泣き所を並べてしまうことになりましたが、まだ2シーズン目を迎えたところ。毎年少しずつ何か新しい魅力を作っていってくれるスキー場ではないかと期待をしています。
たとえば、サウスコースにはナイター設備があります。どのみち小さいスキー場なのですから、客が数日間滞在するというビジネスモデルを想定はされていないでしょう。むしろ、姫路近辺から90分くらいで到着できることを考えると、夕方少し早い目に仕事を切り上げて、ちょっと滑って帰る客を増やす工夫をする。あるいは近隣諸国からのインバウンドは毎年増えて、彼らの目的が日本の代表的観光地訪問やお買い物から、徐々に田舎や山間部の魅力を探すことにシフトしていると聞きます。また、雪景色は訪問者にとってのこの国の魅力らしい。地理的には世界文化遺産姫路城と天空の城竹田城との間に位置する峰山高原。お城をふたつ巡る間に(スキーでなくても)雪遊びをしてきたとか、ほんの少しだけどスキー体験をしてきたというのも、近隣諸国からのお客様にとって魅力ではないかと考えます。また、地元神河町もご多聞にもれず少子高齢化の町。そしてリフトのおかげでスキーはハードなスポーツからお年寄りにも優しいレクリエーションになったという側面もあるのです。お年寄りたちがゲートボールを楽しむのと同じように、健康増進のために安くて魅力的なスキープログラムを作った神河町なんて話題になると思いますが、役場のみなさん、いかがでしょう。
2シーズン目の峰山高原、そしてこれからの峰山高原に期待しています。
(おしまい)
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